IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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そろそろ夏休み編は終わるかな~って。

では本編をどうぞ↓


第115話 夏休みのみんな

 

 

 

「よう、Ms.マスク。おめっとさん。」

 

「おめでとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

裏ストリートファイトの控え室を訪れた南美は様々な場所をガーゼで覆っていたが、それでも体は元気なようでピンピンしていた。

そしていつもの部屋で社と雛子の祝福を受ける。

 

そして二人からの祝福の言葉に対してお礼を言っていると、部屋の中に短パンの少年を伴ってグーヤンが入ってきた。

 

「あら、体はもう大丈夫なの?」

 

「はい! もちろんです!」

 

元気な様子の南美を見てグーヤンは驚きを隠せない様子である。

 

「そう、それなら良いのだけど…。2発も全力で打ったから骨でも折ってないかと心配しちゃって…。」

 

「大丈夫ですよ、私頑丈なので!」

 

ガッツポーズを取って強がって見せる南美にグーヤンは心底安心したような顔になる。

それを見た社が気付き、ニヤニヤし出す。

 

「何を笑ってるのよ!」

 

「いーや、別に? ただ、女王様も人を心配するって感情を持ってるんだなって、思っただけだよ。」

 

「おい! 社ぉ…。」

 

「お、おい止めろ!!」

 

「逃がすかぁ!!」

 

グーヤンをからかっていた社であったが、突如としてグーヤンが右腕を掲げた瞬間、逃げるように部屋から出ていった。そしてグーヤンも逃げていった社を追うように部屋から出ていく。

 

[Unknown to Death.]

 

[Nor known to Life.]

 

そんな時に、南美の頭にまたあの声が響いた。

今までは一節ずつであったが、今回は連続して二節が聞こえてきた。

南美ももう慣れたのか、聞こえていることなど少しも態度に出さずにいる。

南美は追いかけっこを始めた二人を見るために雛子と一緒に部屋からでた。

 

 

そんな一幕が繰り広げられている一方で、キサラギ重工の開発局実験棟ではというと……

 

 

 

「そんな訳で、色々壊れちゃったパーツが転がってるけど、まぁ気にしないでくれよ。」

 

なぜか大量の壊れたパーツが散乱する実験用アリーナで箒を連れてきた藤原は豪快に笑う。

その隣にいる箒は隣で豪快に笑う藤原とは正反対にぴくぴくと眉を引きつらせながら、拳を握りしめていた。

 

「いや~、新しいマシンの性能試験をしたら暴走しちゃってさぁ、もうびっくりだよ。ギャハハハハハ!!」

 

なぜかここまでの大惨事だと言うのに、現場責任者の藤原はそれでもなお高笑いしている。

そんな藤原に箒もついに我慢の限界が来たのか、鬼のような形相で藤原の胸ぐらを掴んだ。

 

「おい!! 貴様らはいったいいくつの機械をダメにしてきた!!」

 

「ん~、愚問だな箒くん…。君は今まで食べてきたパンの枚数を覚えているのかい?」

 

「13枚! 私は和食派だ! そして、質問に質問で返すな!!」

 

箒は藤原の胸ぐらを掴んだまま跳躍し、自身より背の高い藤原の頭部にヘッドバットをかました。ゴチンという鈍い音が響き渡ると藤原は涙目になりながらその場にうずくまる。

 

「お、おおう……。」

 

「まったく…。こんなにパーツが散乱して、姉さんが見たらなんて言うんだろうな。」

 

うずくまる藤原を見下ろしながら箒はふぅと溜め息を吐いた。

 

「うぐ…、篠ノ之を出すのはやめてくれ、割と効く…。」

 

藤原は頭を押さえながら立ち上がると申し訳なさそうな顔になる。

そんな藤原の顔と言葉を聞いた箒はなぜだろうと首を捻った。

 

「それで? 私はどうすればいい?」

 

「あ~、うん。申し訳ない話なんだけどさぁ、ウチの社員に片付けとかが得意なやつって居ないんだよね。いるにはいるけど、希少種っていうの?」

 

「……なんとなく想像はついたが…。」

 

「うん、片付けの指揮を執ってほしいんだ。」

 

良い笑顔でそういった藤原を見て箒はハアと大きく息を吐いた。がしかし、嫌だとは言わず、箒は鉢巻きを頭に巻く。

 

「それじゃあサッサと他の職員を集めろ。早く片付けるぞ。」

 

「うん、ありがとう。」

 

やる気を見せる箒を見て藤原は頬を緩ませて笑い、今居る職員に招集を掛けた。

そうして箒指揮の下にキサラギ重工開発局実験棟の夜を徹しての大掃除が開始された。

 

 

 

「うん…? お前今なんて言った?」

 

「いや、だから…その、ラウラと付き合う事になった。」

 

「ほう…。そうか…。」

 

織斑邸の居間ではちゃぶ台を挟んでエプロン姿の一夏と、Tシャツ短パンというラフな格好の千冬が向かい合っている。

一夏は緊張した面持ちであり、一夏に打ち明けられた千冬は缶ビールの缶を握りしめている。その顔にはうれしさとさみしさが同居したような複雑な感情が浮かんでいた。

 

「お前もついに誰かとそういう関係になるようになったか…。」

 

「う、うん…。」

 

「ちゃんと幸せにしてやれよ。」

 

それだけ言って千冬は残っているビールを飲み干して、空になった缶を握りつぶした。

一夏は千冬の言葉に黙って真剣な顔をして頷くだけである。

 

「山田くんと言い、お前と言い…。寂しくなるな。」

 

千冬は握りつぶした缶をゴミ箱に放り投げると、立ち上がり一夏の隣に座った。

そして何をするでもなく、隣の一夏にもたれかかる。

 

「お前は私に似て、不器用な所があるが、真面目で、誠実な…自慢の弟だ。」

 

「うん…。」

 

千冬は一夏にもたれかかったままするりと腕を回し、一夏の頭を自分の方に引き寄せる。

一夏は特に抵抗せず、千冬に引き寄せられ、頭同士がくっつく。

 

「暫くこうさせてくれ。」

 

「あぁ。」

 

そう言って目を閉じた千冬は体を一夏に預けて体から力を抜いた。

そんな姉を見て一夏は優しく微笑んだ。

 

 

 

「私の勝ちですわね。」

 

「驚きだな、あのお嬢ちゃんがここまで腕を上げるとはな。」

 

人形の的の前でアーカードは驚いたように目を開けている。一方でセシリアは誇るように胸を張っていた。

二人が立つ二つの的には一方には3ヶ所に穴が、もう一方には1ヶ所にだけ穴が空いている。

3ヶ所空いている方でも穴の感覚は1㎝程度であり、ごく僅かな差でしかない。

もう一方の的には的の円のど真ん中にだけ穴が空いている。

 

「まさか、カスール改を使って寸分の狂いもなく銃弾を打ち込めるのか。ここまで使いこなすとは思っていなかったな。…もう、お嬢ちゃんとは呼べないな…。」

 

「ふふ、お褒めいただき光栄ですわ。」

 

アーカードは赤いつば広帽子を深く被ってそう言った。その言葉を聞いたセシリアは、嬉しそうに微かであるが頬を緩ませたのだった。

 

 

 

 

「さて、荷物は良いな…。」

 

「隊長、ホントにもう帰るんですか?」

 

「あぁ、クラリッサにはまた負担をかけるが…。」

 

シュヴァルツェアハーゼ隊の宿舎にて、荷物をまとめ終えたラウラに副官のクラリッサは少し残念そうな顔を浮かべて話しかける。

 

「いえ、私の負担などは別に…。ただ、もう少し隊長と恋バナしたかったなぁ…と。」

 

「そんな事か…。」

 

ラウラはハァと呆れたように溜め息を吐き、荷物を持つ。

 

「通信でいくらでも出来るだろうが。これからは毎日惚気話を聞かせてやるからな。」

 

「はい! 了解です。」

 

 

 

 

「こんのバカ弟子がぁぁああああっ!!」

 

「ひぃい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃい!!」

 

春花は目の前の壮年の男性が繰り出す超高速の連撃をどうにかして捌きながら涙目で謝る。

がそれでも男性の動きについていけてることは事実であり、それが彼女の実力を示していた。

 

「流派!東方不敗は!!」

 

「王者の風よ!」

 

「全新!!」

 

「系裂!!」

 

「「天破侠乱! 見よ!東方は紅く燃えている!!」」

 

そして暫くの打ち合いの後、二人が息を合わせて拳を合わせるとなぜか後方が爆発した。

 

「精進せい!」

 

「はい、師匠!!」

 

 

 

 

「それじゃ、もう行くね。」

 

「辛くなったらいつでも帰って来て良いんだからな?」

 

「うん、ありがとう父さん。」

 

空港の一角では大きな荷物を持ったシャルがジャックとアンジェによって見送られていた。

ジャックは寂しそうに目を潤ませていたが、隣に立つアンジェによって爪先を踏まれることでなんとか理性を保っている。

 

「父さん、行ってくるね。アンジェさんも、お体に気をつけてくださいね。」

 

「あぁ、お前も気をつけろよ。」

 

「シャル、新しいパーツは無理に使わなくてもいい。怪我だけはしないように気をつけるんだぞ?」

 

「もう…、父さん心配しすぎだよ~。」

 

親ばか加減が天元突破しそうなジャックであるが、しかしアンジェの牽制によって情けない姿を晒すことはない。

そんな二人に別れを告げてシャルは日本に向かった。

 

 

こうして国外にいた専用機持ち達も次第に帰国を始め、またIS学園が騒がしくなる気配が漂うのであった。

 

 

 

 

 





夏休みが終わったら、学園祭とか、スティール・ボール・ランキャノンボールファストとかやらなきゃなぁって。

では次回でお会いしましょうノシ

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