のんびりまったり進行中~。
では本編をどうぞ↓
「ふぅ…。」
8月も下旬に差し掛かり、暑さもますますといった日の昼間に一夏は自宅の近くを歩いていた。
イギリス、ドイツ、スペインと渡り、帰国したと思えば倉持技研でロボと戦うという波乱の夏休みを過ごしていた一夏にとってこうしたゆったりとした昼は久々のものである。
そんな時、ふと近寄った“Flower shop 風見鶏”から聞き慣れたギターの音が聞こえてきた。
その音に懐かしさを感じた一夏は風見鶏へと足を踏み入れる。
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー アノノアイノノォオオオォーヤ──」
風見鶏へと足を踏み入れるとそこにはいつもの赤いチェックの上着とスカートを身に付けた店主の風見幽香が木箱に腰掛けながらギターを弾いて熱唱していた。
「──ラロラロラロリィラロロー ラロラロラロリィラロ ヒィー──あら、一夏ちゃんじゃない。」
一夏に気がついた幽香は演奏をやめて立ち上がると入り口に立っている一夏に近寄る。
「あらあら、暫く見ないうちにまた逞しくなったわね。」
「そう言う幽香さんも、また綺麗になりましたね。」
「もう、お世辞も上手くなって…。」
一夏の言葉に幽香は照れたように頬に手をあてる。
この風見幽香の経営するFlower shop風見鶏は一夏の中学校時代のバイト先であり、千冬が忙しく家に帰れなかった時は店主の幽香が一夏の面倒を見ていた過去がある。
「そうだ、今ちょうどパンが焼けたの! 良かったら少し持って行かない?}
「良いんですか?」
「もちろんよ。一夏ちゃん、私の焼いたパン好きだったでしょ?」
そう言って幽香はギターを置いて奥に引っ込んで行った。
店内を見渡せば四季の花々がそれぞれ区分けされて並んでおり、花独特の甘い匂いが漂っている。
そして暫くすると、紙袋を持った幽香が帰ってきた。
「はい、今日はメロンパンを焼いたのよ。」
「ありがとうございます。」
幽香から紙袋を受けとった一夏は頭を下げると、その頭を幽香は優しく撫でる。
「ふふ、懐かしいわぁ…。昔はこうしてよく頭を撫でてあげてたわねぇ。」
一夏の頭を撫でながら幽香はふふふと笑う。そんな幽香の言葉に一夏は恥ずかしくなったのか、頭を上げる。
そんな一夏を見て幽香はまたふんわりと笑う。
「ごめんなさい、つい懐かしくてね。」
「い、いえ…。」
照れたように幽香から視線を外す一夏に対して幽香は頬に手を当てて微笑んでいる。
そうして暫く世間話に花を咲かせていると、ふと時計に目を移した幽香が驚いたように口元に手を当てた。
「いけない、父さんに着替えを届けに行かなきゃ…。」
「おじさんって確か…。」
「AIのプログラマーよ。最近はIS関係のこともあって忙しいみたいで、会社に泊まりっぱなし。」
「そうなんですか…。」
そう会話しながら幽香はレジ台の裏から大きな紙袋を取り出した。その仕草や会話などからもういれないと判断した一夏は挨拶して風見鶏を後にする。
「また来てね。一夏ちゃんと千冬ちゃんならいつでも歓迎だわ。」
「はい、ありがとうございます。」
軽い挨拶を交わした一夏は風見鶏の前で幽香と分かれて散歩を再開する。
「さあ!! 今年もこの時期がやって参りました。 夢弦市主催、大格闘大会ぃぃいいいっ!!」
「「「フゥウウウウ!!!」」」
夢弦市のほぼ中央に位置する夢弦市民運動広場ではマイクによって響き渡る声に対してその場に居る大勢の人間が歓声を上げる。
その声を聞いた通りすがりの一夏は“もうそんな時期か”と思いを馳せる。
夢弦大格闘大会とはその名の通り、夢弦市が主催している格闘大会である。優勝者には豪華な景品もあり、参加者は夢弦市の人間だけでなく、隣の由江や板鹿棚からも参加者が訪れるのだ。
盛り上がる参加者と観戦者を横目に見ながら一夏はその場を後にした。
そうして特にすることもなく商店街方面に足を伸していると一夏はあるものを目撃する。
(…あれは…。)
そのあるものを目撃した一夏は反射的に思わず物陰に隠れた。
それはというと……
「い、狗飼さんは、暇な時はどうしてますか?」
「そうですね…、こっちに来れる時はバイクをいじってますね。」
山田真耶と狗飼瑛護の二人である。
二人は最近オープンしたばかりのレストラン“Dolls”で仲良く食事をしていた。
二人で向かい合い、真耶がテンパりながらも会話を続けている微笑ましさを眺めている一夏に背後から近寄る存在がいた。
「ほう、あれは師匠ではないか。」
「うお!? 箒…。」
「あたしもいるわよ。」
「鈴まで!?」
一夏に背後から近寄ったのは同じ専用機持ちの箒と鈴音であった。二人は一夏の背後から視線の先を見ると、同様に食事を摂っている狗飼と真耶を見つける。
それを見た二人はニヤニヤし始め、LI〇Eを開いた。
[IS学園 一年専用機面子(8)]
篠ノ之 箒:私と一夏の師匠が山田先生とデートしてる。 既読7
ラウラ:ほう…kwsk
シャル:先生にもようやく春が来たんだね。
鈴:あれは完璧メスの顔ね、間違いないわ。
(簪・_・):写真はよ
織斑一夏:おいおい…
セシリア:ここは全力で応援すべきではなくて?
北星南美:狗飼さんの好みって山田先生みたいな人なんだ。少し意外かも。
織斑一夏:まだ恋人同士って決まったわけじゃ…
などとL○NE上で好き勝手話している彼らであるが、暫くして狗飼が席を外した数十秒後に、一夏に狗飼から連絡が掛かってきた。
「はい、もしもし…。はい、…はい、わ、分かりました。はい!」
数分間会話を交わして電話を切ると、一夏は○INEを起動した。
[IS学園 一年専用機面子(8)]
織斑一夏:狗飼さん、師匠からアドバイスをくれって連絡が来た。
ラウラ:キターー(・∀・)ーーー
(簪・_・):おけ把握。
鈴:とりあえず夜まで粘ってホテルでしょ。
(簪・_・):パナしていくー
セシリア:鈴…もう少しプラトニックに行きましょうよ…
篠ノ之 箒:しかし師匠が気の効いた言葉を吐けるとも分からんし。
シャル:ボクもセシリアの案には賛成だなぁ
北星南美:狗飼さんでしょー、浮いた話は聞いたことないし、あんまし色恋沙汰には耐性ないかもねー
織斑一夏:師匠からLIN○来た。そろそろ店出るから案をくれだってさ。
鈴:夢弦大格闘大会でいいんじゃない? あれ夜までやるわよ。
(簪・_・):賛成だ。夢弦と言えば格闘技だろう。
セシリア:そうですわね…。
シャル:まぁ時間稼ぎには充分じゃない?
ラウラ:そうだな、それがいい
篠ノ之 箒:あれはいいものだ。
北星南美:確かにねー、あれは見てて燃えるよ。
織斑一夏:じゃあ、夢弦大格闘大会でOK?
(簪・_・):OK(ズドン)
ラウラ:( ・∇・)b
鈴:いいわよ~。
専用機持ち達による会議の結果、狗飼と真耶は店を出て夢弦市民運動広場へと向かったのだった。
そうして一夏、箒、鈴音が二人を見送るとまた三人はL○NEの画面へと視線を落とした。
[IS学園 一年専用機面子(8)]
(簪・_・):これはあれだな、大会終わった後に先生が「今日は帰りたくない」とか言うやつだな。
シャル:また簪はそんなこと言って…
ラウラ:いや、分からんぞ?
セシリア:し、しかしですね…
鈴:絶対そうなるわよ。
北星南美:ま、そんなもんよねー。
篠ノ之 箒:師匠にそんな意気地があればいいが…。
織斑一夏:…こんな流れだけど、みんなに報告があるんだが?
(簪・_・):面白そうだな、言ってみろ。
鈴:許可する
北星南美:hurry! say!say!
篠ノ之 箒:言うならさっさと言え
シャル:気になるな~。
セシリア:なんでしょうか?
織斑一夏:オレとラウラ、付き合うことになりました。
北星南美:……ファッ!?
(簪・_・):kwsk
シャル:へぇ、そうなんだ。
セシリア:おめでとうございます、一夏さん、ラウラさん。
鈴:あたしにくらい直接言いなさいよ。
篠ノ之 箒:そうだぞ、水臭い。
ラウラ:こんな所で言う奴がいるか…///
鈴:これは祝うしかないわね。母さんに話通しておくからウチの店に行くわよ。サービスするからさ。
織斑一夏:サンキュー鈴。
シャル:ラウラ、経緯とかはIS学園でいっぱい聞くからね。
セシリア:それを楽しみにしておりますわ。
ラウラ:おい、やめろ!
北星南美:ヘイヘイリア充!ヒューヒュー!
(簪・_・):おまいう
篠ノ之 箒:お前が言うな!
などとLIN○上で様々な言葉が飛び交い、すっかりお祝いムードになった。その後、一夏は箒と鈴音の二人によって“中華料理 凰”に連れ込まれ、根掘り葉掘り聞かれたらしい。
伏せ字の意味とは…。
この作品が完結したら都古ちゃん主人公で第二部とかやりたいなぁって。
では次回でお会いしましょうノシ