昼間の気温が高くなってきて、洗濯物が楽になってきた今日この頃。
では本編をどうぞ↓
「軽い脳震盪ですね、はい。間違いありません。」
社との勝負の後、ヴァネッサにより半ば強制的に裏ストリートファイト御用達の病院に連れてこられた南美は医師の診断を受けた。
診断結果は頭を数回打ち付けたことによる脳震盪であり、命に関わるものではないとのことである。そうして診断を受けた南美はその足でほんわ君の家に向かった。
「ん、ぁ…そこ…。」
「ここがいいの?」
「はい…。」
ほんわ君の家、南美とほんわ君は二人きりだった。
二人きりの部屋の中で南美の艶っぽい声が小さく響く。
「…もっと…、強めでも構いません。」
「うん、分かった。」
「っんぅ…、そこ、ですぅ…。」
「ここかな? どう、気持ちいい?」
「はい、気持ちいい、です…。」
部屋の中で南美はほんわ君に膝枕されながら耳かきされていた。
丁寧なほんわ君の耳かきに南美は気持ちよさそうな顔をしてほんわ君に身を任せている。
しばらくして耳かきが終わり、膝枕のまま静かにまったりしていると、南美が口を開いた。
「…ほんわ君さん…。」
ベッドの上でほんわ君の膝枕で寝ている南美は顔を上に向けてほんわ君を見る。名前を呼ばれたほんわ君は視線を落として南美と視線を合わせる。
「どうしたの南美?」
「もし、もし私が傷だらけの女の子になっても好きでいてくれますか?」
「もちろん。南美のことは、これからもずっと大好きだよ。」
南美の質問に即答で返すと、ほんわ君は南美の頭を撫でた。撫でられた南美は頭の向きを変え、照れている顔を隠すようにほんわ君の体に顔を押しつける。
「ほんわ君さんのそういうところ、ずるいです…。」
「そうかな?」
「そうです。」
頭を傾げるほんわ君はそのまま南美の頭を撫でている。南美はそうしてほんわ君の膝から頭を離すと、ほんわ君の体に抱きついた。
「ほんわ君さん…、大好きです。浮気したらダメなんですからね?」
「うん、ボクは一生南美一筋だよ。」
ほんわ君は南美の体を抱きしめながら彼女の頭を撫でる。南美はゆったりとほんわ君に体を預けて力を抜いた。
そうして南美とほんわ君が幸せな気分に浸っている時、日本へと飛行機で向かっていた一夏はというと……
side 一夏
どうも皆さん、織斑一夏です。自分は今飛行機の中にいますが、機内の空気がとてつもなく重いです。
「大人しくしろぉ!!」
…何で飛行機の中で銃を持ち出している人達がいるんでしょうね。あ、そういうドッキリとか? もしかして芸能人が乗ってるのかも。
……現実逃避はやめよう。うん。間違いない、この飛行機はハイジャックされている。ハイジャック犯は確認出来るだけで四人。一人だけならまだワンチャンあったけど、四人は多い。
「大丈夫か? 一夏くん。」
「あ、大丈夫です。」
俯いていたオレを心配してくれたのか、隣に座っているジョセフというお爺さんが声を掛けてきてくれた。このジョセフさんとはこの機内で隣同士になった縁で仲良くなったのだが、このジョセフさん、こういう事態になれているのか全く動じていない。
これが年の功というものなのだろうか。オレも年を取ったらこんな落ち着いた人になりたいと思う。
いや、そんなこと考えてる場合じゃない。このままだとどうなるんだ?
ハイジャックしたってことは少なくとも何かしらの狙いはあるってことだよな、じゃあその狙いを果たす為にこうしてる…。その間人質のオレ達は安全ってことだよな?
いざとなったら白式で…いやダメだ。機内じゃ狭すぎる。
まだ打てる手段はないか…。
side out...
一夏を乗せた飛行機はそのまま予定していた航路から外れていき、欧州スペインへと向かっていった。
「ハイジャックねぇ。」
「犯人からの要求はあるのか?」
ハイジャック犯を載せた飛行機はスペインの国際空港に着陸し、現場は緊張に包まれていた。
空港にはメディアが押し掛けると共に対テロリストの組織が派遣されメディアへの対応に追われている。
そんな中、管制室に設けられた臨時の会議室にはとある人物が二人、呼び寄せられていた。
「ソフィア=ドラゴネッティ、参上した。」
「セサル・ヴェニデ、召集により参上致した。」
その人物とはスペイン国家代表のソフィアと、代表候補生のセサルであった。
二人は既にISスーツを身に付けている。そのスーツはIS学園などで一般的なモデルのようなものではなく、袖着き裾着きでそれなりに露出は控え目である。
「来たか。まぁ君たちの出番はまだ先だ。楽にしていてくれ。」
「おう、そうさせてもらうぞ。」
ソフィアは男の言葉を聞いて、近くにあった椅子に座る。セサルもそれに倣ってソフィアの隣に腰を降ろした。
side 一夏
どうする、てか今どこだ?たぶん日本じゃない。ハイジャックの連中の口振り的にヨーロッパのどこかだとは思うけど…。
「そう暗い顔をするな一夏くん。いざとなったらワシがなんとかする。」
「は、はい…。」
ジョセフさんは凄いな。こんな状態なのに平然としてられるなんて。
でもなんとかするって、どうするつもりなんだろうか?ハイジャック犯は最低でも四人、最悪まだ乗客に紛れ込んでいる可能性もある。
そんな状況でどうにかできるのか?
[おい、飛行機の中のISパイロット、聞こえているか?]
[っ?! はい、聞こえています!]
悩んでいると突然頭の中に知らない女の人の声が聞こえてきた。これは個人間通信…、つまり話しかけてきているのはISのパイロットか…。
[ん? 男の声…、あぁ、そういうことか。織斑一夏だな。]
[は、はい、あなたは?]
[己《オレ》はソフィア=ドラゴネッティ、スペインの国家代表だ。今の機内の情報を教えろ。]
国家代表…。救助に来たのか…。だとすればこれ以上ない味方だ。
[今は銃を持ったハイジャック犯が四人、機内を見張るように立ってます。ただ、ファーストクラスまでは流石に見えません。]
[了解だ。少し待ってろ。こっちの交渉人が、今ハイジャック犯と交渉の連絡を取ろうとしている。その結果如何では武力行使もあり得るからな。]
[分かりました。]
それだけ会話を交わしてソフィアさんは通信を切った。
これで少しだけ希望が見えてきたかもしれない。
side out...
「犯人の要求を飲むのか?」
「しかしそれでは他国に示しが…。」
「それで人命を蔑ろにするのですか?」
会議室の中ではお偉方があーでもないこーでもないと言い争っている。そんな時に、傍で座っていたソフィアが口を挟む。
「おい、飛行機内部にいたISパイロットの正体が分かったぞ。織斑一夏だ。」
「…それは面倒なことになった…な。」
「いやぁ、どうしましょ?」
「何を迷っている。機内に専用機持ちがいるんだぞ? ラッキーではないか。」
頭を抱えるお偉いさん方に対してソフィアはズバッと言った。そんな彼女の言葉にお偉方全員が溜め息を吐いた。
「それで彼が怪我したらどうする? 国際IS委員会に要らぬ介入を受けるかもしれないんだぞ。」
「ふん、ISパイロットがそんな軟弱者なはずがなかろう。このまま交渉が膠着して時間を浪費するよりも、早く解決した方が世間からの評判も良いと思うがな。」
ソフィアの提案に、お偉方は皆“うぅむ”と唸る。何人かがチラチラと、ソフィアの隣に座って黙っているセサルへと視線を投げ掛ける。
その視線に気付いたセサルがハァと小さく息を吐いて言葉を続ける。
「私が読んだ交渉術の本によると、どちらかが交渉のテーブルに着かなかった場合、実力行使をするしかないらしいな。…それで、向こうに交渉の連絡を入れてから何分だ?」
「確か…もうじき20分は経つ頃だな。」
セサルの言葉にソフィアはわざとらしく近くの時計を見上げて言った。
そんなIS乗り二人の言葉にお偉方は観念したように息を吐く。
「分かった、後は君の判断に任せるよソフィア。」
「おう、任された。行くぞセサル。」
「了解です。」
ソフィアは不敵に笑い、セサルを伴って部屋から出ていった。
side 一夏
[おい、己だ。]
[はい、どうなりましたか?]
飛行機の中で待っていたオレにソフィアさんから連絡が入る。
[お偉方が己に全権を寄越した、これからハイジャック犯の制圧と乗客の救出をするぞ。]
[了解です。]
[こちらは己ともう一人、IS乗りがいる。そっちはお前一人だけだな?]
[はい、そうです。]
[分かった。己の合図でISを部分展開しろ。そうすればシールドエネルギーが働くようになる。それでハイジャック犯を制圧する。上からも飛行機の破損には目を瞑ると、許可を貰ったからな。]
そうか、部分展開があった。なんで今まで失念してたんだろうか…。
まぁいい。今はハイジャック犯の鎮圧だけを考えろ。大丈夫だ、国家代表とそれに肩を並べる人がいるなら何とかなるだろう。
落ち着け、平静を装え…。
オレは冷静だ。
[準備はいいな? 3…2…1…GO!]
通信から聞こえてきたソフィアさんの合図と一緒にオレは動きだす。
座席から立ち上がり、白式を部分展開する。
それとほぼ同時だった。
オレの、いや正確にはオレたちの頭上、飛行機の屋根が切断され、キレイに蹴り飛ばされ吹っ飛んだ。
「ガオー!!」
そして上空から一機の白いISが高速で降下してきた。
side out...
ISのちからってすげー!
では次回でお会いしましょうノシ