IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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ゼミとその他のあれこれが重なってしまったので、2日に1回はたぶんそろそろ難しいです。

では本編をどうぞ↓


第106話 路地裏と世紀末と警備員さん

  

 

「フゥゥゥウッ! シャオッ!!」

 

鋭い南美の蹴りがこめかみを捉え、その一撃を受けた男はそのまま崩れ落ちた。

南美は倒れた対戦相手を担ぎ路地裏を出る。しかし、南美の顔は勝ったというのに、どこか浮かないものであった。

 

 

 

「…おいおい、なにしけた面してんだよ。おぉ?」

 

控え室で南美を待っていたのは社であった。南美を出迎えた社は怪訝な表情で尋ねる。しかし南美は社の質問に首を振った。

 

「なんか…、燃えないんですよね。この前の雛子との勝負以来、なんていうか…。」

 

「ふーん、なるほどな。」

 

南美の態度に何かを察した社はピッと南美に指を指す。

 

「分かるぜぇ、その気持ち。上位ランカーの壁を覗くとそうなっちまうんだ。それが上位とその他の差なんだよ。闘争の空気が違うのさ。」

 

裏ストリートファイトの上位陣の一人でもある社の言葉に南美はすっと自分の悩みが解きほぐれた気がした。

あぁそうかと社の言葉によってそこまで線で存在していた様々なことが一気につながり、南美は笑顔になる。そしてあまりにもあっさりと解決したことが少しばかばかしくなって大声で笑い声を上げた。

 

「は、いい顔するようになったじゃねぇの。」

 

「ええ、これも社さんのおかげです。」

 

二人はニィと笑い合う。そんな時にゆっくりと短パンの少年を伴ってグーヤンが部屋に入ってきた。

 

「お二人さん、二人の次のカードが出たわよ~。」

 

「お、お前が直々に来るってことはよ…?」

 

「あら、察しがいいわね。その通りよ。」

 

社の言葉にグーヤンはふふっと笑う。

 

「次の貴方達の仕合は七枷社対Ms.マスクよ。」

 

グーヤンの告げた対戦カードに社は口角を吊り上げて笑う。心底楽しそうに笑う社を見てグーヤンは小さく笑う。

どいつもこいつも戦闘狂しかいないことに恐怖し、短パンの少年はグーヤンから離れてドアの陰に隠れる。

南美もまた社の方を見て笑っていた。

 

 

 

その頃のレゾナンス、TRF-Rではというと……

 

(TA・Д・)<バシュンッ!! はい、のほほんちゃんがぁ!捕まえてぇ!! のほほんちゃんがぁ!ドリブルしてぇ! のほほんちゃんが打ち上げてぇ!! のほほんちゃんが画面端まで運んで、まだ入る!! のほほんちゃんがぁ!バスケしてぇ! のほほんちゃんがぁ!!!決めたぁああっ!!!

 

立派な修羅に成長した布仏本音が5様との決勝戦に挑んでいた。

 

(禅・Д・)<さぁ、2ラウンド目! 開幕の立ち回りで、競っていく!おっとのほほんユダが差し込んで、バニシングまで繋いで~、5様が~死んでしまった! 5様が打ち上げられて~、5様が~画面端で跳ねて~、まだ入る~、5様が~ドリブルされて~、5様が台パンして~、5様の浮きが高くなってぇ、5様が、死んだぁあああああ!!!

 

(TA・Д・)<はい! これでのほほんちゃんの2度目の店内大会優勝になります!拍手ぅ~!!

 

(モヒ・ω・)<ノホホンチャンカワイイヤッター

 

(モヒ・Д・)<おめでとー!!

 

(モヒ゜Д゜)<すごいぞー!!

 

(眉゜Д゜)<可愛いぞー!!

 

(モヒ・∀・)<結婚しよー!!

 

 

修羅の国、TRF-Rで完全に修羅として一人立ちしたのほほんこと、布仏本音はアイドルとしてだけでなく一人の格ゲーマーとして皆に愛されていた。

 

 

(*´ω`*)<…ガチ撮り、のほほんちゃんに挑むのありだと思う?

 

(こ・ω・)<…。

 

(*´ω`*)<なんか言ってよ!!

 

 

今日もTRF-Rは平和である。

 

 

 

「ふぅ…。」

 

「いつもお疲れさまです、狗飼さん。」

 

日差しの降り注ぐIS学園の中庭では、巡回していた狗飼と大きなお弁当箱をもった山田真耶が同じベンチに座っていた。

夏休みということもあり、生徒の大半が帰省した今ではこうして狗飼も堂々と敷地内を歩けるのだ。

そうして夏の日差しを木陰でやり過ごしている二人は同じベンチに座り、間にお弁当箱を置いてお昼にしている。

もはやこの二人がこうしてお昼を一緒にするのは恒例となっているが、きっかけは真耶から提案したことにある。

それ以来二人はこうしたお互いの時間を合わせては昼食を共にしているのである。

 

「どうぞ、今日の唐揚げは自信作なんですよ!」

 

「では…いただきます。」

 

狗飼は真耶が進めてきた唐揚げを一つ頬張ると、小さく頷いた。そんな彼のリアクションに真耶は嬉しそうに微笑む。

 

そうして仲睦まじくしている二人を物陰から見ている人物達がいた。

 

「あれ、本当に付き合ってないんですか?」

 

「えぇ、狗飼くんはそう言ってたけど…。」

 

「瑛護も隅におけないネー。」

 

完全に野次馬根性丸出しの犬走、川内、虎龍の3人である。

3人は同じ茂みの中に身を隠して狗飼と真耶の事を観察していた。その隠密技術はさすがKGDOと言うべきか、全く気付かれていない。

 

「あの先生の人、絶対先輩に惚れてますって。」

 

「確かに、あの顔は…。」

 

「雌の顔アルよ…。」

 

同じ解答を導きだした3人はお互いに顔を見合わせると深く頷いた。

そしてまた音も立てずに茂みの中から抜け出し、3人はどこかへと姿を消していったのである。

 

今後のIS学園には、もといIS学園の警備隊には一波乱がありそうである。

 

 

 

 





ヘイワダナー
そんな訳で短く詰め合わせてみました。


では次回でお会いしましょうノシ


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