IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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朝早くから失礼します。
地雷一等兵です。

最近の朝の早さがヤバイので、起きるついでに投稿させていただきました。

では本編をどうぞ↓


第101話 南美とほんわ君、後は某所のお話。

 

「ん…。」

 

目が覚めるとそこは見慣れない部屋だった。

白い天井と壁、清潔感のある部屋の中、心地よいベッドの上で北星南美は目を覚ました。

 

「南美!」

 

そして視界の中に心配そうな声と共に飛び込んで来たのは恋人のほんわ君の姿である。

ほんわ君は南美を抱き寄せると“良かった、良かった”と言葉を漏らす。

 

「ほんわ君さん…? えっとなんで、ここに?」

 

「それはボクのセリフだよ! 急に電話が掛かってきたと思ったら南美が病院に運ばれたって聞かされて、急いで来たんだよ!?」

 

南美の肩を掴んで険しい表情でそう告げるほんわ君からは純粋に南美の事を心配しているということが見てとれた。

そんな真剣なほんわ君の心配に南美は申し訳なくなって俯いてしまう。

 

「ごめんなさい…。」

 

「うん、許す。許すけど、何があったのかは教えてほしいな。」

 

下を向いて落ち込んだ様子の南美を抱きしめてほんわ君は頭を撫でる。南美はそんなほんわ君の優しさに思わずほんわ君を抱きしめ返した。

 

 

 

しばらくして南美が落ち着いてから、彼女は病院に搬送されることになった経緯を説明する。もちろん対外秘である部分はぼかしているが。

 

 

「少年漫画かな?」

 

「う…、それ参加者の人にも言われました…。そんなに変ですか?」

 

「ううん、南美らしい。」

 

ほんわ君の反応にふてくされたような態度で返した南美であったが、その後に返ってきた言葉に照れたように顔を背けた。

 

「まだ続けるんだとしても、もう少し自分の体を労ってほしいな。南美になにかあったらボクも悲しいからさ。」

 

「はい、ごめんなさい。」

 

「謝ることないよ。ほら、泣かない泣かない。」

 

顔を合わせながら泣く南美の頬に手を当ててほんわ君は頬を伝う涙を拭ってあげる。

南美はそれを拒否することなく、ほんわ君のするままに身を任せるのだった。

 

 

 

南美の気絶の原因は極度の緊張が一気に切れたことによるもので、身体的な影響はなく目が覚めたその日に退院することとなった。

その日の南美は親に友人宅に止まると言い、ほんわ君の家に泊まったと言う。

 

 

 

 

 

そんなことがあったとか、なかったとかしたりしていなかったりしていた頃のことである…。

フィンランド某所でのこと。

 

 

「それで、なんで新人の研修場所にこの部隊が選ばれるんだ? 正直スパルタの域を超えていないか?」

 

「…この部隊をそんな場所に変えている隊長がそれを言うんすか?」

 

ある部屋の中で二人の人物が話していた。一人はフィンランドの国家代表を務めているスミカ・ユーティライネンである。もう一人はやや色白であるが服の上からでも分かるほど鍛えられた肉体美の男性である。

二人はそれぞれ資料を片手に意見を突きつけあっている。

 

「それにしても研修の新人が二人、しかもそのうちの一人が国家代表候補生のヴィートか…。」

 

「知ってるんすか、隊長。」

 

「あぁ、優秀な子だよ。狙撃の腕に関してはそこらの軍人にも引けを取らないだろう。」

 

「へぇ、隊長がそんなに褒めるなんて、楽しみっすね。」

 

「あぁ、楽しみにしてろ。あいつは子供の頃からケワタガモを撃ってたらしいからな。」

 

などと話しながら二人は次々と書類に目を通して行く。

その中の一枚を見た瞬間、スミカの手が止まった。

 

「ん? どうしたんすか隊長。」

 

「ああ、これだ。」

 

「ん~? 過激派女権団の尖兵…っすか…?」

 

男がスミカから受け取った資料には、国際的に活動を行っている女性権利団体の中でも特に過激派として知られている団体の活動がより広範に、より危険度を増してきていると言う内容のものであった。

その団体の活動は主に欧州であったが、ここ最近になってアジア圏にも広がっており、また活動が行われてきた欧州での活動頻度が増えてきているのだ。

スミカの主な仕事は対テロ組織のもので、こういった世界各地の出来事には敏感になっている。

 

「女権団ねぇ…。」

 

「くだらないよな…。」

 

男の呟きにスミカはうんざりした様子で言葉を吐き捨てた。

 

「世界はなるようにしかならないのにさ…。それを強引に変えようとすると、世界は歪んじゃうんだ。ちょうどISの出現で上滑るように発展した今の世界みたいにな。彼女らがやっているのは歪みが修正されようとしている世界をまた歪めようとしているに過ぎないのさ。」

 

「…隊長の話はよく分からねぇっす。」

 

スミカの言わんとしている内容を理解しきれなかった男はバツが悪そうに頭を掻いた。それをみてスミカはクスリと笑う。

 

「今はそれでもいいだろう。そのうちお前にも分かるさ。」

 

「そんなもんなんすかねぇ。」

 

「そんなものだよ。」

 

それだけ言ってまたスミカは資料に目を通し始める。それにつられて男も資料読みを再開する。

そうして時間が過ぎて行き、翌日仕事を抱えたまま一晩過ごしたスミカの目元にはくっきりとした隈が出来ていた。いつもはテレビにも出るため身だしなみを整えるように上から指示されているスミカではあるが、モンド・グロッソ出場の話題が落ち着き、出演機会も減ってきた現在はそんなことは気にしないのが彼女である。

 

「あぁ…しんど…。まだ仕事あんのかよ…。」

 

「しゃあないっすよ、隊長。最近テレビに出ずっぱりでしたし。その分俺が手伝いますから。」

 

「おぉ、お前ホントにいいやつだなコスティ。これが終わったら吞みに行こうぜ、私が奢るよ。」

 

若干充血している目に目薬を差しながらスミカは言う。多くのフィンランド国民から国家代表として知られ、清潔感がありながらもお茶目で親しみやすい美人というイメージを抱かれているスミカ・ユーティライネンであるが、その本質はイメージとは離れた所にある。

少し乱暴な言葉使いと男らしさのある内面に、酒豪という彼女はテレビなどのメディアに出る際は上からの指示でがっつりと猫を被っているのだ。そんな自分を偽って人に接している反動なのか、基本的に部下と対する時は歯に衣着せぬ物言いと男らしさに拍車がかかる。

 

「てか隊長、例の新人来るの、今日っすよ。そんな状態で大丈夫なんす?」

 

「大丈夫だ。目薬と蒸しタオルで目つきのヤバさは消すし、疲れはドクペとマーマイト飲んどきゃなんとかなる。安心しろ。」

 

「いや、材料的に不安しか感じないっす。」

 

スミカから告げられた内のある一つにそこはかとない不安を感じるコスティであるが、そんな心配を他所にスミカは冷蔵庫の中からドクターペッパーとマーマイトを取り出した。

缶のドクターペッパーを一気に飲み干すと、次はマーマイトの蓋を開け、小匙のスプーンで中身をすくい、一気にスプーン一杯分を頬張る。

 

「あぁ…効くわぁ…。」

 

どこか座った目をしてそう呟いたスミカにコスティはハァと小さく溜め息をついて首を横に振る。

 

 

そうしてどうにかコンディションを好調とはいかずとも平常時まで戻したスミカはコスティと一緒に新人二人との顔合わせに向かった。

 

 

「待たせてしまったかな?」

 

ガチャリと部屋のドアを開けて入ると、ソファに腰かけていた青年と少女が立ち上がり敬礼する。青年は年の頃20歳前後といったところで、それなりにがっしりした体つきから、身長よりも大柄な印象を受ける。

少女の方は新雪を思わせる真っ白な肌が特徴的で、歳は14~15歳ほどに見える。

 

「あー、そう畏まるな。とてもやりずらい。」

 

「は、はい!」

 

「りょ、了解です!」

 

スミカの言葉に二人は緊張した様子で返事をした。

その様子にスミカは内心溜め息を吐く。スミカはフィンランド国内でアイドルのような好感度と知名度を誇る1種のカリスマ的な存在であるが彼女自身、そんなものに興味はないため、こうして緊張されるとやりにくいと感じてしまうのだ。

 

「あー、ヴィート・ハユハとウルマス・アウヴィネンだな。私はスミカ・ユーティライネンだ。」

 

スミカは少女のヴィート・ハユハと少年のウルマス・アウヴィネンとを交互に見て微笑みかける。

ヴィートは動じず、まっすぐと敬礼したままスミカを見つめ続け、ウルマスは頬を僅かに紅く染め、少しだけスミカから視線を逸らした。

 

「君たちはこれから人々を不当な暴力から守る仕事をするわけだ。もう上からも言われていると思うがヴィートは国家代表候補生として来年度からIS学園に新入生として入学してもらう。」

 

「はい。」

 

「それでウルマスはもう高校は卒業して、そのままこの職業か。それでウチに回されるとはね。ま、安心するといい、半年もすれば仕事には慣れるからな。」

 

「え、は、え?」

 

スミカはウルマスの肩に優しく手を置いて微笑むが、その言葉の真意を図り損ねて思わず目を剥いて驚いた。そんなウルマスのリアクションにスミカはハッハと小気味よく笑う。

 

「人のために身を粉にして働けるのは素晴らしいぞ。」

 

そう言い残してスミカはその部屋を去っていき、残りの説明は全てコスティが行った。

 

 

 

 





今まで書いてこなかった各国の国家代表についても書いていけるといいなぁって。

ではまた次回でお会いしましょうノシ


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