では本編をどうぞ↓
「………。」
都内某所に存在する更識家の屋敷。その一角、広々とした道場の中で、IS学園生徒会長の更識楯無は胴着姿で一人座禅を組んでいた。
道場の中は窓も閉めきっており薄暗く、空気は耳が痛いほどに静かだ。
静謐な空間で更識楯無はたった一人で目を閉じて呼吸を繰り返している。
そんな空気を打ち払うように男二人が道場の入り口を開けて、楯無の前に現れた。
「更識楯無、だな?」
「……。」
男の一人が眼前で座禅を組む楯無に問う。
だが楯無は座禅の姿勢からピクリとも動かず目を閉じていた。
「けっ、黙りか?」
「……貴方達は何者かしら? ただの強盗とは思えないけれど。」
ずうっと目を開けた楯無は得物を握った男二人を見上げる。
どう見ても堅気ではないであろう男達に睨まれながらも、楯無はいつもの冷静な顔を崩さなかった。
その変わらない楯無の態度に男の片割れはイラついたように片方の眉を吊り上げていた。
「俺たちはアンタを拐いに来た。」
「あら、殿方からそのように情熱的な言葉を言われたのは初めてね。ですが…。」
平静さを崩さない男の言葉に楯無は上部だけ嬉しさをつけたような言葉を吐き、道場の入り口に目を向ける。
「もう少しロマンティックなシチュエーションで言われたかったわ。それに、女性が一人でいる部屋に無作法に踏み込み過ぎじゃありません?」
「…アンタが一人の時を狙うしかなかったんでね。まぁ、そういう訳でだ、着いてきてもらおう。」
冷静な男はそう言うと懐から拳銃を取り出して楯無に向ける。それと同時にイラついていた男は日本刀を鞘から引き抜いた。
その行動に楯無は顔色を変えず静かに、そしてゆっくりと両手を上げた。
座禅のまま、二の腕が床と水平になるくらいの高さに手を上げた楯無を見て、イラついていた男は口の端を緩める。
「なんだ? 降参ってか?」
「そうですわね。最後に聞かせて頂けます? 貴方達は誰の依頼で私を?」
「………アンタに動かれると、嗅ぎ回られると面倒になる人間から、としか言えないな。」
「そう…、ありがとう。」
楯無は男の言葉を聞いて、また目を閉じた。
その様子にイラついていた男は1度刀を鞘に納めて一歩、楯無に近寄る。
「もう貴方達に用はないわ。せめて痛みを知らず、安らかに眠るといい。」
「あ“あ“っ?!」
「何をっ!?」
楯無の発言に男達は後ずさり、得物にまた手を掛けようとする。しかしそれよりも早く、楯無が掲げた両手を振り下ろした。
「ああ? なんだ、体が──ちにゃ?!」
「ひでぶっ!?」
男達の体は内側から膨れ上がり、内部から破裂するように飛び散った。
鮮やかな赤い血液や、それらを纏った肉片が男達の立っていた辺りに散らばり、道場の中を肉と血の匂いが覆う。
男達の絶命を確信した楯無は座禅を解いて立ち上がると足が汚れることも厭わず、真っ直ぐに道場の入り口を出た。
「黒子。」
「ここに。」
小さな声で楯無が呟くと、その横に片膝をついた格好で黒子姿の男が姿を現した。
黒い布のせいで顔は分からないものの、声や体格から男であることが分かる。
「少しやり過ぎてしまいました。後片付けをお願いします。」
「承知しました。」
黒子の男はその姿勢のまま、頭を下げるとスススッと道場の中に入っていった。
それを横目で確認した楯無は一呼吸置くと、軽く2回、手を打ち合わせる。
「クーちゃん。」
「…ここだ。」
楯無の言葉に反応して、一人の白髪の少女が天井裏からヒョコッと顔を覗かせた。
そんな常識外れな道場の仕方にも楯無は動じる事なく言葉を続ける。
「前からお願いしてた件だけど、そろそろ実行に移すわ。」
「ん、了解した。任せておけ。」
そう言って白髪の少女はまた天井裏に顔を引っ込め、顔を出していた四角い穴に蓋をした。
それを見届けてから楯無は雲一つない空を見上げる。
「ふぅ…。やることは山積みね。はぁ、全部やらなきゃいけないのが更識家当主の辛いところよねぇ、まぁ覚悟はしてたけど。」
MUGENカラーの強くなってきた作品に久々の北斗っぽさ。
まぁ、楯無さんはこの世界では狂キャラなんやなって。
で恒例のストーリー動画紹介のコーナー!
「便利屋のリーゼさん」(バイオノイド 氏)
便利屋を営む所長のリーゼと、その保護者兼助手のジェダさんを中心に描かれるまったり日常系ストーリー動画。
曰く、「緩流に身を任せ同化する」「緩流に身を任せまったりする」感じの作品。
MUGENストーリーでは珍しいまったりゆったり系の作品で、そういったストーリー動画を見たい方にはお勧めです。
こんなフリーダムなリーゼロッテは見たことないよ!