原作、原作ってなんだ
投げ捨てるものさ。
そんな感じの「IS世界に世紀末を持ち込む少女」です。
では本編をどうぞ↓
「一夏くん!一夏くん!?」
「一夏!おい、返事をしろ!!一夏!!」
突然途絶えた白式の信号に南美と箒は大慌てで一夏の名前を呼ぶ。しかし返事は一向に返ってこない。
「La……♪」
「ちっ!空気が読めないね!」
容赦なく弾幕を張る銀の福音に対して南美は苛立ち紛れに舌打ちをする。
先程よりもさらに密度が増したようにさえ思えるその弾幕を南美と箒は散開して避ける。
(何があった? さっきまで白式の挙動には何の異常もなかった。突然の不調? いや、それよりも仮に海に墜ちたとしたら、この高さから生身の体で海水に…。くそ、せめて生きていてくれよ!)
「もしもし織斑先生!?聞こえる?!」
回線を千冬達の使っている端末に繋いでも返事は一向に返ってこない。
何度も呼び掛けても結果は変わらなかった。
「くそっ!肝心な時に繋がらないなんて!」
「一夏!返事しろ、一夏ぁ!!」
何度呼び掛けても繋がらない回線と、行方知れずとなった一夏という二重の想定外に二人は混乱した。
そこに追い討ちを掛けるように放たれる銀の福音の光弾を迎撃しながら飛び回る。
「箒ちゃん! 私が囮になるからその隙に離脱、本部に現状を報告して!!」
「み、南美…?」
大声で直接そう伝えられた箒は足を止めずにそちらに向き直って南美の顔を見る。
その顔には有無を言わせない力強さがあり、箒は南美の指示に首を縦に振った。
「分かった、直ぐに戻る。だから、墜ちるなよ!」
箒は反転すると旅館のある方角へと全速で離脱して行った。南美はそれを振り替えることなく見送ると槍を1本掲げて銀の福音に立ち塞がる。
「誰に言ってるんだい。天空を羽ばたく鳳凰は決して墜ちないんだよ!」
対策本部の置かれている近江の間では、力なく項垂れていた千冬が立ち上がり、部屋を出ていこうとしていた。
藤原がその千冬の腕を掴んで引き留める。
「織斑、お前どこに行くつもりだ?」
「決まっているだろう、一夏を探しに行く。」
千冬は藤原の手を無理に引き剥がそうとするが、もがけばもがくほどに藤原の手は力を強めていく。
「出来るわけねぇだろ。そもそもお前一人でどうやって探すつもりだよ。暮桜はねぇんだぞ。」
「ISなら他にもある!」
「ラファールと打鉄だろうが!量産機であの空域に入り込んで何になる!! 量産機が幾ら駆けつけた所で足手まといにしかならねぇ状況なんだよ!」
両者ともにヒートアップし、このままでは殴り合いにまで発展しそうな状況の中で鈴が二人の間に割って入って口を開いた。
「なら私達が救援に行きます!」
間に割って入り、突然そう告げた鈴に藤原と千冬は目を点にした。
鈴の目にはしっかりとした意思があり、そんな鈴に同調するように他の者たちも千冬の前に歩み出る。
「私達が向かいます。幸いと言うべきか銀の福音は足止めされて居場所が割れてます。」
「それならボク達の機体でもどうにかなる。」
「……。」
セシリアやシャルロットの言葉を藤原は黙って聞いていた。
しかし、彼女らの覚悟が本物であると確信すると険しかった顔を弛め、千冬の腕を離す。
「織斑、こいつらに指示を出してやんな。」
「あ、あぁ…。」
藤原に促された千冬は咳払いして専用機組達に向き直る。
その表情はいつもの落ち着き払ったものだ。
「オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識、以上の5名は今より戦闘領域に突入し、銀の福音と交戦中の北星、篠ノ之両名を援護。その後、消息を絶った織斑を捜索せよ。いいな!」
「「「「「はい!」」」」」
5人の返事が一斉に響くと、そこに慌てた様子の箒が襖を開けて雪崩れ込んできた。
「一夏が、一夏が!!」
「分かってる、原因は知らないけど墜ちたんでしょ?」
「ああ、そうだ!通信が通じないから、伝令に来た。銀の福音は南美が足止めしてる。だから早く!!」
「分かってるわよ。」
鈴は慌てた様子の箒の頭を撫でて落ち着かせる。そこには既に風格を感じさせる落ち着き様であった。
「既にパッケージはインストール済み、全員でこのまま南美の救援と一夏の捜索に移るわよ。」
「了解ですわ。」
「うん、ボクらならできるよ。ね、ラウラ。」
「勿論だ。さっさと終わらせて嫁を探すぞ。」
「火力支援ならまかせろー(バリバリー)」
思い思いの言葉を口にして全員が外に出る。その時、一番最後に部屋を出ようとした鈴が箒の肩に手を置いた。
「ぼさっとしない。あんたも来るの。この中で一番速いのがあんた、そんで前衛張れるのもあたしとあんたの二人。期待してるわ。」
「あ、あぁ…。任せろ!」
鈴の言葉に先ほどまで狼狽えていた箒の顔が引き締まる。
その顔に鈴は“良い顔できんじゃん”と呟いて部屋を出ていき、箒もその後に続いた。
「…ハァ…、ハァ…、シャレになってないわ~。」
福音の足留めに徹してから数分、鳳凰は限界近くに到達していた。
光弾を受け翼形の背部パーツは千切れ飛んでおり、腕や脚の装甲も部分的になくなっていた。
「そろそろ限界近いけどさ、一応箒ちゃんに言われたんだよね、墜ちるなってさ…。それにさ、私はまだ死ねないんだよ。」
弱った獲物を見つめる銀の福音を前に南美は笑ってみせる。
精一杯の強がり、しかしそれだけじゃない。
南美は新しく槍を取り出すとそれを福音に投げつける。
「世界一カッコいい姉になるって世界一可愛い妹に約束したんだ!それまで絶対に死ねない!!」
槍を投げつけた南美はそのまま福音に近寄り、間合いを測るように周囲を円を描いて飛び回る。
「La……♪」
歌うようなマシンボイスと共に光弾が幾つも放たれるが南美はそれらを槍で振り払う。
「退かぬ! 絶対にだ!」
死角から死角に潜り込み、福音の意識を自分に釘付ける。絶対にこの場に引き留めようという南美の本気の証だ。
「La……♪」
「喧しい!!」
マシンボイスと共に放たれる光弾を打ち落とし、肉薄した南美は背中に回り込み、槍を背部パーツに突き立てた。
そしてその反撃と放たれる光弾から逃げるように福音から離れる。
「そろそろ…かな?」
肩で息をしながら南美は福音を見やる。右側の背部パーツには先ほど突き刺した槍がまだ刺さっており、どことなく動きが最初に比べて遅くなっているように見える。
そしてそんな福音の横っ面を巨大な弾頭がふっ叩いた。
「ナーイススナイプ…。こりゃ簪かな?」
『正解だ。』
何となく呟くと、それに答える形で簪が答えた。自身に満ち溢れた言葉に南美は本当に彼女が来たことを実感する。
「あーうん、簪が来たってことは勿論…。」
『あったり前じゃない!』
元気一杯の声が通信に響くと、狙撃を受けて体勢を崩した福音の土手っ腹を鈴の青竜刀がジャストミートした
「さぁて、あたしのダチと幼馴染みを傷つけたこと、後悔させてやるわ!」
「私もだ!!」
いつもより荒々しくそれでいて洗練された体捌きで鈴と箒は福音との間合いを測る。
その福音の動きを阻害するようにシャルロット、セシリア、ラウラ、簪による援護射撃が行われる。
「La……♪」
突然現れた専用機組にも慌てることなく福音は対処する。光弾をシャルロットたち射撃組に向かって放ち、まず射撃による援護を封じる手に出た。
「ちぃ!回避できる機体じゃないってのに!」
「ラウラ、セシリア、散開!!纏まってたら良い的だ!」
「「了解!!」」
案の定射撃組は光弾への対応に追われ、援護が止む。そして光弾を切らさないように撃ち込みながら福音はその速度を活かして南美、鈴、箒の3人に近接戦を挑む。
「速い!」
「…さっきよりもね。まだ本気じゃなかったっての?」
手を抜かれていたかもしれないことに南美は苛立ちを感じるが、そんな余裕も直ぐに無くなる。
何せ今彼女達の目の前にいるのは四人もいる射撃組に正確に光弾を撃ち込みながら3人も格闘戦で相手取る化け物だからだ。
「チェストォオ!」
「フゥウ、シャオッ!」
「ゥアチャア!!」
「La……♪」
3人同時、多角からの一斉攻撃すらも福音は全て見えているかのように回避し、光弾の弾幕を張り巡らせる。
その弾は近接3人娘ではなくて射撃組の方へと飛んで行く。
ただでさえ誤射の可能性があるというのに、光弾から逃れながらではまともに照準を合わせることすら困難であり、四人とも南美達の援護ができないでいた。
「くそ! 玉鋼の装甲が役立たずだ!」
「シールド持ちのボクが援護する!ラウラとセシリアはなるべく食らわないようにして!」
「了解ですわ!」
「オーケー!」
対物理に特化し、鈍重な玉鋼は先ほどから高速で飛んで来る光弾によってボロボロになっていた。
福音もその事を分かっているのか、簪に向けて飛ばされる光弾の数は他の3人よりも多い。
「ゥゥアチャアッ!!」
「チェエストォオッ!!」
渾身の力を込めて振られた青竜刀と日本刀、しかし福音は避けることをせず、それぞれ鈴と箒の腕を掴むことで止めた。
「そこだっ!!」
しかし二人の腕を掴んだことで動きが止まった隙に南美が殴り込む。
が、福音はそれを見てから鈴と箒をかち合わせると、それを踏み台にして高速で突っ込んで南美と頭をぶつけ合う。
「ちぃ! がぁ?!」
上手いこと勢いを殺された南美は福音の腕を掴もうとしたが、掴みにいった腕を上手いこといなされ蹴り飛ばされる。
そして踏み台にした鈴と箒の二人を蹴り飛ばすと、その場から離脱し射撃組に威嚇射撃を行う。
「ちぃ!」
「回避!」
「耐えなきゃね!!」
「お返しだ!!」
飛んでくる光弾の射線からはずれるセシリアとラウラ、そして背に簪を庇いながら両手の盾でシャルロットは耐える。
そしてシャルロットに庇ってもらったことにより、余裕の生まれた簪は大型ライフルで応戦するものの、福音はそれらを軽々とかわしてみせた。
「…攻め手が足んない…。せめてあと1枚欲しいわ…。」
ボロボロの甲龍を纏いながら鈴は呟く。
その言葉は言外に今はここにいない幼馴染みの存在があればという願望を含んでいた。
射撃組の援護を使えば光弾でそれを封殺するがかと言って3人で近接すれば射撃組が誤射する可能性もある。
そしてそれを恐れて中距離で挑めば福音の機動力もあって当たらない。
どの距離で応戦しても決め手に欠けるのだ。
このままだとジリジリと押されて数の優位性を引っくり返されかねない、そう鈴が思ったとき、それは来た。
新しくレーダーに映った反応。速く、鋭いそれはとても見覚えのあるものだった。
「ズェァアアアアアアアッ!!」
聞きなれた声の雄叫びと共に白いそれが福音に斬りかかる。手に握られた刀は宙を切るが、その切り裂かれた空気にさえ、切れ味を思わせる鋭さがある。
その後ろ姿、纏うISは記憶の物とは違うが、纏う空気は確かに彼だった。
「遅いっての、バカ一夏。」
「ワリィ、待たせたな!」
今までの白式とは全然違う姿、細身で後頭部からは長い後ろ髪とも思える柔らかそうな何かが伸び、白く、無駄のないその姿は戦装束の武士にも見えた。
「でもよく言うだろ? ヒーローは遅れてやってくるってよ!」
新たなISを身に纏った一夏はその手に握った大きな刀を構えて高らかにそう言った。
そんな彼の姿を見て、その場にいた者はどこか妙な心強さを覚えた。
「白式弐型=ハクメン!いざ推して参る!!」
IS学園一学年専用機持ち、ここに全員が集合したのである。
はい、白式のセカンドシフトはハクメンさんでした。
バレバレでしたね、はい。
福音戦は次回で完結かな?
では次回で会いましょう!ノシ
そんなわけで2回目になるMUGENストーリー紹介↓
「カードキャプターみやこ」(かにさん 氏)
タイトルから分かる通り、あの人気作品「カードキャプターさくら」をモチーフにしたMUGENストーリーです。
主人公は有間都古、兄役はお馴染み師弟コンビのロック。
丁寧な演出とストーリー、そしてニヤリと出来る細かな再現などは必見です。
《未完》