IS世界に世紀末を持ち込む少女   作:地雷一等兵

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第80話は「どうして買い物に来ただけで修羅場になるんですかねぇ」というタイトルで買い物回をやるといったな?

あ れ は 嘘 だ

買い物回前に挟んでおきたい小話を入れたら確実に長くなるのが目に見えたので分割しました。
次回こそ買い物回です。

では本編をどうぞ↓


IS学園編 3rd season「夏、青春、大騒ぎ」
第80話 私と買い物に、ですか?


「来週から校外特別実習が始まる。忘れ物なぞするなよ。三日間学園を離れることになる。自由時間では羽目を外しすぎないようにな。」

今日のホームルームで教壇に立つのは織斑千冬であった。それを見て教室を見渡した鷹月が手を挙げる。

 

「山田先生はお休みですか?」

 

そう今日の教室にはいつもいるはずの真耶がいなかったのだ。

鷹月の質問を受けた千冬は“あぁ”と思い出したように呟く。

 

「山田先生は、来週の視察の為に先んじて現地に行ってもらっている。」

 

「ええ!山ちゃん一足先に海に行ってるんですか!?」

 

「ずるいずるいー!」

 

「泳いでるよね、泳いでるんだろうなー!」

 

花の10代、女子高生とはすごいもので、何か1つ話題があれば一気に騒がしくなる。それを鬱陶しく思いながら千冬は話を続ける。

 

「一々騒ぐな馬鹿者どもが!山田先生は仕事で行ってるんだ。分かったな!」

 

千冬の言葉にクラスみんなで“はーい”と返す。こういったチームワークの良さもまた、彼女達のいいところなのだろう。

 

「これで朝のホームルームを終える。各人、今日もしっかりと励めよ。」

 

そう言って千冬は出席簿片手に教室から出ていく。

みんな揃って授業の準備を始めるなか、一夏だけ悶々とした表情で椅子に座っていた。

 

 

 

side 南美

 

 

「どうしたの一夏くん?」

 

「あ、南美…。いや、何でもない…。」

 

そう言って誤魔化す一夏くんの視線はチラチラとラウラちゃんの方に向いていた。

そしてラウラちゃんも、一夏くんと目が合う度にもじもじと視線を逸らす。

 

「…ラウラちゃんと何かあった?」

 

「っ!? な、なななな、何を言い出すんだ?!」

 

うん、この反応は何かありましたね。ラウラちゃんの姉としてこれは何があったのか聞かなきゃないね。

 

「君はラウラちゃんにナニをしたんだい?さぁ、早く答えようか、ハリー!ハリーハリー!!ハリーハリーハリー!!!」

 

「な、何もしてねぇって!!」

 

「それはラウラちゃんに何かしたくなるような魅力がないって言いたいのかな!?」

 

「お、お姉ちゃん落ち着いて!!」

 

勢い余って一夏くんに掴み掛かろうとする私の前にラウラちゃんが割り込んできた。

ラウラちゃん退いて!そいつ殺せない!!

 

「み、南美さん落ち着いてくださいまし!」

 

「落ち着け南美!」

 

ラウラちゃんだけじゃなくてセシリアちゃんと箒ちゃんまで私を押さえつけてきた。

3人に勝てるわけねぇだろって?バカヤロー私は勝つぞ。

 

 

side out...

 

 

 

「やっと大人しくなりましたわね…。」

 

「HA☆NA☆SE」

 

ロープで後ろ手に縛られた南美はせめてもの抵抗と言わんばかりに吠える。

だがそんな抵抗も空しくセシリア達は南美を無視して一夏に詰め寄る。

 

「さぁ一夏さん?聞かせて頂けませんか?ラウラさんと何があったのか…。」

 

「そうだ、聞かせてもらうぞ?嫌と言っても体に聞くまでだ…。」

 

「あ、あの、セシリアさん…?箒さん…?目が笑ってませんが?」

 

物々しい雰囲気を醸し出す二人に一夏は思わず後ずさる。

だがその後退を阻むようにシャルロットが一夏の背後にいた。

 

「ボクも気になるなぁ。一夏がラウラと何をしてたのか…。教えてくれるよね?」

 

救いの手に思えたシャルロットの目にも光はなかった。

四面楚歌とはこの事かと身をもって体験している一夏はポツリと、一言だけ呟いた。

 

「不幸だ…。」

 

 

 

「それで?一夏くんが朝起きたら下着姿のラウラちゃんが同衾していた、と。ほう…。」

 

取り調べ(物理)によってキリキリと事情を話した一夏に、その場の皆が疑いの目を向ける。

 

「ホントにそれだけなんだって!オレは何もしてない!!ラウラ、お前からも何か言ってくれ!」

 

「う、うん…。ホントに何もなかったぞ。私が寝惚けて嫁の部屋に入ってしまっただけだ。」

 

一夏の必死の言い訳とラウラの擁護によって一応は納得した様子で皆はぞろぞろと席に戻っていく。

その中から“ヘタレた?”だの、“度胸がないなぁ”等という声がしたが、どれも一夏には届かなかった。

 

 

 

そうして一夏の不能疑惑やヘタレ疑惑、ホモ疑惑、年上専などの噂が持ち上がっても恙無く授業は進む。

 

「さて、それでは今日の授業はここまでにする。解散!」

 

終わりのホームルームを終えた千冬がそのまま教室から去っていき、数名の生徒がその後を追いかけて行った。

 

一夏が部屋に帰るために机の荷物を出していると、一番下の教科書の更に下に1通の便箋が置かれているのに気がついた。

差出人の名前は狗飼瑛護となっており、一夏は何の躊躇いもなくそれを開ける。

そこには丁寧な文字で簡潔に文が綴られていた。

 

“今日から1週間、仕事でIS学園を留守にします。稽古の相手は椛を使ってください。”

 

「使ってって…。」

 

その内容に目を通した一夏は何と言っていいのか分からない感覚に襲われる。

そして1週間も狗飼の教えを受けられないことにがっくりとした。犬走との稽古も為にならないわけではないのだが、一夏の本分は剣であり、その事を自身で自覚しているのだから、余計に言いようもない感覚が湧き上がる。

 

「まぁ良いか…。」

 

何とか自分を納得させた一夏は教科書を全て鞄のなかにしまい込み、席を立った。

すると、ふとカレンダーが目に入る。どこにでもあるカレンダーの日付に一夏は何かに気がついたように手を叩く。

 

「そう言えばもう7月か。」

 

昔を懐かしむように呟いた一夏はそのまま鞄を持って教室を出ていった。

 

 

 

「一夏くんって鈍感なのか、女の子に興味が無いのか、どっちなんだろうね。」

 

アッハッハと他人事のように呟かれた(実際に他人事である)南美の言葉にその場に居合わせたシャルロット、セシリア、箒、ラウラ、鈴は溜め息を吐いた。

 

「あんの朴念仁はもうなんなんだろうね。」

 

「それでも年ごろの男子と同じくらいにはそういうことに興味もあるでしょ?」

 

「そうじゃなきゃ望みなんてないっての。」

 

「鈴さんにはお師匠さんがいるから良いのではなくって?」

 

「どういう意味よ!」

 

不貞腐れている鈴にたいしてそう言ったセシリアを睨み付ける。

セシリアは鈴に睨まれたまま左手の人差し指を立てる。

 

「鈴さんのルームメイトとはよくお茶会をする仲でして。それでよく聞かされてますの。鈴さんがいつもいつもお師さんがお師さんがってうるさいって。それもそれを楽しそうに話しているっとね。そんなに好きなんですの?」

 

ふふっとあくまで上品に笑うセシリアに、鈴は口をパクパクさせながら顔を真っ赤にする。

 

「私は、別にお師さんと、そんな…。う、うにゃぁああああああああっ!!」

 

「ふふ、恋多き乙女ですわねぇ。」

 

顔を真っ赤にしながらその場を目にも止まらぬ速さで去っていった鈴にセシリアは微笑む。

そして彼女の後ろ姿を見守るように見送りながら紅茶の入ったティーカップを口許に運ぶ。

こうして1名が逃亡したことにより、今日の専用機組の集まりはお開きとなった。

 

 

 

「今日もよろしくお願いします!」

 

「はいはーい、かかって来なさい。お姉さんが胸を貸してあげましょう。」

 

日も落ち始めたIS学園の敷地で、今日も今日とて一夏は犬走に挑む。

 

「ズェアッ!」

 

「ほいっと!」

 

振り下ろされた一夏の木刀を盾で簡単に軌道を逸らして、ローキックをお見舞いする。

負けじと一夏も更に踏み込んで犬走の襟を掴もうとするが、犬走の方が1枚も2枚も上手であり、一夏にペースを掴ませない。

 

「ほーら、重心重心。」

 

犬走は盾を使って一夏の突きを逸らし肉薄すると、木刀を握る両手の手首を掴むと、勢いよくしゃがみこんでそのまま木刀が突き出されている方向に投げる。

そして一夏の顔に股がると変則的な三角絞めに移行した。

 

「ふぐ───っ!?」

 

堪らず一夏は犬走の太股を叩いてタップする。

タップを確認した犬走は直ぐに一夏の上から退いて引き起こす。

 

「まだまだ甘いねぇ。そんなんじゃお姉さんは倒せませんよ。ま、時間もいい感じですし、今日はこの辺にしますか。」

 

「はい、ありがとうございます。…それと──」

 

ポンポンと服を叩いて汚れを落としながら終わりを告げた犬走に一夏は頭を下げる。そして何かを言い掛けて、1歩彼女に近寄った。

 

「椛さん、その、今週の日曜日って空いてますか?」

 

「今週ですか、え~と…。空いてますね、はい。」

 

思い出すように顎に指を当てていた犬走はパンと軽く両手を合わせて一夏に言う。

それを聞いた一夏はさらに1歩犬走に詰め寄る。

 

「それじゃあ椛さん、申し訳ないんですけど、買い物に付き合ってもらえませんか?」

 

「私と買い物に、ですか? またどうして?」

 

「や、その、頼りにできるのが椛さんしかいなくて…。」

 

犬走の問に一夏は頭を掻きながら申し訳なさそうに言う。その返答に犬走はふむと頷いてから胸を張った。

 

「そういうことならお姉さんに任せなさい。何を買うのか知らないけど、ちゃんとエスコートしてあげよう。」

 

張った胸をどんと叩くと、それなりに発育した胸が軽く揺れる。

その光景から目を逸らした一夏はまた犬走に頭を下げる。

 

「それじゃあ、その、日曜日はよろしくお願いします。それで、細かい時間とかなんですけど──」

 

それから数分ほど、一夏と犬走は日曜日に向けて待ち合わせやら何やらを話し合った。

 

 

 





一夏が女の人と出掛ける。あれ、これ死亡フラグじゃね?
今更か、うん。もう死兆星見えてるもんな、しゃあない。

それにこれからに向けて色々と伏線やらを仕込まんといけないしね。

ではまた次回にお会いしましょう。
…別に感想欄でお会いしてもいいんですよ?(チラ


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