魔法少女リリカルなのは 黒い鳥、星光とともに   作:如月シュウ

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執筆中に、データが消えてしまい、少し時間がかかりました。こまめに保存しないと駄目ですね。


三話 ファースト・アラート

ミッション内容

 

ミッド郊外のロストロギア移送車がガジェットドローンに占拠された。機動六課隊員は、早急にガジェットドローンを排除し、ミッションを遂行せよ。

なお、列車内部にガジェットドローンの新型と思われる反応があった。注意されたし。

 

 

 

機動六課に来てからの初仕事だ。内容は、ロストロギア移送車の奪還。

実際の列車に関しては、機動六課のフォワードメンバーが担当するので、俺の出る幕はない。

俺に与えられた仕事は、追加でやって来るガジェットドローンを排除すること。問題は、ミッション対象が列車ということもあって作戦エリアがかなり広いということだ。事前に、八神からある程度侵入ルートを絞りこんでもらっているが、そこをカバーするだけで俺一人では手一杯だ。そこで、俺の立てた作戦は、徹底して狙撃することだ。幸いというべきか、作戦エリアのかなり広範囲を見渡せる高台があるから、俺はそこに陣取るとしてその他の場所は、設置型魔法の基本的なもの魔力スフィアだ。

これは、AIを組み込むことで、一定の動きを行わせることができる。

今回は三種類の魔力スフィアを配置する。それぞれ、狙撃型、機雷型、索敵型だ。

狙撃型は、感知範囲をかなり広くして、弾速と射程をかなり上げしておいた。

機雷型は、範囲に入れば爆発するという単純な物だ。今回は、地面に埋め込んでの使用になるから、機雷というよりは、地雷だが。

索敵型は、攻撃機能こそ持たないがあらゆる場所に配置しているので、俺の眼となってくる。

それらすべてを配置するのは苦労したが、確実なミッション遂行のためだ。仕方ない。

そんなわけで、俺は周囲を見渡せる高台の上で、スナイパーライフルのスコープを覗きこんでいた。

スコープの向こう側では、機動六課の隊長二人が、教科書のお手本のような空戦機動を見せていた。

先日戦った、テスタロッサは俺にとって、まだ戦いやすい方だ。真に恐れるのは、高町なのはのような、砲撃型だ。俺も、高速戦寄りの戦闘スタイルのため、装甲は薄めで強力な砲撃を叩き込まれれば一溜りもないし、砲撃型は、装甲も硬い。個人的には非常に厄介な存在である。

スコープの中で、桜色の砲撃を放っているエースオブエースこと高町なのはは、俺の苦手とする典型的なタイプだ。敵に回さなくて本当に良かった、とつくづく思う。

 

あ、また短距離砲撃でガジェットが数体程消し飛んだぞ……。

 

おかしいな、AMF展開されてる筈なのだが。

索敵型のセンサーに反応があり、そちらにスナイパーライフルを向けると、ガジェットがやって来ていた。

 

「こちら、アレックス。作戦エリアに接近しているガジェットを確認。これより作戦を開始する」

 

機動六課に一報入れたあと、スナイパーライフルの引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

作戦開始からおおよそ30分、今のところ問題はなく、六課のフォワードメンバーも大丈夫そうだ。

だが先程から、どうにも嫌な予感がする。ガジェットもやって来るが、大した数ではなく接近される前に撃ち抜くことで対処は可能だ。

 

「……ん?索敵型の反応が消えたな。何かあったのか?」

 

現在接近しているガジェットは、すべて始末した。高台に狙撃型みを配置して、俺は反応が消えたところへ向かった。

 

 

 

反応が消えた場所には、何か大きなものが通った跡があった。

旧式の戦車のキャタピラのような痕跡は、真っ直ぐ列車の方向へ向かっている。

木々に隠れつつ、痕跡をたどっていく。車輪と思われる痕跡は、かなり深い。相当な大型機械が通ったのだろうが、そんなガジェットは聞いたこともない。もしや、ミッション内容に記載のあった新型だろうか。

そんなことを考えていると、少しばかり開けた場所に出る。

そこには……

 

「何だこれは……!」

 

10メートルは軽く超えているだろう。戦車の砲台の部分から、人の上半身のような形が生えているといった形状の巨大兵器。両腕にはガトリングが装着されており、左肩から右肩にかけて折り畳まれている巨大な大砲。

そして何より、それらの武装が魔法による兵器ではなく質量兵器だということだ。

 

質量兵器、つまりは火薬などを使用して人を物理的に傷付けることのできる兵器のことだ。魔導師の扱うバリアジャケットは、並みの銃弾程度なら防ぐことができるが、あんなバカでかい代物は例外だ。

 

あれの目的は不明だが、隊長達が危険なのは考えずともわかることだ。

巨大兵器はこちらに気づいたようで、オレンジ色のカメラアイをこちらに向ける。

 

『メインシステム起動。オペレーションパターンに問題なし。目標を確認、敵を排除します』

 

ガトリングの銃口がこちらに狙いを定める。あんなふざけたような武器に当たれば即死する。

ガトリングが発射される前に、一気に駆け出す。あれだけ巨大な兵器なのだ。接近戦には弱いはず。

両腕のガトリングが凄まじい勢いで発射され、次々に木々を薙ぎ倒し、地面に小さなクレーターを作り上げる。改めてその威力に驚きつつ、反撃としてマシンガンに変更して、リロードまでの80発を一気に撃つ。が、魔力に対する防御力が高いのか、それとも純粋に硬いのか、マシンガンの瞬間火力が全く通ってない。

銃が効かないのなら、接近してブレードで叩き斬ってやる。幸い、あれは真横や真後ろなどには弱いのか旋回速度が遅い。巨大兵器の周りをぐるぐる回りつつ、少しづつ接近して行く。

ある程度接近したら、火力不足で使えなかったブラック・ホークの銃を解除、バリアジャケットを一部変形させブースターを起動する。QBのような負荷の大きいものではなく、ただ前方に推力を発生させるだけだが、加速としては充分だ。

ブレードを展開し、非殺傷設定を解除、魔力を流し込み出力を上昇させる。

薄紫だった刀身が黒く染まっていく。

 

ブラックムーンライトと名付けたこのモードは、人相手には絶対に使えない代物だ。防御特化の魔導師相手にも、防御の上から平気で真っ二つにすることができるほどの高火力を叩き出す。

 

何とか銃弾の雨を掻い潜り、ブレードの範囲まで接近した。ブースターを停止させ、跳びあがる。そして、こちらに向いているガトリングに向かって、ブレードを振り抜く。何の抵抗もなく、あっさりと斬り裂いた。

 

やっぱり、これなら通る…!

 

どうにか突破口を見つけたが、巨大兵器の周りに緑色の魔力が集まっているのが見えた。その現象に見覚えがあった。

まずいと判断するよりも早く、ブースターを起動し最大加速でその場から退避する。

集まっていく魔力が限界まで収束され、膨大な魔力が一気に放出された。

 

轟音、視界を一瞬で光が包み込み、それが晴れた時には……

 

 

何も残っていなかった。

森多き場所だったそこは、一瞬で地面を大きく削るクレーターが作られていた……。

 

「……とんでもないな。広域殲滅の度を超えてるぞ……」

 

かろうじて、爆発の範囲から逃れた俺は、チカチカと点滅する視界を忘れて、再度作戦を立てていた。

あの爆発がある限りは、下手に接近するのは危険すぎる。一番安全に仕留めるには、あれの範囲外から高威力の攻撃を放つことだが、ガトリングが片方残っている以上、距離をとれば蜂の巣にされる。遠距離高火力攻撃はあるにはあるが、あれはチャージ時間が長い。

ならば、動きを止めたうえでその攻撃を叩き込んでやろう。

 

 

 

 

 

 

巨大兵器は、爆発の衝撃でしばらく動けなくなっていたが、それも終わる。

周囲を見渡すと、相対していた敵の姿が見当たらない。

 

「俺を、お探しかな?」

 

声がする。その方向には、不敵な笑みを浮かべる銀髪の男が。

内臓されたAIは、男を放置すると危険だと判断し、ガトリングを乱射しつつ接近して行く。

アレックスは、跳躍しながら森方向へと後退していきく。この時、この機体に人が乗っていたら彼の行動に不信感を抱き、追跡を止めたかもしれない。

 

 

 

作戦通りだ。馬鹿正直にあの巨大兵器はこちらに来てくれる。

そこにトラップが有るとも知らずに。

誘導場所まで巨大兵器を導いた俺は後退するのをやめ、左手を、巨大兵器の真下に向ける。

 

「爆ぜろッ‼」

 

叫びと共に、地面に埋め込んでいた機雷型を一斉に爆発させる。地面に大きく穴が開き、巨大兵器を吸い込んでいく。穴の広さこそあの機械と同じくらいだが、とにかく深い。

機体は傾き、ガトリングが真上に向いている。下手に先ほどの爆発を使おうものなら、自分ごと地中に埋まるかくごが必要だ。

右手でチャージし続けた、三つの銃口が取り付けられたハンドガンを巨大兵器に向ける。

 

「これが俺の、全力全開ッ‼|破壊天使砲(デストロイエンジェル・ブレイカー)‼」

 

発射される、三つの砲撃。かの、エースオブエースの砲撃魔法に劣らないと言われたこともあるこの魔法を至近距離で放ったのだ。

巨大兵器は、その様相を大きく変化させていた。両腕が消し飛び、首の位置には大きく穿たれた風穴が空いていた。

そして八神からの通信で、ミッションが無事に完了されたことが知らされた。

 

「ミッション完了か……。ハードな初任務だったな」

 

バリアジャケットを解除し、疲れきった体を休めるために近くの木にもたれ掛かり、回収班を待った―――。




結局、ヒロインは出てきませんでしたね。シュテルファンの皆さんには申し訳ないのですが、もう少し待って下さい。

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