魔法少女リリカルなのは 黒い鳥、星光とともに 作:如月シュウ
模擬戦終了後、俺は六課の食堂で昼食を食べていた。何故、こんなことになったかというと……。
『立ち話もあれだし、時間もちょうどいいから食堂で話そっか』
という、高町の提案でこうなった。
「それにしても、凄いよね。私だってフェイトちゃん相手には勝率五割くらいなのに」
と、何故か隣にいる高町。さらに、俺の正面にはテスタロッサと八神が昼食を食べていた。何故だ。
というか高町よ。勝率五割は充分だと思うが。
「正直、期待以上の実力やわぁ。これなら、フォワードメンバーに任せるには早い任務も任せられるな!」
もともと、そのために来たのだが。仕事があるのはありがたいが、あまりたくさん持ってこられると、こちらの身が持たない。
「そういえば、最後に使った瞬間的な加速。あれは何だったの?」
と、これはテスタロッサ。
確かに、あんな変態機動をする奴はなかなかいないだろう。というか、俺以外見たこと無い。
「あぁ、あれは飛行魔法の応用だ」
飛行魔法には、二つの力が必要だ。
一つめは、浮力。地上から、空中へ飛び立つための力だ。飛行中は、この浮力に魔力を使うことになる。
二つめは、推力。前後左右に進むための力で、応用したのもこの推力である。本来の飛行魔法は、浮力をつかって滞空しつつ、推力で進むという使い方をするため、魔力を放出し続けるのだが、先の模擬戦で使ったあれは、魔力放出と言うよりは、魔力爆発に近い。魔力を、リンカーコアから一瞬だけ大量に放出することで、驚異的な推力を得ることができる。
ということを、かいつまんで説明した。
「――ということで、俺はこの技術を
「クイックブーストかぁ。でもそれって、結構危険なんじゃ……」
「その通り。一回使っただけで相当な負荷が掛かるし、そもそも魔力運用に長けているならこんなことしなくても、十分なスピードで動き回れる。だがまぁ、生憎『粗製』の身でね。これくらいしないと、対抗出来ないんだ」
「でも、相当な負荷が掛かるって、大丈夫なの?」
なんというか……相当お人好しな奴らである。特にテスタロッサ。今も、会って間もない男相手(まぁ、俺なんだが)に対して、心配そうな表情を向けてきている。
正直、新鮮だ。職業柄、貶されたり、蔑まれたりすることはあっても、心配されるというのは無い。
テスタロッサが美人なのも相まって、ほんの少し頬が紅潮する。それを隠すように顔をそらして、口を開く。
「心配しなくても模擬戦で使ったのは、かなり出力を抑えて使ったから、体に異常は無い」
少しだけ、頭が痛む程度だ。
「そっか。良かった」
安心したように、テスタロッサは微笑んだ。
そこからは他愛もない話になり、特筆することなく昼食を終えた。
昼食後、やることがなくなった俺は、デバイスを軽くメンテナンスして、割り当てられた部屋に荷物を置いていた。
その後六課の内部を見回っていると、テスタロッサ率いるライトニング部隊の副隊長、八神シグナムという女性に出会い、暇なら訓練を見に行かないかと誘われた。
次回は、初任務となります。