魔法少女リリカルなのは 黒い鳥、星光とともに   作:如月シュウ

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プロローグ

朝――

相変わらず耳障りな目覚ましの音が、耳に届き嫌でも目覚めの時を知らせてくる。

 

「うるさい、止まれ……」

 

俺は、仕方なく布団から抜け出し、机の上でガタガタと振動していた目覚まし時計を叩きつけるようにして止める。それと同時に大きくため息をついた。

時計の短針は7を示している。

どうも、朝と言うものは苦手だ。こんな社会基盤を作ったやつを恨んでやると今ここで固く誓った。

 

「ま、何はともあれ朝御飯だ」

 

とはいえ、料理の腕は、壊滅的であるから、必然的にインスタントのものになる。

さて、時間ができたことだし、自己紹介でもするとしよう。俺の名前は、アレックス・オーンスタイン、現在22歳独り暮らしの少年である。趣味は読書、特技は射撃。職業は、金を貰って様々な仕事をこなす傭兵だ。

 

「しかし、新部隊への助力ね……あいつも何を考えているのやら」

 

昨日、久しぶりに旧友が連絡をしてきたと思ったら、内容が、

 

『久しぶりだね。最後に会ったのは2年前になるな。早速だけど用件を話す。実は、僕の知り合いが新部隊を設立することになった。君にはその部隊の補佐官兼切り札として支えてほしいんだ。詳しい話は明日あって話すよ』

 

というものだった。相変わらず遊びのない真面目なやつである。まぁ、そこがあいつの美点なのだが。

集合場所は行きつけのカフェで、時間は昼過ぎなので大分時間がある。どうせ、今日は休みなのでのんびりしよう。

 

 

 

 

 

旧友との待ち合わせ場所に行くと、ホロウィンドウをいくつか展開し、片手にコーヒー(砂糖なし、ミルクなしのブラック)を持ち、もう片方でキーボードを打つ旧友の姿があった。

 

「こんなときでも、仕事とは……相変わらず真面目だな、クロノ」

 

クロノ・ハラオウン、我が旧友にして、十分に信頼できる人物だ。現在は、大型次元艦の若き提督の座に就いている。

 

「空いた時間に片付けてしまわないと、終わらないんだ。それより、久し振りだな、ジャック。」

 

苦笑しつつ、ホロウィンドウを閉じてこちらに向き直る。クロノの表情は、凛としたお仕事モードに切り替わっており、ここには一人の友人としてではなく、時空管理局所属クロノ・ハラオウン提督としてきたことがわかる。

 

「あぁ、久しぶり…ゆっくり話したいところではあるが、時間もないんだろう?手早く済ませよう」

 

「そうだな、じゃあ、本題にはいる。今回、君に出向してもらう部隊は、古代遺物管理部機動六課。部隊長は、八神はやて三等陸佐。現在、入隊が確定している人物は、高町なのは一等空尉、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン執務官。三人とも、名前くらいは聞いたことがあるだろう」

 

クロノの言葉に、頷く。

方や、管理局のエースオブエースと呼ばれていて、高火力が売りの砲撃魔導士で、若きエースである。……余談だが、一部の犯罪者のなかでは、『管理局の白い悪魔』という二つ名で、呼んでいる奴も居るらしいが、真相や如何に。

もう片方は、執務官という一級の危険任務を任される地位に就いており、そこからその実力はうかがえる。遠中近あらゆる距離に対応するオールラウンダーで、特筆すべきは彼女のスピードだ。聞いた話によると、最高で亜光速まで達するらしい。…こちらも余談だが、彼女は『金色の死神』と、呼ばれているらしい。

前者二人に埋もれがちだが、八神はやては広域殲滅型の魔導士で、三人のなかでは佐官クラスまで上り詰めている。更に、ヴォルケンリッターという個人戦力を保持しており、全員がニアSランクの実力者だ。…またまた余談だが、一部の管理局員から狸と呼ばれているらしい。

 

閑話休題

 

「ずいぶんと過剰戦力だな、この部隊の本当の目的は?まさか、名前通りじゃないんだろ」

 

「察しがいいな、その通りだ。聖堂教会の騎士カリムを知っているか?この部隊が創られたのは、彼女の能力が大きく関わっている。彼女は、最短で半年、最長で三年先までの未来を見通すというものなんだ。そしてその予言に数年前からある事件が書き出されている。ロストロギア、レリックとそれに関わる事件。その事件が起こることによって、現在ある管理局システムの崩壊、そんなことを指示しているというのが、僕と騎士カリムの共通見解だ」

 

なるほど。大方、管理局地上本部の動きが遅いから有事の際に独自に動ける部隊をつくってしまおうということか。だが、疑問も残る。些か、過剰戦力過ぎやしないか。自慢じゃないが、俺はAAランクの魔導師だ。もともとのメンバーですらオーバーSランクが三人、この時点ですでにおかしい。

 

「クロノ、その隊に俺が行く必要はあるのか?正直なところ、今聞いただけでも過剰戦力だと思うし、俺が入ったところで、手出しする余地はないと思うが」

 

念には念をということならわからなくもないが……。

 

「表だっての戦力であれば十分だろう。僕が頼みたいのは、より危険な単独任務だ。現在、この隊にはそういった任務に割ける人材がない。ゆえに、単独行動のプロフェッショナルである君に頼みたいんだ」

 

なるほど、実に俺向きの仕事ということか。

確かに、俺の立場上単独行動が多くなるし、その分危険も多くなる。こんなところで、貴重な人材を失いたくないのだろう。ならば、当て馬として使えるやつに押し付けてしまおうということだ。要するにスケープゴートか。

 

――皮肉げに笑う。いいさ、管理局が何を考えていても、その陰謀ごとぶち壊してやろう。

 

目の前の男はともかく、性根の腐った上層部の連中の思い通りになぞ動いてやるものか。

 

「いいぜ、その依頼受けてやるよ。お前の持ってきた依頼は、傭兵定番のアレは無いし、何より面白そうだ」

 

「―!受けてくれるか、助かるよ。こちらとしても、君以外に当ては無かったんだ。詳しい情報は後日、書類にまとめておくよ」

 

管理局システムがなければ、クラナガンが、ひいてはミッドチルダそのものが危険にさらされることになる。

つまりは、世界の危機といったところだ。

全く持って柄ではないが、この地は約束の場所なのだ。ならばせめて、再会の時までここの平和を守るとしよう。

 

新たな部隊と、迫り来る危機に密かにキミニタノミタイル口元を歪めた―。


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