「取り敢えず動物保健所に電話するか」
家の固定電話で保健所に電話、プルルル、プルルル。
もしもしこちら動物保健所の○○ですと営業ではよく使われる言葉が第一声がそれだった。
「もしもし保健所の方ですか、ウチにデカイ兎が居るんですひきtぐっは!?」
何者かに殴られ反射的に受身を取り態勢を立て直す。
当然その何者かといったら俺が気絶させてしまった変人兎しかありえない。
「お前人間を動物保健所に引き渡そうとか頭沸いてんじゃねぇの!」
底に立って居たのはそうISを作った天災、篠ノ之束だった。
「え?だってうさ耳付いてるし」
「何でうさ耳付いてるだけで動物だと思うんだよ本当馬鹿じゃないの?」
ごもっともである、もし此処に束の知り合いが居たら感動するんじゃないだろうか。
感動するかは知らないが。
「仕方ねぇなほれ人参だ、食え」
「......」
綺麗に無視された。
ピッコ○の、仙豆だ食えを思い出してしまうが心の中にしまっておこう。
「てかさ、何でウチの鍵穴弄ってたの?」
「は?束さんが何でお前なんかに教えなきゃいけないの?」
「あ―ハイハイ、んで同じ質問だけどさ」
「......」
「何で君、内の家の鍵閉めようとしてんの?やめてくれない?家の鍵穴壊れてるんだよねそれを無闇に弄って閉まったらどうしてくれんの?俺が遊びに帰って来たらさ何故か鍵穴ぶっ壊れてたんだよ、家に入れないからわざわざ二階に登って開けたんだよ。それを君、もし出掛けてる時に鍵閉まったらどうしてくれんの?ねぇ?」
まさか鍵を開けようとしてたのに閉めていたとは思いもよらなかった。
夜中なら普通、どの家も鍵をかけるだろうが、ここの主は違う。
鍵穴がたとえ壊れてなくても常に開けている。
そこにクッソ下らない理由があるとしても。
束は何かを思い出した様にキレ気味で喋っていく。
「お前こそ束さんの動画消せよ!」
「お断りします、あれ俺の収入源なんで」
「いいから消せ石ころ!」
田中は考える。
この兎をどうするか。
別に消してもいいんだけどさ、俺の収入消えるしなぁ....替わりに稼いで貰うか?
いや、無理だな。
自分から喧嘩を売っている奴にバイトをやらせてみろ、すぐにクビにされてしまう。
あ、そうだ(ヒラメキ)
「じゃあ交換条件な」
「何で束さんが石ころと交換条件しないといけないのさ」
「じゃあ動画件無しな」
「........分かった、その条件は」
「俺にネタをくれ、ネタをくれれば動画も消すし此処に住んでもいいし、住まなくてもどっちでもいいよ。でも働けよ」
「もうそれでいいよ....」
「契約成立な、じゃあこれにサインしてくれ」
条件からいつの間にか契約に変わっているのは気にしてはいけない。
何故か疲れ果てた束は、田中から渡された紙とペンを貰い篠ノ之束とサインした。
その紙には虫メガネで見ないと分からない文字が書いてあった。
「一緒にゲームとかニコ生やろうね」と
「じゃあ僕寝るんでお休み、部屋は二階に使ってない所あるからそこ使って」
「......」
そう言い田中はリビングから出て行き束だけが残された。
何で私此処に来たんだろうという後悔しかなった。
自分を使って動画を作るのはまだいいとして、動画の最後だけが許せなかったのだ。
「はたして篠ノ之束は結婚出来るのだろうか?」と文字でデカデカと書かれててコメントも「※出来ません」と書かれたら誰だって怒るだろう。
怒りに身を任せてみればこんなザマだ。
兎に角今日は疲れたから寝よう名も知らぬ家主に使っていいよと言われたし。
リビングから出て二階に上がると、篠ノ之束と書かれたプレートが扉にかけてあるからそこが自分の部屋だろう。
扉を開け、閉めてベッドがある方へダイブした。
ベットはふかふかでもふもふだった。
この感触で寝られるのが久しぶりで気持ちよかった、いつも椅子で寝ていたせいだろう。
自然と睡魔が襲ってきて意識が落ちる。
現在は7時04分、朝だ。
リビングで昨日の残り物を食ってる田中。
束はまだ寝ている。
夜中変な事あったなぁと思いふけながら携帯でニコニコに投稿した動画を消し、食うのを再開するが手を止める。
あの兎着替えどうすんだ?
手ぶらで来てたみたいだし一応母親の服置いとくけど着るか分からんし、まぁいいか。
後紙も書いておこう。
やべ、そろそろ家出ないとマズイ。
紙にこれからどうするのかと色々書き、リビングから出て母の部屋から着替えを適当に取り、束の部屋の扉の前に置き、自分の部屋の窓から降りて学校へ登校。
登校してる時に飯食うの忘れた......と思い出すが時既に遅し。
「ん....」
目が覚め、起き上がるが自分のラボじゃない事を思い出す。
部屋の周りを見渡して見る。
本がギッシリと有る棚や机に一つ置かれてるノートパソコン、それからタンス。
実家の自分の部屋とあんまりかわらない。
強いて言えば自分の下着とか服が散らかってない事だろう。
取り敢えずこの部屋を出る事にした。
扉を開けて出てみると、服と何かを書いた紙が置いてあった。
服の上に置いてある紙を手に取り読んでみる。
保健所に送る兎へ
約束通り動画は消しました。
そこに置いてある服は着ても着なくてもどっちでいいですお好きなように。
後、お風呂を入る事をオススメします。
夜中話した様に此処に住んでもいいし住まなくてもどっちでもいいです。
この話は貴方にとって好条件じゃないでしょうか?
逃亡中なんでしょう?
もし此処に住んでばれたら如何するのかって?
ガレージにあるジャマーとEMPを使ってまた逃亡でもして下さい。
何故あるかと言われても友人が試しに作ったとしか言えません。
田中龍より。
紙を折り畳みポケットに入れる。
保健所に送る兎へ、が無性にイラっとしたが、こちらとしては有難い。
毎回ラボが潰されて新しく作るのが非常に面倒臭いから。
家主の名前が分かったし石ころから、凡人に上げてやろう。
紙に書いてあった風呂入れとあったし風呂を入る事にしよう、服も使っていいよと許可が出てるし。
風呂も入ったし、あの凡人の部屋にでも行こう。
PCの中を弄ってやろう、あの時の仕返しに。
そんな事を考えながら田中の部屋に入る。
机にはモニターが4個とスピーカー2個があり、ゲーム機が置いてある。
後は三味線とベース、キーボードとUSB箱とよく分からない物まであった。
取り敢えず目的のPCの電源を入れると......
フタエノ○ワミアッ―!と大音量でスピーカーから流れ出し咄嗟に耳を塞ぐ。
「(こんなのが起動音とか馬鹿じゃないの!?)」
耳を塞ぎながら画面を見てみると謎人物が回りながら少々お待ち下さいとフキダシが表示されていた。
パスワードは無いみたいだ。
キーボードを高速で打ち、謎のプログラムとソフトを開発し、適当にデクスにあるファイルにぶち込む。
試しにISの設計図をPCに入れたらあの凡人は驚くだろうかと好奇心が擽る。
カチカチとマウスを動かし面白そうな物はないか探していると懐かしいソフトを発見。
マリ○シーケンサとコンポーサだ、昔私の学校で流行ってた物だったが誰も使えなくてそのブームは一瞬で消えて行ったとしか覚えていない。
ソフトを起動させ、完成されてるファイルから読み込ませて再生する。
そんな事を田中が帰ってくるまで続いた。
ベランダから入って来た田中に驚き、お前何やってんのと聞かれたが別にと答え、すぐに自分の部屋?に逃げて来た。
本当に今更だが全く知らない人と喋るのが久しぶりでつい逃げてしまった。
ち―ちゃん、箒ちゃん、いっくん以外にまともに喋った事が無い私には知らない奴と普通の会話など無理だ。
攻撃的に喋ってしまう事が目に見える。
待て、そもそも何故話す事を前提で考えてるんだ?私は。
頭の中で自問自答を繰り返している時に扉をノックする音が聞こえた。
「飯出来たから下りて来い」
「.......」
「食わないんだったら冷蔵庫にしまうから自分で食えよ」
そう言い残し消えて行った。
お腹がぎゅ―と鳴り仕方なくそう仕方なくご飯を食いに行くのだ。
心中でこんな生活も悪くないと思う自分がいた。
まさかのホームステイする束さんはこれからどうなるのか?そして何処で働くのだろうか?それともガチNEETするのだろうか?
ハッピーバーステー誰かさんおめでとう。