今回はアニメ第三話をベースにしております!
最後が結構ドキドキする展開なので読んでみてください('ω')
文時さん、評価ありがとうございました!
それではどうぞ~!
「ギターの弦って怖いよね、細くて硬いから指切っちゃいそう」
シャンシャンとギターの音色を奏でる音がする。
唯だ。
音楽準備室には律、澪がいた。
ムギは遅れてくるそうだ。
ギターを弾く唯を見つめる。
唯はギターを購入してから、かれこれ一ヶ月が経った。
あまり大きな成長を感じることは出来ないものの、着実に上手くなっているのは確かだ。
「唯、弾き続けてれば指の先が段々と硬くなっていくからそれは大丈夫だ」
「へ~相馬くんは指硬いの?」
「いや、俺はもうやってないからフニフニだよ」
「ほんとだ~!フニフニ~!」
俺の手の先を触る彼女。
なんていうか・・・恥ずかしい。
「コードどんくらい覚えた?」
「うーんとね・・・CとD!」
「他には?」
「忘れちゃった~」
えへへ、と舌を出して笑う彼女。
一ヶ月やって二つのコードしか覚えていないとか逆に有り得るのだろうか。
「あのなぁ・・・」
だが。
彼女はさりげなく練習曲などをサラリと弾けているのを知っている。
ひょっとして彼女はコードを覚えるうんぬんではなく、感覚で弾いているのでは・・・と。
実は天才肌だったりする彼女が怖い。
努力家のタイプである俺からすると凄く羨ましいものだ。
「相変わらずチャルメラは弾けるんだな・・・」
「いえいっ!」
「おーい、お二人さーん」
律が遠くから叫ぶ。
「明日からテストだから今日は早めに解散するぞ~!」
え。
「え。」
今、俺の心の声がそのまんま隣から聞こえた気がするんだけど。
ふと隣を見ると青ざめた唯がいた。
「そんなこと言って律~、お前私に勉強教わりたいだけだろ~?」
半分呆れながらに澪。
「ち、違うもん・・・!」
と言いながら小声でウインクする律。
俺も教わりたいんだけども・・・カッコ悪くて言えないよなぁ・・・。
まぁ授業は聞いてるし、暗記教科だけしっかりやっとけば大丈夫だろ。
なんやかんやで強制的に部活は終了となった。
ムギは残念がってたが、あなた勉強出来るんでしょどーせ。
今日は寝れないな・・・。
大きくため息を吐いた。
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あれから数日が経過した。
ようやくテストから解放され、しばらくは終業式までは休みになる。
そんなわけで今日はテスト返しであった。
放課後、軽音部は音楽準備室に集まる。
「んーー!やっとテストから解放されたぁ~!!」
「長かったな」
「中学とは違って勉強も難しくなったから大変だったわね」
大きく伸びをする律と一息つく澪とムギ。
そして・・・。
「色々な意味で大変そうなやつが此処に・・・」
アッハッハッハと無気力な笑みを浮かべる唯ちゃん。
俺は唯の前の席だったから知っている。
コイツ、答案が白紙に近い状態だった。特に数学が。
「クラスでただ一人・・・追試だそうです・・・」
「うわぁ・・・」
「今回は勉強方法が悪かっただけだって!ちゃんとやれば余裕余裕!」
「勉強は全くしてなかったけど・・・」
「私の励ましを返せェ!!」
俺はどうにか平均点を取り、セーフ。
唯もなんだかんだやる奴だと思っていたが、まさか追試だとは・・・。
「追試はいつだ?」
「四日後!」
「割と早いな。補講とかあるんじゃないの?」
「多分・・・」
「しっかりやりなさい・・・」
「そういうりっちゃんは何点だったのさ!!」
憤慨する唯。
だが、律は余裕の表情を見せる。
「余裕ですよ!この通り!!!」
「な、なに!」
思わず声が出てしまう。
コイツ・・・87点も取ってやがってるだと・・・!?
澪の教え方が上手いのか・・・!
「テスト前日に私に泣きついてきたのは、どこのどいつだ~?」
ツンツンと律を突きながら薄笑いを浮かべる。
「私です、ごめんなさい」
「よかろう」
「それでこそ、りっちゃんだよ」
「赤点取った奴に言われたくねぇ!」
本当にその通りだよ、唯。
「しっかりやれよ!勉強!唯がいないと練習出来ないんだからな!」
「ふんす!みんなの為にも私・・・頑張るッ!」
澪が尻を叩いてくれたからいいものの・・・。
本当に大丈夫なんだろうか・・・。
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「澪ちゃん~~、助けてぇ~~・・・」
今日の軽音部はそんな一言から始まった。
まぁ、大体予想はついていましたね。
「え、勉強したんじゃないの・・・?」
困惑な表情を浮かべる澪。
まぁ仕方ないだろう。
「出来なかった・・・」
唯は半泣き状態だ。
勉強をやろうとしてもギターを触ってしまったらしい。
「じゃあ・・・今日は特訓だな!」
「え?」
「徹夜で勉強!」
「おお!いいね!」
何故かそれに乗ってくる律、唯。
唯ちゃん、空気読んで。
「やりましょう!?」
ムギもやる気満々だった。お嬢様ってお泊り会とかしたことないのかな。
「肝心な宿だけど、どうする?」
「うーん、私は今日お母さんお父さんいるからダメだぁ」
「ムギは?」
「私のお家・・・前々から予約を取ってないとダメなの・・・本当にごめんなさい・・・」
「あ、いいよ全然っ」
予約って・・・すげぇな。
「律の部屋は汚いから無いとして、私もパパとママいるからな・・・いきなりは・・・」
「ちょっーと!どういう事だよ!」
ムッとした表情で澪に怒る律。
返り討ちにあうよ、やめときなさい。
「・・・となると」
あー、嫌な予感。
「相馬ん家はダメそうか?」
「一人暮らしだし別にいいけど・・・」
「一人暮らしなの!?どうして!?」
律がグイグイ聞いてくる。
「色々事情がありまして・・・」
「へ~!じゃあ相馬ん家でいいね!」
「賛成ですわ!」
「さんせーい!」
「あ、うん・・・」
反論するまでもなく、決定してしまいました。
家片付けといて良かった~。
となれば、皆は一斉に支度を始め、俺ん家に向かい始める。
心なしかみんなウキウキしてる。
確かに一人暮らしって親の目もないし、憧れを持ったりもするよな。
そういう・・・もんだよな。
家に着く。
「おじゃましま~す!!」
四人で一斉に部屋に上がり込む。
入学前、誰がここに女の子四人を連れ込むなんて想像出来ただろうか。
全部唯と出会ったからだよな。
出会いって不思議だ。
「唯!さぁ家宅捜索だッ!!」
「ラジャッ!!」
「え?」
「テーブルの下!本棚の奥!ベッドの下!探せェ!」
「お前らな・・・」
いきなり家宅捜索される。
これってキレてもいいのかな?
エロ本でも探そうってか・・・?
「隊長!どこにもありません!」
「うむ・・・なかなか敵は手強いな・・・」
「何をしてんだッ!!」
澪にゲンコツを喰らうりっちゃん。
見てるだけで痛々しい。
「うぅ~・・・なんであたしだけぇ・・・」
「さぁ、唯。やるよッ!」
澪はゴムで髪を一つに縛ると、教科書を開く。
本当に先生みたいだな。
「じゃあいい?ここはね・・・」
こうして地獄の特訓が始まった―――。
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「―――ッ」
ハッと目覚める。
あれから六時間以上経過しただろうか。
みんなで夕食を食べて、また勉強して・・・。
途中から一切記憶がない。
つい俺はウトウトして寝てしまったのか。
しかもベッドで。
あー、やってしまった。
寝息があらゆるところから聞こえる。
「ぇ、―――ッ!?」
何かよく分からないが、言葉にならない現象が俺に起きていた。
この状況を整理するのに三分はかかったかもしれない。
簡潔に言うならば、目の前に唯の顔があった。
目を閉じてスヤスヤと寝ている。
起きる気配は全くない。
時計が目に入る。
まだ午前の六時頃であった。
思わず顔を背けようと体を動かそうとするが、それは叶わない。
唯の手が俺の首に回っているからだ。
冷静になれ尾形・・・!
お前はやれば出来る子だ・・・!
改めて思うが、この子は可愛い。
自分で気づいていないかもしれないが、本当に可愛らしいと思う。
こんな至近距離で女子の顔を見たことなどなかったので、かなり焦る。
あぁ、神よ。
俺に力を―――。
長いまつ毛、妖艶な顔立ち、そして小さな唇から出る小さな寝息。
これらがこんな至近距離にあるのは良くない。
非常に良くない。
健全な男子青年だったら皆思う事だ。
ど、どうする―――。
とりあえず周りのみんなが起きないうちに手をこの状況をどうにかしなければ・・・!
だが、そんな俺の願いも空しく砕ける。
俺は世界中が停電になったかのような感覚を覚えた。
「―――ん。―――あ、おはよう相馬くん―――」
それは余りにも突然に―――。