けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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大変、大変お待たせ致しました!!
約四か月ほど間が空いてしまいましたが、やっと更新することが出来ました!
お待ちして頂いた方、本当に申し訳ございません。

今回は遂にライブ編へ突入します!!
是非"ふでペン・ボールペン"を大音量で聞きながら読んでください!!

当時のファンなら、涙が溢れてくるはずですよ!!(笑)


感想などドシドシ送ってくださいね~!!
それではどうぞ!!



#32 軽音!

いつも頑張る君の横顔

 

 

 

 

 

 

ずっと見てても気付かないよね

 

 

 

 

 

 

夢の中なら二人の距離

 

 

 

 

 

 

縮められるのにな

 

 

 

 

 

 

あぁ、神様お願い

 

 

 

 

 

 

二人だけの

 

 

 

 

 

 

Derem Time下さい

 

 

 

 

 

 

お気に入りのうさちゃん抱いて

 

 

 

 

 

 

今夜もおやすみ

 

 

 

 

 

 

**********************************

 

 

 

騒がしい講堂。

 

 

観衆のざわめき。

 

 

そんな中へと足を踏み入れる。

 

 

今、自分の中で加速していく緊張感。

唯達はこんな緊張感の中で戦っていたのか……。

改めてだけど口では何とでも言えるな、と自嘲する。

あれだけ澪を励ましてきたのも、このプレッシャーを知っていたら口にすら出来なかっただろう。

 

でも、分かっている。

緊張しているのは、ライブだけのせいじゃないってことを。

瞼裏にに蘇る一人の女性の笑顔。

 

 

遂にだけど。

 

 

仮にだけど。

 

 

非常に間接的だけど。

 

 

俺は彼女に自分の気持ちを伝えてしまった。

 

 

そのことが俺の中で異常事態の鐘を鳴り響かせていた。

胸が今にも張り裂けそうなくらい大きく高鳴り、手も震えていた。

自分の思いを告白するってこんなにも大変だったんだ。

これでも俺はまだ逃げている方だ。

まだ直接『好き』と伝えることは出来ていないのだから。

 

 

「相馬、大丈夫か?」

 

 

そんな事を歩きながら考えていると、澪が俺の方へ顔を覗かせていた。

彼女は水色のフワフワ素材の衣装を纏っており、とても可愛かった。

 

「あ、あぁ。大丈夫だよ。」

「確かに急に演奏することになったからな……。大変だと思うけど……。」

「まぁ唯の事だ、こんなこともあろうかと、しっかり練習は積んできたさ。」

「さっすが相馬!」

 

彼女もテンションが上がっているのか、俺の腕をその綺麗な手でちょん、と突いた。

満面の笑みで微笑む彼女。

そうだ、澪はこれでもベテランの域だ。

もう講堂でのライブは3回目だし、どのように段取りを進めていけば大丈夫なのかを熟知している。

澪だけじゃない。

他の皆もそうだ。

梓はガッチガチのガチガチで表情が強張っていたが、律やムギは楽しそうに世間話を楽しんでいた。

本当に頼もしい連中だ。

いざ自分が演奏する側になると分かる。

 

そしてこれも分かっている。

 

 

 

 

 

俺は「放課後ティータイム・リードギター担当・平沢唯」の代わりを務めることなんて出来ない、ことを。

 

 

 

 

 

リードギター、平沢唯。

リズムギター、中野梓。

ベース、秋山澪。

キーボード、琴吹紬。

ドラム、田井中律。

 

この五人が揃うことこそが、放課後ティータイムなのだ。

異論は一切認めない。

否。

認めることが出来ない。

 

俺は一年半、放課後ティータイムが結成した時から彼女達を知っている。

そして、ずっと彼女達が織りなす音楽の世界を聞き続けている。

だからこそ、分かる。

誰かに、この五人の代わりを務めることなんて出来るわけがない。

五人が揃ってこその放課後ティータイムだ。

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

 

 

だからこそ、俺はこのバンドのファンなんだ。

 

 

 

 

だから頼む、唯。

早くこの会場に戻ってきてくれ。

俺がやる放課後ティータイムは全くの別物の演奏になる。

君が入ることで放課後ティータイムは完成するんだよ。

頼む……。

君の大きすぎる存在に、俺は代わりを務めきる努力は精一杯するから……。

だから―――。

 

「みんな、頑張るのよー!」

 

そこでなんとさわ子先生が登場。

こういう時は顧問が頼りになる。

 

「急遽作った男の子用の衣装もなかなかね!似合うわよ~!」

「ほぼスーツじゃないすか……」

「かっこいいわよ~!ね、みんな!」

「まぁ、相馬にしてはなかなかキマってるんじゃないの~?」

「かっこいいわ~、相馬くん!」

「はい!カッコイイですよ先輩!」

「う……うん。か、かっこいいな……うん。」

「だって尾形くん!良かったわね!」

「あ、ありがとう。お前等も最高に可愛いぜ、ベイベー」

「それはキモイよ」

「なんでだよ……」

 

そんないつも通りの茶番で、いつの間にか少し緊張が解けていたのが分かる。

流石だ……。

さわ子先生ありがとう。

 

「緊張してるのか? 相馬?」

「あぁ……、していないと言えば真っ赤過ぎる嘘になるな。」

 

 

 

「嘘かぁ~。」

 

 

 

「ん、どうした?」

「ううん、なんでもない!」

「澪の方こそ、緊張してるんじゃねーのか?」

「してるよ。」

「やけに素直だな……。」

 

 

 

 

「私はこのライブ、歌、歌詞に全部の想いを掛けてるから―――――!」

 

 

 

 

やけに、この言葉は俺の琴線に触れた。

何故かは分からない。

その澪の見たこともない、真っすぐな瞳と何かを成し遂げようとする意気込んだ表情のせいなのかもしれない。

頬はほんのりとピンク色に染まり、うっすらと額に浮かべる汗。

彼女もやる気に満ち溢れてるってことか。

一瞬だが、律と視線が合う。

律は何を言う訳でもなく、コクリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は唯に自分の気持ちを打ち明けたのと同様に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澪にもこの気持ちを打ち明けなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澪含む、今この場にいる五人が成し遂げようとするライブが始まろうとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時に「軽音部『放課後ティータイム』より、バンド演奏です」というアナウンスが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな歓声と共に舞台の幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今はいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブが成功したら言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それまでいい――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからいい―――――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!!!行くぞ!!!放課後ティータイム!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************************

 

 

 

 

 

 

 

 

ふでペンFUFU

 

 

震えるFUFU

 

 

初めて君への

 

 

GREETING CARD

 

 

ときめきPASSION

 

 

溢れてACTION

 

 

はみだしちゃうかもね

 

 

 

 

 

 

 

 

"そういえば入学式の時もこの道を走った"

 

 

 

 

 

 

 

 

君の笑顔想像して

 

いいとこ見せたくなるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

"何かしなきゃ、って思いながら"

 

 

 

 

 

 

 

 

情熱を握りしめ

 

 

 

 

 

 

 

 

"何をすればいいんだろう、って思いながら"

 

 

 

 

 

 

 

 

振り向かせなきゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

"このまま大人になっちゃうのかな、って思いながら"

 

 

 

 

 

 

 

 

愛を込めてスラスラとね

 

 

さぁ書き出そう

 

 

受け取った君に

 

 

幸せが繋がるように

 

 

走る軌跡キラキラだね

 

 

そう乾くまで

 

 

待っててふでぺん

 

 

ごめんねボールペンはおやすみしてて

 

 

かなり本気よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ねぇ、私。"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"あの頃の私、心配しなくていいよ"

 

 

 

 

 

 

 

 

"すぐ見つかるから"

 

 

 

 

 

 

 

 

"私にも出来ることが……夢中になれることが……大切な、大切な、大切な場所がッ!!!"

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那、勢いよく講堂の戸が開く。

 

 

 

 

 

俺には誰だか、一瞬で理解することができた。

 

 

間違いなく、平沢唯だ。

 

 

「お姉ちゃん!」

「あぁ……!憂!!ピース!」

 

 

満面の笑みで唯は憂にピースすると猛ダッシュで講堂の舞台ステージへ向かう。

その背中にはギー太が背負われている。

なんて頼り甲斐のある姿なんだ。

ふと気付くと、俺の膝は震えていた。

初めてのライブだったからであろうか。

それは分からない。

たった一曲だったけど、俺には一瞬のように過ぎ去った時間だった。

本当に夢のような時間だった。

彼女が創る音楽世界の一部分に携われたことがとても、とても嬉しい気持ちだ。

それと同時に猛烈な達成感と脱力感に襲われる。

まだステージに立つには早すぎたってことかな……。

俺、頑張ったよな……。

俺、唯の代わりに少しでもなれたかな……。

 

 

 

「相馬くん、ありがとう!」

 

 

「唯……俺はもう限界だぜ……?後は頼んだぞ……!」

 

 

「うん!!任せて!!」

 

 

 

彼女は満面の笑みで微笑んだ。

なんて心強いんだ。

たったの四人から始まって、俺が入って、梓が入って。

こんなにも大きくなったんだな。

この大歓声を聞けば分かるさ。

お前等がどれくらい凄いバンドかってこと。

後は頼んだぞ、みんな。

 

唯は一回頷く。

 

そして澪、梓、律、ムギの方へ視線を移し、口を開いた。

 

 

 

「みんな……本当にごめんなさい。よく考えたら、いつもいつもご迷惑を……こんな……こんな大事な時に……」

 

 

 

頬を伝う一筋に涙が見える。

任せて、って言った側から泣くのかよ。

でも唯っぽいっちゃ唯っぽいな。

頑張れよ、唯。

そっと微笑みながら、俺は唯にハンカチを渡すと舞台裏に下がる。

俺の役目は終わった。

舞台裏から降りると、和が席に案内してくれた。

一番前の特等席。

放課後ティータイムが一番よく見える席だ。

 

嬉しかった。

 

ただただ嬉しかった。

 

そんなことを想っていると、唯は涙を拭いながら話し始めた。

 

 

 

 

 

「えっと、改めまして"放課後ティータイム"です!今日は私がギターを忘れたせいで、こんなに遅れてしまいました……ギー太も忘れてごめん。」

 

 

 

 

 

 

「目標は武道館!とか言って、私達の軽音部は始まりました!」

 

 

 

 

 

 

 

俺に脳裏に様々なことが蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆でウチでご飯食べたり、」

 

 

 

 

 

 

 

 

軽音部の皆と初めて話した時のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「毎日部室でお茶を飲んで沢山喋ったり」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムギちゃんの別荘で合宿したり」

 

 

 

 

 

 

 

 

澪と夜に外を歩いたことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相馬くんのバスケの試合を観に行ったり、夏祭り行ったり、」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ、皆の声援があったからあの試合に勝てたんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆でクリスマスパーティーしたり、」

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい、懐かしいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入部してくれる一年生を探したり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わき目も彫らずに練習に打ち込んできた、なんてとても言えないけど、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもここが……今いるこの講堂が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達の武道館です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、俺の心のダムは決壊し、涙腺は崩壊した。

 

なんだ、俺も唯と一緒じゃないか―――――。

 

なんだよ。

 

簡単なことじゃないか。

 

 

 

一瞬だが、唯と視線が合った。

 

 

 

そして律の合図と共に、彼女達が創る伝説のライブが始まった―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後まで思いっきり歌います!!"ふわふわ時間"!!!!」

 

 

 

 




最高の想いと共に―――――。

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