ということで大変お待たせ致しました!!!
やっとこさ、30話目突入・・・!ということで、お気に入り等も215突破致しました。
本当にありがとうございます。
そして、2018年も終わりますね。
皆さまはいかがお過ごしだったでしょうか?
来年こそは更新頻度を更にあげられるように頑張りたいと思います!
さて今回は伏線がチラリチラリ見える回となっております。
原作アニメを見てらっしゃる方は、お分かりになると思います!
次回あたりにライブに突入しますので、どうぞご期待ください!
それではどうぞお楽しみくださいませ!
感想お待ちしております!
メリークリスマス!!
キミの笑顔想像して
いいとこ見せたくなるよ
情熱をにぎりしめ
振り向かせなきゃ
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目覚める。
いつもと変わらぬ、いつもの天井。
上半身を起こし、グルリと周りを見渡す。
いつもと変わらぬ、いつもの部屋。
眩しい朝日が部屋に差し込んでいる。
何故かそれだけで心が満たされるような自分がいた。
身支度を済まし、制服に着替える。
現在の時刻は早朝六時。
まだ早すぎる時間だが、それでもよかった。
体がウズウズして震えが止まらない。
それだけ聞くと風邪の症状だが、それは違う。
今日は"特別な日"。
俺達"放課後ティータイム"が大活躍する日だ。
こんなに心躍る日はないだろう。
楽しみがゆえに、胸が張り裂けそうだ。
別に俺は演奏するわけでもない。
何かする訳でもないが、俺が世界で一番好きなバンドの生演奏を聴けるのだ。
しかも目の前で、講堂で。
それだけで俺は本当に幸せだった。
嬉しかった。
この高校に入学して良かった。
軽音部のみんなと出会えてよかった――――。
そんな満たされた想いが俺の鼓動を高く鳴り響かせていた。
俺は学校に向けて歩き出す。
何故かいつもの通学路が輝いて見える。
人気のない昇降口。
上履きを履き替える毎日。
バッシュがキュッキッと音を立てている。
放課後はそんな感じで。
ずっと騒がしくて。
とりとめもなくて。
慣れた毎日だった。
だけど。
君らがソコにいてくれた。
今はソコにいてくれる。
通学路なのに、まるで学校にいる気分だった。
最初は、唯と出会っていろんなことがあったな―――――。
急に軽音部のメンバーと夕食することになって―――――。
律が俺を軽音部に誘ってくれて―――――。
一年生の夏合宿は、澪と二人きりで外を散歩して―――――。
学祭は俺が風邪引いちゃって―――――。
クリスマスに、みんなでコスプレパーティーしたっけ―――――?
そういや、たまたまムギと買い物中に会ったな―――――。
もう一年くらい前の話か―――――。
新歓があって、梓が入ってきて、新しい軽音部になって――――――。
そして、"今"がある―――――。
とても信じられない軌跡だった。
俺は・・・こんなに充実した高校生活を送れるだなんて思ってもいなかった。
親友を失ってバスケから逃げるように来たこの高校で・・・。
もう誰も失いたくないって思っていたのに・・・。
とても感傷的だ。
たった一年半だったけど・・・とても長く、一瞬に感じた。
なんという矛盾。
でも楽しい日々というのは、そういうものだろう。
でも楽しい瞬間というのは、そういうものだろう。
ふと、さわ子先生の言葉が脳裏に蘇る。
"おんなじね、私と。"
"私、三年になって最後の学祭終わった瞬間に号泣しちゃってね、今まで貯めてた気持ち全部曝け出すかのようにね。"
"もう終わりなんだなーって、ずっとバンドしてたいなーってさ"
"でも時間は待ってくれない、進んでいくものなのよ。"
"気が付けば、卒業式。いつも見送る立場だったのに、見送られる立場になっちゃってね。いつもみんなと帰ってた道もこれで最後か、ってなってまた泣いちゃって。"
"そういうものなのよ、青春って。そういうものなの。だから貴重なのよ?"
最後の学祭が終わった瞬間泣いた―――――。
つまり、俺らで言うとそれは一年後のことだ・・・。
考えたくないがどうしても心の何処かで引っ掛かる。
"終わり"を意識したところで、何かが変わるわけではない。
変わるわけがないんだ・・・。
ずっと高校にはいないし、皆各々それぞれの道に進んでいく。
・・・俺だってそうだ。
だから・・・"終わり"を意識するなら、その分毎日全力で楽しめばいい・・・それだけじゃないか。
たったそれだけだ。
しかも今日は学園祭。
とても素晴らしい日になる。
こんなことでクヨクヨ女々しい事は言っていられない・・・!
俺はなんとしても学園祭を成功させるんだ―――――!!!!
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「相馬くん?」
ふと背後から声を掛けられる。
応じるように振り向くと、そこにはムギの姿があった。
心なしかほんのり顔が赤く見えた。
息も上がっており、走ってきたのかなと推測する。
「ムギ!おはよう」
「おはようございます~!」
「走ってきたのか?」
「うん!なんだか体がウズウズしちゃって!」
「ハハハ・・・唯みたいなこと言うんだな・・・」
「それは相馬くんも一緒でしょう?」
「バレた?」
「ええ、じゃなきゃ、こんな朝早くに登校しないもの」
「だよな」
二人で並んで登校する。
学校まであと五分程度で到着する。
「今思うと初めてだよな?二人で登校するのはさ」
「ええ、そうね。私誰かと登校するの夢だったの~!」
「また一つ、叶ったな」
「ええ!」
とても満足そうな表情のムギ。
彼女のこの表情を見て、気付く。
前に彼女が言っていたことだ。
"軽音部の入部した理由"
なかなかいない、一緒にいて楽しい人と青春を過ごしたかった・・・だっけ?
もう遠い前の話のように感じる。
確か、唯のギターを買いに行ったときに話したことだったもんな。
そんな事を脳裏で思い出しながら、俺は口を開いた。
「ムギはさ、軽音部に来てからどのくらい夢が叶った?」
「え?」
「"夢"だよ、"夢"。いつも夢が叶った!って言ってただろ?」
あぁ~、と少し苦笑しながら、少し恥ずかしそうな表情だった。
そして、ムギは遠くを見つめながら、そっと口を開いた。
「―――――数えきれないわ。みんなと時間を過ごすと、どんどん夢が溢れてくるんだもの。」
「"溢れて"くる?」
「ええ。みんなと一緒にいると、次はみんなでアレをしたいな!とか、コレをしたいな!とか。色々浮かび上がってくるの。」
「ムギ―――――」
「おかしいわよね。夢が一つ叶っても、また一つ夢が増えていくの。」
困ったように。
意地悪するかのように。
小さく舌を出し、苦笑する彼女は、とても妖艶だった。
「そうか・・・それは大変だな。」
「えぇ、だから毎日が早く感じるわ~!」
「同じだ・・・俺も・・・」
「そうなの?」
今日まで日々を一瞬で振り返る。
「あぁ。とても・・・とても・・・早く感じるさ・・・」
これが本音だった。
結局のところ、俺もムギと一緒だったのだ。
「私ね、みんなに恩返ししたいの。とっても恩返ししたい!」
唐突にムギが口を叫んだ。
とても何か興奮しているようだ。
「恩返し?そんなこと考えなくてもいいよ・・・」
「ううん!私の毎日を変えてくれたのはみんなだもの!とっても感謝したいの!」
「そ、そうか・・・。じゃあ・・・楽しみにしておくな?」
「うん!」
彼女の瞳はとても真っすぐで。
とても清らかだった。
彼女の軽音部への思いを文化祭で思いっきりぶつける、こう言わんばかりの表情だった――――――。
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教室に荷物を置き、俺とムギは音楽準備室へと向かう。
誰も居ない静かな学校。
強いて言うなら、先生とたまにすれ違うくらいか。
あと30分程しないと人気は増えないだろう。
そんな中、音楽準備室からギターの音色が聞こえた。
「あら、唯ちゃんかしら?」
「・・・いや。この音色は梓だ」
ゆっくり戸を開けると、中には中野梓がいた。
本日はしっかりと二つ結びのツインテールになっている。
そしてほんのりほどかされている、うっすらメイクが窺えた。
それほど今日のライブには気合が入っているのだろう。
「ムギ先輩!相馬先輩!おはようございます!」
「おはようございます~」
「おっは~」
「朝早いんですね!」
「それはこっちの台詞だよ。俺らでさえ早すぎたって話してたのに、梓はもっと早いんだからな・・・」
「何かあったの?」
「い、いえ!ただもうウズウズしちゃって朝四時くらいに目が覚めちゃったので、学校に来ちゃいました!」
「相当気合入ってるな」
「はい!!もうバッチリです!!!」
満面の笑みでそう答える梓。
なんでこんな軽音部は美人が多いんだろう・・・。
俺は幸せ者ですなぁ。
おっと、いけない・・・。
「"ふでぺん~ボールペン~"の練習してたのか?」
「はい!唯先輩は大丈夫だと思うんですけど・・・万が一ってこともあるので!」
「リズムギターとリードギター両方練習してたのか!?」
「凄いわね~!」
「い、いえ・・・!そんな事ないですよ・・・!唯先輩がどれだけ凄いのか思い知りましたし・・・」
「そ、そっか」
多分君の方がうまいと思うぞー・・・。
「ちょっと冷えてるから温かいお茶入れてくるわね~!」
「おう!サンキューなムギ!」
「ありがとうございます!」
無言が流れる。
ただ鳴り響くのは、梓の奏でるメロディー。
それはなんだか子守歌のように優しく、そして草原にいるかのような壮大さだった。
思わず俺も口ずさむ。
そんな時間が続いていると。
「梓」
「はい?」
「軽音部、楽しかったか―――――?」
自分でもわかる優しい表情で告げた。
まるでなんて答えられるか分かっているかのように。
そんな気分だった。
「不覚にも、とっても充実してました。やっぱり私の選択は間違ってなかったです。」
「だったら良かったよ。そう言ってくれて嬉しいさ」
「相馬先輩・・・本当にありがとうございました。私、感謝してもしきれないです」
「なんでだよ。決めたのは梓だろ?」
「キッカケをくれたのは相馬先輩でした。」
「キッカケか―――――。」
「はい。本当に感謝しています・・・!」
「人生って本当に何があるか分からないよな・・・。自分がどんな選択をするかも大事だけど、誰かにキッカケを貰うことも大事だ。」
「キッカケは自分で作り出すことは出来ないですもんね。神様のおかげ―――。」
「あぁ。だとするなら、神様にも感謝だな!」
そこでムギが教室に戻ってくる。
「お茶できたわよ~!」
「お~!ありがとう!」
「ありがとうございます!」
三人で席につき、乾杯をしてからお茶を啜る。
口の中に甘い香りと少しほろ苦い味が広がった。
キッカケ、か。
いつもソレをくれたのは・・・君だったな。
唯――――――。
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「続いてのカリキュラムを発表致します・・・。
軽音部『放課後ティータイム』より、バンド演奏です――――――。どうぞ!!!!」
その一言から・・・始まった。
俺にとって最後のライブが始まったのだ―――――。
巡り廻る、キッカケ達―――――。