更新遅くなって申し訳ありません・・・!
お気に入り170越え、ありがとうございます!とても嬉しいです!
200目指して頑張ります!
今回から文化祭が始まりますが、相馬くんの気持ちが色々揺れ動きます。
いや~、青春!
今が最高!!(笑)
文化祭前夜。
俺は家でこっそりとライブの練習をしていた。
弾く曲は"ふでぺん・ボールペン"。
リズムギターは割かし簡単なのと梓に電話でもレッスンをされた為に、ある程度は弾けるようになっていた。
あとは皆で合わせられるようになるか・・・だな。
こうしてみると音楽って楽しい。
バンドを組んでいる彼女らが少し羨ましくなっている自分が居た。
まぁ万が一だし、俺が弾かないのが一番いいんだけどな。
リズムギターはある程度コードを覚えれば弾けるため、ギター経験がある俺にとっては少し楽に思えた。
「そういえば作詞とか作曲してみようかな・・・」
我ながらにとんでもない事を思いつく。
でも二回目の文化祭を目の前に控えている今、それが出来そうな気がした。
真っ白な紙が彼女らの想いで綴られていく。
『少し伸びた前髪を、掻き上げたその先に見えた』
『遠くへ行ってしまう君の後ろ姿が見えたんだ』
『いろんな言い訳で着飾って "仕方ない"と笑っていた』
『傷付くよりは まだ その方がいいように思えて』
「ってマジになりすぎたか・・・」
自分で書いて、自分で苦笑する。
でも今の自分を形容している歌詞だった。
色々な言い訳や、自分に言い聞かせる形で、本当の想いから遠ざけていたのだ。
自分がそれに気づいて・・・傷つかないように。
**********************************
遂に、文化祭一日目となった。
朝七時に部室集合となっている。
俺は遅刻することなく、部室へと向かった。
「おはよーす」
「あら、おはようございます」
「おぉ、ムギか。早速お茶入れてるな?」
「ええ。この一杯があって一日が始まるわ~!」
「確かにな。みんなはまだか?」
「うんー、もうすぐ来ると思うんだけど」
と言い掛けたと同時に律と澪、梓が部室へと入ってくる。
梓はいつもツインテールにしているのだが、今日は髪を一つ縛りにしていた。
クラスの出し物の影響だろうか。
男子は、こういうのに弱い。
女子が体育の際や、何かイベントがある際にいつもと違う髪型をすることに、かなり弱い。
これは共感してくれる人もいるのではないだろうか。
今日の梓は全く持ってそれで、なんとなくドキドキしてしまう。
「おはようございます!」
「お、おはよう」
「あら~、相馬くんったら梓に見惚れてるぞ~!」
「そんなことねぇ!」
「アハハ」
梓は口に手を当てて、小さく笑った。
いつもと同じように律が馬鹿にしてくるが、何故か怖くて澪の方を見れなかった。
「ところでなんだけど、唯から朝に連絡あった。今日の昼には来れるってさ!」
「何!本当か!?」
「唯ちゃん・・・!」
「唯先輩!」
「唯・・・!」
律の一言で皆の顔が明るくなった。
ちゃんと治すの頑張ったんだな・・・!
偉いぞ・・・唯!
約束、ちゃんと守ってくれたな―――。
「じゃあ今日は放課後とお昼に練習ってことで!それまで各自クラスの出し物に集中!」
「「「「お~!」」」
***
俺と澪と梓の三人は階段を下っていく。
クラスの集合時間は八時なのでちょうどいいくらいだ。
他のクラスも出し物の準備を行っているのが見える。
「梓は皆ポニーテールなのか?」
「え?あ、はい!駄菓子の出し物をするので和風をイメージしてとのことで・・・」
「そうなんだ」
「澪はツインテールにするんだぜ?」
「ええ!絶対かわいい!」
「相馬ぁ!!!」
何故か頭にゲンコツを喰らった。
もうKOだって。
なんやかんや雑談をしていると、俺と澪の教室が見えてきた。
「じゃあな、梓」
「はい!またあとで!」
「じゃあな~」
梓と別れ、教室に入ると和が現場を仕切っているのが見えた。
教室の内装は昨日より進んでおり、ほぼほぼ完成に近づいていた。
いかにもフリフリした内装になっており、メイド喫茶らしいのは一瞬で分かる。
何人かの女子はもう既にメイド服に着替えているのが見えた。
やはり女子がいきなり普段と違う服装をするとなんだがドキマキしてしまう。
これは男子諸君なら一度は経験したことあるだろう。
「澪、覚悟は出来たか?」
「うぅ・・・もうダメ・・・」
「頑張って着替えてこい!」
こうして澪を更衣室へと連れていく。
歩くのを嫌がる犬のようにその場を動かない澪だったが、手を引っ張り容赦なく連れていく。
こう見るとベースなんてあんな太い弦を自由自在に動かしている割に手が華奢だった。
手首細いな、というのが感想だった。
嫌がる澪を無理やり更衣室へ入れると、俺は仕事へ戻るため教室へ向かった。
「相馬、澪のこと頼んだわよ?」
「はん?」
「澪かなり恥ずかしがるだろうから、アンタが面倒見てね」
「なんでだよ・・・」
「アンタ、軽音部でしょ?」
「うっ、そうだけどよ」
「澪のこと頼んだわ、あと現場監督は私が居ない時は相馬に頼むわ」
「えっ!?なんで俺っ!」
「信頼してるから、よ」
軽くウインクしながら手をそっと振り、再び現場の指揮へ戻る和。
信頼、か。
そういえば和なんて最初からずっと一緒だったもんな。
和は軽音部じゃないけど、大切な友達だ。
そんな和が俺に任せてくれたんだ、頑張ろう。
ふと、昔亡くなった弦結を思い出す。
弦結、元気してるか―――?
そういえばお前の命日そろそろだよな。
お前の分まで、俺は頑張って生きることを決めたよ。
だって今が・・・俺の栄光時代だからな。
そんなことを考えていると、教室の入口から女子の黄色い歓声が聞こえた。
自然にそちらへ目をやると、なんと澪がメイド服姿で立っていたのだ。
しっかり頭にカチューシャまで付けて。
これにはクラスの男子もおおぉっ叫んでいた。
俺もしっかり見て、しっかり顔を赤らめていた。
(うぅ・・・本当に可愛いな・・・澪は・・・)
しかもそれを自分で一切認めていないのがまた可愛い。
「おっと、俺は仕事に戻らなきゃ」
そろそろ文化祭が始まる時間だ。
お客さんが来る時間。
今年も始まるんだな―――。
文化祭が―――。
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文化祭が始まって二時間が経過したが、うちのクラスは大盛況で大盛り上がりを見せていた。
どこかそこらの人気のレストランと同じくらいのお客さんが集まっているのではないだろうか。
俺は会計を担当していたが、列が収まる気配すらない。
これは黒字確定だな。
去年の売り上げを大きく上回るだろう。
男性客も女性客も同じくらいの割合で来ているが、やはりメイド服というのが注目の的なのだろう。
中でも澪は際立っており、澪を一目見ようとお客さんが来る。
列を並んでいる時から「澪ちゃん」というワードが独り歩きしている状態で、色々なところから聞こえてくる。
そんな状態で澪は、あらゆる人から写真を撮ることを頼まれている。
「もう一躍有名人じゃねーか・・・」
といっても、他の女子も写真を撮っていたりしているので、やはりメイドが当たりだったのだろう。
どんどん入るお金を見てシメシメと思うが、そんな中で俺はある人物に声を掛けられる。
「よう、尾形!大盛況じゃねーか!」
そこにいたのは同じバスケ部の仙崎。
頼れるチームのエースである。
「おっす。一押しは澪ちゃんだぜ、写真撮ってもらいな~」
「その噂、さっき聞いたわ!どの子かなぁ~?」
「どれって、あの真ん中にいる・・・」
「あの子だよ!澪ちゃん!!」
ふと仙崎の後ろから声がした。
本当に馴染みのある声。
なんなら昨日聞いた声。
「おぉ、そうなのか!平沢」
「うん!かわいいでしょ!」
「あーーーーーッ!!!!」
思わず声をあげて立ち上がってしまう。
そこには居たのは、紛れもなく平沢唯だったのだ。
「唯!お前、大丈夫なのか!?」
「うん!もう平気~!」
「で、でもまだマスクつけてるじゃねーか!」
「まだ咳が出るからね~!咳止め飲めば平気!」
「平気って・・・」
ニコニコ笑うマスクをつけた平沢唯。
マスク越しでも満面の笑みというのが伝わってくる。
「今、平沢にお前のクラスまで案内してもらってたんだ!俺が奢るから飯食ってこうぜ!」
「え!いいの!食べたい!」
「任せな!」
「やった~!」
「ご、ごゆっくり・・・」
ピョンピョン跳ねる唯を前に、会計をする俺。
少し心は曇るが、これでいいんだ。
俺は別にこれで悩む必要などない。
唯が幸せならそれでいいんだ。
流れるままに二人は店の中へと入っていく。
俺はその背中を目で追うしかなかった。
「悪い、ここ頼む・・・」
暇そうにしていたクラスメイトに自分の位置を譲り、俺は部室へと向かった。
・・・素直になれねーのは俺じゃねーか。
***
部室へと着く。
意外と部室は静かで、賑やかな外の音と隣の音楽室でジャズ研が弾く演奏の音しか聞こえなかった。
たまにはのんびりと黄昏るのもいいかもしれない。
誰も居ない部室。
ここに来てもう一年半。
もう高校生活も折り返しか。
ふと目に入ったアコースティックギターを手に取る。
家で作った歌でも弾いてみるか。
コードがバラバラで適当に作ったが、俺にとっては自分の気持ちを代弁するような歌だった。
"それでいいはずなんだ"
それが歌詞の最後。
「・・・なんのことを言っているのやら」
するとガチャと部室のドアが開いた。
俺はギターを弾くのを止め、ドアの方へ顔を向けた。
「唯・・・?」
「お、相馬くんだ!部室から音楽が聴こえてきたから誰かいるのかな~って思って!」
「そっか」
「相馬くん、ギター上手だね」
「そうでもねぇよ、コード少しかじったくらいだし」
「ううん、歌としてちゃんとしてたよ」
「え!聞いてたのか!?」
「うん!あの歌自分で作ったの?」
「ま、まぁな・・・。適当にだよ、適当に」
「いい歌じゃん!文化祭で歌えば?」
「アホか・・・そんなの披露したら笑いものになっちまうよ」
「そんなことない!」
彼女はそんなことを言いながら、俺の手を握ってきた。
俺はえっ、と軽く声を発しながら彼女を見つめる。
唯も見つめ返してきた。
その瞳は真剣そのものだった。
思わず吸い込まれそうになる。
「あ、ありがとな・・・そう言ってくれると・・・嬉しいよ」
思わず取り繕って出た言葉がそれ。
今の俺にはそれが限界だった。
「唯、仙崎と飯食わなかったのか?」
「うん、相馬くんどっか行っちゃったから探してたの!」
「え、そうなの?なんで?」
「約束!」
「約束?」
「覚えてないの?したじゃん!約束!必ず風邪治すって!」
「あ、ああっ・・・!あれか!」
「だからちゃんと報告したかったの!だから探してたの!」
「あそこでいいじゃんか」
「言ったでしょ?"ちゃんと"って!」
「なるほど」
とは言ったものの、その意味があまり理解できないままでいた。
変なところに頑固なんだよな~唯って。
そこが好きなんだけどさ。
好き、か――――――。
脳裏に浮かびあがる一人の女性。
そこにいるのは秋山澪。
俺は律に宣言したんだ、彼女が好きだって。
それは今でも変わらない。
クラスにいても彼女を目で追ってしまう。
前に、さわ子先生に言われたことがある。
目で追うのは好きな証、と。
だから俺は澪が好きなんだ。
その気持ちをちゃんと伝えたい―――――。
でも今目の前にいる唯の存在はなんだろう。
ムギ、律、梓とはまた違う"何か"。
三人とも可愛いと思うし、魅力的な女の子だと思う。
でもその三人とも違うし、澪とも違う気持ち。
これはなんなんだろう。
誰か答えを知っているのなら教えて欲しい。
『ふーん。じゃあ、全てをちゃんと話せる?唯に。』
『澪が好きで、お付き合いしたいんだって。ちゃんと話せる?唯に――――。』
蘇る律の声。
あの場では言えると言ったが、俺は本当に言えるのだろうか。
いや、今がチャンスなのではないだろうか。
なかなか軽音部で二人きりな状況になるのは同じクラスとかではないと厳しい。
それにこれからライブが始まるのだから尚更だ。
・・・"今"なんじゃないか・・・?
今しかないんじゃないのか・・・?
ちゃんと気持ちを言うのは・・・!
「どうしたの?相馬くん」
「え?」
「なんか暗い顔してるよ?もしかして風邪うつっちゃった!?」
「いや、それはない。元気だよ!」
「そっか~。よく分からないけど・・・元気出して?」
「あはは、ありがと!」
やはり今しかない。
伝えるなら・・・今しかない・・・!
「あのさ、唯。」
「んー?」
「聞いてほしいことがあるんだ・・・」
「なになにー!?」
「あのさ・・・俺・・・――――――。」
「俺―――――――。」
そこから先の言葉が出てこない。
自分の気持ちを伝えるって、こんなにも難しいんだ。
でも伝えなきゃ・・・。
俺はやらなきゃいけないんだ・・・。
これで全てが終わってしまうとしても――――――・・・。
様々な唯の顔が蘇る。
"テストで赤点取って、夜通し勉強して一緒に学校にいったな。"
"ボーカルやりたかったのに声枯れちゃって・・・最初の文化祭は悔しい思いをしたな・・・"
"本当に最初の最初から・・・俺と仲良くしてくれたよな・・・"
『キャーー!あれ相馬くんと澪ちゃんだよ!!!』
『みんなが軽音部の皆だよ~紹介したいなって思って!』
『私がたくさん話し掛けたからです!えっへん!』
『私は相馬くんを応援してたけど。』
『いつも本当にありがとう!大好き!相馬くん―――!!!』
・・・これで全てが終わってしまうとしても―――――ッ!!!!
「え!?相馬くん・・・・・・なんで泣いてるの――――――?」
本当の気持ち―――。