今回は早めに更新できました。この調子で頑張ります。
今回のお話は学園祭の準備日となります。
主にオリジナルですが今後の伏線等も含まれているかもしれませんのでお見逃しなく!
あと数話で"運命のお話"が登場するのでお楽しみに!
唯~はやく風邪直せ~!(笑)
文化祭準備日となる。
運命の演奏まであと3日。
演奏しない俺まで緊張してきた・・・。
あれから律は澪としっかり話し合い、仲直りすることができた。
本当によかった。
そして律は風邪を治すことに成功したのだが・・・。
「なに、唯が風邪引いたッ!!??」
「そうなのよ。唯が風邪引くなんて珍しいんだけどね。」
和は穏やかそうに言った。
さすが唯と長い付き合いだけある。
慌てる事もなく、唯の調子を淡々と語る。
「こんな時に風邪引くなんて弛んでる証拠だ!!」
「お前がうつしたんだろ!律!」
「え、あたし!?」
「時期的に考えてもそうですよ!」
梓、澪、律、憂ちゃんと部室の前で会話しているがまさに今唯の話題で盛り上がっている状態だ。
そんな中で憂ちゃんが、あっ!と何かを思い出したようだ。
「あっ!でも多分――――。」
憂ちゃんが言うに、さわ子先生が作ってきた衣装をどれにするか決める日に、気に入った衣装があってそれを一日中着ていたそうな。
それが冷えて風邪を引いたかもしれないということ。
まぁ・・・唯っぽいちゃ唯っぽいが・・・。
「この時期に風邪引くか・・・?普通・・・」
「相馬!それを言うな!ある意味KYなところが唯のいいところなんだ!」
「憂ちゃん違うよ、今のは律が勝手に言ったことだからね。」
「憂ちゃんん!!違うんだぁあーー!」
「だ、大丈夫ですよ~っ!」
何気に唯のことをいじると傷ついてしまうお姉ちゃん想いの憂ちゃんなのだった。
「てかさ・・・あの時の衣装もさー、イケてるような気がしたけど・・・」
「冷静になって考えると・・・恥ずかしいですよね・・・」
「なー?澪?」
沈黙が流れる。
律の問に対して、澪は顎に手を当てたまま答えなかった。
「澪?」
「梓」
「はい?」
「今日からリードギターの練習もしておいてくれないか?」
「「「え!?」」」
リードギター。
これが唯のバンドの役職だ。
リズムギターが梓でリードギターが唯なのだが、リードなしで演奏は成立しない。
その練習を梓が今日からするというのだ。
「澪、それって・・・」
「唯先輩が間に合わないかもしれないってことですか!?」
「いや、あくまで万が一に備えてのことだから・・・」
「・・・はい」
「じゃ、練習しようか。」
**********************************
帰り道は憂ちゃんと一緒に帰る事になった。
明日はクラスの出し物等で練習が放課後のみとなってしまう。
間に合うだろうか・・・。
梓はどうにか持前のテクニックでリードギターの代行をしていたが。
唯ほどの安定感はまだなかった。
「ごめんなさい」
「え?」
「お姉ちゃん・・・風邪引いちゃって・・・皆さんに迷惑掛けちゃって・・・」
「なんで憂ちゃんが謝るんだよ。全然大丈夫だって。」
「でも――――」
「大丈夫だよ、唯なら明日にでもケロッと学校に来てんだろ。本当さ。」
「だといいんですけど・・・」
「憂ちゃんは本当に唯のこと好きだね」
「はいっ!もちろんですよ!」
満面の笑みで答える憂ちゃん。
この顔は唯にそっくりだった。
思わず見惚れそうになるが、そんなことは言ってられない。
「しゃーねーな!唯の看病に行くか!」
「えっ、でもうつしたら悪いですよ!大丈夫です!」
「大丈夫!俺はうつらんさ!」
「なんでですか?」
「馬鹿だから!」
憂ちゃんは苦笑いしてくれるものの、唯は本当に大丈夫だろうか?
なんでか去年も俺が倒れたりと学祭前にはハプニングが続く。
困ったものだ・・・放課後ティータイムは・・・。
そんなことを考えていると、唯の家へと着いてしまう。
「本当に入ります?」
「あぁ、長居はしない。少し様子を見たら帰るよ」
「分かりました」
憂ちゃんに案内されるがままに、唯の部屋へと入る。
久々に唯の部屋に入ると、何故か懐かしい匂いがした。
部屋の中はカーテンで覆われ、暗くなっている。
「お姉ちゃん?起きてる?」
「うんー。起きてるよ~」
「相馬くんが来てくれたから少し電気付けるね」
「え!?相馬くん来てくれたの!?う、うつったら大変だよ・・・!」
何か暗闇の中でジタバタする唯。
髪型を直しているのかな?
「よ!唯。元気してるか?」
「そ、相馬くん・・・!ごめんね・・・こんな時に風邪引いちゃって・・・」
「まぁ俺も去年同じ感じだったし、気にすんなよ」
「うんー・・・申し訳ないです・・・」
「それより早く風邪直せって。みんな心配してるぞ!」
「ありがとー。早く治してライブ頑張るぞ!ふんす!」
「体調は良さそうだな」
「えへへ」
俺は唯にゆっくり近づいて、おでこに手を当てた。
その指先から伝わるのはじんわりと熱くなる彼女の体温。
熱があるのは明らかに分かる。
これは治すのに時間を要するのではないか、と少し不安になった。
だが、それを口に出すほど空気が読めない訳ではない。
こんなのすぐ治るよ、と元気づけるのだった。
すると唯は相変わらずの満面の笑みを俺に見せてくれた。
俺は―――――。
俺はこの笑顔に何度救われたのか・・・。
力になってやりたい。
「必ず治る。だから今はいっぱい寝とけ、な?」
「うん。ねぇ、相馬くん。」
「ん?」
彼女はそっと布団の中から手を伸ばした。
「約束!指切りげんまん!!」
「小学生かよ・・・。」
と言いつつ、俺もそっと手を伸ばす。
そして小指を絡め。
「約束だからな―――――。」
「うん―――!」
**********************************
文化祭準備日。
今日は主にクラスの出し物の準備を行う。
今年はなんとメイド喫茶である。
つまり―――――。
「澪のメイド服が見れる!!!」
と同時に頭に何者かの鉄拳を喰らった。
くそ、目眩がしやがる・・・。
このまま死ぬのかな俺・・・。
「誰が着るもんですか!」
「って言っても澪、お前が着ないと始まんねーぞ?」
「うぅ・・・だから私は反対だったのにー・・・」
「仕方ないじゃない、クラスの半分以上が賛成だったんだから」
「そうそう、諦めて着ろ!クラスの女子は全員着るんだぞ!」
「和も着るの!?」
「私は生徒会だから最終日に着るわ・・・」
「それ絶対着ないやつじゃーん!」
涙目で訴える澪。
和は苦笑しながらもさわ子先生が作ったメイド服を澪に渡す。
うーん、和のメイド服っていうのも気になるっちゃ気になるな。
普段の和からじゃ想像できないし・・・。
「ところで律達のクラスは何をやるんだっけ?」
「今年もお化け屋敷・・・とか?」
「確か律のクラスはデザート屋だった気がするわよ?」
「いいなぁーー。」
「うちも売り上げ上位になって表彰されようぜ!」
「いやだよー・・・」
「いいじゃない。ライブで着る衣装の練習だと思えば!」
「和・・・やめて・・・今年は浴衣で演奏するんだ・・・」
「来年の新入部員を獲得するチャンスだぜ?頑張ろう!」
「いいよな・・・相馬は舞台袖から見てるだけで・・・」
「俺演奏しないしな」
「うぅ・・・」
なんか本気で嫌がってるけど大丈夫かこれ。
唯の問題もあるけど、澪も問題ありだな・・・。
それより唯がもし復活できなかったら澪がボーカルになるんだぞ・・・。
去年の恥ずかしい思い出が蘇る。
「それじゃ私は生徒会の仕事があるから行くわ。」
「おう、頑張れよ!和!」
「うん、ありがとう!」
「じゃあな、和!」
「さ、俺らはどうする?」
「律達のクラス覗きに行くか?」
「いいね!」
俺と澪のクラスは一階なので律達の教室がある二階へ移動する。
色々なクラスが準備に取り掛かっている。
この雰囲気は学園祭そのものだった。
何て言うんだろう、青春とでも言えばいいのかな?
唯も来れれば良かったのに・・・。
そんなことを考えていると、たまたまジャージ姿の梓が通りかかった。
「お、梓じゃん!」
「あ!澪先輩!相馬先輩!」
「頑張ってるな!」
「クラスの出し物は何をやるの?」
「模擬店です!主に駄菓子をメインで!」
「へ~!本番遊びに行こうかな~」
「澪はメイドをしなきゃだろ?そんな暇はないの」
「なに??」
「ごめんなさい」
だんだんと澪のメイドに対するどす黒いオーラが大きくなっている気がする。
下手なことを言うと殺されそうだ。
「澪先輩、メイドさんやるんですか?」
「うっ・・・それは・・・うん・・・」
「えーー!絶対可愛い!観に行きますね!」
「梓、一緒にお客さんとして行こう」
「はい!」
「ほんとやめて・・・」
「そういえば今日って練習あるんですか?」
「あるよ!放課後な!」
「やった!楽しみにしてます!」
「お、気合はいってんな」
「もちろんですよ!初めてのライブですから!」
「頼りにしてるぜ!梓!」
「任せてください!」
「じゃ、また放課後な」
「はい!またあとで!」
梓と別れると、俺らは階段をあがり二階へと向かう。
律の教室は階段をあがってすぐ目の前だ。
「よ、律!」
「あら、お二人さんお揃いで~!どうしたの?」
「ちょっと様子を見に来てな」
「ほう!今年は模擬店よーん!食べに来てね!」
「模擬店多いなぁ。うちも模擬店なんだ」
「澪のメイド服の噂はこっちにまで広がってきてるぞ~!カメラ持ってかなきゃ!」
「律!一眼レフな!」
お約束の二人してゲンコツを喰らう。
なんかもうそろそろ脳細胞が死滅しそう。
***
放課後になる。
学園祭準備日が終わる。
そんな中、部室へと俺と澪は足を運んだ。
「お、来たな」
「お茶入りましたよ~!」
「さんきゅームギ!」
「これ飲んだら練習しましょう!」
「そうだな、梓」
それぞれ定位置の場所に座る。
ムギが入れてくれたレモンティーを啜る。
相変わらず美味い。
「ここでなんだけどさ。」
「どうしたの?りっちゃん」
「唯が本当に間に合わなかったときのことを考えたんだけど」
「「「うん」」」
「相馬が演奏するっていう手もあるよな―――?」
「うん、ない」
とりあえず即答してみる。
だが律は何か考えがあるみたいだ。
「別に相馬に歌えとは言わないよ!だけどギターかじってた相馬ならリズムギターくらいなら弾けるんじゃないの?」
「いや無理だろ・・・しかももう本番まであと2日しかないんだぞ?」
「って思うじゃん?でも練習しといて損はないと思う。頼む!!!」
「ええぇ・・・まじかよ・・・」
「マジだ!!万が一に備えてだから!ね!」
「いいじゃないりっちゃん!それいいと思うわ~!」
「・・・弾けても一曲だけだぞ?」
「それで大丈夫!何にすっかな~、やっぱ"ふでぺん・ボールペン"かな?」
「嫌だ!あれ難しそう!」
「大丈夫だって!梓がみっちり教えてくれるから!」
「えっ、はい。私は大丈夫ですけど・・・」
「みっちりって・・・」
「相馬~ライブ成功したら女子にモテモテだぞ~?」
「弾きます」
即答した結果、本日三回目のゲンコツを澪に頂きました。
・・・なんで?
***
結局、皆に押されるがままにギターを練習させられた放課後であった。
久々に弾いたために指にマメが出来てしまった。
ジンジンして痛い。
これまた剝けて血が出るやつだな。
まぁギターやベースを弾いてる人ならそんなの慣れっこか。
それにしても演奏する側に回ると、皆の実力の高さが思い知らされる。
澪のベースは全くブレることなく、リズム隊の律を陰で支えて曲に艶を出している。
律のドラムは澪をうまくマッチングしており、曲全体の根底を担っている。
ムギのキーボードは曲に鮮やかさを与えており、メロディーの基盤を作り上げている。
梓のリードギターは言うまでもなく曲全体を引っ張り、先輩達が創り出す音楽を完成させている。
それに対し俺なんかちんけなものだ。
改めて思う。
演奏する側はすごい。
これを最前列で聞けた俺は幸せ者だ。
バンドってすごい。
彼女達の奏でる音楽は何処のバンドよりもカッコよかった。
だからなのだろう。
俺が放課後ティータイムを好きな理由。
彼女らの曲を耳にすると、熱くなって、嬉しくなって、ふと切ない。
そんな恋情の想いが、彼女らの音楽を際立てているんだ。
俺も頑張らないと。
唯がもし帰って来れなかったら・・・。
俺が唯の代わりになるしかないんだ・・・。
頼む、唯。
神様、どうかお願いします――――。
明日までには熱が下がってますように―――――。
相馬の願い―――。