今回は、梓が軽音部に対してあれっ?となるところから始まります!
どう辞めていく梓を引き留めるのか・・・ご期待ください!
そして最後はシリアスで終わります。
それではどうぞ!!
「入部希望・・・・・なんですけど・・・」
つ・・・ついに軽音部に入部希望者が訪れた!!
し・・・しかも・・・あの子は・・・!
って訳で早速唯と律が彼女を椅子に座らせる。
彼女・・・と言っても、俺はこの子を知っている。
なんと、あの中野さんだ!!!
大変嬉しい限りだ。
俺の勧誘で来てくれるなんて、本当に嬉しい。
椅子に座らせても、足が地面についていない。
背が低いんだな・・・。
「名前はなんて言うの?」
とムギ。
「あっ、中野です・・・!」
「パートは何やってるの!?」
と律。
「えっと、ギターと少々・・・」
「好きな食べ物は!?」
と唯。
「えっ、えっとーー」
「「一回、落ち着け」」
と澪と俺。
***
「えっと、一年二組の中野梓といいます。パートはギターを少し・・・」
中野さんは手を前に組みながら、礼儀正しく告げる。
「おっ、唯と一緒だな!」
「よろしくお願いします!唯先輩!」
「えっ、あっ、うん!」
唯のこの雰囲気から先輩呼ばわりされたことに絶対感動してる。
なんだかんだで唯の考える事が分かる尾形さんなのであった・・・。
「私は部長の田井中律!ドラムやってます!よろしくな!」
「よろしくお願いします!律先輩!」
「元気があってよろしい。こっちが秋山澪、うちのベース!」
「よろしく~」
「はい!よろしくです、澪先輩!」
「んで、こっちがキーボードの琴吹紬!うちらはムギってよんでるよ~」
「よろしくお願いします、ムギ先輩!」
「んで、こっちが―――」
中野さんは目を輝かせながら、
「えっ!尾形先輩、軽音部だったんですか!?」
「梓ちゃん相馬くん知ってるの?」
「はい!新歓の時から知ってます!」
「相馬、貴様ナンパしたな?」
「してねーよ?」
なぜ、そうなる・・・。
「梓ちゃん可愛いからな~分かるけどダメだよ相馬くん!」
「あのな・・・」
「違います!私が迷ってたら案内してくれて・・・!」
ありがとう、必死に怪我のこと隠してくれて・・・。
「新歓ライブの事も教えてくれたのは先輩なんです!」
「よくやったな、相馬!」
澪がグッドマークをしてくる。
「まぁ、改めまして。尾形相馬です、よろしく!」
「相馬先輩、よろしくお願いします!」
相馬先輩か、悪くないな。
「なーに照れてんだ相馬」
「照れてません」
「まぁ、入ってくれて良かったよ!ありがとうな!」
「いえ!先輩達の演奏を聴いて、感動しました!私は技術的にはまだまだですが・・・これからよろしくお願いします!」
ペコリと元気よくお辞儀をする中野さん。
良い子だな。
俺と同じように、感動したんだ。
こいつらの演奏に―――。
「じゃあ、梓ちゃん!何か弾いて見せて~!」
唯が早くも先輩風を吹かし、中野さんに自分のギターを持たせる。
手慣れている様子ではあったが、もしや・・・。
「じゃあ・・・軽く・・・」
中野さんはピックを持つと、自分の演奏をし始める。
リードパートではなくリズムパートで演奏しているが。
全員がこの演奏を聴いて、同時に思ったことがある・・・。
(((う、上手い・・・)))
「こ、こんな感じです!聞き苦しかったですよね、すいません・・・!」
「あっ、いや、全然違うよ!」
「ほらっ、唯。なんとか言ってあげなよ!」
「うっ・・・」
明らかに渋そうな顔をする唯、君ってほんと分かりやすい。
「ま・・・まだまだねっ!」
「「「「えっ―――」」」」
中野さん以外の他全員が同じ反応を示す。
一方、中野さんはそれに凄く憧れを感じたようだ。
・・・唯より上手いのに。
「私、唯先輩の演奏もう一回聞いてみたいです!」
「うっ・・・」
あちゃ~、自分で蒔いた種だぞ・・・唯。
「今・・・ぎっくり腰だから・・・また今度ね!」
「あっ、はい!」
嘘つけよ・・・。
「それじゃ、入部届は確かに受け取ったから!明日からよろしくね!」
「はいっ!よろしくお願いします!」
中野さんは深々とお辞儀をすると教室を出ていった。
そして流れる沈黙。
「わっ、私どうすれば・・・!」
「「「練習しとけ」」」
*************************************
「相馬くん!相馬くーん!」
「起きろ~相馬!」
思いっきり体を揺さぶられる。
あぁ・・・なんか最低の気分だ。
「どうした・・・?相馬・・・」
「え?」
澪に顔を覗き込まれて、自分の異変にようやく気付く。
「相馬・・・目から涙出てるぞ?」
「涙?そんなわけ―――」
手を目に当てると、少し湿っているのが分かる。
嘘だろ・・・?
なんで・・・。
「なんかあったのか?」
「いや、何も。お前等の演奏を聴いてたら気持ちよくなって寝ちゃっただけだよ・・・」
「やっだ~相馬くん!」
「うるせー律・・・」
「こんにちは!!」
勢いよく部室の戸が開き、中野さんが入ってくる。
「お!元気いっぱいだな!」
「はい!放課後が待ち遠しかったです!」
「じゃ、早速・・・」
「練習ですか!?」
中野さんは目を輝かせ、即答する。
・・・が。
「お茶にするか~」
「え!?」
「ティータイムだよ、梓ちゃん!」
「学校でして大丈夫なんですか・・・?」
「大丈夫大丈夫!」
あぁ、やっとこの異変を指摘してくれる人がいた・・・。
「そうなんですか・・・」
するとまたまた戸が開く。
「お、揃ってるわね~?」
この声は・・・。
「さわちゃん!」
「待ってたよ!」
「さわ子先生!」
この"先生"という単語にビクつく中野さん。
「えっと・・・あの・・・これは・・・」
恐らく、学校で違反物を出していたを想ったのだろう。
でも・・・。
「私、ミルクティーね」
「えええ!??」
「どうしたの?梓ちゃん!一緒にお茶しよ!」
「あっ、いえ。なんでもないです・・・。」
まぁ、先生が違反物許容してたら普通戸惑うわな。
「この子が新入部員?」
「はい!中野梓と申します!」
「顧問の山中さわ子です、よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
「早速だけど"猫耳"つけてくれるかしら?」
「えっ!?」
何をするかと思えば、いきなり猫耳カチューシャを出した!
え!?
この人どこに隠し持ってたの!?
「いきなりそんな事しちゃまずいですって!」
「何よ、あんたも男子なら見たいでしょ!?」
「はい!」
「単細胞かお前」
澪に頭を叩かれる。
俺は一応止めに入ったが、唯が既に中野さんに猫耳をつけていた。
「かわい~!!!梓ちゃんとっても可愛いよ!」
「うん!似合ってる似合ってる~!」
「梓ちゃん猫耳似合うわね~!」
「おい・・・お前等・・・」
「相馬はどう思うの?」
「似合ってる!!」
「だから単細胞かって!」
再び叩かれるが気にしない・・・。
それほど中野さんは似合っていた。
「あの・・・外していいですか・・・?」
「ダメだよ~可愛いんだから!"にゃ~"って言ってみて!"にゃ~"って!」
「えっ・・・」
「一生のお願い~!」
そんなんで一生のお願い使うなよ・・・。
「にゃっ・・・にゃ~・・・」
俺含め五人(澪除く)がぶっ倒れる。
可愛すぎる・・・。
「後輩ってこんなに可愛かったのか・・・!?」
「あだ名は"あずにゃん"で決定だね☆」
「あずにゃん、可愛いわね~!」
「でしょ~!」
いや、確かに可愛いんだが。
可愛いんだが、これは予想外の方向に進んでいるな。
状況的に言ってみれば・・・だが。
彼女が描いている軽音部とのギャップが在りすぎて困惑している。
澪はそれを見抜いているのか、呆れたように溜息をついていた。
その予想は見事当たり、翌日、中野さんは軽音部のメンバーに大激怒することになった―――。
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あれから、数日間、中野さんは軽音部に顔を出さなかった。
「なに、澪。急に緊急会議って。」
突如、澪が全員にメールを送り緊急会議を開くことになった。
中野さん抜きでの会議となる。
やはり、澪は気付いていたか。
「新入部員も入ったし、いつまでもまったりしてちゃじゃまずいと思うんだよな」
「そうなの・・・?」
「このままじゃ梓・・・やめてしまうかもしれないぞ!」
「えっ・・・あずにゃんが居なくなるのは嫌だー!」
「くそっ、何か弱みとなる写真を―――」
澪のグーパンが律に激突。
「ちゃんと活動計画を立てたほうがいいんじゃないか?」
「そう、ナイス相馬」
「活動計画?」
「確かに・・・じゃあ梓の歓迎会をやるかッ!!」
「いやいや、待て。俺もやりたいところだが、澪の意見に賛成だ。」
まだ事の重大さが分かっていないな。
「相馬くん?」
「中野さんは入る前、カッコイイ先輩がいる部活に入りたいって言っていた。」
「そうなのか?」
「あぁ、今のままでは中野さんの目指す方向性と、軽音部の現状がマッチしない」
「それってつまり・・・」
「そう、中野さんは辞めてしまう可能性がある」
やっと唯達が本当の意味で青ざめる。
「・・・歓迎会もいいが、中野さんが求めてるものはそれじゃない」
「練習。高みを目指してるんだよ、彼女は」
澪が付け足してくれる。
「別に俺らのティータイムを無くそうとか、体育会系の如く鬼の練習を強いてる訳じゃないさ。ただ練習を全くしないのは彼女的にはアウトなんだろ」
「そういうこと!」
「なるほどねぇ」
「分かった!ちゃんと練習しよう!」
「・・・手遅れじゃなきゃいいが・・・。」
***
その日の帰り道。
買い物があるので学校近くのスーパーへ向かう。
「今日の夕飯はっと・・・」
そこでチラリと見覚えのある後ろ姿に遭遇する。
「あれは確か・・・中野さんだ」
周りを警戒しながら早歩きで角を曲がっていった。
・・・軽音部について話を聞いてみるか。
俺はその後を追った。
「ライブハウス―――」
確かに彼女はこの中へと入っていった。
そこから導き出される事実はただ一つ。
彼女は軽音部を辞める、ということだ。
今からでも間に合うだろうか・・・。
今からでも軽音部に勧誘しても気持ちは変わってくれるだろうか。
軽音部の魅力は俺が誰よりも知っている。
こんなところで、せっかく入ってくれた新入部員を失ってしまうのはダメだ。
確かに、ティータイムの時間はすごく長いし、練習はあまりしない。
だが、本番のときの演奏はどんなバンドより輝いている。
それだけ、人を寄せ付けるだけの才能がある。
彼女も惹かれたから、軽音部に入部を決めたのだ。
そんな気持ちを忘れさせてはいけない。
あいつらが動けないのなら、俺が動く。
これは俺の仕事だと思う。
俺が勧誘した一年生なのだから―――。
その想いを胸に、ライブハウスへと俺は入る。
物凄い熱気で人込みだった。
様々なロックバンドが魂込めて歌っている。
音楽に対する練習度が桁違いだ・・・。
だが、それでも彼女達の音楽を俺は応援する。
あの日から俺は何一つ変わっていない。
そう、何一つ―――!!
人込みの中で他のバンドマンに声を掛けられてる中野さんを見つけた・・・!
すかさず俺は彼女の手を取る。
少し強引かもしれないが、この際構わない・・・!
「えっ―――!?相馬先輩!?」
「俺と来てくれ!!頼む!」
「でも・・・!」
「いいから!」
「―――――!」
なんとか必死の思いでライブハウスから抜け出す。
中の熱気のせいか外が涼しく感じる。
「いきなりごめん・・・」
「いえ・・・どうしたんですか・・・?」
彼女の言葉は俺を気遣っていたが、目は本気だ。
「中野さん、君の今の気持ちを聞かせてくれないか―――。」
「気持ち・・・」
「そう、軽音部に対しての」
「正直・・・分からなくって・・・」
彼女はゆっくり口を開いた。
その瞳はどことなく、うっすら潤んでいた。
そんな気がする。
だが、俺はそれでも目を逸らさない。
「どうして軽音部に入ろうと思ったのか・・・どうして新歓ライブの演奏にあんな感動したのか・・・」
彼女は自分の気持ちを吐露することを続ける。
「しばらく一緒にいれば分かると思って・・・ずっとやってきたけど・・・それでも分からなくって・・・」
勘所の頬を伝う涙。
それを手で拭ってあげる。
俺にはそれくらいしかしてやることが出来ない。
頷く事さえ、卑怯。
ただの言い訳だった。
「どうして・・・?どのバンドよりもうちの軽音部より上手いのに・・・」
「どうして・・・軽音部がいいのか・・・分からなくて・・・」
「なるほどな。」
「・・・・・ごめんなさい。」
「いや、いいんだ。俺もなんとなくで入部したからさ」
「そうなんですか?」
「あぁ、俺はたまたま唯と仲良くて、そこから律達に会って、入部することになったんだ。」
「へぇ・・・」
「何か楽器を弾く訳でもなく・・・ただ軽音部の雑談要員として入った俺だけど。」
「毎日あいつらの演奏を聴いてるとな、不思議なことが起こるんだよ」
「次もまた聴きたくなるんだ。」
「・・・!!」
「聴くと少し切なくなって、熱くなって、そしてまた聴きたくなる。」
「そういう魔法が掛けられてるんだよ、あいつ等の演奏にはさ。」
「梓。」
改めて、彼女の方に向き直る。
「明日、部室に来てくれ。それでもう一度考え直してみないか。明日、軽音部の演奏の全てを・・・梓に聴かせるから。」
「・・・はい。相馬先輩がそこまで言うなら・・・きっと・・・。」
「きっと?」
「いえ。行きます。聴かせてください、軽音部の演奏を、もう一度!」
俺と梓は微笑み合う。
「そうこなくっちゃ・・・!」
*************************************
翌日。
軽音部のメンバーには既に伝えてある。
梓が今日来ること。
そして全身全霊の演奏を聞かせようじゃないか・・・ということ。
「じゃ、梓があの時の気持ちを思い出せるように!」
「私達の演奏を・・・頑張ろう!」
「うん!」
「相馬、ありがとうな!」
「いいんだ、俺に出来る事をしたまでだから。頑張れよな、澪!」
「うん!」
その時、ノックと共に梓が入ってきた。
これで軽音部に顔を出すのは五回目くらいだろうか。
彼女が失ってしまった気持ちを・・・今取り戻す!
「あずにゃん!」
「さ、座って!演奏するぞ!」
「あっ、はい・・・!」
ちょこんとベンチに座る。
緊張の空気が流れる。
「それじゃ・・・行くぞ!ワン・ツー・スリー!!」
瞬間、律のドラムの音と同時に"私の恋はホッチキス"が演奏される。
ボーカルは唯。
サブボーカルは澪だ。
チラリと梓の様子を見たが、俺より早くに演奏に聞き入ってるようだ。
やはりな。
結局、梓と俺は同じなんだ。
「やっぱり、俺はこのメンバーの演奏を聴くのが好きなんだと思う。」
「えっ?」
「きっと皆もそうで―――。」
俺は、一年前の自分に告げるように。
「だから、いい演奏になるんだと思う―――。」
その一言が決め手になったんだろうか。
梓は涙を零し、ようやく自分の中にあった疑問を解消できたようだ。
今、一年前の自分と今の自分が重なった気がした。
「さ、もう十分だろ?行って来いよ・・・!梓!」
梓は涙を振り切り、叫んだ。
「はい!私、やっぱり先輩方と演奏したいです!」
「良かったー!あずにゃんが帰ってきた!!」
思いっきり梓を抱き締める唯。
それに少しうれしそうな表情をする梓。
新たな一ページが今日、刻まれた。
これからは五人の演奏が聴けるんだ―――。
「まぁ・・・これからもお茶飲んだり、ダラダラすることもあると思うけど・・・それもやっぱり必要な時間なんだよ!うん!」
澪がすごく良い事を言った気がする。
「そうですよね・・・!」
「ところで、いつから相馬は梓呼びになったの?」
「えっ、いや・・・いつからだっけな・・・」
「うわー、隠したー」
「べっ、別に変な意味はねぇよ!」
中野梓。
新たなメンバーを加えた上で、軽音部の日常は再び始まっていく――――。
だが、俺の心の何処かにある靄は晴れない。
それは昨日見た夢のせいだ。
所詮は夢、だが・・・どうも他人事のように思えないのだ・・・。
この事は誰にも言うつもりはないが・・・。
誰にも言えぬ、孤独が俺を蝕んでいく―――。
*************************************
夢を視た。
ここはどこだ。
周りを見渡してみると、少し今より綺麗になっている俺達の部室があった。
いつの間にか寝ちまったんだ、俺は。
ふと立ち上がってみる。
それと同時に鳴ったガタっという音と共に、俺は足元に誰かがいることに気づく。
―――――。
それはみんなだった。
軽音部のみんな。
相変わらずな表情で、全員が手を繋ぎ・・・寝ていた。
とても満足そうな表情で。
とても満たされている表情で。
なんだか、俺までも満たされた気持ちになった。
気付けば、俺が勧誘した中野梓ちゃんまでも輪の中に居た。
ムギ、梓ちゃん、唯、律、澪。
この順で床に座り、壁に背を預け、手を繋ぎ、寝ている。
どうしてどんなところで寝てるんだ・・・?
よっぽど疲れたんだろうか・・・?
夕暮れの日差しが部室に差し込む。
柑橘色に染まる部室はとても幻想的だった。
だがそれと同時に満たされている気持ちは薄れ、孤独感が湧いてきた。
・・・俺はどうしてこんなにも孤独な気持ちなんだ。
「うーーん・・・」
唯が頭の位置をずらしたのか、少しだけ目覚めた。
ふと唯に目をやる。
「H・・・T・・・T・・・?」
なんだ、HTTって。
これは何のTシャツなんだろう。
気付けば、全員が揃ってこのHTTと印刷されているTシャツを着ていた。
お揃いで着てるんだ。
意味は分からないけど、とても目頭が熱くなった。
だからどうして・・・!!?
心のダムの決壊はすぐそこまで迫っていた。
あぁ・・・ダメだ・・・堪え切れない。
気付けば、泣いているのは俺だけだった。
「唯~?お疲れ様~・・・って寝てる。」
音楽準備室の戸が開き、和とさわ子先生が入ってくる。
和、少し大人っぽくなったな。
「今はそっとしておいてあげましょ。幸せそう。」
和、さわ子先生は俺には気付かないようだ。
俺をガン無視すると、唯達の寝顔を見てクスリと笑った。
「"彼"も喜んでるわね。」
「はい―――。」
いつも落書きをしているホワイトボードを見る。
"相馬くんと一緒に、私達はライブを絶対成功させるッ!!!"
俺は嗚咽を伴い、号泣した。
俺は、どこにも居なかったのだ――――。
耐えられぬ、孤独―――。