お待たせしました・・・。ようやく更新です。
今回から唯達は二年生!
どんな物語を描いていくのか、ご期待くださーい!
そして遂にあの子が登場・・・!?
#17 新歓!
桜舞い落ちる季節。
四月となったこの桜ヶ丘高等学校は再び新入生が入る時期となった。
そんな中、平沢姉妹は同時に家を出る。
平沢唯と平沢憂。
唯が姉で憂が妹。
・・・のはずなのだが、性格は逆で姉の方が妹らしく、妹の方が姉らしかった。
「お姉ちゃん」
「なにー?」
「洗濯のタグ付きっぱなしになってるよー」
「嘘っ!?憂取ってー!」
「はいはい。それとココ癖ついてるよ」
憂は唯の髪に手を伸ばす。
確かに横髪が少し段になっており癖がついている。
「時間がなかったんだよ~」
「もう少し早く起きようね」
「うんー」
確かにこのやり取りと聞けば本当に姉妹逆転も分からなくない。
唯は高校二年。
憂は高校一年となった。
憂は姉と同じく桜ヶ丘高等学校に通うことにした。
それほど憂は唯が好きなのだ。
逆に唯もそれは同じ。
相思相愛状態の本当に仲のいい姉妹であった。
**
「あっ、私二年二組だー!」
「あっ、私も~!」
「あっ、あたしも~」
「あっ・・・・・」
「澪ちゃんはどうだった!?」
「二年一組・・・・・」
「「「ありゃ・・・」」」
全員が澪に対して同情の瞳を向けた。
それに対し澪は憤慨する。
「な、なに!その目は・・・」
「寂しくなったらいつでも遊びに来てもいいんだよ?」
半分冷やかしながら澪の肩を叩く律。
これが彼女らのコミュニケーションだ。
「私は小学生かっ!ふんっ!律こそ、私と離れてもいいのか?もう宿題見せてやれないぞ?」
「へへ~ん!平気だよーん!こっちにはムギがいるもんね~!」
満面の笑みを浮かべながら紬の手を握る律。
それを見て微笑む唯。
「うっ・・・そうだった・・・」
「皆さん、おはようございます!」
「あっ、憂ちゃん!」
そこに現れる平沢憂。
今日から高校一年生である。
「ほほ~!似合ってる似合ってる!」
「初々しいわね~」
「そっ、そうかな・・・?」
憂は顔を赤らめ照れくさそうだ。
きっと、姉と同じ制服を着て、それを褒められたことが嬉しいのだ。
そこで朝礼の鐘が鳴る。
クラスに戻り、出席を取る合図だ。
周りにいる生徒達もざわついた様子で教室の中へと入っていった。
「よし、あたし等も行くか」
「あれ、二組って二階だっけ?」
「ええ」
「いかにも上級生って感じだよな~!じゃあな~!一階、一年二組の秋山澪さーん!」
「うっ、うるさい!」
「休み時間にまた~」
澪を除く全員が階段を登っていく。
その背中を見送ることになるなんて。
正直強がっていたものの、澪は内心心中穏やかではなかった。
「―――さみしい。」
**
(SIDE:澪)
まさか律達と違うクラスになるなんて・・・。
最悪だ・・・。
担任の先生も知らない人だし・・・知っている人がいるかどうかも―――。
日頃私がどれだけ人見知りで、一部の人しか関わっていなかったか思い知らされる。
ああぁ・・・どうしよう。
教室に入るのが怖い。
そっと教室の戸を開ける。
黒板には担任からのメッセージと席順が書いてあった。
それを恐る恐る覗く。
・・・自分の席は教室の中央だ。
うわぁ・・・最悪だ。
1人でいるのにはとってもつらい席だ。
しかも・・・。
周りを見渡せば、知っている人など誰一人としていない。
えっ、これ私軽く詰んでないか・・・?
1人きりで行動とか本当に嫌だ・・・。
唯、律、ムギがいる二組が本当に羨ましい!
どうしよう―――。
「澪!!」
なんと、そこから救いの声が背後から聞こえた。
この声の持ち主は知ってる・・・!
「和!!!!」
「良かった~。今年は唯とクラス離れちゃって知っている人がいるかどうか心配だったの。」
その台詞と、和の姿を見て、一気に私の心のダムが決壊した。
「これから一年間よろしくn―――
「よろしくッッ!!!!」
「う、うん」
良かった!
1人じゃないし、しかも和だ!
もっと仲良くなりたいと思ってたから本当に嬉しいな!
「―――んっ、澪?和?」
またまた背後から聞こえる声。
この声も知ってる。
何故なら、考えるよりも先に体が反応したからだ。
「相馬―――!!!」
「相馬も一緒だったのね」
「おう、よろしくな!」
体中が燃え上がるかのように嬉しかった。
なんで・・・?
分かんない。
なんかよく分からない感情が私の中で芽生えてる。
相馬と同じクラスってだけで。
たったそれだけのことで、こんなにも嬉しいなんて。
それは和、澪、相馬の三人でこれから行動出来るから。
そして一緒に体育祭を頑張れるから。
そして一緒に。
軽音部に行くことが出来るから―――。
さっきまでとは違って気分が本当に良い!
こんなにも一年間が楽しみなんて!
神様ありがとう!
これから三人で頑張っていこう―――!
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(SIDE:相馬)
「なーんだ相馬が澪のクラスにいたのかよー」
こんな一言から新学期の軽音部は始まった。
「まぁな、一階なのは少し嫌だけど・・・」
「可愛い一年生をたーくさん見れるからいいんじゃないの~?」
「はぁ?」
「図星~」
「何言ってんだ・・・」
そんなことよりも、唯とクラスを離れることになってしまうなんて。
少し心寂しい。
和、唯、俺の三人は入学式からの仲だからな。
願わくばずっと一緒に居たかった。
「そんなことより!今日からビラ配り出来るだろ!?」
「何張り切ってんんだ澪?」
「律!新歓が始まったんだよ!後輩勧誘しなきゃ!」
「あ、そうだった」
「おまえな・・・」
「相馬くんはバスケ部の方も顔出さなくちゃいけないんじゃ?」
さりげなくムギがお茶を入れながら俺に話を振ってくる。
「そうだな」
「じゃ勧誘は4人でやるか・・・」
「今日は4人でやろ~!」
な訳で、俺はバスケ部の方へ行くことへ。
「澪、作ってきた~?」
「うん!ざっと30枚くらいはあるよ」
「よし!今日の目標は30枚全て配り切るぞ!」
「そだね!」
***
三学期はあまり練習出来なかったので、結構久々にバスケ部に参加することになる。
少し行きづらい気もする。
まぁ気にしない気にしない。
「うーす」
「あ、相ちゃん!」
マネージャーの茜が話し掛けてくる。
久々に顔を出すってのに、優しい奴だな。
「久々だな」
ん、この声は・・・。
「仙崎・・・」
このチームのエースだ。
相変わらず身長が高い。
「今日から新歓だろ?ビラ配りすんの?」
「そうだ、特に男子をメインに勧誘する」
「茜目当てで入ってくる奴はいるんじゃねーの?」
少しジョークを言ったつもりだったのに、場が少し凍った気がして、気まずくなった。
俺と茜と仙崎は中庭に出て勧誘を始める。
「バスケ部どうですかー?」
「共に青春の汗を流さないか!?」
「男子もあるよ~」
「一緒に未来のスターに・・・」
「「お前の勧誘重すぎ!!!」」
茜とハモりながら仙崎を叱る。
こいつ・・・こんな体育会系のやつなのか。
「わ、分かったよ」
「全く・・・そんなんだと後輩に逃げられるぞ?」
「―――、そういえばだが尾形。」
仙崎がふと口を開いた。
「俺と同じクラスの班だったんだが・・・お前の所属する軽音部・・・の面々がいたぞ」
「え?」
思わず聞き返してしまう。
体中が燃え上がる感じが一瞬で。
冷めた。
「平沢さん・・・?とか田井中さんとか。」
「あ、あいつらか・・・」
「あぁ、賑やかでいい奴そうだった。俺が好きなタイプだ。」
「好き・・・?どういうことだ?」
「異性として。当たり前だろ?」
何故。
何故その一言がこんなにも深く心に突き刺さったのかは分からない。
俺の中で、真っ先に思い浮かぶのは―――。
「平沢さん・・・?可愛いよな。守ってあげたくなるタイプだ」
そう、唯だった。
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「んじや、トイレ行ってくる~」
「はーい」
「すぐ戻って来いよー」
「分かってるって」
俺は動揺しているのを悟られないためにトイレへと向かった。
なんで俺がこんなことで動揺しなきゃいけないんだ。
気持ち悪いな・・・!
女々しい自分に腹が立つぜ・・・。
自問自答を繰り返しているうちに、俺は目先の事に全く気付かなかった―――。
瞬間、いきなり何かと俺は激突する。
「キャッ!」
「いてっ!」
だが俺がバランスを崩すことはなく、崩れたのは相手の方だった。
ぶつかった感じ、相手はかなり華奢だった。
「ご、ごめん!大丈夫っ!?」
慌ててその子の元へ。
「だ、大丈夫です!」
「肘見せてみ・・・?ほら、血が出てる・・・」
「ほんとだ・・・」
「保健室へ行こう。一年生?」
「はいっ」
「じゃあ、案内するよ」
その女の子の容姿は、今時珍しいツインテール。
澪を同じくらいの髪の長さだ。
日本人形のように透き通る肌と、大きい目が特徴的だった。
「ほんとごめんな・・・」
「全然大丈夫ですよ!こんなのヘッチャラです!」
「名前何て言うんだ?」
「中野梓です、よろしくお願いします!」
中野・・・梓・・・か。
「中野さんか。俺は尾形。尾形相馬だ。」
「尾形先輩ですね!」
先輩か・・・もう俺も先輩になったのか・・・。
「ほれ、ここが保健室だ。」
「ありがとうございます!後は一人で大丈夫です!」
「え、いや付き合うよ―――」
「いえ!大丈夫です!先輩の手を煩わせる訳にはいかないので!ありがとうございました!」
中野さんは深くお辞儀をすると勢いよく保健室へと入っていった。
そんな・・・。
怪我させたのは俺なのに・・・。
申し訳ない・・・。
だが。
俺はまだ知らない。
彼女との出会いが、更なる奇跡の連続を生み出すことを―――。
動き出す、奇跡の連続―――。