けいおん! 〜大切な事は君が教えてくれた〜   作:あいとわ

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お久しぶりです~
今回から学祭編スタートとなります!
そろそろあずにゃんを出したいと思っていますが・・・。

一年生編はそろそろ終了させ、二年生編に移りたいですね!

それではお楽しみください!


#13 文化祭!

 

「練習させすぎちゃった☆」

 

 

「声枯れちゃった☆」

 

 

 

「「「なぁぁぁああぁぁにぃいぃいぃいいッ!!??」」」

 

 

学祭間際に大問題である。

本番まで三日というのに唯が声を枯らせてしまったという―――。

さわこ先生が唯に歌いながら弾く、という練習をさせすぎてしまったせいで・・・。

 

いや・・・まじか。

俺・・・前回の締めで、なんかカッコイイこと言っちゃってた気がするんだけど・・・おい。

 

「どうするんだよ!ボーカル!」

「唯ちゃん以外に出来るって人になると・・・」

全員の視線が澪に向かう。

 

「えっ!?私・・・ッ!?」

 

「そうね~澪ちゃんなら歌詞覚えてるものね~」

「歌詞作った本人だし!」

「澪ちゃん!頑張って!」

「ふぁいとだよ!」

「が・・・頑張れ・・・」

 

案の定、澪は顔を真っ赤にし、その場に倒れこむ。

頑張れ・・・澪。

こりゃ・・・本番はどうなることやら・・・予測がつかなくなってきたぞ・・・。

 

*************************************

 

「・・・という訳で、うちのクラスは模擬店をやるということになったのですが、他に案ある方いますか?」

 

和が教室の前に立って声をあげる。

今年は焼きそばを提供することになりそうだ・・・!

焼きそばなら自分でも作ったことあるし、キッチンの方でも対応出来そうだ。

当日に焼きそばの具材と、調理器具が届くらしく、その模擬練習を行っていく。

初めての学祭・・・か。

中学時代は無縁だったものだし・・・楽しみだな。

 

バスケ部も何かやるみたいだが、主なシフトは入れないようにしてもらい、俺はクラスの方に集中することにした。

そして・・・唯達のライブを応援することにした。

 

軽音部が出演するのは二日目の午後。

主に最後のステージで、皆の注目が集まる時間帯だ。

そしてその後は後夜祭。

生徒全員でキャンプファイヤーとステージが行われる。

 

俺に出来ることはなんだろう。

考えておくか。

 

**

 

 

「では皆さん、協力して作業を終わらせましょう!」

 

はーい、という返事と共にクラスの模擬店の準備が始まった。

外装や内装、そして器具の配置や席の配置を決める。

 

俺と唯はキッチンと受付担当に。

 

「相馬くん、一緒だね!」

「キッチンは死ぬほど忙しいらしいぞ。唯、頑張らないとな」

「頑張ります!ふんす!」

 

相変わらずのガラガラ声で笑う。

やはり本番そんなんじゃ歌えないよな。

澪がやるしかない・・・。

あの澪が・・・。

 

「これをえーと・・・こうして・・・うーん??」

 

受付に立つ唯。

一緒に頑張る日が近づく。

 

思えば、もう唯と出会ってからもう半年が経とうとしていた。

長かったような短かったような。

最初は変なやつって思ったけど、こんなに仲良くなるとは思わなかった。

意外・・・というか予想もつかなかった事だな。

 

唯の無邪気な笑顔を見ながら、密かに思った―――。

 

*************************************

 

学祭当日を迎えた。

 

天気良し、風なし、交通機関乱れなし!

学祭には持ってこいの最高の日が訪れた。

俺は律に鬼電話をかけられ、仕方なく朝八時に音楽準備室へと向かった。

 

「おはよー・・・」

「相馬!遅いぞ!」

「おはようございます、相馬くん」

「おはよう、ムギ」

「じゃあ、練習するぞ~!」

「クラスの集合時間は?」

「9時!うちお化け屋敷やってるからおいで~!」

楽しそうに笑う律。

これは澪を誘ってって言ってるだろ・・・。

 

「じゃ、練習始めよっか!それぞれ準備して!」

 

 

**

 

演奏が終了する。

一通りやったが、澪が歌わずの音だけの練習となった。

「じゃーん、と」

「うん!音はいい感じなんじゃない?」

「うん!バッチリだった!」

「澪、歌わないのか?」

 

さりげなく聞いてみる。

「うんー・・・明日やるよ・・・。家ではちゃんと練習してるから大丈夫・・・」

「あとは人前で歌えればな~」

「か、簡単に言うなよ律!私がそういう性格なの小学生から知ってるだろっ」

「うんうん、分かってるって!また観客をパイナップルみたいに見ればいいんじゃない?」

「その手があったか・・・」

藁にも縋るとはこういうことか・・・。

 

「じゃあ、みんなまた後でね!クラス、遊びにいくね~!」

「うん!じゃあまた~!」

「ばいばーい!」

 

それぞれ散っていく。

俺には俺に出来ることをしよう。

 

 

軽音部、として―――。

 

*************************************

 

 

「いらっしゃーい!安いよ安いよ~~ッ!!」

 

9時を過ぎ、出し物が開始された。

あちらこちらで客寄せの声が聞こえ始めた。

よし、俺らもいっちょ・・・やるかッ!!!

 

・・・といいたいとこだが。

 

「唯、何だその恰好・・・」

 

頭に何故かフワフワした紫のアフロのカツラを乗っけ、どこかの民族のような服装をしていた。

ここってこういう設定だったっけ!?

いやいや、違う!

だってみんな普通に制服だよ!?

唯ちゃんだけ何か特殊じゃない!?

「どう?相馬くん!似合ってる?」

「えーと・・・うーんまぁ・・・」

「わーい!」

・・・。

彼女が喜んでるなら、それはそれでいいのではないだろうかと思いました。

 

**

 

時間はあっという間に過ぎ、気付けばお昼を回っていた。

思った以上に大盛況で人もずっと満席状態であった。

バイトってこんな感じなのかな?

すごく忙しい充実した時間を送れた気がする。

 

「相馬くん、お疲れ様!みんなのとこ遊びいこっ!」

「だな、行ってみるか!」

「うん!」

すごく嬉しそうな表情だ。

文化祭はなんだろう、何かいつもと違う非日常感を味わうこと出来る。

ドキドキするようなそんな感じ。

 

俺らは制服に着替え、まずはムギのところへ遊びに行ってみることにした。

ムギのクラスの出し物は喫茶店であった。

和風カフェらしい。

抹茶が出てきたり、和菓子が出てきたり。

 

それでもってムギは和装を施していた。

一目見て、可愛い、と感じてしまう。

「似合うな・・・着物・・・」

「そうかしら?ありがとう」

「うん!すっごく可愛いよムギちゃん!」

「動きづらいんだけどね・・・頑張るわ~」

 

「あっ、唯!相馬!」

 

遠くから声が聞こえてきた。

この声はまさか。

 

「澪!居たのか!」

「澪ちゃんだ~!会えたね~!」

「私今休憩中でさ!律は?」

「まだシフト中じゃないか?」

「じゃあもう少ししたら律のところに行ってみようか!」

「そうだね~!」

「私も行きたーい!」

ムギが目を輝かせながら言う。

文化祭で気分が上がるのは俺だけじゃないらしいな・・・!

「じゃあ、ムギが終わったら行ってみようか!」

 

**

 

「お待たせしました~」

 

ニコニコと笑いながら教室から出てくるムギ。

浴衣だから少し時間かかっただろうに。

「じゃありっちゃんのクラス、行ってみよ~!!」

「行こう行こう~!」

「ムギ、律のクラスってなにやってるんだっけ?」

澪がムギに問う。

あっ、このパターンは・・・。

 

「分からないわ。行ってみてからのお楽しみ!」

 

「そっか・・・」

少し不思議そうな表情を浮かべるも、付いていく澪。

苦笑する俺にムギがそっとウインクしたのは内緒だ。

 

**

 

目的地(お化け屋敷)へと着く。

着くな否や、早速。

 

「私、帰る」

 

「おーと、お嬢さんまてまてまてーいッ!所詮文化祭レベルのお化け屋敷やで!?大丈夫だよ~!」

唯ががっちし肩を掴む。

澪は逃げられない・・・。

そして強制的に連れていかれる・・・。

 

「よく来たな諸君!そして唯!よく澪を連れてきた!」

「もう帰りたい・・・」

「うちは物凄く怖いって有名だから覚悟しときな~!」

「無理!本当に帰りたい!」

「はい~もう入ってください~!」

「うわああ!!嫌ぁああぁ!」

 

前から唯、ムギ、俺、澪の順番で入ることに。

いや、なんで男の俺が真ん中?

「唯、俺前行くよ・・・?」

「大丈夫!私お化け屋敷大好きだから!」

「大好きって・・・」

「さぁ、ムギちゃん行くよー!」

「お~!」

「いや、ちょっ・・・待t・・・」

 

あの、澪さん。

始まる前から俺の腰にしがみつき過ぎでは・・・?

「相馬・・・ごめん・・・!今だけは傍にいて・・・ほんとお願い!」

「えっ、あ・・・うん」

顔は見えなかったが、すごく頬に熱を帯びるのを感じた。

・・・とは裏腹に前の二人はどんどん進んでいく。

 

中に入ると真っ暗の中で、赤いライトで道が照らしだされていた。

呻き声や、どこともなくお経が聞こえてくる。

律が言う通り・・・少し怖いな。

「じゃ・・・行くぞ?」

「うん・・・」

一歩一歩進んでいく。

前で唯とムギがキャーと叫ぶのが聞こえてきた。

それにつられ、こちら側もそれに驚く。

特に後ろの方が。

澪の握る手が強くて、制服にシワが付きそうであった。

 

「ほんとダメ・・・もう引き返したい・・・」

 

「いや・・・もう中盤だから引き返すとしても同じ道通ることになるよ?」

「無理・・・」

「だろ?」

「窓から飛び降りたい・・・」

「いやいや・・・無理だろ・・・」

 

どさくさ紛れだが、しっかりと澪の手が俺の手を握りしめていた。

少し胸が高鳴る。

こんな真っ暗闇の中で。

絶対今顔赤い自信がある。

そして出てくるお化け。

ゾンビみたいなやつだった気がするが、澪がもう壮絶に叫び走り出す。

俺もそれに引っ張られるように走る。

 

「ちょっ、澪―――うわっ!」

不覚にも俺が足を引っ掛からせてしまう。

最初に出会ったときの唯のような感じで大胆にすっころぶ。

・・・澪も巻き添えにして。

黄色い声をあげながら、澪を守るようにして態勢を崩す。

そのせいか・・・。

 

 

確かに3秒くらいだが、澪を抱き締める形に。

 

 

「キャッ・・・―――」

「ご、ごめん・・・!」

すぐさま手を放すが、胸のドキドキが止まらない。

正直死ぬかと思った・・・。

 

いい髪の匂いがしたのが感想です。

 

 

 

**

 

 

「じゃ、おつかれ~!」

「また明日な!」

「ほーい」

 

それぞれが解散する。

昼間はあんなにも人がいたのに、今は誰もいない。

 

静まり返る廊下。

何か不思議な感じだ。

このギャップが寂しい気持ち。

 

「相馬くん」

 

「唯―――」

 

「帰ろ?」

 

「だな」

 

相変わらずガラガラ声な唯。

ボーカルの座を射止めたってのに・・・残念なやつ。

 

唯は疲れた表情など全くで、むしろテンションがまだ高かった。

今日あったことを俺に話してくれた。

そうなんだ、と相槌を打っていたが、話は全く耳に入って来なかった。

 

そこにある、目の前の唯の幸せそうな表情に見惚れていたからだ。

 

「相馬くん、大丈夫?ボーッとしてるよ?風邪?」

「あぁ、いや、違うんだ」

「どうしたの?」

 

「もう半年も経つのかーって、思ってさ」

「私達が出会ってから・・・だね」

「こんなに仲良くなるなんてな」

「私がたくさん話し掛けたからです!えっへん!」

「ハハハ・・・それもそうだな」

 

沢山のことを思い出す。

 

出会った時の事。

 

軽音部に入った事。

 

楽器を買いに行った事。

 

唯の追試を皆で手伝った事。

 

夏合宿に行った事。

 

夏祭りに行った事。

 

 

本当に濃い春と夏だった。

幸せだった。

唯と出会わなければ・・・こうはならなかっただろう。

 

そして明日。

 

明日に彼女らは一番輝く。

 

春から夏にかけての努力の成果を出す時だ。

 

俺も是非、力になってあげたい。

 

 

そう決めたんだ。

 

 

 

そして迎える、当日の朝。

 

 

 

俺は風邪を引くことになる―――。

 

 




忍び寄る、不幸―――。

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