今回から学祭編スタートとなります!
そろそろあずにゃんを出したいと思っていますが・・・。
一年生編はそろそろ終了させ、二年生編に移りたいですね!
それではお楽しみください!
「練習させすぎちゃった☆」
「声枯れちゃった☆」
「「「なぁぁぁああぁぁにぃいぃいぃいいッ!!??」」」
学祭間際に大問題である。
本番まで三日というのに唯が声を枯らせてしまったという―――。
さわこ先生が唯に歌いながら弾く、という練習をさせすぎてしまったせいで・・・。
いや・・・まじか。
俺・・・前回の締めで、なんかカッコイイこと言っちゃってた気がするんだけど・・・おい。
「どうするんだよ!ボーカル!」
「唯ちゃん以外に出来るって人になると・・・」
全員の視線が澪に向かう。
「えっ!?私・・・ッ!?」
「そうね~澪ちゃんなら歌詞覚えてるものね~」
「歌詞作った本人だし!」
「澪ちゃん!頑張って!」
「ふぁいとだよ!」
「が・・・頑張れ・・・」
案の定、澪は顔を真っ赤にし、その場に倒れこむ。
頑張れ・・・澪。
こりゃ・・・本番はどうなることやら・・・予測がつかなくなってきたぞ・・・。
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「・・・という訳で、うちのクラスは模擬店をやるということになったのですが、他に案ある方いますか?」
和が教室の前に立って声をあげる。
今年は焼きそばを提供することになりそうだ・・・!
焼きそばなら自分でも作ったことあるし、キッチンの方でも対応出来そうだ。
当日に焼きそばの具材と、調理器具が届くらしく、その模擬練習を行っていく。
初めての学祭・・・か。
中学時代は無縁だったものだし・・・楽しみだな。
バスケ部も何かやるみたいだが、主なシフトは入れないようにしてもらい、俺はクラスの方に集中することにした。
そして・・・唯達のライブを応援することにした。
軽音部が出演するのは二日目の午後。
主に最後のステージで、皆の注目が集まる時間帯だ。
そしてその後は後夜祭。
生徒全員でキャンプファイヤーとステージが行われる。
俺に出来ることはなんだろう。
考えておくか。
**
「では皆さん、協力して作業を終わらせましょう!」
はーい、という返事と共にクラスの模擬店の準備が始まった。
外装や内装、そして器具の配置や席の配置を決める。
俺と唯はキッチンと受付担当に。
「相馬くん、一緒だね!」
「キッチンは死ぬほど忙しいらしいぞ。唯、頑張らないとな」
「頑張ります!ふんす!」
相変わらずのガラガラ声で笑う。
やはり本番そんなんじゃ歌えないよな。
澪がやるしかない・・・。
あの澪が・・・。
「これをえーと・・・こうして・・・うーん??」
受付に立つ唯。
一緒に頑張る日が近づく。
思えば、もう唯と出会ってからもう半年が経とうとしていた。
長かったような短かったような。
最初は変なやつって思ったけど、こんなに仲良くなるとは思わなかった。
意外・・・というか予想もつかなかった事だな。
唯の無邪気な笑顔を見ながら、密かに思った―――。
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学祭当日を迎えた。
天気良し、風なし、交通機関乱れなし!
学祭には持ってこいの最高の日が訪れた。
俺は律に鬼電話をかけられ、仕方なく朝八時に音楽準備室へと向かった。
「おはよー・・・」
「相馬!遅いぞ!」
「おはようございます、相馬くん」
「おはよう、ムギ」
「じゃあ、練習するぞ~!」
「クラスの集合時間は?」
「9時!うちお化け屋敷やってるからおいで~!」
楽しそうに笑う律。
これは澪を誘ってって言ってるだろ・・・。
「じゃ、練習始めよっか!それぞれ準備して!」
**
演奏が終了する。
一通りやったが、澪が歌わずの音だけの練習となった。
「じゃーん、と」
「うん!音はいい感じなんじゃない?」
「うん!バッチリだった!」
「澪、歌わないのか?」
さりげなく聞いてみる。
「うんー・・・明日やるよ・・・。家ではちゃんと練習してるから大丈夫・・・」
「あとは人前で歌えればな~」
「か、簡単に言うなよ律!私がそういう性格なの小学生から知ってるだろっ」
「うんうん、分かってるって!また観客をパイナップルみたいに見ればいいんじゃない?」
「その手があったか・・・」
藁にも縋るとはこういうことか・・・。
「じゃあ、みんなまた後でね!クラス、遊びにいくね~!」
「うん!じゃあまた~!」
「ばいばーい!」
それぞれ散っていく。
俺には俺に出来ることをしよう。
軽音部、として―――。
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「いらっしゃーい!安いよ安いよ~~ッ!!」
9時を過ぎ、出し物が開始された。
あちらこちらで客寄せの声が聞こえ始めた。
よし、俺らもいっちょ・・・やるかッ!!!
・・・といいたいとこだが。
「唯、何だその恰好・・・」
頭に何故かフワフワした紫のアフロのカツラを乗っけ、どこかの民族のような服装をしていた。
ここってこういう設定だったっけ!?
いやいや、違う!
だってみんな普通に制服だよ!?
唯ちゃんだけ何か特殊じゃない!?
「どう?相馬くん!似合ってる?」
「えーと・・・うーんまぁ・・・」
「わーい!」
・・・。
彼女が喜んでるなら、それはそれでいいのではないだろうかと思いました。
**
時間はあっという間に過ぎ、気付けばお昼を回っていた。
思った以上に大盛況で人もずっと満席状態であった。
バイトってこんな感じなのかな?
すごく忙しい充実した時間を送れた気がする。
「相馬くん、お疲れ様!みんなのとこ遊びいこっ!」
「だな、行ってみるか!」
「うん!」
すごく嬉しそうな表情だ。
文化祭はなんだろう、何かいつもと違う非日常感を味わうこと出来る。
ドキドキするようなそんな感じ。
俺らは制服に着替え、まずはムギのところへ遊びに行ってみることにした。
ムギのクラスの出し物は喫茶店であった。
和風カフェらしい。
抹茶が出てきたり、和菓子が出てきたり。
それでもってムギは和装を施していた。
一目見て、可愛い、と感じてしまう。
「似合うな・・・着物・・・」
「そうかしら?ありがとう」
「うん!すっごく可愛いよムギちゃん!」
「動きづらいんだけどね・・・頑張るわ~」
「あっ、唯!相馬!」
遠くから声が聞こえてきた。
この声はまさか。
「澪!居たのか!」
「澪ちゃんだ~!会えたね~!」
「私今休憩中でさ!律は?」
「まだシフト中じゃないか?」
「じゃあもう少ししたら律のところに行ってみようか!」
「そうだね~!」
「私も行きたーい!」
ムギが目を輝かせながら言う。
文化祭で気分が上がるのは俺だけじゃないらしいな・・・!
「じゃあ、ムギが終わったら行ってみようか!」
**
「お待たせしました~」
ニコニコと笑いながら教室から出てくるムギ。
浴衣だから少し時間かかっただろうに。
「じゃありっちゃんのクラス、行ってみよ~!!」
「行こう行こう~!」
「ムギ、律のクラスってなにやってるんだっけ?」
澪がムギに問う。
あっ、このパターンは・・・。
「分からないわ。行ってみてからのお楽しみ!」
「そっか・・・」
少し不思議そうな表情を浮かべるも、付いていく澪。
苦笑する俺にムギがそっとウインクしたのは内緒だ。
**
目的地(お化け屋敷)へと着く。
着くな否や、早速。
「私、帰る」
「おーと、お嬢さんまてまてまてーいッ!所詮文化祭レベルのお化け屋敷やで!?大丈夫だよ~!」
唯ががっちし肩を掴む。
澪は逃げられない・・・。
そして強制的に連れていかれる・・・。
「よく来たな諸君!そして唯!よく澪を連れてきた!」
「もう帰りたい・・・」
「うちは物凄く怖いって有名だから覚悟しときな~!」
「無理!本当に帰りたい!」
「はい~もう入ってください~!」
「うわああ!!嫌ぁああぁ!」
前から唯、ムギ、俺、澪の順番で入ることに。
いや、なんで男の俺が真ん中?
「唯、俺前行くよ・・・?」
「大丈夫!私お化け屋敷大好きだから!」
「大好きって・・・」
「さぁ、ムギちゃん行くよー!」
「お~!」
「いや、ちょっ・・・待t・・・」
あの、澪さん。
始まる前から俺の腰にしがみつき過ぎでは・・・?
「相馬・・・ごめん・・・!今だけは傍にいて・・・ほんとお願い!」
「えっ、あ・・・うん」
顔は見えなかったが、すごく頬に熱を帯びるのを感じた。
・・・とは裏腹に前の二人はどんどん進んでいく。
中に入ると真っ暗の中で、赤いライトで道が照らしだされていた。
呻き声や、どこともなくお経が聞こえてくる。
律が言う通り・・・少し怖いな。
「じゃ・・・行くぞ?」
「うん・・・」
一歩一歩進んでいく。
前で唯とムギがキャーと叫ぶのが聞こえてきた。
それにつられ、こちら側もそれに驚く。
特に後ろの方が。
澪の握る手が強くて、制服にシワが付きそうであった。
「ほんとダメ・・・もう引き返したい・・・」
「いや・・・もう中盤だから引き返すとしても同じ道通ることになるよ?」
「無理・・・」
「だろ?」
「窓から飛び降りたい・・・」
「いやいや・・・無理だろ・・・」
どさくさ紛れだが、しっかりと澪の手が俺の手を握りしめていた。
少し胸が高鳴る。
こんな真っ暗闇の中で。
絶対今顔赤い自信がある。
そして出てくるお化け。
ゾンビみたいなやつだった気がするが、澪がもう壮絶に叫び走り出す。
俺もそれに引っ張られるように走る。
「ちょっ、澪―――うわっ!」
不覚にも俺が足を引っ掛からせてしまう。
最初に出会ったときの唯のような感じで大胆にすっころぶ。
・・・澪も巻き添えにして。
黄色い声をあげながら、澪を守るようにして態勢を崩す。
そのせいか・・・。
確かに3秒くらいだが、澪を抱き締める形に。
「キャッ・・・―――」
「ご、ごめん・・・!」
すぐさま手を放すが、胸のドキドキが止まらない。
正直死ぬかと思った・・・。
いい髪の匂いがしたのが感想です。
**
「じゃ、おつかれ~!」
「また明日な!」
「ほーい」
それぞれが解散する。
昼間はあんなにも人がいたのに、今は誰もいない。
静まり返る廊下。
何か不思議な感じだ。
このギャップが寂しい気持ち。
「相馬くん」
「唯―――」
「帰ろ?」
「だな」
相変わらずガラガラ声な唯。
ボーカルの座を射止めたってのに・・・残念なやつ。
唯は疲れた表情など全くで、むしろテンションがまだ高かった。
今日あったことを俺に話してくれた。
そうなんだ、と相槌を打っていたが、話は全く耳に入って来なかった。
そこにある、目の前の唯の幸せそうな表情に見惚れていたからだ。
「相馬くん、大丈夫?ボーッとしてるよ?風邪?」
「あぁ、いや、違うんだ」
「どうしたの?」
「もう半年も経つのかーって、思ってさ」
「私達が出会ってから・・・だね」
「こんなに仲良くなるなんてな」
「私がたくさん話し掛けたからです!えっへん!」
「ハハハ・・・それもそうだな」
沢山のことを思い出す。
出会った時の事。
軽音部に入った事。
楽器を買いに行った事。
唯の追試を皆で手伝った事。
夏合宿に行った事。
夏祭りに行った事。
本当に濃い春と夏だった。
幸せだった。
唯と出会わなければ・・・こうはならなかっただろう。
そして明日。
明日に彼女らは一番輝く。
春から夏にかけての努力の成果を出す時だ。
俺も是非、力になってあげたい。
そう決めたんだ。
そして迎える、当日の朝。
俺は風邪を引くことになる―――。
忍び寄る、不幸―――。