ブロント語を喋る初音ミクが未来を変えるとか言ってきた 作:タクティス・ハルバード=レミィ
今、ネギを握りしめて部屋に立ってる。
僕が立ってるんだ。周りから見たら変な人だろう。
ミクなら、ネギで来るはず! 今まで無かったけどあのネギ愛はヤバイ!
誰も来ない事を常に確認できるよう、部屋のドア側を向いてネギを振り回す。
『ミク〜ネギだ! ネギっていうかネギ!』
そんなことをいいながら振り回す、もちろんまだ来ない。
「えっと、高いヤツ! A+だよ!」
くるくる回転して高さを誇る。
もちろん100円ちょいの安い方だ。
「美味しいよ!!」
途端に机側から、炸裂音が鳴り響く。
僕は何かに打ち当たり、吹き飛ぶ。
ネギはもう無い。
椅子が転がっていて、これ(椅子)に当たったんだなと気づいた。
『キラキラキラと輝く未来のネギ〜』
そんな聞き覚えのある声が聞こえ、顔を持ち上げる。
ミクが椅子に座ってネギの白い方を齧ってる。
「A+じゃないですね。どちかというと激マズ」
不機嫌そうにミクはネギを二つに折ると、開きっぱなしの引き出しへ放り込んだ。
「ミク……どこにいたんだ、ついでにサンダル脱いで」
「帰ろうと思ったんですが、息子さんに呼ばれまして」
「息子って僕の? 名前は?」
「名前は忘れました」
本当に忘れた? そんな。
ミクはサンダルを僕に投げつける。
「疲れたので引き出しに篭ってるとネギで呼ばれて来てみれば……汚いさすがのび太くんきたない」
「ごめん、僕だって悪気はないんだ」
「何処がですか?お? 久々に怒りが暴発しそうなので、晩御飯はネギ使ってください」
腕を組み、ミクは怒りの視線を向けてる。
「ミクがいえばいいと思うよ」
「仕方ないですね、分かりました」
鼻歌を歌いながら、僕を横切って階段を降りて行った。
僕って何の為に外でたんだ……?
晩御飯はネギで決まった。
ネギの和え物、ネギの味噌汁、ネギのソテー、ネギご飯。
台所で、僕とミクは並んで座り、お母さんとお父さんと向かい合う形だ。
1番変わった所、家族が1人増えて食卓が騒がしくなった。
『のび太、本当にその子大丈夫なのか?』
不思議そうにお父さんはネギのソテーを摘み、言った。
「うん! 大丈夫だよ」
「頼むぞ、ミク」
お父さんは、僕じゃなく初音ミクを見て言う。
「そんなぁ!」
「分かりました、お父さん」
「否定してよミクも!」
笑いながら、ご飯食べた気がする。
久々にガヤガヤだった。
でも、大きな問題が発生していたのは言うまでもない。
『どうやって寝るの!?』
天井からぶら下がっている電気を『立ったまま』消してから気づいた。
ミクは僕の布団で目を瞑り『消してくれてありがとうございます』と、丁寧にお礼まで言ってくれました。
「どうやって寝よう」
「私の中来ますか?」
「遠慮」
どうしよう。押入れ空だったっけ……。
押入れをガバッと開け、中を確認する。
お布団が一つあり、それだけだ。
この押入れのサイズは、僕くらい。
ミクだと、膝を曲げないと行けないな。
チラッと僕は、ミクの寝顔を見て決めた。
布団を押入れ内で広げる。
枕を置いて、布団を掛けて。
「ミク、おやすみ」
『……おやすみなさい、
僕は押入れに入り、布団に体を預けた。
本当に真っ暗だね、押入れは。
寝れるのかな?
――目を瞑った、僕は。