ブロント語を喋る初音ミクが未来を変えるとか言ってきた   作:タクティス・ハルバード=レミィ

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第1話 強いミク

 初音ミクは僕の手を握ると、引っ張って立ち上がらせる。

 

 

 

『というわけで、外出する!』

 

「まって、ジャイアンが玄関に……」

 

 僕も本来なら外に出てる。

 

 出てないのはジャイアンというデカブツが、玄関で待機してるから。

 

「ネギでカカッっと仕留めるから」

 

 信じて部屋を抜け、階段を降りる。

 

『あら、のびちゃ……こんにちは』

 

 しまった、お母さんだ!

 

「どうも」

 

 無愛想にミクは返事をする。

 

「のびちゃん頑張ってね!」

 

 僕が靴を履いていると、ミクは履かずにドアに手をかけた。

 

「ミクは靴、履かないの?」

 

「靴無いの……」

 

 そっか、そりゃ引き出しから出てきたもん、玄関に靴あるわけないよね。

 

「じゃあ、これ使いなよ」

 

 僕はお母さんの水色のサンダルを、ミクの足元に置く。

 

「無くてもボーカロイドは痛くないです」

 

「ごめん、僕が社会的に死ぬから履いてください」

 

 無理やり、ミクの右足首を掴むとサンダルに踏み入れさせる。

 

 片足も。

 

「サイズはギリギリだけど、許してね」

 

「ジュースをおごってあげる」

 

「どういたしまして」

 

 

 

 僕より身長が上なミクに、好意を抱きながら、ドアを開けた。

 

『のび太遅いじゃねえか!』

 

『待ってたのに〜』

 

 足踏みしたくなるよ。

 

 ジャイアンがバットで自身の手を軽く叩きながら、ニヤニヤ笑みを浮かべてる。

 

 スネ夫は……敵じゃない。

 

 右側の太ったデブでオレンジ色のシャツがチャームなジャイアン。

 

 左側で縮んでる、お高い服で前髪が横に伸びまくってるのがスネ夫と言ったところ。

 

 僕は無意識に、ミクの背中に隠れる。

 

「誰? この俺様に喧嘩売ってるのか?」

 

 全然ミクの表情が変わらない。そう思ったら呟いた。

 

「汚いなさすがジャイアンきたない」

 

「なんて言った?」

 

「あまりにも卑怯すぎる」

 

「そんなこと言っていいのかよゴラァ!!」

 

 ヤバイ、ジャイアンが本気でバッターボックスに立つように構えた。

 

 一本足打法で、全力のフルスイングで、ミクの頭部めがけて繰り出す!

 

 当たったら……死ぬ。

 

「本当に強いやつは口で説明したりしない」

 

 ミクはバットを軽く避けると、ジャイアンの頬を右拳で殴る。

 

「なんだおま……」

 

「説明するくらいなら私は牙を剥く」

 

 怯んだ隙にジャイアンの腕を掴むと、背負い投げを繰り出す!

 

 

 

 衝撃でジャイアンは唸り、身を縮ませてる。

 

「うお……痛え」

 

『パンチングマシンで100たたき出すし』

 

 今度はスネ夫をロック! ミクやばい。

 

 スネ夫は哀れにも逃げ出せないらしく、カチカチ震えてる。

 

「ゆっ許して……」

 

「弱者を虐めるからこうなる。みろ、見事なカウンターで返した」

 

 無機質な顔で、スネ夫を掴み、拳を振り上げる。

 

 

 

 ゴスッという音が響いた後、スネ夫は頭にたんこぶを作って力なく倒れた。

 

 僕もこうなるのかな。

 

「さて、路地裏に行くよ?」

 

「あっはい」

 

 初音ミクを怒らせまいと誓いながら、いつもの場所に向かった。


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