君との…   作:ゆ☆

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君と成人式

 

成人式

 

 

成人式とは昔の元服をヒントに作られたものらしい。

 

学齢方式で20歳の人達がこの日を境に大人になると言っても過言ではない。

しかし、ここでいう大人とは一体なんなのだろうか。

 

大人の定義というのは様々で、多種多様だ。

周りからはもう大人の仲間入りだなんだと祭り上げられるがその実、思考や見た目など高校生の時とあまり変わった実感はない。

 

大人になるというのは肩書きだけが変化するだけなのだろうか。

だが、周りの大人達を見るとしっかり大人だということはわかる。

その差はなんだろう。

 

俺はしっかりと大人だと胸を張って言えるようになれるのだろうか。

 

 

と、無駄な思考の海に漂っていたところを周りからの声で覚醒する。

 

 

「ねぇねぇ、かおりの彼氏なんかかっこよくなってない?」

 

 

「あーメガネかけてるからじゃない?

って、ちょ、ちょっと!彼氏じゃないから!…まだ。」

 

 

「え?あんた達ってまだ付き合ってないの?」

 

 

「んーまぁ、ね?」

 

 

折本とそのサークルの友達か。

というか、なんちゅう会話してんだあいつら。丸聞こえで妙にこっぱずかしい。

 

 

「おい、わざわざ俺のそばでそんな会話はやめろ…。なんの嫌がらせだ。」

 

 

「え?比企谷いたんだ!ウケる。

って今の会話もしかして聞いてた?」

 

 

「あーまぁ少しだけな。ボーッとしてたから最後の方しか聞こえなかったわ。」

 

 

「そ、そっかよかった…。

そういえばさー比企谷って成人式どうすんの?中学の同窓会とかあるけど。」

 

 

「いや中学の同窓会とかいかねーだろ。なんでわざわざ自分から笑い者にならなきゃいかんのだ。」

 

 

「だよねー。でも今の比企谷なら平気だと思うけどね。」

 

まぁ例え平気だとしてもだ、昔大して会話もしたことない奴らだけの集まりに言っても楽しいとは思えなそうだしな。

 

 

「まぁ成人式というか地元の方には行くけどな。」

 

 

「あっそうなの?なんで?あっもしかして高校生の時の同級生とかと会う感じ?」

 

 

「まぁそんなとこだ。」

 

同級生は同級生でもごく少人数なんだがな。

しかしあいつらも中学の時の集まりとかあるだろうし集合時間はまぁまぁ遅いんだよなぁ。

 

 

「そうなんだー。まっ気が向いたら式だけでも来なよ!あたしの振り袖でも見にさ。」

 

 

「あー考えとく。」

 

 

「よろしく!ってことでまたねー」

 

と、サークルの友達を連れ去っていった。

 

 

けどまぁ、成人式どうするかねぇ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

成人式前日の夜。

 

翌日の高校の同窓会に備え前日に実家に帰ってきてグダグダしていたところ、小町が言葉を投げかけてきた。

 

 

「ねぇお兄ちゃんは明日成人式行かないの?」

 

 

「んーどうだろうな。行ったところで話すやつも居ないしな。」

 

 

「それもそうだろうけどちゃんと行きなよ、一生に一度なんだし。かおりさんもいるんでしょ?」

 

 

「ふっ。なんなら明日知り合いは折本しかいないまであるな。」

 

 

「なんでそこ自慢気なのさ…。

いいから!明日はかおりさん見に行くと思って行きなよ。小町からのお願い。あっこれ小町的にポイントたかーい!」

 

 

「小町からのお願いじゃ仕方ねーか。

わかった、行ってくるわ。すぐ帰ってくるけど。」

 

 

じゃあ式だけ出るとしますか。

そうと決まれば折本に連絡だけしとくか。

 

 

 

 

成人式当日。

 

大学の入学式以来のスーツに着替え、式までは少し早いが家を出て式を行う駅前のホールに向かう。

 

 

「おーい比企谷ー!」

 

と、後ろから声が聞こえてきた。

振り向くと、振り袖に身を包み髪を盛った折本がいた。

 

「お、おう。一瞬誰かと思ったわ。

なんつーか似、似合ってんなそれ。…綺麗だ。」

 

 

「まぁねーありがと!比企谷のスーツ姿なんかサラリーマンみたいでウケる。」

 

自分でもわかっていた答えだった。

将来は専業主夫どころか毎日これを着て社畜街道を歩んでいそうで怖い。

 

 

「ほっとけ。つーかお前周りのやつのとこ行かなくていいのかよ。」

 

 

「いいのいいの!どうせ後で同窓会で会うし!でも比企谷は来ないんだし話すのは今のうちじゃん。」

 

 

「お、おう悪いななんか。」

 

 

「へ?なんで?比企谷と話したいーって言ったのあたしなんだから気にしなくていいのに。」

 

 

「お前は本当、そういうなんか恥ずかしくなるようなことを普通に言うなぁ…。」

 

 

「あーあたしって思ったことすぐ口に出ちゃうからさ。っていうかそんなこと言われると恥ずかしくなるからやめてよね。」

 

 

「はぁ。そんなのはわかってる。

とりあえずそろそろ式の時間だし行くわ。」

 

 

「いやいや一緒に行けばよくない?」

 

 

「は?でも中学の同級生に一緒にいるとこ見られたら困るだろ。お前が。」

 

 

「全然?その前に多分みんな比企谷だってわかんないっしょ!自意識過剰なんだよ比企谷はさ。ウケる。」

 

 

「うけねーから。行くならサッサと行くぞ」

 

 

「ほんと比企谷は捻デレだねー。」

 

 

こうして言葉を交わしながら式が行われる会場内へと向かって行った。

 

 

☆☆☆

 

 

式自体は市長達が話しているだけのツマラナイものが1時間くらい続いた。

 

 

「ねみぃ…。なんだよ式ってこんな感じなのな。」

 

 

「ねっ!なんか想像と違ったよねー。

まぁ成人式って式っていうより友達と会ったり晴れ着着るのが主役みたいなとこあるしね。」

 

視界の外では袴を着たヤンキー達やリア充が見える。

 

 

「それもそうか。さて俺は目的も終わったし帰るわ」

 

 

「もう帰っちゃうのかー。まぁ仕方ないよね。

じゃあね比企谷。来週は成人したってことで比企谷んちでお酒でも飲もうねー。」

 

 

「あいよ。適当に連絡くれ。」

 

 

こうして俺の成人式は終わった。

 

意外にも中学の同級生達は会ってもなんとも言われなかった。

キモ谷とか言われずに済んだのは折本がそばに居たからなのかそれとも俺や同級生達が少しだけ大人になったのだろうか。

 

 

さて、夜は高校の同窓会か。

なんとも忙しい1日だな。

 

その分今日はよく眠れそうだ。

 

 

 

もしかしたら夢に振り袖を着たブラウンパーマの女の子が出てくるかもな。

 

 


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