君との…   作:ゆ☆

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君と年越し

12月31日

 

久々にバイトも無く、大学もない大型連休を過ごしている。

 

最近の暮らしぶりといえば、目覚ましをかけることなく好きなだけ寝て、起きたら撮り溜めていたアニメを消化。こんなに幸せでいいんだろうか。

 

大学生になってから、バイトを始めたせいか大型連休というのも全然無かったから高校時代休日はいつもダラダラして小町に怒られていた日々でさえ懐かしく思えるくらいの休日だった。

あぁ小町に早く会いたいなぁ。

2日にはお兄ちゃん帰るからね。待っててくれ小町。

 

 

ちなみに折本とはあの日年越しを一緒に過ごすと約束してからというもの会えていない。

まぁあいつも人付き合いとかあるだろうしな。

決して折本不足でちょっと寂しいわけではない。ほ、ほんとだよ?八幡嘘つかない。

連絡は取っているからいいんだが。

 

さて、普段から掃除は割としているので改めて大掃除ということはしないが折本との待ち合わせまではまだ時間あるし軽く掃除だけするか。

 

 

☆☆☆

 

 

掃除を始めて早1時間。

押入れをひっくり返している途中で中学の時の卒業アルバムを発見してしまい掃除が手につかなくなるという、お約束をしながらもなんとか終了していた。

 

しかし中学の卒業アルバムか。

実家に置いておいて誰かに見られたら恥ずかしいからと持ってきてたんだなぁ俺。

ほろ苦い思い出が蘇えりそうになるな。

 

 

つい茶髪のパーマがかかった女の子を探してしまう。

まだあどけなさが抜けきらぬ顔をしている。

 

しかし、笑った顔はそんなに変わらないかもな。

 

今と同じ暖かい笑顔がそこにはあった。

 

 

さーてそろそろ準備しますか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

家が近いにもかかわらず何故か集合場所は駅だった。

 

 

「おーっす!久々だね比企谷!」

 

 

「うっす。」

 

 

「よしっ!じゃあちょっと行きたいところあるから付き合って!」

 

 

「あ、あぁ別に構わんが。」

 

相変わらずだなぁこいつは。

 

 

結局着いた先は近くの大型ショッピングモールだった。

 

 

「いやー凄い人の数だねー。

比企谷はぐれないでよ?」

 

 

「まぁ年末だしな。どこもこんなもんだろ。

というかそれはこっちのセリフだ…。」

 

 

「んー何から見ようかなぁ。

とりあえず適当に歩きながら決めよっか!」

 

 

「そうだな。」

 

しかし、ここでじゃあまた後で集合な。と別行動を起こさないだけ俺も少しは成長したんだなぁ。

 

 

 

「ねー比企谷ー。このコートよくない?今着けてるマフラーに合いそうだし買っちゃおうかなー。」

 

 

「はいはい似合う似合う。レジ前凄い混んでるしとりあえず1回店出ていいか?トイレも行きたいし。」

 

 

「なにそれほんとてきとーでウケる。

うん、待ってて。あたしもまだちょっと見たいし。」

 

 

 

「あー結構買ったなー。」

 

あれからたっぷり1時間半くらいこいつの買い物に付き合わされた…。

 

 

「ほれ、荷物持ってやるからよこせ。

そろそろガキ使見たいし下のスーパー寄って帰ろうぜ。」

 

 

「あ、ありがと。

うん、そうだねー。じゃあ行こっか比企谷んち。

ってかそこはガキ使じゃなくて紅白だからね!」

 

もうナチュラルに俺んちだと決定してるのは気にしたら負けだきっと。

 

 

「あーもうなんでもいいからとりあえず帰るぞ。こんな人混みに居たら体力使って夜に初詣行く体力がなくなりそうだ。」

 

 

 

☆☆☆

 

 

こうして2人でコタツに入るのも、もう慣れ親しんだような感じがするほどなんだか違和感がなくなってしまっている。

 

 

「なんかさ、こうやってコタツに入ってボーッとしてるとさ超冬だなぁって感じするよね。」

 

 

「あぁほんとそれな。マジそれ。それしかないまである。」

 

 

「晩御飯は年越しソバ食べて、足りなかったらお参りの時何か出店で食べようよ」

 

 

「別に俺はそれでかまわん。

っていうか逆にそんな適当でいいのか?」

 

 

「あーいいのいいの。どうせ実家帰ったらお母さんがおせちとかいっぱい出してくるしそういうちゃんとしたのはいいかなーって。」

 

 

「しかしあれだ、友達と年越しなんてしたことないからこんなにグダグダしてるのが正解なのかわからんのだが。」

 

年越しってこんなもんでいいのか?

 

 

「いいんじゃない?別に。

人それぞれでしょそんなの。

あたしは別に嫌じゃないよ比企谷とこうしてグダグダしてるの。」

 

 

「お、おうそうか。」

 

 

「さてと、じゃあお蕎麦茹でちゃおっか」

 

 

「作るなら急がないとだな。俺も手伝うわ。のんびり作ってたら年越しそうだ。」

 

 

 

「あっ比企谷、そこのネギ切っといて。」

 

 

「わかった。おい、鍋沸騰寸前だぞ。」

 

 

「おっと危ない危ない。

ふふっ。なんかウケるねこういうの。

あたしと比企谷がこんな風に仲がよくなるなんて中学の時のあたしに言っても絶対信じないだろーなー。」

 

 

「まぁそりゃあそうだろ。俺も想像すら出来なかっただろうな。

あっおい、ネギ切ったぞ」

 

 

「ありがと、じゃあもう少しで出来るし先座って待っててー」

 

 

「悪いな。じゃあお茶でも入れて待ってる」

 

 

こうして2人で作った蕎麦も食べ、後は年越しを待つだけになった。

 

 

「あー後少しで今年も終わるねー。

ねーあれやろうよ、カウントダウンで0になった瞬間ジャンプするやつ。」

 

 

「いや、やらねーから…。

ほら、もうカウントダウン始まったぞ」

 

3 2 1

 

「あけおめー!

今年もよろしくね比企谷!」

 

 

「おめっとさん。

おぉ、こちらこそよろしくな。」

 

 

「よしじゃあ神社行くよ!」

 

 

「あっおいちょっと待て。

これ、やるよ。」

 

 

「ん?なにこれ?

は?え?手袋?なに、どうしたの?」

 

 

「あーあれだ。クリスマスプレゼントってことで。

今日寒いのに手袋してなかったろ?

それで思いついてな。」

 

 

「なにそれ…すっごい嬉しいありがと…。

ってことであたしからも、はい!これあげる。」

 

 

「あん?これは…メガネか?」

 

 

「そ。今日見てた服屋さんにあった普通の伊達メガネだけどねー。

それかけてれば大学でもみんな比企谷のこと暗いとかじゃなくて知的な感じに見えるかなーって思って。」

 

 

「メガネで知的って安直なところが折本らしいな。

でもまぁ、ありがとな。」

 

 

「ん。よしじゃあ手袋はめて改めて神社行こっか。」

 

 

 

☆☆☆

 

 

「流石に普通の近所の神社だからそこそこ人がいる程度だな。

昼間のあの人混みを見てからだから余計に少なく見える。」

 

 

「あっそれある!

じゃあお願いごとして、お守り買って、おみくじひくよ!」

 

 

 

 

「ねーねー比企谷はなんのお願いごとした?

あっおみくじ大吉だウケる。」

 

 

「いや、言わねーだろ…。

は?メチャクチャいいなそれ。俺なんて吉だったぞ。」

 

 

「吉のその微妙な感じっぽいところがなんか比企谷っぽいよね。ほんとウケる。」

 

 

「うけねーよ。

ほら、もう夜遅いし帰るぞ。」

 

 

 

 

「今日はありがとね比企谷」

 

 

「あーいやこっちこそ、悪いな。

こんな過ごし方で。」

 

 

「なんで?全然よかったじゃん今日。

大事なのはどう過ごしたかより誰と過ごしたかだよ☆」

 

 

「なんだそりゃ。まぁいい。

そのあれだ、今年もよろしくな折本。」

 

 

「うん。こちらこそ今年もよろしく!

じゃあまた新学期!」

 

 

「おう、じゃっ。」

 

 

 

こうして折本との年越しは終わった。

 

そして新年も隣には折本がいた。

 

隣に折本がいることが自然になりつつある今、今日思い出したあの頃の気持ちを思い出しつつある。

 

否、確実にあの頃より強い気持ち。

 

これは勘違いだと思いつつもどこか否定したくない、しちゃいけないとも思いつつある気持ち。

 

色々なことが頭に浮かび思考の渦にダイブする前に考えることをやめる。

 

 

 

まぁ待っててくれよ、同級生(折本)


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