問題児扱いなら問題児らしく好き勝手しようじゃないか   作:きりがる

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02 狐耳に尻尾、触らずにはいられない!ってね。

 

 

 

 

 

 

 白夜叉ちゃんと別れてから僕たちはノーネームの居住区画の門前に着いた。どうやらここは魔王の被害にあった場所のようだ。

 

 門を開ける。瞬間、乾いた風が全身を撫で付ける。そして、一面が廃墟だった。

 

「ふ~ん……」

 

 他の三人が唖然としている中、僕だけがそう呟きながら廃墟へと向かい、色々観察していく。落ちていた木材を踏んだけど、それは風化していたのか、さらさらと崩れて風にのって消えていった。

 

 この風化しきった廃墟の光景が魔王の爪痕ね……何百年経てばこうなるのだろう。でも、そうなれば木造建築なんて崩れ果てているはずなのに、ここは形を保ったままだ。何らかの能力で無理やり作り上げられたのかもしれない。

 

 後ろで黒ウサちゃんが三年前の出来事だといっているのが聞こえる。

 

 でもまぁ、僕がその気になってそういうキャラを創り出したり、能力をもたせた魔獣を創り出せばこれくらいできるよね。あれ? そうなると僕が魔王認定されるんじゃね? やんないけどさ。

 

「おい、黒葉。一人で何してんだ?」

「ん? ああ、主人公君か。なに、物珍しい光景に見惚れていただけさ」

「見惚れるような光景かよ。これが魔王によって作り出されたというのなら…魔王はどれだけ強大な力を持っているんだろうな? そう考えると魔王と戦うのが楽しみになってこねぇか?」

「おいおい、なんてこと言ってくれるのさ。僕は戦いができない非戦闘員だぜ? 君みたいに戦いを楽しむなんて素敵な真似出来ねーんだよ。戦うとしても、僕は戦わない。精々、頑張るといいよ」

 

 ひらひらと手を振りながら十六夜君に背を向けて黒ウサちゃん達の元へ向かう。

 

「……なんだ、そんなつまんねーやつだったのか」

 

 心底がっかりしたかのような声が聞こえてくる。勝手に期待して勝手に見限るくらいなら僕とかかわらなければいいのに。ま、僕がこんな奴だってわかったんだから、これからは余計なちょっかいは出してこないだろう。現状、話せる相手が黒ウサちゃんだけとか……こっちの世界でもぼっちになりそうだ。

 

 それに、嘘は言っていない。僕が戦うんじゃない、僕の駒が戦うんだから。自己強化できる寄生型の魔獣を創ればいいだけだけど、平和なあの世界に必要はなかったから……これから先に必要になってくれば考えるさ。

 

 さーて、黒ウサちゃんでも誂いに行こうっと! どんだけ嫌われようとも、黒ウサちゃんは一ヶ月僕を無視できないしね。

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 “ノーネーム”・居住区画、水門前。

 

 居住区を素通りして水樹の苗を植えるところまで来た。貯水池では既に誰かがおり、そのチミっ子達は掃除道具を持って掃除をしているようだ。うえ、マジかよ…僕ってガキは嫌いなんだよね。五月蝿いし、言うこと聞かないし。何より五月蝿いし。最近のガキはマジでウザいから嫌だ。もっと純粋な子がいないものか……このご時世では無理だろうけど。こっちの世界の子供達はいい子であって欲しい。

 

「あ、みなさん! 準備は整っていますよ!」

「ご苦労様ですジン坊っちゃん♪ 皆も掃除を手伝っていましたか?」

 

 わいのわいのと騒ぎ出す子供達だが、黒ウサちゃんの指を鳴らすと同時に訓練されたかのように横一列に並びだす。ほうほう、よく言うことを聞いているようだね。これは現代っ子と比べて賢いかな? 

 

 何やら黒ウサちゃんが厳しい声音で厳しいことを言っているけど、最後がお母さんみたいなことというか先生みたいなことを言っていた。なに、甘やかせばこの子達の将来のためになりませんとか。随分とテンプレチックなこと言うね。でも、その御蔭でしっかり育っているんだろうけど。

 

「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 

 耳に響くような叫び声。元気が良すぎるくらいの子供達に上手くやっていけるか先行きが不安になってくる。まあ子供はなんだかんだ純粋で大人がわからないようなことも察することができる。僕のような人間性も直ぐに看破されるだろうから、子供の方から来るなんてことはないかもしれないね。よくわからない相手や面倒くさそうな相手には子供も流石に来ないでしょ。

 

 十六夜君が黒ウサちゃん達と水樹を開放しに行く中、僕は一人でフラフラと散歩気分でもと来た道を戻り、観察しながら歩いていた。

 

 まるでホテルのような本拠である屋敷を発見し、その隣に館が有るのも確認する。その館からは子供達の声が聞えることから、子供達の住んでいる館なのだろうと予想をつける。なら、僕達の過ごすところは大きな屋敷の方かな?

 

 そちらの方へと向かうと、丁度入り口から小さな女の子が出てきたところだった。その女の子は割烹着姿で頭に狐耳をつけ、尻尾が二本生えていた。おお、狐っ娘だ。

 その狐っ娘も僕に気づいたのか、パタパタと此方に走ってきた。

 

「あの、どちら様でしょう? ノーネームに何か御用ですか?」

 

 んー、ちょっと警戒してるかな?

 

「ああ、僕は今日異世界から問答無用で喚ばれてノーネームに入ることになった、白崎黒葉だよ。ここがどんなところか散歩してたんだけど…あ、黒ウサギちゃん達は向こうで何か作業してたよ。あの調子ならもう少しかかるんじゃねーかな」

「そうでしたか! 私はリリと言います。よろしくお願いします」

「うん、よろしく。さて、今日は疲れちゃったから屋敷に入ってもいい? 休みたいんだけど……」

「ええ、勿論です! 直ぐにお茶でもご用意しますね」

 

 リリちゃんに着いて行く。案内されたのは大広間のようなところで、そこのソファーに座ることにした。すると、直ぐにリリちゃんがお茶を用意して目の前に置いてくれる。

 

「悪いね」

「いえいえ。お口に合いましたでしょうか…?」

 

 そう問われたのでもう一口お茶を飲む。うん、普通に美味いと思う。心配そうに見てくるリリちゃんの尻尾は不安そうに揺れており、狐耳はペタンとなっていた。そう言えば黒ウサちゃんの耳も触れてないし、触ってみたいな。

 

「うん、普通に美味しい」

「それは良かったです!」

「お茶一つでそんなに心配することかい? まあいいや。それよりさ、リリちゃん。ちょっと狐耳と尻尾触らしてくれない? 僕のいたところは君みたいな子がいなかったから珍しくてね」

「耳と尻尾…ですか? 別に構いませんが……や、優しくして下さい……」

「オッケーオッケー。さ、カモン!」

 

 なんとリリちゃんに許可を得れたのでカモンと手招きして、近寄ってきたリリちゃんの脇の下に手を差し込んで持ち上げて捕獲。そのまま僕の膝の上に乗せて愛でることにする。

 

「じゃ、ちょいと失礼して……」

「ひゃわッ!? く、黒葉さん……!?」

「……おお、これが狐の尻尾…ふわふわもふもふしてるね。手入れしてるのかな?」

「んっ…く、擽ったいです……」

「んじゃもうちょっと力込めて触ろっか。耳もふわふわしてるし、ずっと触っていたくなるな」

 

 くにくにと耳を弄り、もふもふと尻尾を揉んでいると、どうやら尻尾の付け根が敏感だったようでキュッと握るといい声で鳴いていた。

 

 いくら小さい子だとしても、女の子とこんなに密着して好きに弄ってるなんて初めて? やだ、興奮しちゃう…! 見ようによっては小さな子を襲っているロリコンにしか見えないんじゃない? うわ、信頼も信用も勝ち取っていないのにこんな姿見られるとか、ゲームオーバー手前かよ。僕はロリコンじゃないからな。

 

 未だもふもふして事故ったと見せかけてお尻を触るなど、若干セクハラの混じったモフリタイム中。その途中で何やら外が騒がしくなってきた。リリちゃんは未だに真っ赤になって僕に抱きついたままだけど、それならそれで都合がいい。要らない心配をさせないで済む。

 

 モフりながら魔獣創造にて魔獣を創造する。リリちゃんの後ろで音もなく、フクロウ型の魔獣が創り出された。魔獣のモデルはミネルヴァ……邪眼は月輪に飛ぶという作品からだ。

 

 そのミネルヴァに偵察を頼んだ。敵であるなら呪毒にて殺し、敵じゃないなら戻ってくるだけ。ギョロついた目からは呪毒を垂らしているが、創造主である僕には勿論放たないようにしている。自分の魔獣に殺されるなんてありえないからね。絶対服従は基本条件だ。

 

 音もなく窓を開けて飛び立ったミネルヴァは夜空に消えていく。少し待てばいいかな。

 

「そうだ、リリちゃん。お風呂って入れる? 水の中に飛び込んだから流石にお風呂に入ってさっぱりしたいと思ってたんだ」

「ぁ…ど、どうでしょう…確認しないと……ひぅ!」

「あ、ごめんごめん。じゃ、ちょっと行ってみようか。十六夜君が水樹を奪ってたし、お風呂に入れる可能性もワンチャンあると思うんだよ」

 

 つい耳の中に指入れちゃった。それに、ミネルヴァが帰ってきた。どうやら襲撃というわけでもなかったのか、見てくるだけで終わったらしい。まあミネルヴァだったら殺すのも一睨みだけだから瞬殺だろうけど。

 

 溶けるように僕の影の中に消えていったミネルヴァは、きっとこれからも活躍してくれるだろう。

 さて、そろそろリリちゃんも開放してっと……案内よろしく。

 

「ふぅ…ふぅ……で、では行きましょう」

「うん。リリちゃんの尻尾、気持ちよかったよ、また触らせてね」

「ふ、二人きりの時にお願いします……」

 

 わぉ、顔が真っ赤だ。その顔を隠すように僕に背を向けて、下の階へと降りていく。どうやら風呂場は下にあるらしい。よし、のんびりお風呂に入って、さっさと寝ますか。

 

 

 

 

 

 




ゲスト出演、ミネルヴァさんでした。空那かどうかは……
ミ「キエェェェッ!!」

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