ARMORED STRATOS 兎と鴉の唄   作:バカヤロウ逃げるぞ

28 / 32
場面が飛び交いちぐはぐな回。
それと原作セシリアが好きな方々には、本当に申し訳ないことをしてしまいました。


28 煽り合戦

「舐め腐りやがって! あの野郎ふざけんじゃないよ!!」

「落ち着け博士、ここで要らん行動を起こせば後々問題になるぞ?」

「知るかそんな事!!」

 

 突如として研究所に鳴り響いた束の怒声に、厨房で片付けをしていたジャックとクロエは何事と飛ぶように研究室へと舞い戻った。そこで二人が目にしたのは般若の如き形相を浮かべコンソールを操作する束の姿だった。

 ジャックは培った経験と勘で彼女が良からぬことをしていると思うとすかさず束に飛びかかり、コンソールから体を引き剥がすとそのまま羽交い絞めした。

 クロエは何故束があそこまで怒り狂っているのか分からなかったが、束が座っていた椅子の付近に浮かぶディスプレイに映されているIS学園の映像を見るとそれに原因があると考え、すかさずコンソールを操作し映像を巻き戻してその瞬間を割り出した。

 

「あのチビふざけた真似しやがって……よりにもよってちーちゃんの名前を出してあの態度だと!?」

「博士、いい加減にその金切り声を抑えてはもらえないか?」

「何がちーちゃんの弟子だ? やめちまえよ!!」

 

 ジャックの穏やかな呼びかけにも耳を貸さずに束はディスプレイに映る銀髪の少女に対する怒りを抑える様子もなく、ひたすらに罵倒を繰り返した。

 因みにクロエはこの時束が何を操作していたのかを調べていたが、潜入させていたカメラに取り付けられていた隠し武装でその少女を攻撃しようとしていたことを知り頭痛を覚えていた。

 

「兎は二羽もいらない! 私一羽で充分だ!!」

(もう駄目か……)

 

 いよいよ意味不明な言葉を発し始めたのを機にジャックは穏便に済ませることを諦め、強硬手段へと打って出た。

 

「悪く思うなよ」

「その皮剥いでパイにしてや――ッ!?」

 

 羽交い絞めを解くとジャックはすかさずその腕を束の首に回し、力を加えて彼女の首を圧迫した。

 突然酸素を取り込めなくなった束は首に巻き付いているモノを取り除こうとするもそれが出来ず、ならば今自分をアームロックしている人物を振りほどこうと暴れ出した。

 

(なっ!? 中々に――!)

 

 ジャックは自分の肩にも届かない身長の束がまさか自分を振り投げられるほどの力を持っていたことに驚かされた。

 天災と呼ばれているのは頭脳だけではない。

 しかしジャックとてPlus。元々は強力な兵士を生み出す技術で得た肉体と数々の修羅場を掻い潜った経験と、長きにわたって培った戦闘技術を総動員し振り回されていた状態から形勢を奪い返す。

 まるで釣り上げた暴れる巨大魚を抱きかかえる原住民の様だとは、この光景を見ていたクロエの弁である。

 

「あ……グガ……」

 

 一方束は何時まで経っても振りほどけず首を圧迫する力が一層強くなったことで血流も悪くなり徐々に視界が暗くなり意識が遠のき始めるのを感じた。アームロックしているジャックも漸く彼女が弱り始めたのを察知するともう一度慈悲を掛ける。

 

「ギブアップするか?」

 

 その慈悲にすかさず絡めている腕を叩く形で束は応えた。

 

 

 

 

「つまりあの少年が一方的に叩かれ、しかも親友の名前を出されたことに博士は激怒した、と言うことでいいのだな?」

 

 アームロックから解き放たれた束が咳き込みながらも呼吸を整えた頃に、クロエが解析した情報を基にジャックはそう問いかけた。

 

「だって~。いっくんをいきなり引っ叩いたと思ったら、今度はちーちゃんに汚点を残した張本人だって言いやがったんだよ?」

「だからといって、カメラに仕込ませてある武装で殺そうとした理由にはならんぞ」

 

 ジャックも怒りを抱いたことに対してはそこまで否定的にはならなかったものの、彼女をここまで怒らせた張本人を排除しようとしたことに関しては流石に見逃すことは出来なかった。叱られた子供の様に束は俯きながら指先をつんつんとする。

 これ以上責任を追及するのは特に意味が無いと判断したジャックは、クロエが解析していた映像を改めて見ることにした。

 最初に観察したのは、知らず知らずのうちに束を怒髪天にさせた張本人。

 銀色という目立ちやすい頭髪を持ち、左目には黒い眼帯を着けている。制服の改造が許されているIS学園において、彼女のは所謂軍服系に仕上げられている。加えて背格好は小柄なものの、その佇まいに歩き方からしてただの少女ではないことをジャックは直ぐに理解した。

 

(真似ではない。本職の人間か)

 

 少女が軍人であること自体は特に疑問を持たず、しかし何故軍人がIS学園に現れたのかという疑問が残る。

 そしてその少女の容姿が、今隣りに居る少女(クロエ)に似ているということが、更にそれを加速させた。

 

「……博士、この少女の身元の割り出しを――」

「あの子は、所謂私の妹です。ジャック様」

 

 束に頼もうとしているところにクロエは割り込むようにしてそう言った。

 

「私は遺伝子強化兵士開発計画のプロトタイプ。私はこの姿に成長するまでは期待値通りの性能を持っていたらしいのですが、プロトタイプである私たちは要求されていたスペックを満たすことが出来なかったため次世代型を開発するためのデータ回収を目的として扱われました。あの子は、私たちやその妹たちのデータを基に改良に改良を重ねた完成型、私たちが成るはずだった姿です」

 

 映像に映る妹だけを見つめながらクロエは感情を一切込めず、まるで機械の様に淡々とその事実を述べた。

 

「何故、一目見ただけでそうと分かる?」

「C-0037。それが彼女の製造ナンバー。私は、彼女が鉄の子宮で育つ姿を見せられたことがあります。容姿がその時とあまり変化が見受けられないので分かったのです」

 

 先程と変わらずただ事実をクロエは話し続ける。

 

「……何か思うところはあるか?」

「複雑な気持ちですね。もう少し生まれるのが遅ければ私は完成型として誕生し、紆余曲折あってあの場所に居たのかもしれません。ただ――」

 

 クロエは束の方へ振り向いた。

 

「プロトタイプと言われようとも、お母さんたちと出会えただけでも私は他の姉妹たちの誰よりも幸せ者です」

「くーちゃん……」

 

 その様子を見たジャックはクロエの中でアイデンティティが出来つつあると感じ取った。自分は血は繋がっていなくとも篠ノ之束の娘であるという。完成型を見て複雑な気持ちを抱くというのは取り立てて問題視する必要性は無く、もしもディスプレイに映しだされている完成型と対面したとしても今の様子ならば取り乱したりはしないだろうと彼は思った。

 それは束も思っていることであり、閉鎖的な環境に置いてしまっているがクロエの精神も少しずつ成長していると実感した。

 

「ただ、あの娘を排除するのはどうかと思いますよ、お母さん?」

「ちょっと! 今ここでそれ言う!?」

 

 蘇った当初では考えられないような切り返し。しかしそれに対して束は気分を害することはなかった。束は知らないが、それは仲の良い母娘のやり取りに近いものだからだろう。

 

「あの銀髪の少女の身元はもう少し調べるとして、まだ何か言いたいことがあるのではないか?」

 

 ジャックはそう言いながら映像に映る今まで居なかった金髪の――セシリアと違いハニーブロンドの人物を指し示す。

 

「あのさ、あれってオカマ?」

「……その質問に対して私はどう答えればよいのだ?」

 

 彼からすればまさかそう切り出してくるとは思ってもおらず頭を抱えてしまった。

 

「お、お母さん……」

「あー、ごめんごめん。あれを見た時に思わず呟いちゃったことをそのまま言っちゃった。えーっと、あれはなんで()なのに男の格好をしているのかなぁってね」

 

 束は当然の様に映像に映る人物が男の格好をしている女だと言い、そしてその人物が何故わざわざ男の格好をしているのかという疑問を吐き出す。

 その人物が女だということはジャックも既に気付いており、クロエは言われてから観察して半信半疑だったその事実を確信した。

 

「男性らしい骨格を上手く再現しているようだな。素人相手ならば騙せるだろうが、学園の者たちがそこまで無能とは思えん」

「ジャックくんは、改造しているんじゃなくて()()()()()()()()と考えているの?」

 

 束の問いかけに対してジャックは鼻で笑いながら答えた。

 

「博士の事だ。本当に男装しているだけであれば私が話を振っても食いつかないだろう? それどころか初めて気付くだろうが」

「あはは、お見通しか」

 

 頭の後ろを掻きながら束は舌を出して降参と言った風に笑う。だがその白々しい態度に対してジャックは特に何も反応を示さずに話を続けた。

 

「しかし、もしも男と偽って入学したとなれば大方の狙いはあの少年にあるだろうな」

 

 その推測に束の眼付が急に鋭くなった。

 

「それはどういう根拠でかな? ジャックくん」

「同世代は女ばかりで肩身が狭いと思っているだろう。大型連休中に同性の友に会いに行くくらいだ。そんな境遇で同じISを扱える男性が現れてみろ。親近感も湧けば友になろうとも思うだろう」

「つまり友情ごっこでいっくんを油断させたところをどうにかしようってことだね」

 

 遂にその()()を敵として認識した束はまたしてもコンソールを操作して何かしようと企む。それを見たクロエは直ぐに束の傍に近づくと、彼女の腕を掴み何とか制止させようと試みた。

 

「まあ待て。あの少女の身元がハッキリと分からない現状で排除してしまっては黒幕が掴みづらくなるだけだ。こちらで洗いざらい調べ終わるまで暫く泳がせてもいいのではないか?」

「でもその間にいっくんの身に何かあったらどうするのさ?」

「その時はその時だ。好きにすればいい」

 

 本当はそれでも様子を見るべきだと言いたかったがそれでは彼女が納得しないと考え、ジャックはそのように告げた。その回答に束も満足した表情を浮かべるがこの場でただ一人、クロエだけは納得のいかない表情を浮かべながら腕を組んでいた。

 

「あの、ご納得なされているところに水を差すようで申し訳ないのですが……」

 

 納得する様子の二人を見ていたクロエが申し訳なさそうに口を開いた。

 

「先程から仰る、彼女の身元を洗い出すというのはいったい誰がするのでしょうか?」

「それはジャックくんのネットワークでも使えば――」

「それは博士が――」

 

 そこまで言うと束とジャックはお互いに顔を合わせた。

 

「何故私がすること前提なのだ、博士? 私は実働役であり情報収集は博士の分野だと思っていたのだがな」

「そういうジャックくんこそ、束さんがするつもりだったんだ。言い出しっぺの法則って知らない?」

「待て。私は提案はしたが博士程の情報収集能力は無いぞ」

 

 束の物言いに対してジャックにしては珍しく戸惑いと焦りが見える。

 

「あ、そう。でも別に束さんは必要とはしていないけど」

「……」

 

 今まで散々言いくるめられたりした分の仕返しとしてここぞとばかりに攻め込んでいるのだ。口を閉ざす彼の姿に束はある種の優越感を感じていた。

 

(でも言い過ぎるのもなんだか可哀想になってくるしなぁ)

 

 多少の冗談や皮肉の言い合いなどこれまで何度もしてきたため、こんなことで二人の関係がこじれるとは到底思ってもいない。されど親しき中にも礼儀ありと言うように、やり過ぎれば不快感だけが残る羽目になるだろうと彼女は考える。目の前で自分を何とかしてその気にさせようとあれこれ考えている()のために、一つ手を打つことにした。

 

「もうしょうがないなぁ~。ここは一つ、この束さんがジャックくんのためにひと肌脱いであげよう。条件付きでね」

 

 協力を申し出るも条件付きという一言にジャックの表情がほんの僅かだが引き締まるのを、束はしっかりと捉えた。厄介事を押し付けられるのではないかと身構えているのかもしれないが、彼女はこの間の襲撃の様な無茶ぶりをさせようとは考えておらず覚悟を決めている彼に対してエッヘンと胸を張りながら条件を告げた。

 

「調べるにしても頭を働かせるから糖分がほしいんだよね~。だ・か・ら、何かスイーツが食べたいなぁ……勿論、くーちゃんの分も含めてね」

「あ、ああ。容易いことだ。それならばリクエストも受け付けるぞ?」

 

 無理難題を吹っ掛けられるのではないかと不安を抱いていたにもかかわらず肩透かしとも言える条件を提示され、ジャックは困惑のあまりそのような事を言ってしまった。そして混乱していたとはいえ束に突き入れられる隙を与えるような発言をしてしまったことを後悔する。

 

「気前がいいね、ジャックくん」

 

 リクエストを受け付けると言われ束は椅子でクルクルと周りながらニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。

 

「ならクレープでも頼もうかなぁ? 作業中にこう片手で食べられるようなやつで。具材に関しては束さんはジャックくんに任せるけど、くーちゃんは何が欲しい?」

「そうですね……あえてお母さんと同じ物にしたいと思います」

「と、言うわけで……ジャックくん。クレープよろしくね」

 

 頭をガシガシと掻きながらジャックは二人に注文されたクレープを、具材を任せられるという少々厄介な注文を作るために研究室を後にして厨房へと向かった。

 

(クロニクルの奴め。さりげなく便乗して堪能する気だな)

 

 束がクロエの分も含めてと言ったからではあるが、それを遠慮することなくむしろ全力で享受しようとする姿勢にジャックはまた別の意味で頭を抱えた。束の申し出の時の彼女の瞳が星のように輝いていたのを察知していた時から、彼はこうなると薄々勘付いてはいたが……

 

(甘味の魔性に憑りつかれた者の姿か……)

 

 ジャックはそんなことを考えながら、ボウルに注いだ薄力粉と卵を泡立で混ぜ合わせた。

 

 

 

 それから数日して……

 

「えーっと、あの女の名前はシャルロット・デュノア。男性としての名前はシャルルだね。結果から言わせてもらうと、あの女はフランスのIS産業メーカー『デュノア社』の社長の愛人の娘ってことは分かったよ。ただ、フランス代表候補生として入学しているから一応ISの操縦技術に適性は両方とも高いってことは充分ありえるね。目的は……ちょっと掴みきれなかったね」

 

 束はジャックから調査の労いとして渡されたモンブランをフォークで切り分けながら、謎の多かったその少女――シャルロットに関する調査結果をジャックに言い渡した。

 

「目的は不透明? 出来ればそこまで掴むことが出来ればよかったが……」

「それがさぁ、調べても調べてもハッキリとしなかったんだよ。産業スパイなりエージェントなりハニートラップなり、少しでも命令が出されていれば分かったんだけどさ、デュノア社社長や幹部からそう言った命令が出された形跡が残っていないんだよね」

「我々が考えていた輩とはまた違うと? まぁ、身元がハッキリ出来ただけでも十分だ。ご苦労だったな博士、クロニクル」

 

 モンブランの甘味に酔い痴れる二人にジャックは礼を告げると、クロエはモンブランが乗せられた皿を持ちながら軽く一礼し、束はご機嫌な顔でフォークを持っている右手を振った。

 

「あとはフランス政府とデュノア社がグルであることさえわかれば……」

「あ、ジャックくんの悪い顔、久しぶりに見たな~」

 

 彼の悪だくみを思い描いているその顔を見て束は身をグイっと乗り出してどういった内容か尋ねようとする。

 

「博士が考えている程の内容ではない。ただ、繋がっている確固たる証拠があればこれをカードに出来るのではないかと思っただけだ。役に立つかどうかは別だが、手札が多いことに越したことは無い」

「……今回の調査は、織斑一夏の身の安全の為だけではなく、交渉を有利に進めるためのカードも手に入れる、というものだったのですか」

「流石、策謀の世界でも生きてきた住人だけのことはあるね。でもこれは基本中の基本、でしょ?」

 

 感心するクロエに対して束はジャックにとって当たり前のことだろう、という風に話しかけた。ジャックは当然のことだと腕を組み鼻で笑ったが、どこか満更でもない表情を浮かべていた。

 

「力の束さんに、技のジャックくん。それに束さんたちのバランサーのくーちゃん。もう最強の布陣だよね、これ」

 

 口に入れていたモンブランの切れ端を飲み込み、束は今の自分たちの関係をそう述べた。確かに、今この世界では彼女らに敵う存在など見つけることの方が困難だろう。しかしジャックは心の中ではそう思っていなかった。

 

(私の他にレイヴンたちが来ていることだけが気がかりだ。そう簡単に油断は出来まい)

 

 彼が出会ったレイヴンたちの大半が、彼に協力的な者かもしくは敵対しなかった者たちだけだったが、もし今後明確に敵対するレイヴンが現れれば少なからず自分たちへの脅威になるだろうと考えていた。

 

(もっと早くにその芽を摘まんでおきたかったのだが……)

 

 ンジャムジからもたらされる情報から、相当数のレイヴンとACがこの世界に紛れ込んでいることが分かっている。出現を未然に防ぐことは出来なかった以上、敵対した際に圧倒的優位な立場に居なければならないと彼は思う。

 そのことを束に告げようとしたが、クロエがIS学園に忍ばせた監視カメラの映像に興味を示した。

 

「お母さん、ジャック様。IS学園のアリーナで面白いことが起きています」

 

 クロエに言われた二人は誘われるがままにクロエの背後に立ち、ディスプレイが映し出している光景に意識を向けた。

 

 

 

 

 それはクロエがアリーナの変化に気付くより少し前。

 IS学園アリーナ。

 授業が終わり駆け出す様にそこに向かった一人の少女を除いて、その場には誰も居なかった。

 ISバトルという競技をする為に設計されたため非常に広い空間であるが、ISを展開していない人間がそこに佇むにしてはあまりにも広すぎる。加えて上述した通り彼女以外まだ誰も来ていない無人状態のため、行事の際の熱狂的歓声があるわけがなく静寂がアリーナを支配し、普段耳を澄まさなければ聞くことが出来ない波の音が聞こえてくる程だった。

 中央に立つ少女の特徴的なツインテールが風に靡く。しかし当の本人――1年2組クラス代表であり中国代表候補生、凰鈴音はそんなことに気にする様子は一切なかった。

 

(学年別トーナメントまでそんなに日数は無いけれど……)

 

 鈴は自身の腕に括りつけられたブレスレット――待機状態の甲龍に手を当てながらあることを思っていた。

 

()()()があるとしてもあの一夏なのよ? ……でも、一夏が誰かと付き合う可能性が無いという確証も無いわ)

 

 鈴は今学園中で広がっているある噂に興味を示さないわけにはいかなかった。

 その噂はつい最近突如として学園中に広まったもので、その内容はあろうことか『学年別トーナメントで優勝すれば織斑一夏と交際できる』というものだった。

 最初彼女がその噂を耳にしたときはそんなのあるわけがないと、一瞬で忘れ去られる妄言の類だと鼻で笑ったが、日に日にその噂を信じる生徒の数が増えていくせいで噂が変に信憑性を増していく雰囲気を感じ取った。そしてその噂が広まっているのは一年生だけではない。あろうことか二年生、三年生にまでその噂が広まっていったのだ。学年別トーナメントという年に一度のイベント()と合わせて、まるで神輿の様にその噂も持ち上げられていった。

 初恋の、今でも恋心を抱いている少年が自分以外の女性と交際するという光景を想像するだけで心に苛立ちが芽生えるのを鈴は嫌でも感じていた。

 最早その噂を無視することが出来なくなり、鈴はトーナメントまでの残り日数を機体と自身の身体のコンディション調整に当てるはずだったが急遽さらに技術を磨く方向へとシフトすることにしたのだ。

 

(もし噂が本当ならば、あたしが優勝してその権限を握りつぶせばいい。ただの噂で終わったとしても、それはそれでよし。あいつは、あたしが正面から落としてやるんだから!)

 

 あくまでも噂に頼らず自らの力で一夏を落とそうと決意を抱いた鈴は、ブレスレッドを腕ごと手で掴み、瞑想するように意識を統一させて甲龍を起動させようとした。

 

「これはこれは、中国代表候補生の凰さんでして?」

 

 彼女の集中していた意識を一瞬にしてかき乱す忌まわしい声が鈴の耳に嫌でも入る。鈴は閉じていた瞼を開くも直ぐに三角にして声をかけてきた人物の方へ振り向いた。

 

「オルコット……!」

 

 彼女の専用機のカラーリングと同じく、深い青色のISスーツを身に纏ったセシリアが鈴の方へと歩み寄っていた。鈴の精神を逆撫でするように、彼女とは比べ物にならない女性の象徴を強調するような姿勢をしながら。

 

「オーッホッホッホッ! そんなに怖い顔をしなくてもよろしくて? わたくしは貴女ともう少し仲良くなりたいと思っていますわ」

「誰があんたとなんかと! それに、あんた今日の実習、忘れてないわよ!」

 

 鈴の言う内容とはISを扱った実習が行われたのだが、授業を開始する前にデモンストレーションとして鈴とセシリアの即席タッグと、1組の副担任である山田先生による変則ISバトルが執り行われたというものだ。

 専用機持ちの代表候補生二人に対して担任とはいえ量産機。聞くだけであれば鈴とセシリアの勝利を容易く想像することが出来たが、専用機二機に対して量産機であるラファール・リヴァイヴの性能を十全に引き出した山田先生が勝利すると言う展開になったのだ。だが、その試合の際に鈴は他の生徒には言っていないあることに気付いていた。

 

「あんた、わざとあたしの足引っ張ったでしょ!!」

 

 鈴はIS二機による連携訓練というものは一度も行ったことは無いが、そうだとしても鈴が試合中何度も掴もうとしたチャンスを悉くセシリアにレーザーライフルとBT兵器による援護と言う名の妨害を受けたことでそれに気付いてしまっていた。もっとも、先月執り行われたクラス別トーナメントにおいて一夏との即席タッグで形だけではあるが連携出来ていたことも、確信を抱く証拠にもなっていた。

 

「あら、気付いていらっしゃったのですわね?」

「あんた、何してくれたのよ! おかげでクラスメイトたちの前で恥晒したじゃない」

 

 顔を真っ赤にしながら鈴はセシリアに指をさしながら激しく非難する。言われたセシリアはどこ吹く風と、漸く左右の長さが揃い始めたロール状のサイドヘアーを弄る。

 

「わたくしとしては最大限の援護をしたつもりでしたのに……お気に召さなくて?」

「何の援護よ!? 誰の!? 山田先生に対する!?」

「そうでして」

 

 やけっぱちで言ったことがまさか本当にそうだとは思ってもおらず鈴は面食らってしまい、赤かった顔が元の色に戻りカチンと石像の様に固まってしまう。

 

「こう言うとまた問題にされるかもしれませんけれど、貴女は知らないと思いますけど山田先生は1組の生徒たちに正直なめられていまして。そして先程の実習で織斑先生がわたくしたちと戦わせたのは、わたくしたちに勝つことで山田先生が操縦者としては実力者であると言うことを、なめている生徒たちに思い知らせるためですわ。勿論これはわたくしの単なる推測ですけれど」

 

 セシリアの持論に鈴は反論することなくいつしか耳を貸していた。

 

「しかしながら、もしもあの場でわたくしたちが勝利してしまえば、それこそ山田先生の威厳は地に落ちてしまいまして? しかも貴女、本気で勝ちに行っていましたわよね?」

「そ、それは、その……」

 

 鈴が本気で勝ちに行ったのにも理由はある。簡単なことで、対戦前に千冬から『一夏にいいところを見せてやれるぞ?』と発破をかけられたのが原因だ。

 

「まあ、愛しい人の前でいいところを見せようとアピールするのは当然かもしれませんこと」

「あんた、どんだけ人をおちょくれば気が済むっていうのよ!」

「それに、あの場で負ければわたくしたちにもメリットがありまして?」

「どんなメリットよ! 最近な~んか他の生徒たちからの視線が見下すようなものまであるんだけど?」

「それですわ」

 

 今度はいったいどんな狙いがあったのかを、鈴はまた大人しく聞くことにした。

 

「あの場でわたくしたちが負ければ、わたくしたちには『専用機を使っているのに二人がかりで量産機にも勝てない代表候補生』というレッテルが張られているかもしれませんわ」

「現にもう貼られている気がするけどね」

「そうなれば、『代表候補生なんて大したことない。じゃあ自分たちだって代表候補生に勝てるじゃん』と思いあがる生徒が居るかもしれませんわ。加えて最近出回っているふざけた噂……格下の分際でわたくしたち代表候補生をなめたことを学年別トーナメントで後悔させるための種は十分蒔きましたわ」

 

 この女、本物の悪女だ――

 鈴はセシリアの狙いを聞いてそう思わずにはいられなかった。

 つまりセシリアは、あの時わざと負けることで他の生徒たちに自分たちはあまり強くないと思い込ませておいて、思いあがった彼女らを学年別トーナメントで叩き潰すという魂胆なのだ。

 一般の生徒が専用機持ちに勝利を収めるというのは、それはとてつもなく困難な事である。専用機持ちであれば出そろっている情報を基に対策を立てればよいと考えられるかもしれないが、単純に総操縦時間に圧倒的な差が出来ていることと、己の弱点を克服しようとしない専用機持ちがいるわけが無く、立てた対策が無駄に終わることなど日常茶飯事だ。

 そうした血反吐が出る思いで研究と対策と訓練を通しても、勝利を収めた例はほんの極僅かしかない。セシリアは他の生徒たちを侮らせることで研究も対策も質の低いもの、もしくはさせないようにすることで自分の勝率を上げようと目論んだのだ。格上の者が格下を侮るも勝利することはあるが、格下が格上を侮り勝利を収められるだろうか?

 悪女だと、鈴はそう思うしかなかった。

 

「ところで凰さん。あなたは何をしにこちらへ?」

「見て分からないの? あたしはこれから学年別トーナメント優勝に向けて、特訓するところよ」

「あら、それは奇遇ですわね。わたくしも似たような理由ですわ」

「へえ。あんたのことだから煽るだけ煽って帰ると思ってたわよ」

「種は蒔きましたけれど、収穫するための体力は点けておかなくてはなりませんわ。それに、わたくしは負けるわけにはいきませんので」

 

 セシリアは宝石を繊維にしたような美しいプラチナブロンドの髪をサッと撫で上げると、鈴に対して宣言をする。

 

「わたくしはどんな手を使ってでも優勝しますわ。わたくしが国家代表になるために。そして、優勝して世界の重役たちにオルコット家の当主が無能ではないことを、オルコット家は終わっていないということを、証明しなければなりませんの」

 

 その瞬間、鈴を見つめるセシリアの瞳が普段のおっとりした腹黒少女の物から、獲物を見定める殺人者の物へと変わる。鈴は彼女のあまりもの変わりように一瞬怯むが、次の瞬間にはデジャヴを感じていた。

 

(あれは、大人と同じ目……!?)

 

 自分が敬愛する人と同じ目をしたことと、加えて彼女のこの学年別トーナメントに対する確固たる意気込みに鈴は驚かされてしまう。それに対して自分は噂に踊らされて、噂を握りつぶすためだけに優勝しようとしていたことを、鈴は悔しいが恥じていた。

 しかし鈴が己を恥じたのはその一瞬だけ。いつまでもウジウジと引きずるつもりは毛頭も無い。そしてそれだけ意識の高い同じ代表候補生が優勝を狙っているとなれば自分も負けてはいられないと新たな目標を立てた。そしてそのために鈴は――

 

「あんたも、いろいろと大変そうね……でも、あたしだって負けるわけにはいかないのよ。そうだ! 実習じゃ手抜いていたし、あんたとはまだ一度もちゃんと戦ったことは無いからこの際どっちが上か確かめておかない?」

 

 鈴はセシリアの威圧を受け流し自ら戦いを申し込んだ。それを聞いたセシリアは一瞬迷った表情を浮かべるが、目を細め口の端を吊り上げた笑みを溢す。

 

「わたくし、面倒は嫌いですの……でも、それはそれで楽しそうですわ。本国から余計に渡された新武装のテストをする相手にとって、これ以上の適役はいらっしゃいませんわ!」

 

 そう言いながら左耳につけられた待機状態のブルー・ティアーズであるイヤーカフスに手を伸ばす。鈴もそれに呼応するようにブレスレット状態の甲龍に手を伸ばした。

 お互いのアクセサリーから光が溢れ出て、それが瞬きもしないうちに晴れると二人は専用機を身に纏った状態で佇んでいた。その手には最も信頼できる武装を持った状態で。

 

≪悪いけど、この模擬戦で勝つのはあたしよ!≫

≪あら、よろしいのですか、勝利宣言なんかして? 惨めな宣言にならないよう、頑張ることですの!≫

 

 通信を通した売り言葉に買い言葉。それを試合開始の合図として二人は互いに射撃武装の照準を合わせた。そしてその引き金を引こうと――

 

『ッ!?』

 

 したが、対峙している二人を狙うかのように一発の砲弾がアリーナのグランドに衝撃を伴って突き刺さった。

 砲撃があった方向へセシリアと鈴が視線を動かすと、そこに一機の黒いISがカタパルトの先端部分に佇んでいた。そしてその操縦者――ラウラ・ボーデヴィッヒは腕を組み、変わることのない鉄仮面の様な表情を浮かべながらも見下すような視線で二人を見下ろしていた。

 

「ドイツ製第三世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』……全く、面倒なヤツが現れましたわね」

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……あんた、どういうつもりよ!? 乱入してくるなんて、イイ度胸しているじゃない!」

 

 セシリアは新しいクラスの問題児が現れたことに溜息を吐き、鈴は模擬戦をしようとしたところを邪魔してきた乱入者(ラウラ)に対して抗議する。しかしラウラはそれに応えず鼻で笑った。

 

「中国製第三世代機の甲龍に、イギリスのブルー・ティアーズか。……ふん。データで見た時の方がまだ強そうではあったな」

 

 突然の挑発に鈴は口元を引きつらせ、セシリアの眉間が僅かに皺が出来た。

 

「何? やるの? 模擬戦しようとしていたのに邪魔するだなんて、余程空気が読めないみたいね」

「あら? 凰さんはお優しいのですね。こんな面倒な輩を無視せず相手して差し上げるだなんて。貴女は仏様よりも寛大なのですね」

 

 目には目を。挑発に対して鈴はそう切り返すがセシリアは最早ラウラに対する興味を失っており、どうにかしてさっさとこの場から立ち去ろうと考えていた。

 だがラウラはそんな二人の精神を更に逆撫でる言葉を投げかけた。

 

「二人がかりでも量産機に勝てぬような奴らが専用機持ちとは、余程人材不足と見える。最も、数だけしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はな」

「……あぁ? 今なんつった!?」

 

 双天牙月を激しくグランドに叩き付け、明確な怒りを浮かべながら鈴は叫ぶ。

 自分を馬鹿にされるならまだ怒りを抑えられた。だが、ラウラの物言いは彼女にとって家族のような存在である部隊の皆にまで馬鹿にされてるように思えて仕方がなかった。中国に戻った際に烏大老から簡単な挑発にのせられるなと釘を刺されたが、どうしても我慢出来なかった。

 

「あんたスクラップがお望みなわけね! オルコット! ちょっと手伝いなさいよ! あのチビご自慢のISを鉄の塊にしてやるわよ!」

 

 嫌と言わせない威圧的な協力申請をされたセシリアはここで断ればそれはそれで面倒な事になると思い、溜息を吐きレーザーライフルの安全装置を解除する。

 

「仕方ありませんわ。後で何らかしらの御礼がほしいですわ」

「はっ! 二人がかりで来ても所詮1+1は2にしかならん。下らん種馬を狙うメスとそんな種馬に追い詰められた没落貴族に、私が負けるものか」

 

 この場に居ない一夏のことまで誹謗中傷したことについに鈴の堪忍袋の緒が切れた。双天牙月を握り直し、ラウラに斬りかからんとスラスターにエネルギーを回す。だがそんな彼女に待ったをかけるようにセシリアが肩に手を置いた。

 

「何すんのよオルコット! また邪魔する気なの!」

「凰さん、もう行きましょう。あの方のお相手をするのは良い判断ではありませんわ」

 

 首を振りながらセシリアは鈴にそう言い、争いを止めるように進言する。

 

「はっ。やはり口だけの没落貴族だったか。ならば貴様なんぞに用はない。さっさと尻尾を巻いて逃げるんだな、負け犬」

 

 そんなラウラの全てを見下し、傲慢に満ちた言葉を聞いてセシリアは目を瞑りワザとらしい大きな溜息を吐いた。

 

「それはとっても助かりますわ。傲慢で無能な左遷指揮官の相手をする程面倒なことはございませんわ」

 

 今度は嘲笑を浮かべていたラウラの眉間に皺が寄った。

 

「貴様、どういうつもりだ?」

「あら? 言葉の通りですわ。わたくし、知っていますのよ。貴方がドイツ軍人であり、世界有数のIS運用部隊の隊長であることぐらい」

 

 セシリアはロール状の横髪を弄りながら淡々とラウラに言葉を投げる。隣に居る鈴はというと、セシリアがラウラの素性を知っていることに驚きを隠せない。どれ程の情報網が彼女の中に有るのか。唯の腹黒い少女と思っていたが、何故だか言いようのない恐怖心を彼女に抱き始めていた。

 

「ドイツ軍IS運用部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊長。それがドイツでの貴女の肩書きですわね。確かにこれだけを見れば優秀な人材であり、他の生徒たちと比べればISに対する認識も、操縦者としての覚悟も格上ですわ……ですが、所詮その程度ですわ」

「なんだと……?」

 

 ラウラの顔から余裕が消えかけ徐々に怒に変わっていき、声も挑発的なものから威圧的なものに変わりつつある。

 

「何故軍人であり精鋭部隊の指揮官たる貴女が、こんな極東の学園にいらっしゃったのですか? 没落寸前のわたくしと違い貴女ほどの肩書きならば、国家の重鎮から秘蔵っ子扱いされ手元に置かれる事が常。なのに何故此処に飛ばされたのでしょうか? わざわざ専用機を持たせて。わたくしは織斑さんに誹謗中傷をしてしまいましたわ。ですが貴女は初対面で織斑さんを殴打ですか。成る程。ドイツから此方に飛ばされるのも容易に考えられますわ」

「……貴様、何が言いたい!」

 

 声を荒げながらセシリアを問い詰める。余程彼女の煽りが気に食わないようだ。

 

「数だけしか能が無くて人材不足? 貴女如きが隊長をしている時点で底が知れますわ。古いだけが取り柄の国? そんな国に二度も負けておきながらよくもそんなことを言えますわね。ハッキリと言わせていただきますが、貴女、本当に部隊の隊長ですの? ひょっとして一度も指揮したことの無いお飾り隊長ではございませんこと? それならば貴女の部隊の隊員たちはおそらく泣いて大喜びしていることでしょう。何故なら貴女のような傲慢で無能な隊長が左遷されて居なくなったのですから。きっと今頃、新しい隊長の選定でも始まっているに違いありませんわ」

「ッーー!! 言わせておけば!!」

 

 セシリアの徹底した侮辱にラウラはガリッと歯軋りし鬼の様な形相を浮かべると、シュバルツェア・レーゲンのレールカノンの照準を横髪を弄りながらニタニタと嫌らしい笑みを浮かべるセシリアの額に合わせた。そんな分かりやすい攻撃にセシリアがわざわざ当たってやるつもりは無く、スラスターを吹かし離陸して砲弾を躱した。比較的近くに居た鈴も衝撃が来る恐れがあったため同じ方法で回避する。

 

≪簡単に釣れましたわ≫

 

 プライベート・チャネルを通してセシリアが鈴にそう喋りかけた。その声色からしてほくそ笑んでいるのが容易に想像できる。

 

≪凰さん。同じ代表候補生としてアドバイスして差し上げますが、戦いは自分のペースから始めるのが吉ですわ。加えて、頭に血を上らせて冷静な判断が出来ぬようにすればなお良し。わざわざ相手に乗せられて戦い始める必要など皆無、ですわ≫

 

 その為のあの過剰な煽りだったのかと鈴は思うが、そうだとしても敵ながら哀れみすら抱くほどの煽り方だと思わざるを得ない。一般生徒ならば心が折れるかもしれない、と彼女は思う。

 しかしこちらにペースを作ってくれたことは事実。一夏へ平手打ちをした分に加えて、彼女の仲間を侮辱したことを後悔させてやると鈴は意気込み、双天牙月を握り直し龍咆の安全装置を解除した。

 

≪凰さん。先ほどの実習とは違い今回はちゃんと援護して差し上げますわ。中遠距離からして差し上げますので、近接接近戦はお任せしますわ≫

「上等よ! 任せなさい!」

≪勝てると思うな、貴様ら!!≫

 

 凄まじい速度で接近するラウラを迎え撃つように鈴は突撃し、セシリアはBT兵器を展開しレーザーライフルの照準をシュバルツェア・レーゲンに合わせた。

 学年別トーナメントに先駆けて、青と赤と黒のISが衝突した。




戦闘描写ですが、ちょっと文字数が増えまくったので一度切らせていただきます。
更新は、また遅くなります。
本当に申し訳ありません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。