ARMORED STRATOS 兎と鴉の唄   作:バカヤロウ逃げるぞ

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セッシーを書いている時が一番楽しいって、どういうこと?

お気に入りが1000越えしたことに驚きを隠せていません。更新間隔が不安定ではありますが、これからも皆様の期待に添えるよう頑張ります。


16 それぞれの事後、それぞれの始まり

 クラス代表決定戦が終了し、若干のざわつきがアリーナに残りつつもその熱気も次第に引いていく。その中でアリーナのピットには4人の人物が居た。ISスーツ姿のままの一夏、その傍らには箒。その二人の正面に立つ千冬と、そのすぐ後ろに真耶が立っていた。

 

「さて、織斑……言いたいことは多くあるが、手短に言おう」

 

 腕を組み仁王立ちしている千冬は、険しい表情を浮かべながら一夏に告げる。

 

「本時刻をもって白式を数日間こちらで預かることとなった。異論は認めん」

「……それってやっぱり、雪片弐型が原因なのか?」

 

 一夏の推測に対して千冬は無言で頷く。

 

「異論は認めん、と言ったが、理由は伝えておこう。その方が、お前も納得するだろう?」

 

 千冬はそう言うと空間投影ディスプレイを呼び出し、そこに先程の試合の映像ログを映し出した。

 

「お前が体験した通り、ISバトルと言うのはISが保有するシールドエネルギーを削り合い、双方どちらかのエネルギー残量が先に0になるかで勝敗をつけるスポーツ(・・・・)だ。そこにはシールドバリアーと絶対防御による操縦者の生命の保障が無くてはならない。それ故に―――」

 

 千冬は一度言葉を区切ると、雪片弐型によってセシリアの頬に傷をつけ、髪の毛を切り落とした瞬間を映し出す。それを見た一夏は歯を食いしばり、後悔の念を顔に出した。

 

「この様な搭乗者に傷害を及ぼすようなことは、あってはならない(・・・・・・・・)。雪片弐型は誰が見ても攻撃力過剰と判断できるだろう」

 

 千冬はそこまで言うと映像と空間投影ディスプレイを消し、一夏へ歩み寄る。

 

「よって、お前のIS……正確に言うのであれば雪片弐型か……それを我々が預かり、威力に関して制限(リミッター)を設けさせてもらう。それが終われば早々にお前に返却することになる。わかったか?」

 

 千冬はそう言うと右手を差し伸べ、待機状態(ガントレット)になっている白式を提出するよう促す。彼女の懇切丁寧な説明を聞いた一夏は異論はせず頷き、右腕にはまっている白式を外し千冬へ手渡した。

 すると今度は千冬の後ろに立っていた真耶が、何かとてつもなく厚い物を持って近づく。

 

「作業が完了し次第白式は織斑君に返却されますが、専用機を保有する場合多くの規則があります。なので、白式と離れ離れの数日間の間にこちらを読んでおいてくださいね」

 

 真耶はそう言いその厚い物を両手で持って一夏に渡した。その表紙には「IS教則本 改訂第3版」と記されており、IS用教科書兼参考書の厚さに匹敵する本だった。

 それを受け取った一夏は冷や汗を浮かべ、試しに数ページめくってみる。そのページのどれもが半紙に近い薄さであり、途方もないページ数であることを容易に想像させた。

 

「……織斑、あの時何故雪片弐型を咄嗟に引いた?」

 

 途方に暮れ溜息つく一夏に対して千冬は尋ねた。

 

「セシリアが『零落白夜』って叫んだからさ。あいつがそう叫ばなかったら、躊躇わずに雪片弐型を振っていただろうな」

「『零落白夜』を知っていたのか?」

 

 しつこく尋ねる千冬に一夏は煩わしさを感じていたが、彼女の真剣な表情がその煩わしさと反論を押さえつけ答えた。

 

「ISの資料で見たんだよ。この一週間、箒から剣道で体を鍛えてもらった傍ら、自分でもISの事を調べようって思って図書館で色々資料を漁ったんだ。そしたら、ほとんどの資料に千冬姉のモンド・グロッソでの活躍と『零落白夜』の事が書かれてあったんだ」

「“織斑先生”だ、馬鹿者。それで、お前はその資料を見て『零落白夜』がバリアー無効化攻撃だということを知ったのか」

 

 そう言われて頷く一夏。

 

「それに、一部の資料だと“絶対防御すら無効化する”って書かれてあったのを思い出して―――」

「それで、オルコットに斬撃する直前に腕を引っ込めて刃を当てないようにしたのか」

「まったく、初めての試合だというのに器用な事をしてくれる」

 

 一夏の言い訳を聞いて、箒は何故彼が斬撃を中途半端なものにしたのかを知り、千冬は不慣れなくせに器用なことをした弟に呆れながら溜息を吐いた。

 

「……だが、お前が独学していたおかげで大惨事を防ぐことは出来た。本来ならば試合中に、こちらからそういった情報を伝えるべきだった。そのことを謝罪する。すまなかった」

 

 千冬はそう言うと一夏に対して頭を下げる。そのことが、その場にいた3人にとって酷く衝撃的だった。

 普段の孤高で高圧的な態度をとっている彼女が、一般生徒である一夏に頭を下げるなど2人にとって予想出来るものではなかった。

 だが千冬にも頭を下げなくてはならない理由はある。雪片の威力と危険性を知っているのは他ならぬ彼女(千冬)

 

 試合を理由に公平を保つ。

 

 危険性があるにもかかわらず、そんなちっぽけなことを言い訳に雪片の情報通達を怠った。

 もしも一夏が独学せず剣道だけをしていたとすれば、『零落白夜』の事など知らずそのままセシリアを斬り―――最早千冬の力ではどうしようも出来ないという事態になっていただろう。

 あの時しっかりと情報を伝達していれば、あんな危ないことにはならなかっただろう。千冬は自身の判断の誤りをしたことを正直に一夏へ詫びた。

 

「そ、そんな、頭を上げてくれよ!」

 

 一夏は自分に頭を下げている姉の姿に痛ましさを覚え、頭を上げるように頼む。千冬は彼の懇願を聞きそのまま大人しく顔を上げた。

 

「とにかく今回の事態は私にも責任がある。そのことは覚えておいてほしい。話は以上だ。今日は帰って休むといい」

 

 自習は忘れるなよ。

 千冬はそう付け加えると翻り真耶と一緒にピットを去って行った。一夏と箒はそれを見送り二人が扉の向こうへ見えなくなると続くようにピットを後にした。

 

 

 

 

「……」

「……」

 

 一夏と箒はアリーナから寮への道を並んで歩いていた。

 時刻は夕方。夕日が辺りを赤く照らしているためロマンチックな雰囲気になりそうだったが、当の二人の間にはそんな雰囲気が漂うことは無く、無言で歩いている。

 一夏は未だに後悔が残っているため、若干顔が下がり落ち込んだ表情をしていた。

 

「一夏」

 

 会話が無いことにしびれを切らした箒が口を開いた。

 

「セシリアを傷つけたことをいつまでも引きずるのはどうかと思うぞ」

「でもよ……」

「相手が赦したのだ。それならばお前がこれ以上気に病んでいては、むしろ向こうにも失礼ではないか?」

「……うーん」

 

 箒に説得され、一夏は腕を組み考える。

 

(お気になさらずに)

 

 自分をピットまで運び、セシリアが反対のピットへ戻る前に言った際のあの表情。あれは素人の自分でも愛想ではなく、本心からのものに見えた。

 

「……そうだな。でも、落ち着いたらもう一度謝っておくよ」

「……ふん。そうしたければそれでいい」

 

 箒は、一応は一夏の表情に明るさが戻ったことを少し嬉しく思う反面、まだセシリアに気遣う事に嫉妬してしまった。そのことを少し嫌悪すると同時に自分も一夏に言うことがあると思いだす。

 

「私も一夏に謝らねばな」

「え?」

 

 箒が突然謝罪すると口にし一夏は驚き、彼女の方へ顔を横に向けた。

 

「あれだけISの事を教えてくれと言われておきながら私は剣道の事しか教えてやれなかった。そのせいで、初戦では苦しい思いをさせてしまったな」

「でもよ、箒が剣道で稽古をつけてくれていなかったらきっと白式に振り回されて―――」

「それにだ。お前は自力でISの知識を蓄えていたらしいじゃないか? 本来それは私がやるべきことだった……」

「箒……」

 

 箒の謝罪を聞いていた一夏は彼女の肩に手を置いた。

 

「……一夏?」

「箒が稽古をつけてくれて剣の扱いの感覚を思い出せなかったら、きっと雪片弐型をセシリアに振り抜いちまっていた。あの時咄嗟に腕を引っ込めたのも、箒のおかげだ。それにISの事とかはこれから一緒に勉強すればいい」

 

 だから気にするなよ。

 

 一夏にそう言われた箒は止めていた歩みを再開させる。

 

「……う、うむ。お前がそう言うのであれば、ともに精進しようではないか」

「ああ。ついでに剣道も見てくれよ。やっぱり剣主体のISっぽいから、勘を戻さないとな」

「それならば任せろ。これからもビシバシと鍛えてやる!」

 

 稽古が今以上に厳しくなるのか~、と辛そうな表情を浮かべ弱音を吐く一夏をよそに箒は嬉しそうな足取りで寮へと向かった。

 

 

 

 

 IS学園寮。

 日本の国費が費やされ建設されたIS学園は、寮にも勿論多額の費用がかけられている。その為シェアリングではあるが、どの部屋もかなり立派な作りになっている。

 その寮の一部屋では、シャワーが噴き出る音と水がタイルに当たる音が部屋中に響き渡っている。

 シャワーを浴びているのはその部屋に住んでいるうちの一人、セシリア・オルコットであった。

 

「……」

 

 セシリアはシャワーのノズルから流れ出るお湯を打ち浴びながら、先程までの出来事を振り返っていた。

 あの試合終了後、ピットでブルー・ティアーズから降り本国へ破損したBT兵器とスターライトmkⅢを補充する為の督促をしていると、担任である千冬がやって来た。曰く、公平性を保つために一夏に雪片の危険性を伝えなかった事と、弟がしでかしたことの謝罪だった。

 その謝罪を受けたセシリアは一夏の時とほぼ変わらぬ返答をし、これ以上の抗議はしない事を伝え、むしろ明日のSHR(ショートホームルーム)で代表候補生らしからぬ誹謗中傷をしたことをクラス全員に謝罪する旨を伝えた。

 

 目を瞑りながら顔を上げるセシリア。濡れた長い前髪が左右に分かれ額を露にし、シャワーから出るお湯が彼女の顔を直接濡らした。セシリアの左頬にある傷は防水性の高い保護パッチが貼られており、お湯が傷を濡らすことは無いだろう。

 

「……」

 

 目にお湯が当たらない程度に細く目を開けるセシリア。その瞳の焦点は定まっておらず、遠くを見つめているようだった。

 

(でも、女の命の髪と顔を傷つけたのは―――)

 

 セシリアは一夏の謝罪を思い出し思わず微笑んでしまう。

 

「……フフッ、変わったお方でして……」

 

 何年振りだろうか。自分の事をただの“女の子”として見てくれた人は。

 

 セシリアはそう思うと嬉しくてしょうがなかった。

 セシリアはオルコット家というイギリス貴族の末裔としてこの世に生を受けた。その為幼き頃から貴族として恥じない身なりを厳しく教えられてきた。加えて人間関係も上流階級らしいものになっていた。

 だからこそ、自分の事をただの“女の子”として見てくれる者は非常に少なかった。両親が亡くなった後はそれが顕著だった。

 自分を見るもの全てが“オルコット家当主”として、“イギリス代表候補生”としか見ない。他の代表候補生たちも似たような反応をみせていた。

 

 だからこそ一夏の何気ないあの一言が嬉しかった。

 

 自分が一夏だったら、どうだ? 謝罪を口に出来たか?

 

(やっぱり変わっているお方ですわね)

 

 セシリアはシャワーの蛇口をひねりお湯を止め、そして身体に残っている水滴をバスタオルで拭き取るとバスローブを羽織り、リビングへ戻った。

 リビングには二人一部屋であるためベッドが二つ並んでおり、それでもなお充分な広さが確保されている。ルームメイトはまだ戻って来ていないのか部屋にはセシリアだけ。

 夜空に浮かぶ星と月の明かりが部屋を照らす中、彼女は自分のベッドに腰掛けると間接灯を点け、予め用意していた小さな置き鏡と救急箱をベッド横机の上に置いた。そして鏡を見ながら自分の頬に貼られてある保護パッチをゆっくりと剥がす。剥がし終えるとパッチに覆い隠されていた火傷痕が露わになる。

 あの試合の後早々に保健室へ向かい応急手当を受けたため、その傷口が細菌感染によって化膿をおこすことはなかった。

 セシリアは養護教論の指示通り、教論から貰った軟膏を救急箱から取り出す。そのチューブを軽く押し出てきた薬剤を左指ですくい取ると、軽く優しく傷口に塗り込む。それが終わると同じく教論から貰った代えの保護パッチを取り出し、包装を取り除き鏡を見ながら丁寧に貼った。

 手慣れた手つきで処置を終えるとゴミをゴミ箱へ捨て、残った薬品は救急箱へしまい置き鏡と一緒に勉強机の大き目の引き出しにしまい込む。

 それらが終わるとバスローブの帯を解いた。必然的に締りが緩くなりバスローブは床へハラリと落ちる。

 露わになる女性特有の瑞々しく柔らかい素肌。大きさだけでなく綺麗に形整えられ、控えめな淡い桜色の先端を持つ乳房。引き締められた腰によって一層強調される丸みを帯びた臀部。名門貴族出身とだけあり異性だけでなく同性さえも目を釘付けてしまう整ったプロポーション。

 しかし彼女の身体には、見えづらくなってはいるが至る所に傷痕が残っている。それはセシリアが代表候補生を勝ち取る前、そして代表候補生の座を維持する為の努力の証でもあった。

 セシリアは全てを晒しながらもバッグから就寝用の下着を取り出し身につける。それらは柔らかな素材で出来ているため、無駄に締め付けられることもなくリラックスできた。

 下着を着終えると続けて同じように柔らかな素材で出来ているパジャマを羽織り、休息用のフカフカな椅子に腰かけた。

 

本国(イギリス)は、早朝ですわね……)

 

 間接灯で照らされている部屋の中で、セシリアは壁掛け時計が指し示している時刻を見てそう思った。そこで彼女は携帯型空間投影ディスプレイを表示し、寮のネット環境に接続した。

 

「まだ別れて間もないですけれど……」

 

 そう呟きながら映像通信機能を起動させ、連絡先を入力する。数回コールの後、連絡先と接続が成功されたことがディスプレイに表示され、艶やかな栗色の髪を持つフレンチメイドを着用した若い女性が映し出された。

 

「おはよう、チェルシー」

≪そちらでは、“こんばんは”でしょうか? お嬢様≫

 

 チェルシー・ブランケット。

 セシリアが一番信頼を置く専属メイドにして彼女の幼馴染である。

 

≪お嬢様、その頬はどうなされたのですか? またISの試合で負傷したのですか≫

「ええ。でもこの程度、かすり傷ですわ」

≪しかしお嬢様の美貌に傷がつくのは、やはり私としては不安です≫

 

 その言い方は主従関係というよりは、やんちゃな妹を心配する姉のような優しさが含まれていた。

 

「でしたら今度からは怪我をしていない時に連絡しますわ」

 

 セシリアは微笑みながらそう応える。

 

≪……何かいいことがあったのですか? お嬢様≫

 

 そのセシリアの様子を見たチェルシーは優しい表情で尋ねる。

 

「……何故そう思いになられて?」

≪此方から日本へ旅立つ前と比べ表情に余裕を持たれていらっしゃるな、と思ったので≫

 

 セシリアは自身の表情一つで直ぐにそう予想出来たことに、やっぱりチェルシーは自分のことをしっかりと見てくれているな、と嬉しく思い、同時に幼馴染で専属メイドである彼女への信頼をより一層強めた。

 

「フフッ。もう何年ぶりにか“普通”の“女の子”扱いしてくださった方がいらっしゃったものでして―――」

≪……それは、ひょっとして例の?≫

 

 やはりチェルシーには敵いませんわ……

 たった一言そう言っただけなのに、直ぐにその相手を予想出来るのは流石のセシリアにも出来るかどうか怪しい。

 

「ええ、そうですわ」

≪あら? お嬢様、出国する前は「何でこのわたくしがそんな極東人と近づかなければならないの?」と政府からの依頼を面倒くさがっていませんでしたか?≫

 

 チェルシーに変なことをぶり返されセシリアは少しムッとしてしまう。

 

「……まぁ、馬鹿で甘いことには変わりありませんでしたわ。ただ……」

≪ただ?≫

「変な所は誰よりも紳士的でしたわ。この傷もその男との試合で付けられたもの。でも、試合の後にあちらから謝罪をしてくださいましたわ。試合前に中傷をしたわたくしに」

≪それは、少し変わっていますね≫

「わたくしなら中傷してきた相手になんか謝罪なんてしませんわ。むしろ、ざまあみろ、と思ってしまいますわ」

 

 セシリアのその一言にチェルシーも笑いをこらえることが出来ず、クスクスと笑ってしまった。

 

「オマケに“髪と顔は女の命”だなんて、本当に変わっている男でしたわ」

≪おっしゃる通り、優しいお方なのですね≫

「あら、チェルシー? わたくしは“変わっている”と言ったはずでして?」

 

 チェルシーの曲解にセシリアは唇を尖らせる。

 

≪しかしお嬢様のお話を聴く限り、私は優しいお方という印象を持ってしまいます≫

 

 チェルシーの言い訳を聞き自分が話した織斑一夏という人間像を思い返す。

 

「……確かに、優しい人と想像しますわね。でも未熟な部分は多く残っていますわ」

≪それはいずれ成長すると思われます≫

 

 チェルシーの指摘にセシリアも頷く。人間だれだって最初は未熟。ISについて何も知らない一夏も怠慢でなければこれから成長していくだろう。

 

「なんで彼の事ばかり話しているのかしら? せっかくチェルシーとお話ししているというのに」

 

 ふと思った事を口にするセシリア。彼女としてはこんなに長々と織斑一夏の話題で談笑するつもりなどなかったのだが、気が付けば延々と一夏の事ばかり話していた。

 

≪ひょっとして、彼の事がお気になられていらっしゃるのではないでしょうか?≫

「お気になる、とは?」

≪例えば……“恋”などでは?≫

 

 予想外のチェルシーの発言にセシリアは思わず吹き出してしまう。

 

「そ、そんなこと、あるはずが……あり得ませんわ!!」

≪ですけれど、世の中には“一目惚れ”と言うのもございます≫

「確かにそう言うものはありますわ。ですけれど、ついさっきまで敵視していた人物に惚れるなど、チョロイもいいところですわ!」

 

 セシリアは口で否定しつつも、薄々自分が彼に惚れてしまっているのではと考えてしまう。

 あの試合の後から考えることは織斑一夏の事ばかり。彼が何故あそこまで辛抱強いのか? 何故最後まで諦めなかったのか? どうしてあんなに強かったのか。

 セシリアにとって織斑一夏という男性は、現在の世界情勢(女尊男卑)に置いて珍しい“強い”男と認識出来る存在だった。

 だからこそ知りたい。彼のことをもっと知りたい。セシリアはそう思わざるを得なかった。

 しかし彼女自身、この気持ちはチェルシーの言うとおり“恋”なのかどうかはハッキリしていない。単なる好奇心からくるものなのかもしれない。セシリアは内心で整理し、この面倒な気持ち(・・・・・・)の正体を暴くべく今後彼の事を見ていくことにした。

 

「取り乱しましたわ。はしたない……」

 

 頬を紅潮させながら咳払いをし、セシリアは冷静さを取り戻す。その様子をチェルシーは優しく柔らかい表情で見つめていた。

 

「チェルシー? わたくしの顔に何かついていまして?」

≪いえ……お嬢様と何の気遣いもなくお話出来ることを嬉しく思っているのです≫

「気遣い……」

 

 セシリアも思い当たる節はある。

 両親の急死、それに伴いオルコット家当主へ、その隙を狙いオルコット家の財産を奪おうとする禿鷹(親戚)との攻防。とても13歳の少女が体験していいものではない壮絶な時期を過ごしてしまったが為に、彼女は一時期人間不信に近い状態になってしまった。

 そしてそれは親友でもあるチェルシーにも向けてしまい、些細な言葉から激しく罵倒することもあった。だからこそチェルシーは細心の注意を払いセシリアとコミュニケーションをとっていた。

 

 それが彼女の言う“気遣い”。

 

 セシリアは思い返すと、チェルシーが絶えずして自分とコミュニケーションをとり続けなかったら、自分の人間不信は益々激化し、完全に孤立し仲間も居なくなりオルコット家を守ることなど出来なかったと考えさせられた。

 だからこそチェルシーは嬉しいのだろう。幼馴染で心配していた妹分と、何年ぶりに気遣いもせず談笑できることを。

 

「……チェルシー」

≪はい、お嬢様≫

「……ありがとう」

 

 自分を支え続けてくれた幼馴染への感謝。

 チェルシーもその感謝を受け取り何も言わずに頭を下げた。

 

 その後チェルシーが呼び出されるまでの間二人は談笑した。セシリアとチェルシーが主従関係ではなくずっと幼かった頃、一番の友達であった頃の、二人だけの思い出を……

 

 

 

 

 突然だが「お灸をすえる」という言葉を知っているだろうか? 経穴、つまり身体のツボを高温で刺激し治療を行う灸を体に置く事であり、転じてきつく懲らしめ、戒めることを意味する表現である。飽く迄表現である……

 

「あっつい! あっついから!!」

「この程度で許されるとでも?」

 

 だがとある研究所では言葉通り、本当にお灸を添えられている光景があった。

 

「ジャック様、追加の分をお持ちしました」

「ふむ……あと二つほど乗せられるか」

「いや! ホントに、ホントに勘弁してください!!」

 

 伸ばされた四肢を拘束され、うつ伏せ状態でエプロンドレスをまくり上げられている束の背中には既に6個程のお灸が乗せられていた。だがそのお灸も薬剤が殆ど無く、火種が乗せられている状態だった。

 にも関わらずジャックは更に二つ程お灸(火種)を乗せようとしていた。

 

「さて博士、さらなる苦痛を与えられる前に何か弁解でもあるか?」

「つ、つつ、強くしすぎました! でも後悔はしていない!!」

「……」

「……」

 

 無言で薬剤を束の背中に乗せるジャック。そして点火用の線香をジャックに手渡すクロエ。

 

「いやああああああああああ!! やめてええええええ!!」

 

 束は四肢に纏わりつく拘束器具を振り払おうとよがり、まるで強姦によって処女を喪失する寸前の女性が上げる様な悲痛な悲鳴を上げた。しかしその拘束器具は密かにジャックとクロエによって開発された対束用のモノ。如何に彼女の身体能力が規格外(イレギュラー)であっても、最初から束だけに使用することを考慮し開発されたため外れるわけがなかった。

 

「ならば何をするべきか分かっているか?」

 

 ジャックはそんな彼女に最後の慈悲を与えた。

 

「ゆ、雪、片弐型に、り、リミッターを設、けま、す……」

 

 何時間も懲らしめられていたため息も絶え絶えになりながら束はジャックの慈悲にすがり寄る。

 

「で? どのようにするつもりだ?」

「びゃ、白式のぷ、プログラムに……雪片弐型の、威力を調整するき、機能を取り付けようかと……」

「ほう? 少しは物わかりが良くなったようだな……」

 

 ジャックはそう言うと束の背中に乗っている灸を素手で摘み取り、それら全てをあらかじめ用意していた灰皿に捨てる。そして小さな鍵をズボンのポケットから取り出すと、束の四肢を拘束している器具に差し込み、鍵を外した。

 漸く自由になった束は少しの間動けず肩から呼吸する。

 

「す、少し休ませて。そしたら束さんが直接リミッターを設けに行くから……」

「分かっているのであれば迅速に行動するんだな。休んでいる時間など無いぞ?」

 

 鬼、悪魔、と束は呟き立ち上がると改修に必要なモノを量子化し、ニンジン型シャトルに乗り込むべく秘密港湾へと向かった。

 

「今回は容赦がありませんでしたね……」

 

 束が研究室から出ていくのを見送り姿が見えなくなると、クロエは隣に立っているジャックに問いかけた。

 

「あと一歩間違えれば、あの少年もそうだが、我々にも脅威が迫ることになっただろう……何故それが理解出来んのだ?」

 

 クラス代表決定戦をスクリーンで観戦していたジャックは、一夏による斬撃でブルー・ティアーズ操縦者であるセシリア・オルコットに直接攻撃がなされたのを見て目を見開いてしまった。一夏の不自然な振り方からわざと(・・・)攻撃を外したのは直ぐに理解したが、もし何の抵抗もなく振り抜いていたならばセシリア・オルコットは真っ二つにされていたことだろう。

 もしもそうなってしまったならば重大事件どころではなくなる。織斑一夏はまず間違いなく殺人犯としてIS学園を退学させられ、どこかの研究機関へモルモットとして飛ばされるだろう。そして世界(魔の手)は束の親友である千冬だけではなく、箒にも及ぶ可能性も充分ある。

 織斑千冬は強いと束から耳にタコができる程聞かされた。だがジャックからすれば彼女はIS学園という名の小屋に押し込められた首輪付きの獣。首輪がついている以上容易に殺されることだろう。

 

 そのような事態になりかねないと言うことを束は全く気にせず、雪片弐型の威力を極限まで上げたらしい。

 その事実を聞いたジャックも流石にキレた。

 

「大事に至らなかったことは、本当に不幸中の幸いでしょう」

「全くだ……少しは学習してくれればいいのだが……むしろ最終チェックで見落とした私にも責務はあるか……」

 

 二人並んで今回のゴタゴタに対する愚痴を吐く姿は、ダメな母親に対してどうにかしようと奮闘する父と娘そのものだった。

 

 

 

 

「ふええん、最近ジャックくんもくーちゃんも冷たいよ~」

 

 草木も眠る静かな夜。足元灯すら消された暗いIS学園に束は容易に侵入していた。お目当ては勿論雪片弐型にリミッターを設けるためである。既に白式が格納されている部屋へIS学園の厳重なプロテクトをいとも簡単にすり抜け入室していた。

 

「なんかくーちゃんもジャックくんに似てきちゃったな~。妙に毒舌家になっちゃって……」

 

 待機状態の白式から雪片弐型だけを展開し作業をしながら、そうなる原因が自分にあることを棚に上げ、束はクロエの態度がジャックに似てきてしまっていることを少し残念に思う。

 

「でもでも~“蛙の子は蛙”って言うし、ジャックくんに似てきたのも束さんたちの娘って証拠だね~!」

 

 しかし束はクロエがジャックに似てきたことも、そう言う風にポジティブにとらえた。束の中ではクロエは彼女とジャックの娘という事になっているが、束にとってジャックが夫であることに対して本気かどうかは、未だ不明である。

 束が鼻歌交じりに作業していると自動ドアが開く駆動音が耳に入った。

 

「でもね~このすんばらしい威力を皆無にしちゃうのは流石にもったいないよね~。そう思うでしょ、ちーちゃん?」

「……」

 

 束はジャージ姿で懐中電灯を片手に自分の背後に立つ幼馴染である千冬にそう言った。

 

「何をしに現れた? ここはお前が気軽に入って、更に勝手にISをいじっていい場所ではないぞ?」

「見ての通り、強すぎた雪片弐型にリミッターと、威力調節のシステムを設けにね!」

 

 束の返答を聞いた千冬は間抜けな表情を浮かべてしまう。束の事だからより一層威力を高めようと改造しに現れたと予想していただけに、束のまっとうな回答は千冬にとって肩透かしになってしまった。

 

「どういうシステムにするつもりだ?」

「例えるなら最近のシャワーのひねりと同じだよ~。一定以上の熱さまで捻るとストッパーが掛かってそれ以上の温度のお湯が出ないけれど、ボタンを押しながら捻ると熱湯が出るでしょ?」

「あ、ああ……」

「今やっているのは正にそれ。威力調節可能だけど、一定以上の威力は出ないようにしておくの。でもリミッターを外せば、絶対防御を完全に無視するほどの威力も出せるようになるんだよ!」

 

 機嫌良さそうに話しながら束は素早い手つきで雪片弐型を改修していく。一方の千冬は束の弁解を聞いて「こいつは本当に束なのか?」と疑問を抱いてしまった。

 

「ふ~い。おっしま~い! 流石束さん、あっという間に終わらせちゃったよ!」

 

 束は腕で額の汗をぬぐうジェスチャーをとり、千冬に改修が終わったことを伝えた。

 

「これで間違って人を殺すことは無くなったよ~。でもでも、リミッターを外せばあの試合以上の威力が出せるようにもしちゃった……ふぬぐぅ!?」

「何を考えている? 過剰な威力はいらぬ。さっさと除去しろ!」

 

 今日の試合で見せた、セシリア本人を絶対防御を無視して攻撃するほどの威力。それ以上の力が備えられてしまった事に危機感を覚えた千冬は、束にアイアンクローをし、弱体化するよう言った。

 

「え、やだ」

 

 しかし束から帰ってきたのは冷たい反応。それと同時にあっさりと千冬のアイアンクローから抜け出した。

 

「だってこれは、いっくんが自分の身を守るための盾であり、剣でもあるんだよ? それが弱かったらいっくんが死んじゃうかもしれないんだよ?」

「何を言って……」

「だから束さんは元に戻しませーん。あ、束さん印のプロテクトをかけておいたから、勝手に回収は出来ましぇん! それじゃちーちゃん、まったね~!」

「ま、待て束!」

 

 束の発言を理解しきれない千冬は更なる弁解を求め手を伸ばしたが、次の瞬間にはまるで霧の様に束の姿は見えなくなってしまった。

 

「一夏が死ぬ……? 束、お前はいったい、何を考えているんだ……?」

 

 残された千冬は、幼馴染()が一体どういう考えをしているか、そして彼女が言い残した言葉に強烈な引っかかりを覚えてしまい、改修が終わった待機状態の白式の前に呆然と立ちつくしてしまった。

 

 

 

 

 翌日、束の研究所ではいつもの三人がいつもの様に研究室に居た。

 

「成る程。いい改修だな、博士」

 

 スクリーンに映しだされているIS学園の映像。そこには改修した雪片弐型で訓練をしている一夏の姿が映っていた。

 まだ改修された雪片弐型に慣れていない雰囲気だったが、徐々に威力変更システムを使いこなしていく様が見て取れた。

 

「そうでしょ、そうでしょ! 流石束さんって褒めてもいいんだよ~?」

 

 束は無駄に大きい胸を張り、エッヘンと堂々とした態度をとる。

 

「素晴らしいです、束様!」

「最初から搭載しろ」

 

 クロエは束が思いついたリミッターに感心し純粋な称賛を、ジャックはごもっともな意見を述べた。

 

「うぐっ、くーちゃんは誉めてくれたのに、なんでジャックくんはいつもそう辛辣なのかな~?」

「自分の胸に聞いてみろ」

 

 またしても褒められなかったことに束は不満不服を述べるが、ジャックは昨日の事態をまだ引きずっているため彼女の愚痴をバッサリと切り捨てた。そんな二人の様子をクロエは苦笑しながら眺めていた。

 三人が再びスクリーンに目を向けると、昨日までは一夏と箒の二人だけだった訓練に、何故かセシリアが加わっているところが映し出されていた。

 

「はぁ? なにしてんの、あのドリル?」

「昨日の態度から一変していますね……何か目的でも?」

 

 束とクロエはセシリアの急激な変化が理解出来ず疑問を抱く中、ジャックは冷静に彼女の表情と言葉づかいを分析していた。

 

「……ふむ」

「ジャック先生、あのドリルの精神状態をお聞きしたいのですが?」

 

 束はジャックの読みの凄さを知っているため、セシリアが何を考えているのか、分かるかどうか尋ねる。

 

「……私見だが、あれは興味を抱いているだけの様だ」

「興味? どういうことですか?」

 

 クロエがすかさず更なる説明を求めた。

 

「あのイギリス代表候補生は少年に対して“もっと知りたい”という感情を抱いているみたいだな。彼が試合で彼女に肉迫したのが原因かもしれんな。ただ別に惚れている訳ではなさそうだが」

「あっ、それ聞いて安心した」

 

 ジャックの解説を聞いた束は、()の恋路を邪魔する存在にならない事に安心する。

 粗方雪片弐型の運用方法を理解したのか、次に一夏はセシリアとの模擬戦を行うことにした。どうやら実戦での雪片弐型の運用方法を模索するらしい。

 

「あの代表候補生、実力は結構ある方ではないでしょうか?」

 

 クロエは一夏とセシリアの模擬戦を見ながら、セシリアに対して抱いていた印象が変わったことを告げる。

 スクリーンの中のセシリアは前日の試合で損失した武装の代わりに、IS学園の標準装備である武装を使用している。ブルー・ティアーズとのリンクがあるかどうかは怪しいが、それでも軽々と使いこなし、一夏を近づけさせないよう牽制している。

 

「憑き物が落ちた様だな。動きにムラが無くなっている。あの少年の影響かもしれんな」

「ちっ、つまんな」

 

 ジャックがセシリアの戦闘技術を称賛し、しかもその原因が一夏ではないかという呟きを聞いた束は不機嫌になりながらそう吐き捨てた。

 

「でも所詮訓練は訓練。これじゃ雪片弐型の真の力を試す機会なんて……ん?」

 

 束は若干スクリーンの映像に興味を失いながら自分勝手な意見を言っていたところで突然言葉を切らした。それに伴ってジャックとクロエが束の方に振り返る。

 

「私にいい考えがある!」

 

 その一言は近いうちに起こる騒乱の始まりの合図でもあった。

 

 

 

 

「ふぅん、ここがそうなんだ……えーっと、場所は……」

 

 夜。IS学園の正面ゲート前にボストンバッグを抱えた改造したIS学園の制服を着る小柄な少女が立っていた。四月の陽気な春風が彼女の髪をなびかせた。左右それぞれ高い位置でリボン状の留め金で結ばれており、肩にかかるかかからないかくらいの長さをしている。

 その少女の容姿は日本人に似ているが、注意を払わなければその鋭角的でありながらも艶やかさを感じさせる瞳に気づくこともなく、彼女が中国人であるとも分からないだろう。

 少女はボストンバッグを一度地面に置くと、胸ポケットからクシャクシャになった紙を取り出し、読みやすいように広げる。

 

「本校舎総合事務受付……って、地図ぐらい載せておきなさいよ、分かりづらい。というか分からないわよ、これじゃ」

 

 ずさんなIS学園事務局に対する批判をしたところで少女は用紙を四つに折りたたむと再び胸ポケットにしまい込んだ。ついでにだがその胸の膨らみは平均よりもやや小さかった。

 

「これじゃあ道に迷いそうね。全く、中国代表候補生が来たって言うのに出迎えもないなんて。いっその事、ISを展開して……」

 

 そう呟いて待機状態のブレスレットになっている専用機に手を伸ばしたところである人物が彼女の頭の中を過る。

 老人でありながらも鋼鉄を連想させる程鍛え抜かれた肉体。このご時世においても性差別を持たず、軍人としてのあるべき姿を説き、自ら進んでそれを実践し証明する強い精神力。そして弟子を愛しているからこそ厳しく接っし、弟子達も非難することなくついていく人望の高さ。

 彼女が中国に居た間非常にお世話になった将校の“雷”を何故か思い出してしまった。

 

「い、いや、私はまだ起動させてないから、その、ノーカンでいいでしょ?」

 

 うわ言の様に呟くが彼女の肌にはうっすらと冷や汗が浮かび上がっていた。それだけ少女にとってその将校の雷が印象深く残っているのだ。

 

「仕方ないわね。自力で探すしかないの?」

 

 ぶつくさと不満を述べながらもボストンバッグを拾い上げ、IS学園の正面ゲートをくぐった。

 

(それにしても、懐かしいわ、この気候)

 

 中国人である少女にとって日本は海外ではない。寧ろこの日本の方が印象深く残っている故郷なのだ。

 

(元気かな? あいつ)

 

 浮かび上がるのは臨時ニュースで流れた少年、織斑一夏の顔。

 

(まぁ元気よね。そうじゃないあいつの姿なんて見たことないし)

 

 そう言うやつだったから、と日本で暮らしていた頃の一夏との記憶を思い返す。

 

(約束、覚えているかな?)

 

 自分が中国へ帰る前に一夏へ勇気を振り絞って言った約束。もし覚えていてくれているなら、自分はあいつの妻にも―――

 

(色事にうつつを抜かす気か?)

「ひぅっ!?」

 

 居ない筈の将校の、いくつもの修羅場を生き延びたことをうかがわせる年季の入った声が聞こえ、少女は素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

(そ、そうよ。私は仮にも中国代表候補生。変な所は見せられないわ!)

 

 顔つきが代表候補生らしく凛としたものになる。

 

(でも、やっぱり……少しは良いでしょ?)

 

 それでもやはり恋に恋する年頃の少女であることには変わらず、一夏の事を思い浮かべてしまう。

 

(うん、メリハリを付ければ、きっと少しは許してくれるはず。そうよ、きっとそうよ!)

 

 そう自己完結させると偶々目に入った女子生徒、リボンの色が違うことから上級生と予想した、に受付の場所を尋ね、教えてもらった道に足を運んだ。

 

(待ってなさい、一夏!)

 

 少女の名は(ファン)鈴音(リンイン)。織斑一夏の二人目の幼馴染であり中国代表候補生である。

 

(あたし、頑張るから……見ててね、(ウー)大人(ターレン)!)




オリジナル設定02

・雪片弐型
 白式に搭載された近接ブレード。束が提唱する「展開装甲」の技術を初めて用いて作られた武装であり、嘗て織斑千冬の専用機「暮桜」に搭載させていた「雪片」の後継版でもある。
 通常は単なる近接ブレードだが、刀身部分が展開されレーザーブレードにもなり、この時最大の威力を発揮し単一仕様能力「零落白夜」を発動せずとも絶対防御を切り裂くことも可能。
 クラス代表決定戦で攻撃力過剰と判断されリミッターが設けられることになるが、束が勝手に改修してしまう。
 その結果威力の調節が可能になり、エネルギーの節約にもつながる。更にリミッターを解除した際の攻撃力が底上げされており束曰く、絶対防御を完全無視し操縦者を蒸発させる破壊力を持つ最強の剣となっている。





登場人物たちが成長する前に大人になっちゃっている件。どうしよう?

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