歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
A-RISEと話をすることになったのは全然いいんだけど…
カフェスペースってここ?これ、なんかA-RISEだけの特別ルームみたいになってるけど…?
みんなはこのカフェスペースの長いテーブルを囲むように座っている。私は立ってるけどね。
「μ'sのこと、だいぶ前から知ってたわ。一度挨拶したいと思っていたの」
「そう…なんですか?」
「あらみはね、みんなの前だと戻ってしまうの?…私たちの仲なのに」
さらっとそんなことを言うツバサ。私の生死に関わるからそう言う冗談は本気でやめてほしい。現にみんなからの視線がチクチクと痛い。
「ツバサ、その言い方だと誤解されるから!知り合ったばかりだし」
「あら?ふたりで見つめ合っていたのはなんだったのかなぁ…なんて」
「そ、それ、私真顔だったと思うんだけど…」
そうだった?なんておどけるツバサのせいで周りから睨まれ変な汗が止まらない。
「みはねちゃん!もうA-RISEのみなさんと仲いいんだね〜」
穂乃果は睨んでいると言うよりかは羨ましそうにキラキラした眼差しを向けていた。
「高坂穂乃果さん。やっぱり魅力的ね」
「あぁ、人を惹きつける力。カリスマ性とでも言えばいいのだろうか?」
「は、はぁ…」
突然の褒め言葉に穂乃果はよくわかっていないようだった。
「私たちはあなたたちのことずっと注目していたの」
あんじゅはほんわかとした笑顔とともに続ける。
「実は前のラブライブでも、一番のライバルになるんじゃないかって思っていたのよ?」
あのA-RISEにそんなことを言われるなんて誰が想像できただろうか。
絵里は戸惑いとともに口を開く。
「そ、そんなことは…」
「あなたもよ?」
ツバサに続いて英玲奈は話しだす。
「絢瀬絵里。ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている」
いきなり褒められ、しかもかなり詳しいことまで知っていて絵里は驚いて何も言わない。いや、言えない。
今度はあんじゅが。
「西木野真姫は作曲の才能が素晴らしく、園田海未の素直な詩ととてもマッチしている」
その言葉に二人がピシッと顔を強張らせる。
特に真姫はなぜか敵意がむき出しだったためより驚きが隠せないみたいだ。
「星空凛のバネと運動神経はスクールアイドルの中でも全国レベルだし。小泉花陽の歌声は個性の強いメンバーの歌に見事な調和を与えている」
「牽引する穂乃果の対になる存在として全員を包み込む包容力を持った東條希」
「それにアキバのカリスマメイドさんもいるしね。あ、元と言ったほうがいいのかしら?」
次々とメンバーのことを褒められていくが、どこまで私たちのことを調べたのだろう。
「そして矢澤にこ………いつもお花ありがとう」
…は?
全員同じことを思ったらしく、一斉ににこに視線を移す。その先にはなんとも気まずそうな顔をしたにこ。
「あ、いや、μ'sを始める前からファンだったから〜。って、私のいいところは!?」
「グループにはなくてはならない小悪魔ってところかしら?」
「はぅあ〜!小悪魔…にこは小悪魔…!」
にこ…大丈夫かな?頭のほうだけど。
ツバサの言葉をもらってからくねくねしてる…
「それにみはね」
「はい?」
「あなたほどのマネージャーはいないわ」
さっきまでにこにこしていたツバサは突然真面目な顔でそう言った。
「そんなことないよ」
この言葉は謙遜などではなく本当に心から否定している。まぁ、当たり前だよね。
「いや、あなたほどメンバーからも周りからも信頼されて、好かれて、それに仕事も完璧にこなせる人はいないわ。それに、何よりあなたには魅力が詰まってる」
な、なに…そのべた褒め。私はそんなこと言ってもらえるような人間じゃない。
「そんなことない!私には何も取り柄がないし。みんながいないと何もできない」
そんな私の言葉に反論してきたのは意外にもツバサだった。
「みはね。それ、本気で言ってたら怒るわよ」
「ツバサに怒られる筋合いはないもん」
なぜだかあんじゅは満面の笑みで私たちを見守り、英玲奈はやれやれと呆れている。μ'sのみんなは案の定言い合っている私たちの間に入ることもできず、私の言葉に怒るでもなく呆けている。
ツバサは立ち上がって私の前まで来ると胸ぐらを掴んできた。息がしづらくて苦しくなる。
睨みつけると、ツバサは深くため息をついた。
「みはねの悪いところ、見つけたわ。それは頑固で自分が全く見えていないところね」
至近距離でそんなことを言われて何も言い返すことができない。
なんで、なんでそんなこと会ったばっかのツバサに言われなきゃいけないの…!
言葉のかわりに目で訴える。
「なに?なにも言えないの?」
「つ、ツバサにそんなこと言われる意味がわからない。私のなにを知ってるっていうの!」
その言葉にツバサの眉間のしわがさらに深くなる。
「それは…一目惚れしたからよ。みはねのことが好きなの。この私が惚れた人間がそんなこと言ってたらムカつくに決まってるじゃない!」
そう言ってぐいっと私のことを引き寄せるとそのまま唇が重なった。
…え?頭が追いつかない。す、好き…?ツバサが私のことを…?
今日まともに話したばっかりなのに。
そんな簡単に誰かのことを好きになるなんて、私のことを好きになるなんて、ありえない。
視界いっぱいのツバサの顔の後ろに、喜んでいるあんじゅと頭を抱えている英玲奈の姿が見えた。その様子から、二人が今ツバサが言った事を知っていたというのは明白で。
本当に、意味がわからない。
「これでわかった?」
「わ、わからない…よ。私は…」
「そんなだと、すぐに捨てられちゃうわよ?………」
私の耳元で、周りには聞こえないように小さな声でつぶやいた。もしかしたら、私にも聞こえないように言ったのかもしれない。それくらい小さな声だった。
しかし、私の耳にはしっかりと聞こえた。
捨てられる?そんなこと、あるわけない。もし、みんなに必要とされなくなってしまったら…私の居場所がなくなってしまう。そんなの…やだよ…そんなの嫌だよ。
「ちょっと!みはねになにしてるのよ!」
「そうです。手出しはさせませんよ」
「離れてちょうだい!」
真姫と海未と絵里はツバサに今にもくってかかりそうだ。
「あ、そうだ。私たち、屋上に特設ステージを作ってライブをやるの。μ'sのみなさんもどう?」
ツバサは私のことを離すと笑顔でμ'sを見た。
一瞬ちらりと私を見たツバサの目は、挑戦的な、獲物を狩る猛獣のようなもので。それが意味するのは、そういう事だろう。
「やります!」
ツバサのその言葉に穂乃果は即答する。
「そう。これだけは言っておくわ…私たちが絶対に勝つ」
「私たちだって負けません!」
「ふふ。詳しいことはまた連絡させてもらうわね。じゃあ、また」
A-RISEの三人は部屋から出ていった。
そのあとみんなにツバサとのことを聞かれ怒られた。
ほんとならみんなに囲まれてやきもちとかも妬いてくれてうれしいはずなのに、つい考えてしまうツバサの言葉。
そのうち、みんなに飽きられてしまうのだろうか。学校で1人考えているとどんどん悪い考えばかりが浮かんでしまう。
胸がもやもやして。頭もぐらぐらしてきて。
ひどく吐き気がする。
すぐに捨てられちゃうわよ?
頭からツバサの声、言葉が離れない。
どうすれば…いい?わからない。
本当に捨てられてしまう?みんながそんなことするはずない。
でも…わかんない。
もう………
「わかんない。嫌だ嫌だ嫌だ。イヤダ」
目をつぶったわけでもないのになぜか視界がどんどん暗くなる。
私はそのまま真っ暗闇に、落ちていった。
A-RISEの中ではあんじゅが好きです。
どうでもいい情報ですね。すみません。笑