歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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53.はじめまして

 

 

 

 

ついに新曲が完成した。いよいよ予選が始まる!そんな私たちにまたも問題が…

 

「どこでライブするの?」

 

そう、今回の予選は参加チームが多いため会場以外の場所で歌うことが認められている。

私たちはまだどこでライブするかを決めていなかった。

 

「各グループの持ち時間は五分。エントリーしたグループは出演時間がきたら自分たちのパフォーマンスを披露。この画面から全国に配信され、それを見たお客さんがよかったグループに投票。順位が決まるのです」

 

「そして、上位四組が最終予選に、というわけね」

 

四組…四組といってもここ東京地区にはA-RISEがいる。実質四組の中一組は決まっているようなものだ。残りの三枠に入らなければならない。

 

「あ、そうだ!学校でライブやらない?そのほうが緊張とかもしないし!」

 

確かに、でも、もう少し印象に残るようなことをしないとね。

その後も中庭でいろいろと、主にセクシー路線でという話をしていたがそもそも本気でやろうと思っているわけではないので。てか、ふざけているだけなので話は進まず…

 

「ねぇ、こんなことしてるよりもやることあるんじゃない?」

 

「あ、真姫。なにしてたの?」

 

さっきのやりとりの間真姫はどこかに行ってしまっていたことを思い出す。

そんな真姫に連れてこられたのは放送室だ。

 

「ほんとに?」

 

「はい。お昼休みならいいですよ」

 

「ほら、ここでアピールすれば学校のみんなにも応援してもらえるし。それに、中継されるときの練習にもなるでしょ」

 

真姫はさっきの間にクラスの放送部の子に放送室の使用許可を取りに行っていたみたいだ。

まさか、まさかねぇ…

 

「真姫がクラスの子とこんなに仲良くしてるなんて」

 

「べ、べつに!日直で一緒になって少し話しただけよ!」

 

真姫は真っ赤になった顔を誤魔化すようにふんっと横を向いてしまった。

そんな真姫を見ながら微笑んでいる放送部の、名前…宮島さんに話しかける。

 

「これからも仲良くしてあげてね?」

 

「もちろんです!かわいいですよね、西木野さん」

 

なんと!真姫のかわいさをわかってくれてる人がここにもいたなんて!

自分の彼女を褒められたことが嬉しくて思わずにこにこしてしまう。

 

「み、みはねちゃんとも西木野さんの話ししたいなぁ…なんて」

 

「ん?私?もちろんだよ!また教室で真姫とも一緒に、ね?」

 

「うん!うれしいな」

 

そうこうしているうちに準備も整ったようで。

私と真姫、それに話すメンバー以外は外で待つことにして、早速放送が始まった。

まずはもちろんリーダーの穂乃果から挨拶だ。

 

「みなさんこんにちは!」

 

穂乃果は元気よく挨拶するとそのまま勢いよくお辞儀をした。

 

「うがっ!いったーい!」

 

マイクに頭をぶつけるのは普通に考えてわかることだ。なんで気づかなかったの…

 

「えーと、みなさんこんにちは!生徒会長…じゃなかった。μ'sのリーダーをやってます高坂穂乃果です。実は私たちまたライブをやるんです!今度こそラブライブにでて優勝を目指します。みなさんの力が私たちには必要です。ライブ、みなさんぜひ見てください!一生懸命頑張るので応援よろしくお願いします!高坂穂乃果でした。それでは他のメンバーも紹介…あれ?」

 

挨拶はなかなかよくできたと思う。しかし、次に紹介されて話すはずの海未と花陽が放送室の後ろのほうでブツブツと何かつぶやいていた。いや、緊張でおかしくなっていた。

そんな海未を立たせてマイクの前まで連れてくる。

 

「ほら、海未ならできるよ」

 

なんとも自信なさげな海未が口を開く。

 

「えっと。園田海未役をやっています、園田海未と申します」

 

え。え?なに役って。おかしいでしょ。

 

「なんでこの三人なのよ」

 

「リーダーと一番緊張しそうで練習が必要な二人よ」

 

そんなにこと絵里のやりとりが聞こえた。

これ、練習の意味ないかもしれない…

 

次は花陽がマイクの前までくる。何度も深呼吸してようやく話しだした。

 

「μ'sメンバーの小泉花陽です。えっと、好きな食べ物はごはんです。μ'sの中では…」

 

声が小さい。まぁ、仕方がないことなのだが。

 

「はぁ…ボリューム上げて」

 

それに気づいた真姫は放送部の子に指示を出す。

 

「えと。ライブ頑張ります。ぜひ見てくださいっ」

 

「かよちん!声あげてー。こーえー」

 

凛は放送室のドアから大きな声を出さずに一生懸命声を出すように伝える。

 

「はっ!ごめん。うわぁ!?」

 

そこでいきなり穂乃果が割り込んできた。

 

「いぇーい!んぐ!?」

 

ボリュームが大きくなっているにもかかわらず大声を出したため穂乃果の声が爆発した。いち早く気がついた私が後ろから両手で口を押さえたため被害はそこまでひどくない…わけがない。

その証拠に学校中から悲鳴の嵐だ。

私はボリュームを普通に戻しつつマイクのスイッチをオンにする。

 

「みなさんお騒がせいたしました。これからラブライブ予選突破に向けてμ'sの応援をしていただけるとうれしいです。よろしくお願いします」

 

それだけ言ってマイクのスイッチを切る。

 

「穂乃果。ちゃんと考えようね?」

 

「…ごめんなさい」

 

まったく。理事長に呼び出されたりしたらたまったもんじゃない。

 

「もう!なにやってんのよ!」

 

「でも、μ'sらしくてよかったんじゃない?」

 

「それって褒め言葉…?」

 

真姫は呆れながらも放送部の宮島さんと自然に話しているようだった。

ちょっと嫉妬…なーんてね。しないから!さすがにクラスメイトにはしないから!

 

「宮島さんありがとね。また教室で」

 

真姫の邪魔をしないようにお礼を言ってから放送室を出ようとしたが、宮島さんは返事をしてくれた。

 

「みはねちゃん!また…教室で」

 

それ以上話を続けるのもあれだったので笑顔で手を振って放送室を出る。

真姫はそのあと話すものだと思っていたけど、すぐに私の隣まで駆け寄ってきた。

 

なぜだかその後から真姫がべったりくっついてきて…

その後宮島さんと話すときもずっと私の制服の裾を握ったままだったし。

 

 

そして放課後になった今でもそれは変わらず。周りから不思議がられても別にというだけで理由も言わず、私も変に追求せず。

 

ライブする場所を探して校内を歩き回るときは手を繋がれていて。

秋葉原を歩いているときもしっかりと繋がれていた。真姫は右手。左手はみんなで誰にするが決めていたが、真姫のひと睨みで誰も繋がずにそのままにされてしまっていた。

 

本当にどうしたんだろう…?

 

『UTX高校へようこそ』

 

ふと気がつくと目の前にはUTX高校の巨大モニターにA-RISEの三人が映っていた。

 

『ついに新曲ができました』

 

新曲、できたんだ。

 

『今度の曲は今までで一番盛り上がる曲だと思います』

 

長い髪とつり目で切れ長なキリッとした表情の彼女の名前は確か統堂英玲奈。

 

『ぜひ聞いてくださいね〜』

 

統堂英玲奈とは対照的なたれ目気味でふわふわとした印象の彼女は優木あんじゅ。

 

思わず画面に見入ってしまう。

真姫も画面に見入っているのか自然と手が離れていった。

 

と、前から別の誰かに勢いよく引っ張られる。

 

「え、ちょ、えぇ!?」

 

「しっ!来て」

 

人混みの中を謎の女性と駆け抜けていく。

後ろからはにこと花陽がついて来ていてなにやら騒いでいる。

 

走ること数分、私の体力の限界も近づいて来たときUTX高校の中へ入っていく。

静かな空間にくると私の手を引いていた彼女は止まって、息も切らさずにこちらを振り向く。

 

「はじめまして」

 

「はぁはぁ…っはじめまして?」

 

目の前にいたのは短い前髪に短い髪。さっき画面の真ん中にいた、そう、A-RISEのリーダーである綺羅ツバサだった。

 

「あなた、μ'sのマネージャーさんよね?桜みはねさん」

 

不敵に笑う彼女はなんでも知っているかのような口ぶりだった。

 

「なんで…いや、こんにちは綺羅ツバサさん」

 

「ふふっなんで知ってるのか聞いてこないのね。ずっと会いたいと思っていたのよ」

 

あなたに。そう耳元で囁かれるとぞくりと背中に電流が走ったかのよう。驚きのあまり声も出ない。

 

「みはね、有名よ?音ノ木の天使。それに生徒会役員だし、ね?」

 

天使。なにそれ、誰だよ作ったの。いろんな意味で恥ずかしい。しかもそんなこと言ってもらえるような人間じゃないし!

まぁ、生徒会役員で絵里とともに少しの間だけここにお邪魔したことはある…けど。

 

「そんなの初めて聞きました。天使だなんて何かの間違いじゃないですか?」

 

頬を手でなでられる。この人の前で感情を出したら危険だ。そう頭の中で警報が鳴る。

 

「真顔でも…ここまでかわいいのに?」

 

綺羅ツバサはくすくすと笑いながら腰を抱き寄せて来た。そんな彼女に私はなにも言わず、目をそらすこともしない。

ちょっとすると彼女はなぜか空いていたほうの手で顔を隠して私から顔を背けた。

 

「…試しているこっちが試されている気分」

 

「ツバサさん?」

 

「〜っ!ツバサって呼びなさい!」

 

「は、はぁ…?」

 

わけがわからず固まっていると綺羅ツバサの後ろからどこからが現れたふたり、統堂英玲奈と優木あんじゅが歩み寄ってきた。

 

「まさか、ツバサが照れるなんてねぇ?」

 

「私もびっくりだ」

 

「うるさい。ふたりもやればわかるわよ」

 

なんだかよくわからないが、この人たちはとても画面で見ているような感じではないことはわかった。なんだ、音ノ木の生徒とあまり変わらないのかもしれない。

 

「優木あんじゅよ。みはねちゃんよろしくねぇ。私のことはあんじゅって呼んで?」

 

「ツバサが迷惑をかけてすまない。統堂英玲奈だ。好きなように呼んでくれ、みはね」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「敬語はいらないわ?はい、もう一度」

 

あんじゅは私の唇に人差し指を置いてきた。

少しことりと似た感じのふわふわかと思っていたら大違いだったようだ。こう、なんか、大人の色気?みたいなのがすごい。けしてことりが子どもっぽいと言っているわけではなく、この人は自分の魅せ方をよくわかっている。

そんなあんじゅのペースに狂わされ、思わず口を開く。

 

「よ、よろしく。あんじゅ、英玲奈…それにツバサ」

 

私のぎこちないながらもくだけた挨拶に満足したのか三人とも笑顔になる。笑うと少し幼く見えるその顔に、三人もやっぱり高校生なのだということがわかって嬉しくなり、私もつられて笑顔になった。

 

 

「はぁはぁっ…みはね!」

 

「にこ。それにみんな。どうしたの?」

 

「どうしたのじゃないでしょ!いきなり連れ去られたんだから!」

 

真姫の怒りに反省する。

 

「真姫…ごめんね?」

 

「わ、わかればいいわよ」

 

「こんなところじゃあれだし、カフェスペースにでも案内するわ」

 

ツバサのその一言で、私たちμ'sはA-RISEと初めて対談することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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