歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
「ん、ふわぁ…ぁ」
んー、よく寝たなぁ…
ん?動けない。目線を少し上にすると綺麗な金色と整った寝顔があった。って絵里先輩!?
そ、そっか…
昨日絵里先輩のお家にお泊りしたんだった。
しっかりと絵里先輩の腕に捕まっていて、動くことがかなり困難だ。
今、絵里先輩の抱き枕状態かも。なんて、ふざけてる場合じゃない。けっこう苦しくなってきた。
時間は…っと、まだ5時半…
起こしたら悪いし、そっと抜け出て書き置きでもして学院に戻ろうかなぁ、と、ぼんやりとそんなことを考えながら絵里先輩の腕からの脱出を試みる。
「ん、やぁ…」
抜け出そうとすると絵里先輩は私をよりきつく抱きしめてきた。
う、動けない。完全にホールドされた…
しょうがない、もうちょっとだけこのままでいよう。うん。
べ、べつに、絵里先輩がかわいくていい匂いだからこのままで居たいわけじゃないよ?
誰に弁解しているのかわからないけど、とりあえず仕方がなくだから。いや、うれしいんだけどね?
犬みたいに、すりすりとすり寄ってくる絵里先輩がなんだかかわいくて抱き返してみる。その瞬間、絵里先輩がかすかに笑った。気がする。え、本当に寝てる?起きてたりしてないよね?
「絵里先輩」
がんばって少し上にいって、わざと耳元で囁いてみる。
あれ?今ちょっと反応しなかったか?
ふふっいたずらしちゃおっと。
絵里先輩の背中に腕を回しておでこにキスをしてみた。さてさて、どんな反応してくれるのかなぁ?
あ、顔真っ赤。これは完全に起きてるな。
もう少しだけいたずらするか。
「起きてないみたいだし、今度は別の場所にしちゃおうかな〜」
そう言って顔を近づける。絵里先輩の唇に触れるまで、あと1センチほどだろうか。絵里先輩は顔を真っ赤にしたまま動かない。え、何考えてるの?普通起きるでしょ。
あとちょっとで触れてしまう。というところで
「やっぱ起きないからやめとこ」
顔を離す。まぁ、もともとするつもりなんてないし。それに、私が絵里先輩にキスするとか大問題だからね。
「あ、あぁ…」
「って、やっぱ起きてるじゃないですか」
絵里先輩は少し目を開けて残念そうな顔をしていた。え、残念そう…?
「みはね、おはよぅ」
ふにゃりと笑いながら私におはようを言ってくれる。なに今のかわいすぎると思うんですけど。
よく考えたら呂律もしっかりしていない。まぶたもまだ重そうだ。
もしかしたらまだ眠いのかも…
「おはようございます。私、いったん学院に戻ろうとおも…」
「だぁめ」
ちょ、ちょ、ちょ、何もっと強く抱きついてきてるんですか。しかもだめって…
いい匂いするし、かわいいし。
やばい、やばい、やばい。
こういう時ってどうすればいいんだろう。
はぁ…しょうがない…
「わかりました…」
そう言って、抱き返して絵里先輩のきれいな金の髪をすくようになでる。朝なのに全然寝癖なんかついてなくてさらさらだ。
ほんと、絵里先輩の匂い好きだなぁ…
その後、絵里先輩は寝てしまったが、私は起きてその寝顔を堪能することにした。
絵里先輩の寝顔普段の顔より幼く見える。ぎゅうっと抱きついて離れないところをみると絵里先輩は意外に甘えんぼなのかもしれない。
30分ほど、そのままでいたのだろうか。
6時になったらアラームが鳴ってしまい、夢のような時間は終わってしまった。
「絵里先輩、起きないといけない時間ですよ」
「んんぅ…み…はね…」
お、起きない…どうしよう…
「みはねさん!おはようございます」
亜里沙ちゃん登場。バッチリ目が覚めているのか元気よく挨拶をしてくれる。こう、なんか心がほっこりする。
「亜里沙ちゃん、絵里先輩が起きてくれないんだけど…」
「じゃあ、ほっといて朝ごはん食べましょう!」
「いや、ちゃんと起こさないと…おっと」
亜里沙ちゃんは私の腕を引っ張ってくる。ご、強引だな…
ベッドから引きずり出されてしまった。
「お、きる…から、ちょっと…」
やっばい、絵里先輩がうるうるした瞳でしかも上目遣いで見つめてくる。
絵里先輩はベッドから降りようとするが、まだ脳が覚醒していないせいもあってぺたりと座り込んでしまった。
「お姉ちゃんって、朝弱かったっけ?」
亜里沙ちゃんは、首をこてんと横に倒しながら考えている。いや助けてあげなよ。
お姉ちゃんは昨日みはねさんと寝たから朝くらいは…とつぶやいている。
なるほど…
でも、絵里先輩かわいそうだし。
しょうがない…
絵里先輩を昨日のように抱き上げる。
「なっ!?お姉ちゃんずるい!」
亜里沙ちゃんは私の腕をぐいぐいと引っ張って体を揺らしてくる。
「みはねぇ」
絵里先輩は満足なのかわたしの首にて腕を回してくる。
か、かわいい。
こんなの、私が男子だったらすぐ好きになっちゃうんだろうなぁ…
「さ、亜里沙ちゃん。とりあえずリビングまで行こう?そしたら、ご飯一緒に作って欲しいなぁ…だめ?」
亜里沙ちゃんは顔を真っ赤にして、放心状態になってしまった。
ん、あれ?熱でもあるの?大丈夫かな?
「あ、亜里沙ちゃん?」
「はっ、もちろんです!」
元気よく返事してくれたし、具合が悪いわけではなさそうだ。
「よかった♪」
とにかく、リビングに行こう。
亜里沙ちゃんにドアを開けてもらい、リビングへと歩き出す。
てか、絵里先輩、身長のわりには軽すぎだよなぁ…ま、スタイルいいし。
ソファに絵里先輩を座らせて、亜里沙ちゃんと朝ごはんを作ることにした。
妹ってできたらこんな感じなのかなぁ、なんて思いながら楽しい時間を過ごした。
その後、私は一足先に学院に戻ることにした。
***
昨日は楽しかったなぁ…なんて考えているうちに、教室の自分の席で寝てしまっていたようだ。周りはクラスメイトが登校してきたのか少しざわついている。
そんな中で私はさっきから誰かに頭をなでられているみたいだ。
優しい手つき。知っている感触。
このままずっとこうしていたいーーー
でも、そろそろ起きないといけない。
「ん、んん」
「あ、みいちゃん起きた?」
この声はことりちゃん?そっと目を開ける。
目の前には…って誰!?初めてみる顔が机から目だけをのぞかせてこっちをじっと見つめていた。
「ってうわぁ!?」
「あはは…穂乃果ちゃん…」
「穂乃果!何やってるんですか!」
「あ、ことりちゃ…ことり先輩」
「む…おはよう、みいちゃん」
ことりちゃんはむっとした表情をしている。
機嫌が悪くなった…?まぁ、あらかた私が他人行儀だからといったところだろう。
私はそこに触れることなく疑問を口にする。
「あの…この方達は…?」
「自己紹介が遅れてすみません。私、ことりの幼なじみの園田海未と申します」
ことり先輩の隣に立っていた人がきれいな動きでお辞儀をする。
大和撫子、という言葉がよく似合うと思った。青色に近い黒い髪に穏やかな笑みを浮かべている。園田海未さんか…素敵な人だな。
「私、高坂穂乃果!よろしくね!」
さっき、目の前で私の顔をガン見していた人は高坂穂乃果さんというようだ。サイドテールがチャームポイントだろうか。その笑顔からもわかる通りとても元気で明るい人みたい。
「よろしくお願いします。海未先輩、穂乃果先輩。私は桜みはねです」
ちょうど私の自己紹介が終わったところで予鈴がなってしまった。
「あ、予鈴なっちゃった…みいちゃん、また昼休みに来るからね」
ことり先輩は手を振り、海未先輩は軽い会釈をして嫌がる穂乃果先輩を引っ張り自分の教室へと戻っていった。
「は、廃校!?!?!?」
「穂乃果!」
「穂乃果ちゃん!」
なんてやり取りが聞こえたような気がした…
って廃校!?
休み時間に廊下を見てみたら、廃校の張り紙が張り出されていたようだった。
*
「みいちゃん!お外で一緒にお昼食べよう?」
ことりちゃ…ことり先輩がやってきた。学校なんだからちゃんと先輩をつけよう。
あ、お昼ご飯いつも食べないんだった…
「わ、わかりました」
ことり先輩と中庭に出ると、すでにベンチのところに穂乃果先輩と海未先輩が座って待っていた。
「あれ?みいちゃんお昼ご飯は?」
「はは、忘れちゃって…」
実際忘れたというよりかは、お昼を抜いているだけなのだが…
その理由は食べたくないというよりは、理事長に出していただいている生活費をあまり使いたくないという思いからだ。
ことりちゃんに心配かけるのも嫌だし笑ってごまかすことにする。
「じゃあ、はい、あーん♡」
ことり先輩が箸で卵焼きを持って私に差し出してくる。
「な、ことり!破廉恥です!みはねが困っているではありませんか!」
「あ、みはねちゃんばっかりずるい!穂乃果も食べたい〜!」
仲良いなぁ…
とりあえず、卵焼きを食べる。
「ん、甘くて美味しいです!」
「喜んでくれて嬉しい♪」
そのまま、楽しくお昼休みを過ごした。
あと10分くらいしか残っていないという時、金髪をなびかせた絵里先輩と、希先輩が来た。
「あなたが、理事長の娘さん?」
「あ、えっと、はい」
「廃校のこと、何か聞いていたかしら?」
「いえ、今朝知ったばかりです…」
「そう。ありがとう」
なんだか絵里先輩の表情が冷たい。さっきからずっと見ているが、少しも笑うことがない。
対照的に希先輩はなんでかわからないけどにこにこしてるし…
「あと、みはね、放課後生徒会室でお話があるわ」
冷たい眼差しのまま私に一言そう告げる。
なんか…私の知っている絵里先輩じゃないみたい。なんだか凍ってしまいそうだ。
「わ、わかりました」
「じゃ、みはねちゃんまたなぁ」
絵里先輩と希先輩は校舎に戻っていった。
先輩たちが校舎に入るとすぐ、校内放送の音が響く。
《一年の桜みはねさん。至急理事長室に来てください》
次から次へと…
はぁ…
「今日はありがとうございました。では、私はこれで」
三人と別れて理事長室へ急ぐ。もちろん廊下は走らずに。
前に一度だけ来たことはあるが、なかなか入りづらい。ていねいにノックを二回すると、中から理事長の返事が返って来た。
「失礼します。桜です」
「早かったわね♪」
「……。で、お話は?」
理事長は今朝のことりちゃんのように少し不機嫌そうな顔をすると、無言で何かを差し出してきた。
「携帯、持っておいてちょうだい」
「ん、え?携帯…ですか?」
「ええ、いろんな人と連絡が取れたほうが便利じゃない?」
「そう…ですね。ありがとうございます」
「あ、ちなみに私の連絡先は入ってるわよ?」
くすくすと笑って理事長は言う。なんでドヤ顔なんだろう?
そんなことより廃校のことを聞きたかったが、理事長がそんなことないかのように普通なので聞くに聞けなかった。まぁ、私にはあまり関係のないことなのかもしれない。
その後、少し雑談をしてから教室に戻って午後の授業を受けた。
*
ついに、ついにきてしまった放課後。
「失礼しま…って絵里先輩だけですか?」
「そうよ」
目も合わせてくれないんですけど…
あ、泣きそう。やばい。
「絵里先輩…はなしって、なんです…か」
ぽたりと涙が一筋こぼれた。やばい、なんでこんなことで泣いてるんだろう。
とっさに顔を見られたくなくて下を向いた。
「あぁ、って、みはね?どうしたの!?」
「なんでも、ないです」
「泣いてるじゃない!」
絵里先輩が優しく抱き寄せて頭をなでてくれる。絵里先輩…落ち着く匂い…
「だって、絵里先輩怒ってるみたいだし」
「お、怒ってなくはない…かな?」
「…っ、なんで」
「え、えっと…」
絵里先輩は困ったように眉を下げている。そんなに言いたくなことなのかな。絵里先輩の顔をまっすぐに見ると観念したようで口を開く。
「…はぁ。だって、楽しそうにお昼ご飯食べてたじゃない。あーん、ってしてもらってたし」
それに、私はまだ一緒に食べたことない、なんて。
なんだ、そんなことか。そんなことで私泣かされてたのか。それに、今まで一緒に食べたことがないのは、そもそも私がお昼ご飯を食べてないわけで。誘われたらもちろんご一緒させてもらっていたと思う。
「じゃあ、今度先輩にもしてあげます」
「いや、そこは私がしてあげたいのだけど…」
あれ?してほしいんじゃなくてしたいの?って、いつまでこの状態でいなきゃいけないのだろうか。希先輩とかが入ってきてしまったらかなり恥ずかしい。
「せ、先輩…そろそろ…」
「あぁ、ごめんなさい」
絵里先輩に解放された。ちょっと残念、なんて思ってないからね!
「それで、話っていうのはね?今日も、泊まりに来ない?…あ、嫌だったらいいのよ?」
「え、迷惑じゃないですか?そんなに何度も行ったら…」
「私も、もちろん亜里沙も来てほしいと思っているんだけれど…だめかしら?」
私よりも背が高いが上目遣いでじっと見つめられる。も、もうこんなの行く以外に選択肢なんてないじゃないか。
お昼のあの真顔で怖い絵里先輩はどこに行っちゃったんだろう。上目遣いはずるいって…
「じゃあ、お邪魔します」
「えぇ!もちろんよ!」
と、そんなこんなで、また絵里先輩のお宅にお邪魔することになりました。
今回は約束通り亜里沙ちゃんのお部屋に泊まることにした。
亜里沙ちゃんのことや、絵里先輩のことをいろいろ聞かせてもらった。
もちろん寝る場所は別々だったから安心してほしい。
閲覧ありがとうございます。
二年生の登場のさせかた結構雑に…ほんとすみません。
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