歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
ことりちゃんを連れ戻すために空港へ向かうのはいいけど、体力が…
なんて言っている場合はなくて、とにかく走る。
空港に入ってことりちゃんがいるであろう場所へ向かう。
「ことりちゃん!」
私よりも早く見つけた高坂先輩がことりちゃんの腕をつかんだ。
それでも、ことりちゃんは振り返ることはしない。
「ことりちゃん!!!」
さっきよりも大きな声。
「ことりちゃん、ごめん。私、スクールアイドルやりたいの。ことりちゃんと一緒にやりたいの!いつか…別の夢に向かう時が来るとしても…!」
そう言うと、掴んでいた腕を離し正面にまわって抱きついた。
「行かないで!」
「ううん。私のほうこそごめん。私…自分の気持ち、わかってたのに」
ことりちゃんは涙をこぼす。
感動的だね。
でも…
「私の存在忘れられてる?」
ボソッとつぶやいたその言葉をちゃんと拾ってくれたらしいことりちゃんが私のほうを向く。
「みいちゃんも来てくれたんだね!本当にうれしい!」
ことりちゃんは高坂先輩から離れて私に抱きついてきた。
「みいちゃんはどう思ってる?」
はぁ…私が来たのは自分の気持ちをちゃんと伝えたいと思ったからでもある。こんなところで逃げたら、これから先もなにかあったら逃げ続けることになるかもしれない。ちゃんと自分の気持ちを伝えられるようにならないと…
「私は…私はね、ことりちゃんが留学したいならそれでいいと思ってた」
「うん。そっか」
「でもね、心のどこかでは行かないでってずっと叫んでいたよ。でも、この気持ちを伝えたらことりちゃんが自分で答えが出せない、邪魔になっちゃうって思って…」
「そんなこと…」
「ううん。ことりちゃんは優しいから。だけど、私…ことりちゃんのこと大好きみたい。ずっと、そばにいてほしい…ことりちゃんと、いや、ことりとこれからも一緒にいたい!私と、一緒にいてくれますか?」
抱きしめられる力が強くなる。
さっきまでされるがままだった私も少しでもこの気持ちが伝われば、とことりちゃんの背中に手をまわす。
「私も…ことりも、みいちゃんとずっと一緒にいたい」
「…ありがとう。ことり」
「うんっ。やっとことりって呼んでくれた」
その笑顔をずっとそばで見ていたい。そう思ってしまった。
「これからもずっと一緒にいるから。そばにいるから、ね?」
「うん!」
ふたりにっこり笑いあう。
「っと、そうだ!今日ライブやるから急いで学校に戻ろう!」
「ことりちゃん、みはねちゃん!急ごう」
私はことりの手を取ると、高坂先輩の背中を追いかけ走り出した。
***
〜海未〜
みはねと穂乃果を送り出した後、みんなと合流した。
ステージの準備を大急ぎで終わらせると、私たちのライブを楽しみにしてくれている人たちが講堂の席を埋め尽くした。
「ちゃんと来るのかしら」
「大丈夫ですよ。みはねと穂乃果なら」
「それより、衣装はどうする?」
「制服のままでいいんじゃない?スクールアイドルなんだし」
ふふっやっぱりみんなとこうしているのは楽しいですね。
そんなことを考えていると、突然にこに手を引っ張られてみんなより少し離れたところに連れて行かれた。
「にこ、どうしたんですか?」
にこはしばらく気まずそうな顔をしてから口を開いた。
「はぁ…気づいてないと思うから言っておくけど、首のところ見えるわよ」
首…?……………あ!
「え、あ、ほほほ他の人は!?」
「たぶん気づいてないと思うわ」
「そ、そうですか」
「まったくみはねも…。あんたもあんたよ?海未。まぁ、髪がかかってる時はバレないとは思うけど、踊っている時はわからないから気をつけなさい」
「は、はい。ありがとうございます」
「みんな〜!お待たせ〜!」
どうやら穂乃果が帰ってきたみたいですね。
隣にもちゃんとことりがいる。
…今みはねのほうを見たらライブどころではなくなってしまいそうですね。
視線をそらそうとしたのになぜかバッチリと目があってしまった。
なんでそんな笑顔で私を見るんですか。まったく…
*
急いで学校に戻ってきた。
ステージ裏に行くまえに講堂の客席を見るとたくさんの人がμ'sのステージを待っててくれていた。
裏で待っているみんなのところに行くと最初に海未と目があった。
なんだかそれが嬉しくて自分でもびっくりするくらいに顔が緩んでしまう。
「さ、みんながんばってね!」
「うん!よーし!1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
…あれ?続きは?
なんでみんなこっち向いてるの?え?
「あんたビシッと決めなさいよね」
「ほんとよ。みはねのせいで止まってしまったわ」
にこと絵里にあきれた顔で見られてしまう。
いきなり絵里と希に腕を引っ張られみんなの輪に入る。
「「10!」」
希と絵里がそう叫ぶ。
そんな…そんなの…嬉しすぎるよ。
「ほら、みはね」
絵里に耳元でそう囁かれる。
「うん。μ's!」
『ミュージック…スタート!!!』
みんなはひとりずつ私にハグをしていくと、ステージへ飛び出して行った。
みんな…私のこと、μ'sの一員だって…
みんな大好き。ほんとに大好き!
「みんな!ありがとう!!!」
観客の声に負けないくらいに大きな声でそう叫ぶ。
みんなにちゃんと気持ちが伝わりますように…
*
「はぁ…終わったー!」
「みんなお疲れ様。すっごくよかったよ」
みんなにタオルと水を配りながら声をかける。
「ウチらにちゃんと届いとったよ。みはねの声」
「うんうん!ありがとうって聞こえたにゃ」
「あはは…ちゃんと聞こえててよかった。改めて、みんなありがとう!大好き!」
みんな顔を赤らめながらも満面の笑み。
でも一人だけ浮かない顔をしている。
「みはねちゃん…穂乃果の事も、好き?」
「ど、どうしたんですか?」
「だって…だって!あんなひどいこと言っちゃったもん。今だって高坂先輩って呼んで、穂乃果にだけ敬語だもん」
そうだった。私は学院祭の前の日に高坂先輩に…
「嫌いじゃ…ないよ」
「〜っなんで!」
「なんでって。あれは私のせいでもありますし…それに」
「みはねちゃんは何も悪くない!穂乃果が悪いの!ごめんなさい。ずっと謝りたかった。だから、嫌いにならないで」
今にも泣き出しそうな顔。
周りのみんなを見ると、みんなも同じような顔で高坂先輩の事を見つめていた。
「嫌いになんて…ならないから。大好きって言ったでしょ?」
「でも…」
「はぁ…ほ、のか…のこと好きだって。私の彼女なんでしょ?もっと自信持ってよ」
そう言って抱きしめる。
一度高坂先輩呼びに慣れてしまったから、呼び捨てにするのは少し気恥ずかしい。
まぁ、最初は意地悪のつもりでやっていたんだけど、ね。
「ありがとう。名前で呼んでくれるだけでも嬉しいよ。みはねちゃん大好き」
「たぶんそのうち前みたいに戻ると思うよ。私も大好き…だから」
その後はなぜかみんなに抱きつかれて、揉みくちゃにされて。最後はやっぱりみんなで泣いた。
閲覧あがとうございました!
最近なぜか寒いですね…
春はどこ行っちゃったのかな(´-`).。oO