歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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4.自覚

 

 

 

 

 

放課後は毎日生徒会に行っている。でも、絵里先輩と話す機会は最初の日以来めっきり減ってしまった。

言葉を交わすのは仕事の話ばかりで、笑顔を見せてくれることもほぼなくなってしまった。

 

私、嫌われるようなことしちゃったかな…?

 

あの日、手をふって家に入ろうとする絵里先輩の顔が、少し悲しそうだったのを覚えている。…もしかしたら、何か関係あるのかもしれないな。

 

 

ぼんやりと授業を受けていたら、いつの間にかお昼休みになってしまったようだ。

 

「ねぇ、みはね。ちょっといい?」

 

となりにいた真姫ちゃんが、私の制服の袖を遠慮がちに引っ張ってきた。

 

「どうしたの?真姫ちゃん」

 

「…ついてきて」

 

真姫ちゃんはそれ以上なにも言わず教室を出て行ってしまった。

私は慌てて教室を出て真姫ちゃんを追いかけた。

 

「どこ行くの?」

 

「秘密」

 

「ねぇ、教えてよ」

 

私の質問に答えてくれる気はないらしく、スタスタと早歩きでどんどん先に行ってしまう。私はそのあとをちょこちょこと小走りで追いかける。

そうこうしてついたのは音楽室だった。

 

真姫ちゃんは迷うことなく入るとピアノの椅子に座った。

 

「ま、真姫ちゃんピアノ弾けるの!?」

 

「ちょっと、バカにしてるの?弾けなかったら座るわけないじゃない」

 

真姫ちゃん鍵盤のふたを開けながら呆れた顔でこっちを見る。

が、すぐに目を閉じて鍵盤の上に手を置いた。

時間が一瞬止まった気がした。

 

「愛してるばんざ〜い♪ここで〜よか〜った〜♪ーーー」

 

真姫ちゃんがピアノを弾きながら歌い始める。

声も出ないほどの素晴らしい演奏に圧倒された。そしてなにより、真姫ちゃんの歌声と弾き語る姿がとても綺麗だった。

 

「真姫ちゃん…すごい。すごく綺麗だった!」

 

拍手をしながら感想を述べる。

 

「と、当然でしょ」

 

「今の曲って…」

 

「その、私が作ったのよ」

 

「作曲もできちゃうなんてすごい!」

 

真姫ちゃんは当たり前じゃない、と言いながらも照れていて、さっきまでとは違ってすごくかわいかった。

 

「あぁ、もう。聞かせるんじゃなかった」

 

「ねぇ、なんで聞かせてくれたの?」

 

真姫ちゃんの顔を覗き込むと思いっきりそらされた。

ちょっと傷つくんだけど…

 

「べつに、みはねが元気ないみたいだった…から」

 

ほんとに小さな声でそうつぶやいた。

 

「えっ?」

 

「な、なんでもないわよ!」

 

真姫ちゃんは突然立ち上がると音楽室から出て行ってしまった。

うそ、本当はちゃんと聞こえてた。私を元気づけるために聞かせてくれたんだね。

 

「真姫ちゃんありがとう」

 

そうだよね。せっかく真姫ちゃんが元気になるようにピアノを聞かせてくれたんだから。頑張らないとだよね!

今日、ちゃんと絵里先輩と話そう。そう決意して真姫ちゃんの背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

お昼休みはあんなに意気込んでいたのに、やっぱり少し不安になってくる。でも、行かないと…だよね。

 

 

 

「失礼します。遅れてしまってすみません」

 

絵里先輩は私のほうを一瞬見たが、すぐに視線を落として仕事に戻ってしまった。

やっぱり嫌われてるのかな…?いや、でも…

 

希先輩は椅子の上に乗って棚の上のものを取ろうとしていた。

 

「あ、みはねちゃん!気にせんでええよ〜」

 

私に気づいて手をひらひら振ってくる。

…椅子が少しぐらついている。

 

「…っ!?」

 

「危ない!」

 

不安が的中する。希先輩が椅子ごと横に倒れたのだ。しかし、希先輩の体が床に打ちつけられることはなかった。

 

早くに気づいた私は、希先輩をなんとか受け止めることができた。まぁ、二人とも床に倒れているわけだけど…

 

「ん、…っ」

 

「希!大丈夫!?」

 

絵里先輩が大声で叫ぶ。

 

「だ、大丈夫…ですか?」

 

「大丈夫、大丈夫。みはねちゃんこそ…」

 

希先輩は、へらりと笑う。

 

「よかった…。心臓、止まるかと思いましたよ…っ」

 

上に乗っている希先輩を抱きしめながら、頭をポンポンとなでる。

 

「ウチはケガとかしても全然平気よ?///」

 

希先輩はほおを赤く染めながら私から離れようとする。しかし、そうはさせなかった。

 

「希先輩がよくても、私がよくないんです」

 

だから危ないことしないでください、とより一層希先輩を強く抱きしめてから手を離して解放した。

 

「うん。ごめんなぁ…」

 

そう言って希先輩は立ち上がろうとした…が、へなへなと座り込んでしまった。

 

「足、捻ってしもうたみたい…」

 

顔は笑っているが、相当痛いのだろう。

 

「じゃあ、はい!どーぞ?」

 

そう言ってしゃがんで希先輩に背を向ける。

 

「ど、どうしたん?みはねちゃん?」

 

「いや、保健室に連れて行ってあげようとしてるんですけど…?おんぶ、知らないんですか?」

 

「いやいやいや、一人で行けるよ!」

 

「乗らないなら、引きずって連れて行きますけど…?」

 

首をかしげ、にっこりと笑顔でそう言う。ちょっと意地悪だっただろうか?でも、まださっきのこと怒っているわけだし…ね。

 

「引きずられるのは嫌や…」

 

希先輩は、しゅんとした顔をすると素直に肩に手をかけてきた。

最初から乗ればいいのに…

 

「じゃあ、保健室に行ってきますね」

 

希先輩を背中に乗っけて生徒会室をでる。

絵里先輩からの返事はなかった。

 

 

 

 

 

〜絵里〜

 

 

「じゃあ、保健室に行ってきますね」

 

そう言ってみはねは希をおんぶをして行ってしまった。

 

「はぁ…」

 

なによ、希ばっかりに優しくして。いや、今回のことはしょうがないことなのだが…

あの日以来、みはねとうまく話すことができない。もしかしたら、みはねのことを避けてしまっているかもしれない。

みはねは、気にしていないのかしら…

今日はお昼休みにみはねの教室に話がしたくて行ったけどいないし。

 

「もう…なんなのよ!」

 

そう言って机に突っ伏す。と、同時にドアが開いた。

タイミングよすぎよ…もう。

 

「絵里先輩…どうかしたんですか…?」

 

みはねが帰ってきてしまった。

 

「べつに…仕事、まだ残ってるから」

 

姿勢を正して仕事に戻る。

みはねは希のカバンを持ってもう一度出て行った。希は…帰るのね。

戻ってくると、みはねは何も言わずに仕事を始めた。希の分の仕事もできる範囲でやっているみたいだった。

 

 

 

「絵里先輩、時間大丈夫なんですか?」

 

気がついたら、いつしかのように日が暮れてしまっていた。

みはねも仕事で気がつかなかったようだ。

 

「…帰るわね」

 

カバンを持って立ち上がる。

 

「お、送っていきま」

 

「いい、じゃあ」

 

 

みはねの言葉をさえぎってそう言い残して教室を出ると私は走り出した。

自分でもなんでそんなことをしたのかわからなかった。普通に話せばいいのに。自分の行動に傷ついている自分がいる。

学校を出てからも足を止めることはない。

走って走って走って走って、疲れたとかそんなのおかまいなしに走り続ける。

 

「あっ!?」

 

足がもつれて転んでしまった。

 

「痛い…」

 

そこまでひどい転び方をしたわけではないけど、膝を擦りむいてしまったようで少し血が滲んでいた。

痛くて、情けなくて涙が出てくる。

立ち上がれないわ…

 

「はぁ…はぁ…やっと…見つけたっ」

 

この声は…みはね…

息が切れてる。走って探してくれたのだろうか。

 

「転んじゃったんですか?家まで送っていくので、背中、乗ってください」

 

そう言って私の前にしゃがむ。

そんな…そんなの…

 

「一人で帰れるわよ!ほうっておいて!」

 

つくづく私は素直じゃない。

本当はみはねが来てくれて嬉しいのに、おんぶまでしてくれるっていうのに…

でも、頭に浮かぶのはみはねの背中に乗った希の横顔。すごく嬉しそうだったわ…

 

「はぁ…」

 

みはねはため息をつくと、立ち上がって私の視界から消えた。

そうよね、私のことなんて…

 

 

「きゃあっ!?」

 

いきなり体が浮いた。

みはねと目が合う。悲しそうな顔…

 

「すみません、こんな無理やり…でも、先輩が悪いんですよ…」

 

そう言って歩き出す。

お、お姫様抱っこなんて初めてされた。

恥ずかしい。でも、みはねの体温が、とくとくと伝わってくる鼓動が気持ちいい…

 

目をつぶっていると、突然足が止まる。家に着いてしまったようだ。

 

「鍵、ありますか?」

 

カバンから鍵を取り、無言でみはねに鍵を渡す。

 

「すみません。……お邪魔します」

 

器用にドアを開ける。中に入ると亜里沙が玄関のところで待っていた。

 

「あ!お姉ちゃん!…ってみはねさん!?ど、どうしたんですか?」

 

「あぁ、亜里沙ちゃん。ちょっとお邪魔してもいいかな?」

 

「は、はい!どうぞ!」

 

「ありがとう」

 

亜里沙がみはねをリビングに案内する。

リビングに入ると私は優しくソファに下ろされた。

 

「ちょっと待っててください」

 

大人しく待つことしかできない。

…いろいろとびっくりしすぎて動けなかった。

みはねと亜里沙が話している。亜里沙は最初は驚いていたようだが、最後は笑顔で話していた。みはね、また亜里沙の頭なでて話してる…

話し終わったのか、亜里沙はみはねに救急箱を渡すとリビングを出て行ってしまった。

 

「絵里先輩、傷見せて」

 

「………」

 

真剣な表情のみはねに何も言葉が出てこない。

 

「…私のこと、嫌いですか…?」

 

みはねは手当てをしながら、優しい声で私に問いかける。

私は首を横に振る。嫌いなわけ、ないじゃない。

 

「…本当に?」

 

今度は首を一生懸命縦にふる。

 

「…よかった」

 

「み…はねこそ、私のこと嫌いなんじゃ…」

 

そう言うとみはねは私の目を見ながら手当てし終わった膝に優しくおでこをくっつける。みはねのサラサラな髪があたって少しくすぐったい。

 

「嫌いなわけない。好きですよ?」

 

「う、うぅ…」

 

そんな真剣に言われたら…さすがに照れてしまう。

顔が熱い。きっと私の顔、真っ赤になっているわね。

 

「絵里先輩に嫌われてなくてよかった」

 

みはねは本当に安心したように笑顔で言ってくる。

どうしよう…。頭の中が何かが燃えているように熱くなってくる。

私は両手をみはねのほっぺに添えるとーーー

みはねの柔らかそうな唇に自分のそれを重ねた。

 

「ん…っ」

 

あ、やっぱり柔らかい…

そんなことを考えながら唇を離す。

って、私今…みはねにキスした…?

 

「ご、ごめんなさい…!自分でもよくわからなくて、本当にごめんなさい」

 

「い、いえ!だ、大丈夫です…っ」

 

みはねは真っ赤になった顔を隠すように手で覆って返事をする。

ふふっ耳まで真っ赤だから意味ないのに。

そんなかわいいみはねの頭を優しくなでる。すると、みはねはぎゅっと抱きついてきた。

は、ハラショー!

何この生き物、かわいすぎるわ!

 

「絵里先輩の匂い、落ち着く」

 

私の首元に頭をぐりぐりしながら言ってくるものだから、思考はパンク寸前だ。

 

突然扉が開く音がする。

ふたりしてハッとなってリビングの入り口を見る。

 

「む、お姉ちゃんばっかりみはねさんと仲良くしててずるいよ〜」

 

そこにはぷくーっとほっぺを膨らませた亜里沙がいた。

 

「あはは、お姉ちゃんのこと独り占めしちゃってごめんね?亜里沙ちゃん」

 

みはね今なんて言った?亜里沙が言っているのは、そういうことじゃないと思うんだけれど…

 

「…今日泊まっていってくれたら許します」

 

「あ、えーと、絵里先輩…」

 

「いいわよ。じゃあ、亜里沙?ご飯作っちゃうからみはねとお話でもしててくれるかしら?」

 

亜里沙はうんっ!と頷いた。

危ない、亜里沙が来てくれなかったら…

それにみはねが泊まってくれるみたいだし、亜里沙には感謝しないとね。

 

ご飯も作り終わり、いつもとは違う三人でご飯を食べた。

みはねは私の料理に大げさでしょってくらい喜んで、おいしいって言ってくれた。

 

 

 

ご飯を食べ終り、それぞれお風呂に入った後に事件は起きた。

 

「みはねさんは私と寝るのっ!」

 

「え、わ、私も一緒に寝たいわ…!」

 

「ちょ、二人とも落ち着いてください…」

 

みはねの右腕を亜里沙、左腕を私で引っ張り合っている。みはねは苦笑いをしながらなだめることしかできないみたいで…

私だってみはねと寝たいもの!いくら亜里沙でも今回は譲れないわ!

 

「「みはね(さん)!!!」」

 

「は、はいっ!」

 

「「どっちか決めて(ください)!」」

 

「え、えぇ〜、どっちもとは…」

 

「「ダメ!!!」」

 

「む、むぅ…じゃあ、今回は絵里先輩のところにお世話になり…ます」

 

「やった♪もちろんよ!」

 

「そんなぁ…みはねさん…」

 

亜里沙は涙目でみはねに抱きつく。

 

「亜里沙ちゃんとは、次一緒に寝ようね」

 

「絶対ですよ…?」

 

みはねはうん、と言いながら亜里沙の小指に自分の小指を絡めると、約束と笑顔で言った。

みはねの笑顔はすごいわね。泣きそうだった亜里沙がいつの間にかあんなに笑顔になってるわ。

 

「みはね、部屋に行きましょう?」

 

「はい!じゃあ、亜里沙ちゃんおやすみ」

 

あ、また頭なでてる…

 

「おやすみなさい!みはねさん!」

 

そう言って、亜里沙はみはねの腕を自分の方に引っ張ってみはねのほっぺにキスをした。そして、満足そうな顔をすると自分の部屋に行ってしまった

 

「キス…されちゃいました」

 

みはねはキスされたほっぺを触り、はにかみながらそんなことを言う。

そんなの…認められないわ!

そう思い、みはねの腕を引っ張って自分の部屋まで急ぐ。

部屋に入り、ドアを閉める。

 

「え、絵里先輩?どうしたんですか?」

 

「べつに…」

 

そう言ってベッドに向かう。が、後ろからみはねに抱きつかれた。

 

「うそ…先輩怒ってる」

 

そう耳元で囁かれる。

 

「理由、教えてください」

 

本当に悲しそうに言うみはねに正直に言葉が出る。

 

「…みはね、亜里沙にキスされて嬉しそうにしてたじゃない…」

 

「それだけ?」

 

みはねは、予想外だったのかきょとんとしている。

私は、こくりと頷いてうつむいた。

気がつくと私はみはねに向き合う形にされていた。

 

「あーあ、先輩にキスされた時のほうが嬉しかったんだけどなぁ」

 

みはねは満面の笑みでそんなことを言う。

もう、本当にずるいんだから。

 

「みはね、一緒に寝ましょ?」

 

「え、狭くなるから床で寝ますよ」

 

「そんなの、許すわけないでしょう?」

 

無理やり腕を引っ張る。

 

「うわぁ!?」

 

ドサッっと二人してベッドに倒れ込む。

隣を見ればみはねが肩を揺らして笑っている。

思わず私もつられてしまい、二人して笑いあう。

 

ーーーなんだかとっても幸せ。

 

 

 

「ねね、狭いからくっついて寝ましょう?」

 

みはねは、恥ずかしげもなくそんなことを言ってくる。

 

「な、え、ちょ」

 

「絵里先輩動揺しすぎ〜!ほら、ぎゅ〜っ」

 

「な、くすぐったいわよ」

 

みはねが抱きついてスリスリしてくる。

ちょ、かわいい!かわいいけど、私の理性が…

 

「え…りせんぱ……お、やす…み…なさ…」

 

って、寝ちゃった!?

ふふ、まったくもう…

 

「おやすみ、みはね…」

 

 

 

私はあなたに恋をしている。きっと、出会ったときから。

希や亜里沙がみはねと仲良くしているのをみると胸が苦しくなるの。

 

私、けっこうやきもち妬きみたい。

 

 

 

だから覚悟しててね?

 

 

 

 

 

そっと、みはねのおでこにキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました。

文章力なくてほんとすみません…


感想ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!

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