歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜   作:YURYI*

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*園田海未誕生日記念*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5……4……3……2…1ーーー

 

 

 

三月十五日となった瞬間に、携帯の通知音が鳴る。

去年までは幼なじみの二人からだけだったのに、今年はそのほかに六件ある。

私の誕生日というだけで、特別なことは何もないのにこうやって起きてまで待っているのは、これをひそかに楽しみにしているから。

 

ぴったりに送らなくてもいいのに、なんて言いつつもこんなにも嬉しいのはどうしてでしょうか。

一つ一つしっかりと読んでから返事を送る。

 

しかし、たった一人からだけきていない。それが他のメンバーからもらった嬉しさと同じくらいに私を悲しくさせる。

 

「みはね…」

 

そう、私の恋人…桜みはねからだけ来なかったのです。

 

教えたわけではないが、みはねなら送ってきてくれると思っていたのでショックは倍以上だった。それからしばらく待ってみても何もこなかったので悲しみが怒りに変わってくる。

 

「はぁ…私は何を期待していたのでしょうか…」

 

みはねが悪いわけではないのに、勝手に傷ついて怒って。本当に私は何をしているのでしょう。

もうこんな時間ですし、寝ることにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

誕生日ではあるが、もちろん学校に行かなければならないわけで。いつも通りに穂乃果とことりと朝待ち合わせて学校に行く。

 

「海未ちゃん、お誕生日おめでとう」

 

待ち合わせ場所にはすでにことりがいて、私を見つけるなりかけよってお祝いの言葉を言ってくれた。

 

「ありがとうございます。あら…穂乃果はまだきていないのですね」

 

「うん。そろそろ来るかなぁ…?」

 

相変わらず穂乃果は朝が弱いようで、毎日のようにギリギリの時間に来る。家まで迎えに行くことも少なくはない。今日も起こしに行かなければならないでしょうか…

 

「海未ちゃんおめでとー!!!それと、遅れてごめんね!」

 

そう考えていた矢先、背後から穂乃果の叫び声が聞こえたかと思ったら思い切り抱きつかれた。

その衝撃に耐えながらも、見なくともわかる幼なじみに呆れた顔を向ける。

 

「穂乃果…はぁ、いろいろと言いたいことはありますが、今回はやめておきましょう。ありがとうございます」

 

「さ、学校に行こうか!」

 

「まったく、あなたが言うことですか…」

 

「待ってよ、穂乃果ちゃ〜ん!」

 

三人で他愛とない話をしながら歩いていたら、モヤモヤなんてなくなる…わけでもなくて。

心にしこりのようなものを抱えながらも二人に合わせて笑顔を作る。まぁ、学校で会ったらおめでとうの一つくらいは言ってもらえるでしょう。そう言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はすこぶる運がないみたいだ。ましてや今日こんな思いしなくてもいいじゃないですか…はぁ。

朝の浅はかな考えをしていた自分を呪ってしましたい気分です。

おめでとうの一つくらいもらえる?なんですかそれ。おめでとうどころかまだ一回もみはねと会っていないですよ。

なんでですか!呪ってしまいたいとか言っていてすでに呪われていると言うのですか!?

…すみません。少々取り乱しました。

 

 

 

「海未ちゃん、大丈夫?」

 

「うんうん。なんか元気なく見えるよね!」

 

お昼休みにお弁当を食べていると、ことりと穂乃果に心配そうな顔をされてしまった。そんなに顔に出ていたのだろうか。

 

「平気ですよ。大丈夫です!」

 

つい甘えてしまいたくなってしまう衝動をなんとかこらえ、そんな強がりを言ってしまう。

悲しくても、そう答えないといけない。そんな気がしてしまう私はやっぱり強がりで。でも、そんな気持ちとは裏腹に泣いてしまいたい自分もいるのです。この気持ちに気付いて、なんて困らせてしまうだけですね。

 

「あ、そういえば。みはねちゃんにはなんて言ってもらったの?何かもらったりとか?」

 

「ことりも気になる!みいちゃんってけっこうキザだから…どんなプレゼントもらったの?」

 

ふ、二人とも痛いところをついてきますね…

言えない…けど、かと言って嘘をつくのもおかしいですよね。

 

「実は、なにももらってないんです」

 

「え…?おめでとうくらいは…」

 

「だから、おめでとうもなにもまだもらっていないんです…!」

 

「み、みいちゃんが…?」

 

「はい…」

 

私もできればこんなこと言いたくはないですよ。でも、本当にまだなにももらっていないんです。プレゼントが欲しいなんて言わないので、おめでとうの一言だけでも欲しいのに。

でも、わざわざ自分から言ってもらいに行くのも変じゃないですか。そんなの私には無理です!

 

「穂乃果、ちょっと行ってくる!!!」

 

穂乃果は真顔で立ち上がると教室を出て行ってしまいました。

もう、今日は追いかけて怒る元気もないです。なんだかなにもしていないのに疲れました。

きっと穂乃果のことだから、みはねのところにでも行ったのでしょう。

 

「海未ちゃん。きっと、何かわけがあるんだよ」

 

だから心配ないよ、なんて優しい言葉をかけられてしまえば、意外と脆い私の心はボロボロと崩れてしまいそうになる。

 

「ありがとうございます。ことり」

 

今の私にはぎこちない笑顔でそう告げることしかできなかった。

 

 

 

 

 

数分後、嵐のように去って行った穂乃果は嵐のように戻ってきた。

 

「海未ちゃん!みはねちゃん連れてきたよ!」

 

穂乃果は真姫の手を引いている。真姫の先にはみはねがいた。なんだか予想外のことに言葉もなにも出ない。

 

「って、ちょっと!なんで私まで…!」

 

「それはみはねちゃんが真姫ちゃんから離れないから」

 

「ご、ごめんって」

 

今日は私の誕生日なんですよ。今まで生きてきてそんな考えしたことなかったのに、よりによって今出てくる。

なんで私の誕生日なのにおめでとうも言ってくれないんですか。

なんで私の誕生日なのに真姫とくっついているんですか。

 

「ほら、みはねちゃん!海未ちゃんに言うことあるでしょ!」

 

なんでそんな気まずそうな顔するんです。

 

「お、お誕生日…お、おめ、でとう」

 

なんで真姫に隠れながら。そんな歯切れの悪いおめでとうなんて欲しくないです。そんなの…!

 

今日は私の誕生日なんですよ!?

 

「ありがとうございます。無理に連れてきてしまってすみませんでした」

 

ぽろり、涙が一粒こぼれる。

年下の、ましてや好きな人にこんな姿を晒してしまって恥ずかしい。いや、泣いている姿なんかとっくに見られているわけだが。

 

「ほら、みはねがちゃんと説明しないから勘違いしちゃったじゃない」

 

「だ、だってぇ…」

 

「いいから、ほら!めんどくさい」

 

真姫とみはねがこそこそ話し出したと思ったら、真姫が仏頂面でみはねを前に押し出した。

みはねはよろけながらも私の元まで来ると、優しく涙を拭ってくれた。

 

そんな優しさ、今はいらないです。なんて、嬉しくてしょうがないのに。

 

「泣かせてごめん。放課後、私の教室まで来てくれる?」

 

なんだかよくわからない私はとりあえず頷く。

その反応にホッとしたのか、安堵の笑みを浮かべてみはねは真姫を連れて教室に戻っていってしまった。

 

「みいちゃんらしくなかったね」

 

「どーしたんだろう?」

 

ことりと穂乃果もよくわからなかったようで、頭にハテナを浮かべていた。私たちだけで考えても答えが見つかるわけがない。

 

「とりあえず、放課後みはねに会ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日が照らす教室にみはねと二人きり、見つめ合う。

かれこれ5分くらいこうしていたでしょうか。なんとも気まずいが、不思議と嫌ではなかった。

 

「あ、あの…!」

 

「はい!?」

 

突然大きな声を出すものだからびっくりしてしまった。

 

「今日は、本当にごめん」

 

深々と下げられる頭の動きを呆然と眺める。

 

 

 

 

 

「か、顔をあげてください!いつまで下げてるんですか!」

 

「ご、ごめん…」

 

今日はいつになく自信なさげな彼女が少し心配になってくる。

体調でも悪いのでしょうか。何か嫌なことでも…?

 

「海未ちゃん」

 

「みはねのことだから…また何か…」

 

「海未ちゃん!!!」

 

「は、はい!」

 

 

前を向くと小さな紙袋を渡される。

これ…なんでしょうか。

 

「その、誕生日プレゼント。気にいるかわからないけど、結構頑張ったんだ」

 

まさか、プレゼントをもらえるなんて思っていなかった。どうしましょう、また涙が出てきてしまいそうです。

 

「開けてもいいですか?」

 

「もちろん」

 

そういって笑った顔は赤く染まっていた。それは、夕日に照らされたせい?それとも…

 

ゆっくりと丁寧にテープを外して中を見ると、小さな箱が。

それを開けて見たら、小ぶりな青色の石が埋めこまれたリングが入っていた。

 

「これは…」

 

「アクアマリン。海未ちゃんの誕生石だね」

 

取り出して光に当てるとキラキラと輝いている。

…あら?

リングの内側に何か文字が書かれている。

 

"I will love you forever"

 

 

「気づくの早いよ、もう」

 

「これ、まさか。みはねの手作りですか?」

 

文字を見た瞬間、少し不格好だけどみはねの字だとすぐにわかった。

 

「うん。絵里に作りかた教えてもらったんだ。ごめん、慣れない作業で昼休みに作り終わったばかりなんだよね」

 

だから、渡すときに頑張ったって…

こんなに幸せだと思った誕生日は生まれて初めてです。

大切な人に、世界にたったひとつだけの気持ちのこもったプレゼントをいただけるなんて。

 

「ありがとうございます…っ。大切にします」

 

「うん。それ、貸して?つけてあげる」

 

「はい!お願いします」

 

右手を優しくとられて薬指にゆっくりとはめられていく。

途中、みはねに見つめられていることに気がついて、お互い目があってしまい真っ赤になった。

 

「うん。ぴったり!似合ってるよ海未ちゃん」

 

「本当に、嬉しいです」

 

 

チュッと軽く私の薬指にキスを落とされて、ますます顔が熱くなる。

あなたのせいで心の波が引いたり満ちたり、悲しんだり喜んだりと大忙しです。まったく。

 

みはねのおかげで最高の誕生日になりました。

 

 

私も、あなたに永遠の愛を誓います。

ずっと、何があろうと私がそばにいます。本当に大好きですよ。

 

 

 

 

ただ…

 

 

 

 

 

「サプライズのようなものはこれからあまりしないでほしいです」

 

「なんで?」

 

 

 

「今日、とっても寂しかったんですからね?…そのぶん、もう少しだけ一緒にいてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





海未ちゃんお誕生日おめでとーう♪

かわいくてかっこよくてやっぱりかわいくて、海未ちゃん大好きや!笑
大急ぎで書きました!

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