歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
右手に痛みが走り、目をさます。
窓から射す光に目を眩ませながらも右手を上げてよく見て見ると少しだけ腫れていた。
あぁ、そういえば昨日ぶつけたんだった。とそんなことをぼんやり思い出しながら寝返りをうつと、あどけない顔ですやすやと寝ている絵里ちゃんが目に入った。
いつしかと全く同じシチュエーションだがそのときとはおおきくちがう。
それは、絵里ちゃんが私の恋人だということだ。まぁ、恋人はあと八人もいるわけなんだけど…
そんなことを考えながら、目の前にある金色の髪をすくようになでていく。
「み、はね…?」
起こしてしまったようだ。目をこすりながらあくびを一つ。
「おはよ。絵里ちゃん」
「んぅ、おはよう」
まだ眠そうだけど、笑顔で返事をしてくれる。
こんなに幸せでいいのかなぁ、私。
*
「じゃ、学校に行きましょうか」
絵里ちゃんと学校へ行くのは初めてだ。
なんか、今付き合ってる感出てるんじゃないかな?なんて考えてしまう私はそうとう幸せすぎて頭がやられているようだ。
「ねぇ、みはね」
「な、なに?」
「手、繋ぎたいのだけど…だめかしら?」
遠慮がちに制服の袖を引っ張られる。
絵里ちゃんと手繋げるの!?
「喜んで!」
思わず反射的に返事をしたのはいいけれど、絵里ちゃんが私の右側にいることを思い出す。
手をつなぐと自然と私の右手を取るわけで…
「あ、やっぱ、だめ!」
右手は今怪我をしている。
手をつないだらばれてしまうかもしれない。
そう思って言ったのだけど、絵里ちゃんは勘違いをしてしまったようだ。
「そ、そうよね…ごめんなさい」
「ち、違くて…!絵里ちゃん、こっち側に来て」
絵里ちゃんを無理やり左側にする。
私の意味のわからない行動に困惑しているようだ。
まぁ、これでばれることはないだろう。
「絵里ちゃん、手」
「え…?」
なかなか手を取ってくれないので、強引に絵里ちゃんの手をとって指を絡める。
「だから、手繋ぎたいんだってば」
すると、絵里ちゃんはさっきまでの悲しそうな顔はどこへやら、最高にかわいい笑顔になった。
学校の近くになるにつれて生徒が増えてくる。
私の隣にいる絵里ちゃんは学校の生徒会長をやっている。また、容姿も完璧なわけで、女子しかいないこの学校でも人気者だ。
つまり、注目の的なわけですね。
「生徒会長とみはねちゃんが手繋いでる!」
「あの二人ってどういう関係なの!?」
うっみんなの視線が痛い。
完全に私恨まれるパターンでしょ…
てか、なんで私の名前まで!?
絵里ちゃんは慣れているのか、気づいていないのかよくわからないが平然と歩いている。
「あの、みはねちゃん!」
突然、後ろから腕を引っ張られた。
後ろを振り返ると、全く見覚えのない人…だと思う。たぶん。
リボンの色が緑色なので三年生かな?
「な、なんですか?」
「その、生徒会長とはどういう関係なの、かなぁ?って…」
その言葉で周りに人が集まって、同じようなことを聞いてくる。
やっぱりそうだよね…
「みはねとは、ふ、普通に友達よっ!?」
絵里ちゃんはあたふたしながら答える。
動揺しすぎ…てか、ちょっと傷ついたぞ今の言葉。友達…ねぇ…
私は絵里ちゃんの手をぎゅっと握ったままでみんなに向かってにっこりと微笑む。
「絵里ちゃんは、私にとって大切で特別な人ですよ。もちろんμ'sのみんなもですけどね?」
うわ、自分で言っといてすっごく恥ずかしい。
でも、ほんとのことだしいいよね!
「あ、で、でも、みなさんのこともとっても好き…ですよ?」
恥ずかしさを誤魔化すつもりでそうつけ加えると、さっきまでざわついていた周りは突然静かになってしまった。
え、あれ?なんで静まり返ってんの?
ちょ、かなり恥ずかしいんですけど。
だって、ほんとのことだよ?μ'sのみんなは特別な人だし、学校のみんなも知らない人はいるかもだけど、いい人たちばっかだから好きだし。
みんなのことだから、楽しい感じのノリで返してくれると思ったのに…
さらに恥ずかしい思いをしてしまった。
「みはね…行くわよ」
そして、なんで絵里ちゃんはそんなに不機嫌になってるのだろうか。
私と手をつないだまま生徒をかき分けてずんずん歩いていく。
あっあの後ろ姿は!
「の、希!助けて!」
「あ、みはねとえりちやん。おはようさん」
「あら希、おはよう」
「えりち、なにやってるん?」
希は私のことを見ながら、ちょっと気まずそうな顔をする。そりゃそうだよね。こんなズルズル引きずられていたら…
「いろいろと…ね。生徒会室に行くわよ」
この後、希も一緒に生徒会室に行くことになった。
絵里ちゃんが朝のことを言うと、希は、自業自得やんといって助けてくれなかった。
そのおかげで、私はHRが始まる直前に教室に駆け込むことになった。
…まだ、体のあちこちがすごい痛いのに。なんて、やっぱり自業自得だけど。
***
無事、誰かに怪我がばれることもなく放課後になった。
さて、いつも通り凛と花陽と真姫ちゃんと部活へ行きますか。
「みはね、ちょっと。凛と花陽は先に部活にいっててくれる?」
「ん?了解にゃ?」
「わかった。みんなには少し遅れるって伝えておくね?」
「ありがとう。お願いするわ。みはね、行くわよ!」
え、ちょっと話が見えてこない。
真姫ちゃんの顔を覗いてみると、怖い顔をしていた。
それから何かを言える雰囲気でもなくなってしまったので、二人無言で歩き続ける。
私、何かしちゃったのかなぁ?
「ま、真姫ちゃん…?」
真姫ちゃんに声をかけると盛大なため息をつく。そんなため息してそんなに呆れた顔されると心がチクチクと痛みます…
「みはね、その手の怪我どうしたの?」
「え…!?」
まさかの変化球。
まさか怪我がバレているとは思っていなかった。気づかれないために右手はなるべくみんなに見えないようにしていたのに…
「気づいたのはついさっきだけどね」
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝るの?それは、なにに対しての謝罪なわけ?」
真姫ちゃんは表情を変えずに、むしろさっきよりも眉間にしわを寄せながら答える。
「だって、真姫ちゃん怒ってる…」
少し涙が出そうになってしまいそうだが、頑張ってこらえる。
そんな私を見てか真姫ちゃんはまたため息をついた。
「とにかく、音楽室に行くわよ」
怪我をしていないほうの手を引いて音楽室まで連れてこられた。
いつもは真姫ちゃんと一緒に座っているピアノのいすに私だけ座らせられる。
少しの沈黙。その沈黙を破ったのは私の方だった。
「真姫ちゃん、なんで怒ってるの…」
「みはね、それ本気で言ってる?もし本気だったら許さないわよ」
さっきからずっと我慢していたが、そろそろ限界。
普段とは違う真姫ちゃんを見て、涙がこらえられなくなる。恥ずかしいけど、ポロポロと涙が溢れて止まらない。
顔を見られたくなくてうつむこうとしたが、それは真姫ちゃんによって阻止された。
「はぁ…本当にあなたは…」
「ご、めんなさい…っ嫌いにならないで…」
「嫌いになんかなってないわよ。で、どうして怪我したの?それ」
心なしかさっきよりも柔らかい顔をしている…と思う。
「えと…絵里ちゃん家で転んだ時にぶつけちゃったみたい?」
真姫ちゃんの顔を見ると、なんとも複雑そうな表情をしている。
「はぁ…もうこの際、どうして絵里の家に泊まったのかとかは聞かないでおいてあげるわ」
「ん、うん…?」
「絵里は怪我のこと知ってるの?」
「怪我してるのは真姫ちゃんしか知らないよ?」
「なるほどね。それで、なんで私が怒っているのか聞いたわよね」
ーーー教えてあげる。
そう耳元で囁かれる。
その瞬間、一気に顔に集まる熱。
その様子を見て真姫ちゃんは満足そうに微笑む。
「どうしてほったらかしにしといたの?」
「え…?」
「だから、その怪我なにも手当てしないでずっとほったらかしにしていたんでしょう?そんなの…許せるわけないじゃない」
真姫ちゃんは目をそらして少し拗ねているような顔をする。
ほんとに、優しすぎだよ。真姫ちゃんは。
「こんなの、唾つけとけば治るよ」
いや、まぁ、腫れているときはこういう言い方はしないか。なんていえばいいのかよくわからないが、とにかくほっといても治ると思う。実際のところ、体の痛みの方が重症な気がするし。
「へぇ…そう」
私の言葉を聞くなりツッコミを入れることもせず妖艶な笑みを浮かべてじりじりと私に近づいてくる。
「え、ちょ、真姫ちゃん」
そのまま右手を掴まれる。
「じゃあ、私が治してあげる」
にこりと笑ったと思ったら、そのまま私の右手をぺろりと舐めた。
「え、や、ちょ、ごめんなさい!普通に手当てしてくれたら嬉しいです!!!」
「はいはい。しょうがないわね」
その後、真姫ちゃんは怪我の手当てをしてくれた。
「って、これちょっとおおげさじゃない?」
わたしの右手は包帯が巻かれている。
そんな大したことないと思うんだけど…
「はぁ…かなり強く打ったでしょ?この前の肩よりはマシだったけど」
そうなのかなぁ?自分ではよくわからないや。
「真姫ちゃん!ありがとう!」
「わたしに治療してもらえるとかレアなんだからね」
素直にお礼を言うと、真姫ちゃんはそっぽを向いてそんなことを言ってきた。
トマトみたいに赤くなってるのばれてるよ。かわいいなぁ…
「ほら、練習行くわよ」
「はーい。あ、ちょっと待って」
真姫ちゃんの制服の袖をグイッと引っ張る。
そのまま振り返った真姫ちゃんにキスをひとつ。もちろん口に。
「なっ!?」
「お礼!って言っても私なんかのキスだけど…真姫ちゃん大好き!」
「あ、当たり前でしょ!?」
口ではそう言いつつも真っ赤になって自分の唇を触っている真姫ちゃんは、やっぱり最高にかわいかった。
***
「あー!みはねちゃんと真姫ちゃん遅いよー!」
「ご、ごめんね?穂乃果」
そう言って穂乃果の頭を撫でる。
「えへへ〜!ってその怪我どうしたの!?」
あ、いつもの癖で右手でなでてしまっていたようだ。
穂乃果が大きな声でそんなことを言うから、みんなの視線が私の方へ向く。
「あー、怪我しちゃって…。真姫ちゃんが手当てしてくれてたんだよね」
「そ、そういうことよ!」
おいコラ、顔が赤いですよ。真姫ちゃん。
そう思いながらふっと視線を向けた先には絵里ちゃんと希がいた。
希が口パクで大丈夫?と聞いてきたので、笑顔で返す。すると希も笑顔を返してくれた。
絵里ちゃんはと言うと、ものすんごい悲しそうな顔でこっちへふらふらと歩いてきていた。
「みはね…その怪我…」
あぁ…今すぐにでも泣き出しそうな顔してる。そんな顔して欲しくないのに…
「大丈夫だよ」
「でも…それ、昨日の…」
とうとう泣き出してしまった。
泣いてる顔もかわいいけど、やっぱり嫌だな。
ふわりと優しく抱きしめる。
「だから、大丈夫。絵里ちゃんのせいとかじゃないから」
そう言ってあやすように背中を撫でる。
それでも、でも…と泣き続ける絵里ちゃん。
周りのみんなわ困惑しているようで、絵里ちゃんに心配の言葉をかけている。
そんな中、真姫ちゃんだけは不満顔で…
その理由はわかっている。
けど、今は絵里ちゃんをなんとかしなければならない。
「絵里ちゃん。ほら、笑顔、笑顔」
だめだ。涙止まってくれないなぁ。
「泣いてると、キスしちゃうぞ〜?」
い、いや、絵里ちゃんがかわいすぎるとかで言ったわけじゃないぞ!?
って、誰に弁解してるんだろ…
その言葉に反応したのは、絵里ちゃんではなく周りのみんなで。
「なにも言わないと、本当にしちゃうよ?」
それでも泣き続ける絵里ちゃん。
だめだー。しょうがない。
絵里ちゃんの顎をぐいっと上に持ち上げる。
すると、顎を持ち上げている手をギュッと握られた。
視線を少し落とすと、目一杯に涙をためている絵里ちゃんの顔があって。
なんか、もう、みんなの前とかどうでもよくなってきてしまう。
目からこぼれてしまった涙を人差し指ですくう。
それだけではやっぱり涙は止まってくれそうにもなくて。
「絵里ちゃん。泣かせてごめんね」
ゆっくりと顔を近づける。
優しく、ごめんねって気持ちを込めてキスをする。
それ以上のことはせず、すぐに離す。
そしてそのまま優しく抱きしめてあげる。
すると、絵里ちゃんの腕が私の背中に回ってきた。
「私のほうこそ、ごめんなさい。痛かったでしょう?」
「だから、大丈夫だよ。絵里ちゃんに泣かれてる方がずっとつらい」
「みはね…」
泣き止んではいるがまだ目が潤んでいる絵里ちゃんと見つめ合う。
「って、いい加減にしなさいよ!」
あー、いい雰囲気だったのに…
「もう、にこどうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ!なに絵里に手出してるのよ!」
「あ、やきもち?」
「なっ!?ち、ちがっ」
「なんだ、違うのか…ま、私なんかが相手じゃ妬かないよね」
どうやら違かったようだ。絵里ちゃんのこと独り占めされてたのが嫌だったわけじゃないらしい。
「そんなことよりも練習しようよー!もうすぐ学院祭だし!」
穂乃果が、我慢できないというふうに声を上げる。
最近の穂乃果は少し張り切りすぎのような気がする…周りのことちゃんと見てるかな?
ことりちゃんもまだ言いだせてないようだし…
こればっかりは二人を信じるしかないんだけど。
「邪魔しちゃってごめんね。練習しようか」
「そうですね。練習を再開しましょう」
海未ちゃんが声をかけるとまたいつものように練習が始まる。
そういえば、私もみんなに言わなきゃいけないことがあるんだった。
でも、みんなの邪魔をすることなんかできなくてまた別の日でいいか、と意識を練習するみんなに戻した。
閲覧ありがとうございます。
うーん。うーーーん。
なんだか話が進んでいない…?
スクフェス、今回のイベントは頑張ります!(前回はサボりすぎた…笑)二枚どりはしないとな…
てなわけで、次回もよろしくお願いします!