歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
〜穂乃果〜
廊下に二人の足音だけが響く。
私とみはねちゃん二人だけの。
音楽室にいるのを見つけて、真姫ちゃんのことを放置してみはねちゃんの手を引いて飛び出してきた。
手にお昼ご飯を持っていないあたり、もう食べ終わっちゃったのかな。こっちは大好きなパンそっちのけで探し回ってたのに…なんて不満を思いつつも、今この状況が嬉しいなんてよっぽど私はおかしいのかも。あはは…なんてね。
なんてったって二人きりで、しかも手を繋いで歩いてるんだから。
好きな人と手を繋いで歩けたら、誰だって嬉しいのは当たり前だよね!
「穂乃果…どうかしたの?」
頭の中でいろいろなことを考えていたら、そんな質問をされる。うしろから聞こえた大好きな声は戸惑いが隠しきれていなかった。
「あ、ごめーん!お昼付き合ってもらおうと思って」
「そっか。中庭…かな?」
「うん!」
会話も終わってしまって、無言で廊下を進んでいく。
すぐに中庭について、いつものベンチに腰掛けた。
「大丈夫?」
座るなりそんなことを言ってくるみはねちゃん。
「ん?なにがー?」
そんなことを言いつつも、実際はなんのことを言っているのかなんて分かっていて。
たぶん、音楽室のことかな。
「なんか、様子がおかしかったかな?って」
「あはは…なんでもないよ」
そう言って笑えば優しいみはねちゃんはそれ以上なにも言ってこない。
ほんとはなんでもなくない。
だって、音楽室にいる二人の様子は付き合いたてのカップルみたいだったもん。昨日みんなで決めたルールを真姫ちゃんが破るとも思えないし。とにかく、なんか嫌で。なんだかモヤモヤして、無理に笑顔を作ってみはねちゃんを連れ出した。
もちろん、真姫ちゃんには悪いと思っているしあとで謝るつもりだよ。…穂乃果、すっごい悪い子かも。うぅ…
「ね、ねぇ。なんか落ち込んでる?」
「そんなことないよ…」
「いやどっからどう見ても落ち込んでるよね!?」
なんでばれちゃうのかなぁ?
自分では隠し通せると思ってたのに…
「頭なでてくれたら元気になるかも」
「え、えぇ?ほんとに?」
「ほんとだよ!」
みはねちゃんはため息をつきながらも穂乃果の頭に手を伸ばしてくる。頭に手をのせると何か閃いたようにあっと声を漏らした。
私が不思議に思っていると、みはねちゃんは何かを企んだように笑ってぐしゃぐしゃって穂乃果の頭をなで回してきた。
頭も一緒にぐるんぐるん回っちゃうくらいの勢いでなでまわすもんだから目が回ってしまった。
しばらくして手を止めると、こっちを見る。
「ぷっ、ふふっ穂乃果の髪ぐしゃぐしゃ」
自分でやったくせにお腹を抱えて笑っているみはねちゃんを見て、ついつい頬を膨らませてしまう。
「もう!みはねちゃんがやったんじゃん!」
「ふ、ふふふ、あははっごめっ、ごめん」
謝ってるわりには全然反省していないようで、さすがの穂乃果でも怒ってしまう。いや、そこまで本気じゃないけど。
そんな私の様子に気づいたみはねちゃんは。ごめんねと言いながら今度は優しく髪を直してくれた。
そうやって優しくなでるから、優しく笑うから、さっきまで怒っていたのなんて忘れてしまう。
「もっとなでてくれないと許してあげないんだからね」
「わかりました」
ほんとはもう許してるけど、まだなでていてほしくてそんな子供っぽいことを言ってしまう。
海未ちゃんやことりちゃんといる時とは違う心地よさ。
μ'sのみんなと歌って踊っている時とは違う楽しさ。
どんなことでもみはねちゃんと一緒だと全然違うまったく新しい気持ちになる。
「みはねちゃん。真面目な話ししてもいい?」
「え、穂乃果に真面目な話なんてできるの?」
「で、できるよー!もう」
「ごめんごめん。いいよ」
ものすごく真面目な感じで準備してたのに、みはねちゃんがおちゃらけてそんなこと言うから雰囲気なんてぶち壊しだ。
まぁ、私はそんな真面目な雰囲気で話すなんて疲れちゃうだけだから、それが楽だったりするんだけど。
なんだかそれがみはねちゃんには筒抜けなようで、嬉しさ半分悔しさ半分だ。
でも、この気持ちはほんとに真面目だから。
「あのね。みはねちゃんのこと好きなんだ」
中庭に、私の声だけが響く。
みはねちゃんは、驚くでも喜ぶでも嫌がるでもなくずっと真面目な顔をしている。
本人は真面目なんだろうけど、私からしたらこれが結構面白くて、我慢は一応したけど吹き出してしまった。
「あ、笑ったなぁ。にらめっこだったら穂乃果の負けだよ」
笑われたのが不本意だったのか、少しだけ不機嫌になってしまったようだ。でも、わざと面白く返事をしてくるんだからそこまででもないのかな。
「そうだね。その、穂乃果は本気だよ。みはねちゃんのこと好きったら好き!それだけ伝えたくて」
ちゃんと伝わったかな。
なぜかみはねちゃんは両手をあげて降参のポーズをしていた。
「やっぱり私の負けだったみたい」
「え?どういうこと?」
「なんでもないよ」
「気になるじゃん!教えてよー!」
「はいはい。なんでもないから」
私がいくら聞き出そうとしても教えてくれなくて、顔すらも見せてくれなくなってしまった。
いい加減諦めておとなしくパンを食べていると、みはねちゃんは後ろを向いたまま話しかけてきた。
「その、さ。今日は想いを伝えるデーみたいな日なの?」
「ん?あぁ、そんな感じだよ!」
「え、冗談で言ったんだけど…」
「μ'sのみんなは本気だよ」
「…っ。なんで私なの!?他にいい人いっぱいいるよね!?」
みはねちゃんはこっちを向いて私の手を掴むと、ぐいっと顔を寄せてきた。そういうことすぐやっちゃうからみはねちゃんはダメなんだよ。
まったく、さっきの穂乃果の告白わかってるのかなぁ?
「みはねちゃんのことを好きだって言ってるのに、そんなこと言われちゃうと傷つくかも」
「ご、ごめん。その、嬉しいんだけど…私の心臓がもたないっていうか」
「穂乃果に好きって言われても嬉しいんだ…えへへ」
「も、もう。当たり前じゃん」
当たり前、その言葉に胸がキュンとする。
少女漫画とか大好きだし、いっぱい読んでるけど胸がキュンとするとか正直どんな感じなのかわからなかった。でも、今ならわかる。胸がキュッと苦しくなって好きって気持ちが溢れてくる。
これが、恋…なんだよね。
答えなんて誰も教えてくれなくて、でもこの気持ちが間違っているなんて思わなくて。
ーーー好き。
「好き。好きだよ。大好き!」
がっつりと言葉に出てしまって、みはねちゃんの反応をうかがってみたらぽかんとして固まっていた。
さっきから固まってばっかりじゃん。
「ねぇ、好きだよ?」
「わ、わかったから。私も穂乃果のこと好きだから…っ」
やっと言ってくれた。このままずっと言ってくれないかもって不安になっちゃったよ。
嬉しくなってみはねちゃんの顔を覗き込んだら真っ赤になってて、見ないでって顔をそらされてしまった。
「照れ屋さんだね〜」
「ちょ、みんなのせいだから!穂乃果の言葉は直球すぎるんだよ。ばか」
「ばかだけどそれとこれとは別だよ!」
「はぁ…まずばかってことを否定しようよ…」
そんな感じで楽しく話していたら携帯に一つの連絡が入った。
【お話は終わったかな?終わったらみいちゃんにそこにいるように言っておいてね】
それに手早く返信をしてから席を立つ。
「じゃあ、穂乃果はもうパン食べ終わったし戻るね!みはねちゃんはまだここにいてねー」
「え、ちょ、なんで!?」
「また放課後ね!」
そう言ってみはねちゃんに手を振って走り出す。
みはねちゃんはなんか言っているみたいだったけど、今度は邪魔しないように退散することにします!
伝えたいことも伝えられたし、今日の部活が楽しみだな。
そのまま廊下も走っていたら先生に怒られた。
あはは…ごめんなさい…!
やっと半分…
授業中にアイディアが思い浮かんでしまうととても困ります笑
ここが終わらないと次に進めない!というわけで、残りのメンバーも頑張っていきたいと思います!