歌の女神たちの天使 〜天使じゃなくてマネージャーだけど!?〜 作:YURYI*
はぁ…肩痛い…
肩のせいで、うまく腕が使えない。しかも利き手側の肩だから、なんとも不便だ。
治る前に新学期が始まってしまうとは思わなかった…
あげくの果てに、私の肩が負傷していると学校中に広まってしまい(広まる意味はわからないけど…)、クラスメイトはもちろんのこと、初めましての先輩たちまで私のところにやってくる。
休み時間になるたびに、たくさんの人に囲まれて疲れ切ってしまっていた。
いや、みんなの優しさはとても嬉しいんだけど…ね。
昼休みになり、また囲まれるのはごめんだということで旅に出ることにした。
足は自然と生徒会室に向かっているみたいだ。生徒会室がもうそこだという時、前から三人組が歩いてきた。…リボンの色からして三年生だし、大丈夫だよね。
「あ!?みはねちゃんだよね!?」
「ほんとだ!かわいい〜♡」
「あ、そういえば。いつもはガード固いけど、今は何しても抵抗してこないんだって〜」
な、なにそれ。真姫ちゃんの真似じゃないけど意味わかんない!
まぁ、確かに今は肩が痛くて何かされてもうまく避けられない。普段からいろんな人たちにちょっかいをかけられていてもやんわり避けているが…
「ねえねえみはねちゃん!お姉さんたちといいことしな〜い?」
「い、いえ。ちょ、ちょっと急いでいるので…!」
なんだか危険な気がしてその場から逃げようとするが、通り過ぎようとした時に肩を掴まれてしまった。最悪なのは掴まれたのが右肩だったこと。
あまりにも痛くて力が抜けてしまい、いつの間にか壁に押し付けられていた。
「怯えちゃってかわいい〜♡」
ほ、ほっぺにキスされてしまった。み、μ'sのメンバーに知られたら…殺される。
怯えてるんじゃなくて、痛いんですよ。
「顔真っ赤だよ?」
そこまで赤くなってる気はしないんだけど…
「えと…こ、こんなことしても何にもなりませんよ…?」
今度は別の先輩が耳をやんわり噛んでくる。
さ、さすがにこの状況はまずい。
「んっ…ふぁっ」
しかし、自分でもびっくりするくらい甘い声が出てしまった。いやだ、いやだ、いやだ。
こんなこと言うのはあれだけど、寒気がする。
「今の声聞いた?」
「うん…。かなりやばいかも…」
三人の先輩は顔を真っ赤に染めて、なんとも色っぽい顔で私を見つめている。
動きが止まった。今のうちに逃げなきゃ!
でも、さっき掴まれたせいで肩が痛くて力が入らない…それに………誰か…っ
*
〜絵里〜
お昼休みになり、仕事が残っていたのもあって、希と二人で生徒会室に来ていた。仕事は五分もかからないで終わってしまった。
「そういえば、みはねちゃん肩怪我してるせいで色々と大変みたいなんよ」
「そうなの…心配ね…」
「やろ?せやから、今から様子見に行ってみよ?」
ということで、みはねの様子を見に行くことになった。
二人して生徒会室を出る。
「んっ…ふぁっ」
…ん?なんの声かしら?それになんだか…
ってみはねじゃない!?
そこには、三年生三人に壁に押し付けられているみはねがいた。
あまりよく見えないが、みはねは顔を少し赤く染めて涙目になっているようだ。
これは確実に…
隣を見ると、希も険しい顔をしている。
なに、私たち以外の人に触られてるのよ…!
いや、そうじゃない。
ーーーなにみはねに触れちゃってくれてるのよ。
「みはね。なにしているの?」
「え、絵里ちゃん…っ」
みはねが私の方を向いた。
今すぐにでもこぼれそうな涙を目にためて、顔を真っ赤にしている。
そういう顔をするから…他の人にそんな顔見せちゃダメじゃないの。
三人の生徒は私のことを見ると生徒会長…とつぶやいて固まってしまっていた。
「みはね、おいで…?」
私は優しく微笑む。
みはねは、三人から抜け出して私の胸に飛び込んできた。
普段の行動があんなだからちょっとびっくりしたが、素直に頼ってくれているのだと思うと顔がにやけそうになってしまう。
「みはねちゃん、もう大丈夫やで」
希もみはねを優しくなでる。
さて、どうしようかしら…
「あなたたち!」
「「「は、はい!」」」
あら、私ってそんなに怖いかしら?三人とも同じ学年のはずなのに怯えている。
「あまり、私たちの大切なみはねをいじめないでくれるかしら?」
「「「す、すみませんでした…」」」
別に謝って欲しいわけではないのだけれど…
「いえ、これからは普通の生徒同士として仲良くしてあげてちょうだい」
そうにっこりと告げると、もう一度すみませんでした、と言って去っていってしまった。
ふぅ…これで解決ね♪
みはねのほうを見てみると、私の袖をつかんでうつむいていた。
「みはね、もう大丈夫よ?」
「………」
みはねはなにも言わずに私の袖をつかんで動かない。試しに腕を動かしてみたが、はなす気はないようだ。こんな時にこんなことを思うのはあれだけど、かわいい…!
どうしたものか、と希のほうを見てみると案の定希も困った顔をしていた。
予鈴がなるまで時間はまだまだある。
「みはね、希、生徒会室に行きましょうか」
生徒会室に連れてきたが、それでもみはねは手を離してくれない。
「みはねちゃん、いったんここ座ろな?」
希がみはねを椅子に座らせる。
私はしゃがみこんでみはねの顔を覗いてみたが、泣いてはいなかった。
はぁ…まったくこの子は…
「みはね、もう大丈夫よ」
手をぎゅっと握ってものすごく優しくそういった。すると、みはねはぽろぽろと涙をこぼし始めた。希は少し驚いているようだったが、みはねの頭を優しくなでてあげていた。
「あ、のね…こわ、かったの…っ」
「うん、怖かったわね」
「え…りちゃ、たちとっちがって、こわ…かった………っ」
すると、みはねは泣きながらもぽつり、ぽつりとあったことを話してくれた。
肩を掴まれて痛くて動けなかったこと、ほっぺにキスをされたこと、耳を噛まれたこと。
私と希はうん、うん、と聞いてあげた。
でも、二人ともだんだん顔が険しくなっていった。
みはねになんてことしてくれてるのよ。
頭の中がふつふつと沸騰していくようだった。
みはねの最後の一言で、私の中で何かがプツンと切れた気がした。
「あのね…どうしようもないくらい、いやだった…の」
希はとても悲しそうな、それにとても怒った顔をしていた。
「みはねちゃん、ちょっと、言いたいこと言ってもええ?」
「う、ん…」
みはねの返事を聞くと、希はみはねのことを抱きしめた。
「ウチ、頼りないかもしれへんけど、もっと頼ってほしいんよ。それに…私、みはねちゃんが甘えたさんなの知ってるよ?」
希の心からの言葉だ。私もあまり聞いたことのない標準語。
その言葉を聞いたみはねは、びっくりしたのか涙なんて止まっていて。
もう、希に先越されちゃったわ…
それに、希はほおを赤く染めて、みはねの耳元で何か囁いている。すると、みはねの顔も真っ赤になった。みはねも何かつぶやいている。
話が終わったのか、二人は笑いあった。
「希…ありがと!」
「どういたしまして。……みはねっ」
って、なんで呼び捨てで呼び合っているのよ!?
「じゃ、じゃあウチは行くな!?」
希は真っ赤になって生徒会室を飛び出していってしまった。
みはねのほうを見てみると、両手で赤くなった顔を覆っていた。
なんなのよ…
「もう、なんなのよ…」
「…え?」
声に出てしまったみたいだ。
「ねぇみはね、わがまま、言ってもいいかしら?」
「…なぁに?」
みはねの耳に顔を寄せる。
「いやだったら、押し返すなりしてくれていいから」
そう、ささやく。そして、まだ赤いみはねの耳にやんわりと歯を立てた。
「…んっ……絵里、ちゃん?」
「なんだかもう我慢できなくなっちゃったの。他の誰かがみはねに触れたなんて許せそうにないのよ」
消毒、と呟いて今度はぺろっと舐める。
「はぅ!?え、ぇええ絵里ちゃん!?」
みはね、耳弱いのかしら?さっきからかわいい反応ばかりしてくる。やってるこっちの心臓がもたないわ…
「みはね…そんな反応されると…その…」
「…ん?」
「い、いやだったら言ってね!?」
「…いやじゃないよ?」
ーーーっなに考えてるのよ!いやじゃないって…
「い、いいの…?」
「ん。絵里ちゃんならいいよ」
そ、そんなこと言われたらもうなにも考えられなくなるじゃない。
「絵里ちゃん、はやく」
みはねはそう言って目を閉じる。
え…それって、い、いいの!?
ほんとに?後から怒られたりしない?
頭はパンク寸前、いや、すでにパンクしているのかも。
でも、もう我慢できないわ…
ゆっくりと顔を近づけていく。
ーーー生徒会室の床にうつる私とみはねの影は重なった。
時間にしてほんの数秒。
「ありがと。元気出た」
「よ、よかったわ」
あんなことをした後なのにみはねは平然としてる。あぁ…もう、この子には振り回されてばっかりよ…
それが、幸せだったりするのだけれど。
閲覧ありがとうございました!
次回からはμ'sのメンバー視点で書いていこうと思います!(それぞれがみはねに…)
次回も読んでいただけたら嬉しいですっ