神魔の素質を持つ者も異世界から来るそうですよ? 作:リフェア
箱庭に来て数時間が経ち日が暮れた頃、覇瑠徒達は世界の果てを見て来て箱庭の内壁に入り噴水広場でジン・飛鳥・耀と合流した。
ジン達から話を聞いた黒ウサギがウサ耳を逆立てて怒っていた。
どうやら”フォレス・ガロ”のリーダーに喧嘩を売ったらしい。ましてやゲームの日取りが明日で敵のテリトリーでやるらしい。
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。
それをニヤニヤと笑って見ていた十六夜と覇瑠徒が止めに入る。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「そうだよ負ける為に喧嘩を売ったわけじゃないだろうし」
「十六夜さんと覇瑠徒さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ? この”
黒ウサギの見せた”契約書類”は”
そこにはゲーム内容・ルール・チップ・賞品が書かれており”主催者”のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。黒ウサギが指す賞品の内容はこうだ。
「”参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する” まあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」
「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は……その、」
「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの」
箱庭の法はあくまで箱庭都市内でのみ有効なものだ。外は無法地帯になっており、様々な種族のコミュニティがそれぞれの法とルールの下で生活している。
そこに逃げ込まれては、箱庭の法で裁くことはもう不可能だろう。しかし”契約書類”による強制執行ならばどれだけ逃げようとも、強力なギアスでガルドを追いつめられる。
「俺は飛鳥に賛成だな、このゲームで得られるのは自己満足だけ?ゲームと言うのは自己満足の為にするものだと思うが、そして俺達はなんのコミュニティだ魔王を倒すんじゃなかたっけ?魔王を倒すコミュニティが人質はもういないとか時間で解決するとかそんな理由を付けて逃げるのか、正義を掲げるなら目の前の悪から倒そうぜ、飛鳥は負ける為に喧嘩を売ったのか?勝つためだろ」
「もちろん勝つに決まってるでしょ、それに私はあの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。」
「僕もガルドを逃がしたくないと思ってる。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」
ジンも同調する姿勢を見せ、黒ウサギは諦めたように頷いた。
「はぁ~……。仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。覇瑠徒さんの言葉が正しいですし”フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんと覇瑠徒さんがいれば楽勝でしょう」
「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」
「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」
「俺も無理だな、相手が人ならともかく獣人だからなー俺今ただの人間だし」
フン、と鼻を鳴らす二人。黒ウサギは慌てて二人に食ってかかる。覇瑠徒は普通に無理と断言した。
「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと、それと覇瑠徒さんなんで普通に無理なんて言うんですか」
「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」
十六夜が真剣な顔で黒ウサギを右手で制する。
「いいか?この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、分かっているじゃない」
「俺は単純にあの時で使いすぎたから当分俺のギフトは使えない。」
「……。ああもう、好きにしてください」
丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギはもう言い返す気力も残っていない。もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とすのだった。。