神魔の素質を持つ者も異世界から来るそうですよ? 作:リフェア
楽しみにしていた方がいたらごめんなさい。
区切りのいいとこで終わらせようとしたら前編後編に分けました。
あとがきで今後についてが書いてあるのでまずは本編をどうぞ
暖簾をくぐり店に入った覇瑠徒達は、店の外観からは考えられない、不自然な広さの中庭に出た。
正面玄関を見れば、ショーウィンドに展示された様々な珍品名品が並んでいる。
「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」
覇瑠徒達は和風の中庭を進み、縁側で足を止める。
障子を開けて招かれた場所は香の様な物が焚かれており、風と共に五人の鼻をくすぐる。
個室というにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてから覇瑠徒達に向き直る。気がつけば、彼女の着物はいつの間にか乾ききっていた。
「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている”サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはいお世話になっております本当に」
投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣で耀が小首を傾げて問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
此処、箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられている。
外壁から数えて七桁の外門、六桁の外門、と内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つ。箱庭で四桁の外門となれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境だ。
黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は、外門によって幾重もの階層に分かれている。
その図を見た四人は口を揃えて、
「………超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
「これはバームクーヘンだな、そう思うとバームクーヘンが食べたくなってきたわ」
うん、と頷き合う四人。身も蓋もない感想にガクリと肩を落とす黒ウサギ。
対象的に、白夜叉は呵々と哄笑を上げて二度三度と頷いた。
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。さらに説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は”世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」
白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。白夜叉が指すのはトリトニスの滝を棲みかにしていた蛇神の事だろう。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」
「いえいえ。この水樹は覇瑠徒さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」
自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉は声を上げて驚いた。
「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」
「ちょっとまて、その話で盛り上がるのはいいが色々語弊あるぞ黒ウサギ」
「えっそうでございましたか?」
「ああ、まずは俺一人で倒した訳じゃない、最初は十六夜が戦ってたし俺は最後に止めを刺しただけだ、それに黒ウサギ見てただろ俺は殴って倒した訳じゃない衝撃を放って倒したんだ。」
「その方が凄いじゃないですか!」
「あの時は危なかったな俺も巻き込まれるところだったわ」
「それはすまなかった、あんなのがでるとは思わなかった。」
覇瑠徒は右手を軽く振っただけなのにああなるとは思いもしなかったと後悔し(次会ったら謝ろう)と蛇神に思った。
「まあ、過程はどうであれ蛇神を倒したのは変わりないからのう、覇瑠徒は中々の神格の持っているのだな」
「そんな大層な物じゃないと思うけどな」
「いや、凄いのですよ私は見ましたよ蛇神様を倒すとき神々しい気を纏っているのを」
「だが、あの蛇神を倒したとなると蛇神が持っていた神格と同等もしくはそれ以上の物を持っているか、お互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ」
神格とは生来の神様そのものではなく、種の最高のランクに体を変幻させるギフトを指す。
蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。
人に神格を与えれば現人神や神童に。
鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。
更に神格を持つことで他のギフトも強化される。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。
だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。
「へえ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の
”最強の主催者” その言葉に、十六夜・覇瑠徒・飛鳥・耀の四人は一斉に瞳を輝かせた。
「そう………ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」
「無論、そうなるのう」
「遣り甲斐がありそうだな」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
四人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気づいたように高らかと笑い声をあげた。
「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」
「え?ちょ、ちょっと御四人様!?」
慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。
「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」
「ノリがいいわね。そういうの好きよ」
「ふふ、そうか。―――しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」
「なんだ?」
白夜叉は着物の裾から”サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、
「おんしらが望むのは”挑戦”か―――もしくは、”決闘”か?」
今後についてですがまず失踪の可能性があります、失踪する場合この作品多分消すと思います。なので何ヶ月経ってもこの作品が残っていれば更新する可能性があると思います、ご了承ください。
それでも良ければよろしくお願いします。
後編については明日か明後日に投稿すると思います。