第6話
桜の身体から聖杯の欠片は取り除かれ、キャスターのオモチャになった。
蟲爺は殺した。
俺の血を飲めば不老長寿になるぜ? と言ったらホイホイついてきた。
不老長寿になれぼ心に余裕が出来て、まぁ色々と心境の変化が起こるだろうと思ったが、生き残すと面倒な事が起こりそうだから殺した。
本当なら、更生させる予定だったんだけどねー。不確定要素が多いからやめた。
あっ、そうそう。
シンジが魔術を使えるようになった。
キャスターと共同で弄りまくった結果、魔術師の家系ということもあり、どうにか魔術回路が創れた。
シンジには、キャスターが先生となって教えている。
基礎の基礎だけね。
シンジ達ライダー組には基本、ホテルで待機して貰っている。生きているとバレたら困るしな。
金? わい、これでも黄金律持ち。金には困らんのや。
ドラゴンは金銀財宝を蓄えてるって、相場が決まっとるからな。
今ごろ、桜に懺悔しとるんかなぁ。シンジが心を入れ替えて真人間になってればいいんだがなぁ。
▽▽▽
キャスターの怒りが冷めてしばらく経った。どうやら、帰り道で葛木先生が襲われたようだ。そりゃカンカンに怒るわ。
こっちもこっちで、ちょっとは息抜きがしたいころだ。今日のお昼ご飯はたこ焼きにしよっかなー。
……ん? あれは?
視界の先に、ピクニックに来た3人組、というような者たちが……んん? あれサーヴァントじゃん。
って、士郎と凛とセイバーの3人組かよ!
あいつらイチャイチャしやがってぇ!
「聖杯戦争中だっていうのにイチャイチャしやがっておら。独身のまま死んだ俺を笑うつもりか? 俺は悲しいぞ。というわけでサンドウィッチを一切れ貰う。問答無用だ」
「はぁっ!? なんでサーヴァントがここにいるのよ!?」
「サーヴァントだって!?」
「あぁ、アサシンですか」
おっ、セイバーは全然警戒しとらんな。
「アサシン!?」
「アサシンだって!?」
「まぁまぁ、そう警戒するなって」
だって俺、アサシンじゃないし。
「ところでセイバー。おたくのマスターに活力剤は飲ましたのか?」
俺特製の活力剤だからな。どんな効力だったか、是非とも感想を聞きたいね。
「……あっ」
「え?」
「うん?」
「おい。セイバーお前、すっかり忘れてただろ」
「ちょっとセイバー。あなた、アサシンから得体の知れない薬を貰ってたの!?」
「えぇ。ですが凛。彼から邪な考えは読み取れませんでした」
「だから貰ったと」
コクリと頷き、肯定するセイバー。
「はぁ……呆れた」
「サンドウィッチけっこう美味いな」
「あんたもあんたよ! 何呑気にサンドウィッチ食べてるのよ!」
なんでって言われてもなぁ……
「だって俺、そもそもアサシンのサーヴァントじゃあないしなぁ」
「「「……は?」」」
「あ〜その反応いいッスねぇ〜」
こーゆー反応を待ってたんだよ。
「気配遮断があるからアサシンって名乗ってたが、これからはアーチャーとでも名乗ろうかな。ほら、俺ってば単独行動持ちだし」
「単独行動と気配遮断!?」
「陣地作成も持ってるし、道具作成も持ってるよ」
「陣地作成に、道具作成!?」
「騎乗と狂化もあるよ」
「もう、わけが分からないわ」
「双剣と弓で戦います」
「うちのアーチャーと同じじゃない!」
「宝具を爆発させて戦います」
「まんまアーチャーじゃない!」
「才能がないので、努力しました」
「あっ、そう……」
「今じゃあ立派なドラゴンスレイヤーです」
「もうわけが分からないわ」
「ほれ、そこの少年。俺のこの剣を見てみろ」
取り出したのは、俺がずーっと使い続けた解体用の剣。
「あっ、ちょっと待て。取り敢えずこれ飲め。」
今度こそ飲ませてやる、この活力剤。
「ちょっ、衛宮くん!」
遠坂が止めるも、時すでに遅し。栄養ドリンクばりにゴクゴク飲んでいる。
「う、ぐぉぉぉおおおおお!!!」
やべ、もがきだした。
「衛宮くん!」
「アサシン! 貴様一体何をした!」
「まぁ安心しろって。毒じゃあないから死にゃあしない。いや、言いようによっては毒だが、たぶん大丈夫。彼ならきっと生き残る」
「アサシン、答えろ! 何を飲ませた!」
やっべ、マジでキレてる。
「お前に渡したのと同じ活力剤だ。効果は簡単。滋養強壮魔力活性身体強化存在強化、その他諸々……だと思う」
「はぁ!? そんな物飲ませたら、衛宮くん死ぬわよ!」
「……え? まじ?」
「マジよ!」
「だが安心しろ! 俺は初日からお前らを監視していたから分かる! セイバーがこいつに触れている限り、こいつは驚異的な回復力でもってしぶとく生き残ることを! というわけでセイバー、こいつを触っとけ。死にはしないだろ」
「クッ……従うしかないわけか」
セイバーがくっ殺みたいな顔で士郎に触れる。
なんやこれ。まるで、俺が悪者みたいじゃあないか。
「あ〜……とりあえず、話を続けるか。この少年は投影魔術でアーチャーの双剣を作ってただろ? だが、宝具なんてもんを投影したら直ぐに魔力が枯渇するわけだ。というわけで、俺の活力剤を飲ませて魔力量を増やそうと思ったわけだ」
「……あんた、何がしたいわけ?」
「そうだなぁ……こいつは、英雄にはなれない。むしろ、犯罪者になるパターンの奴だ。実力だけなら英雄になれるのに、行為が真逆の方向へ向かっていくパターンだ。そして、こいつは正義の味方になりたいと言っている。これは結構ヤバい状況だ」
普通に頑張れば、英雄扱いされそうなのになぁ。
「正義の味方になりたいなんて言う奴に、碌な奴はいない。よく言う世間一般、普通の人ならば、現実を見て諦める。すべての人間に対して言える、正義の味方になんてなれないも分かる。世界は光と闇でいい感じに混ざってできているとわかる。でも、こいつは分かってない。俺としては、真っ当な人間になって貰いたいわけだ。このままだとアーチャーが言ってたみたいに、理想を抱いて溺死するからな」
「ぐっ、げほっ、げほっ!」
「大丈夫ですか! シロウ!」
おっ、そろそろ安定してきたか。
「さて、そろそろ解析してもらおうか。俺は、何処の英霊でしょーか。士郎君、君の観察眼で、当てて見なさい」
剣を渡し、解析させる。
「トレース・オン」
目を閉じ、集中しているようだ。
いやぁ。直で見ると、ちょっと感激。
「……基本骨子、解明……構成材質、解明」
士郎が目を開けた。
「この剣から、お前は何を見た? 何を感じ取った?」
「数多の異形の生物相手に、戦う誰か。戦いに勝利し、その血肉を持ち帰る誰か。人との関係を断ち切り、何処かへ逃げていく誰か。そして……」
結構見えるんだなぁオイ。
「不老不死の肉体を得た、誰か」
「それって……」
「……まさか」
「さて、佐々木小次郎のコスプレもやめにするか」
顔のマスクを剥ぎ取り、本当の顔を見せる。
「女の子的にはマスクの顔の方がいいんだろうが、すまないね。俺は残念ながらイケメンではない。イケメンだったら結婚できたんだろうがね」
さて、ネタばらしだ。
「まぁ分かってるだろうが、俺から名乗らせてくれ。エクストラクラス、ハンターのサーヴァント。真名もハンターだ。本名は別にあるけどね! よろしく!」
「エクストラクラスですって!?」
「ハンターのサーヴァント……ッッ!?」
「さて、いい知らせと悪い知らせがある。どっちから先に聞きたい?」
「……じゃあ、いい方から頼むわ」
「分かった、いい方だな。いい方としては、士郎が強くなる」
「じゃあ、悪い方は?」
「聖杯戦争に勝った者は、世界を滅ぼすことになる」
「……は?」
「え?」
「……ハンター。貴方は今、なんと?」
やっばりそうなるよなぁ。
セイバーの眼力が凄いことになってるわ。
「聖杯は汚染されている。細かいことは省くが、一言で言うならばさっき言った通り、どんな願いをかけても世界は滅ぶ」
「んなっ!? それは真か! ハンター!」
「ほんとほんと。世界の命運だって賭けれる」
この賭けに負ける要素はないしねぇ。
「まぁそういうわけだから、サーヴァントが脱落するとマズイのよ。受肉したいのなら俺が魔力を精製してやるから問題ないぞ。ほら、俺ってば呼吸するだけで魔力を作れるからね」
「……そうか」
セイバーのテンションだだ下がり。
「これはオマケの情報だ。あの活力剤、実は俺の血を薄めただけなんだ」
「はぁ!? ハンターの血ィ!? そんなの、幻想種の血と大して変わりないじゃない!」
「そーゆーわけで、俺は息するだけで魔力を作れるし、一般人も、俺の血を一滴飲むだけで超強くなるんだよ。あんたも飲む?」
「うぅ……悔しいけど、飲みたいと思った自分がいる」
「粘膜接触でもええんやで?」
「セクハラすんな! この変態!」
「ぶべら!」
原作ヒロインからの張り手、気持ちええ……。
「ここで、セイバー組みが絶望する情報を」
「……なに?」
士郎の声にちょっと力が篭ったな。
「イリヤスフィールは衛宮切嗣の実の娘だ。士郎が生きてる間に何度も取り戻しに行ったが、結局救えなかった。んで、イリヤスフィールは第4次聖杯戦争で両親を失ったわけだから、セイバーを恨んでるわけだ。本当なら切嗣とセイバーを殺す予定だったが切嗣が既に死んでるわけで、恨みの対象は士郎くんに変わってる」
「なんだって?」
「イリヤスフィール……すまない」
「さらに絶望を。イリヤスフィールには聖杯が埋め込まれている。サーヴァントを倒すにつれて、彼女は人間でなくなっていく。だが、大事なのはそこではない。彼女に聖杯が埋め込まれている、ということだ」
「どういうことです、ハンター」
「聖杯を抉り出して他の奴に突っ込めば、アヴェンジャーが降臨して世界を滅ぼそうとする。抉り出して上手いことやれば、聖杯として扱える。キャスターなら聖杯の汚染を取り除いて、正常な聖杯に出来るだろうな」
「つまり、聖杯をまともに扱いたかったら、キャスターに頼むしかないってわけね」
「そゆこと。ではここで、最大の絶望を」
「もう、何が起きても驚かないと思うわ」
「英雄王がイリヤスフィールの心臓を抉り取り、アヴェンジャーを降臨させるでしょう」
「……は?」
「ハンター……貴様、今、なんと言った」
「そのまんまだ。うかうかしてっと、イリヤスフィールが死ぬぞ」
この一言で、空気が引き締まった。
「……ハンター、頼みがある」
「なんだい? 少年」
「俺の稽古相手になってくれ」
「やめとけやめとけ。俺よりもセイバーやアーチャーと稽古をした方がいい。俺は対人戦が苦手だからな」
「えぇ、そうですよシロウ。私の剣を学ぶべきです」
「ほら、セイバーもそう言ってる。俺からは何も学べないぞ」
「いや、俺はあんたから学びたいんだ。俺は弱い。だからこそ、弱者による強者との戦い方を知るあんたから学びたいんだ」
あぁ、なるほどなぁ。
「それなら、アーチャーでもいいだろう? むしろ、アーチャーの方が向いてると思うが」
「アイツは嫌いだ」
おう、ハッキリと言ったな。
「はぁ……そうか。じゃあ、こうしよう。まずは俺とセイバー。俺とアーチャーが戦う。それを見稽古しろ。それが終わったら俺と稽古だ。オッケー?」
「了解だ」
「じゃあ、場所はどうするよ。どっかいい感じの場所ない?」
「それこそ、アインツベル城じゃないの? あそこならギルガメッシュが来ても対応できるわけだし、問題ないでしょう?」
「そっかー、それもそうだなぁ。よし、交渉は君たちに任せた。俺はキャスターに色々伝えて、許可貰ったりしてくるわ」
よーし。頑張ってギルガメッシュを倒すぞい。
「ちょっとあんた、待ちなさい」
凛に呼び止められた。
「ん? まだ聞きたいことでもあんのか?」
「あなた今、キャスターに色々と伝えるって言ったわよね?」
「……あ゛」
しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
テンションが上がって色々とネタばらししたせいで、余計なことも言っちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「な、なんなりと……」
あ、あかいあくまだ……
「……桜は、無事なの?」
……あぁ、なるほど。そういうことか。
「無事だ。御三家である間桐だから誘拐して監視下に置いただけであって、手出しはしていない。蟲爺も余計な手出しは出来ないだろう」
「……そう」
取り敢えず、これでなんとかなるだろう。
「わかったわ。アインツベルとの交渉は任せて。上手く取り計らって貰うよう、努力するわ」
「そうか、助かる」
察しがいい奴は嫌いだよ。
「じゃ、適当なタイミングであんたらに接触するわ……いや、待てよ」
「ん? どうかしたの?」
「実はな……今の所、脱落したサーヴァントは誰1人としていないんだ。俺は今、キャスターとライダーの2人と組んでいる。で、残りはあんたらとバーサーカー、それとランサーだが……やはり、この状況はマズイ」
「ライダーが脱落してないっていうのは驚きだけど、何がマズイって言うのよ」
「もしかしたらランサーが攻めてくるかもしれん。あいつは戦いが大好きなサーヴァントだからな」
マーボー神父が動きそうで怖いんだよなぁ。
やっぱり、さっさと殺すべきかな。ギルガメッシュが離れれば殺せるんだが……上手くいくかなぁ。
「取り敢えず、各クラスのサーヴァント達がまとまるべきだな。ランサーは置いといて、そっちはどうにかしてバーサーカーと友好関係を築いてくれ。ランサーとギルガメッシュさえなんとかすれば、後は楽だ。聖杯を壊すなり正常化するなりすればいいだけだ」
その、なんとかするのが最高に難しいんだよなぁ。
次が最終話。
sn以外の話を書くかは考えていない