Hunter/ganbara night   作:カルガモ大将

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第3話

第3話

 

 

死ぬかと思った。

本当に、投げボルクでよかった。突きの方だったら確実に助からなかった。

でもまぁ、どうにか生き残れた。本当によかった。

 

マジで秘薬作っといて良かったわ。

あと、単独行動マジで有能。霊体化とのコンボが最高。

 

いやぁ、ランサーは強敵だった。でも、あの動きは覚えた。あとは、その動きを取り入れて昇華し、自分のものにするだけだ。

 

さて、綺礼ランサーとも戦ったワケだし、次はアーチャーとランサーの戦いかな。アーチャーの剣技は、是非とも見たい。あの双剣の動きを取り入れれば、俺は更に強くなれる。

 

セイバーやバーサーカーの動きでも可。かなり勉強になる。

 

数日は様子見に徹するとして、ルートによって行動を変えるか。

 

キャスターには、生存してるってことは黙っとこっと。その方が絶対面白いしね。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

陽は暮れ、世は闇の世界へと変化を遂げた。

此れよりは、魑魅魍魎が跋扈する世界。

 

戦場と化したのは、とある学校の校庭だった。

 

互いのエモノがぶつかり合う事で甲高い音が鳴り響き、火花が散らされる。

 

反動によって互いに距離を空けた。

仕切り直しとなった。

 

「真っ当な一騎打ちをするタイプじゃねぇな てことはアーチャーか」

 

全身青タイツの槍使いが問いた。

 

真っ赤な外套を纏った双剣使いは沈黙で返した。

 

「弓を出せ、それくらいは待ってやる」

 

「手助けはしないわ あなたの力ここで見せて」

 

双剣使いのサーヴァントと同じく紅い服を着た少女が、背後から指示を出した。このサーヴァントのマスターなのだろう。

 

その一言で、双剣使いのサーヴァントから放たれる圧が強まった。

 

 

「……ッ!」

「ハァッ!」

 

双剣使いが仕掛けた。

だが、それは防がれた。いや、それだけなら良かった。

 

片方の剣が砕けてしまった。

 

「ヘッ! マヌケが!」

 

剣が1本になる。たったそれだけで、手数は恐ろしい程に減る。

槍兵の突きが、心臓を狙う。

 

「……ッ!」

 

防がれた。双剣で以って。

 

「チッ!」

 

槍兵から、思わず舌打ちが出る。

 

槍兵からの攻勢が増した。

それにより、何度も双剣使いの剣が砕け、弾かれる。

だがその度に、アーチャーの手元には全く同じ剣が現れる。

 

「32。それだけ弾き飛ばしてもまだあるとはな」

 

「どうした?様子見とはらしくないな」

 

「チッ。テメェどこの英雄だ。二刀使いの弓兵なんぞ限られている。だが、テメェみたいなのは聞いたことがねぇ」

 

「キミはわかりやすいな。これほどの槍手は世界に三人といない。加えて、獣の如き敏捷性と言えばおそらく一人」

 

「ならば喰らうか。我が必殺の一撃を」

 

槍兵が構えた。槍から放たれる『死』としか言いようがないナニカが溢れ出す。

 

あれを食らえば、確実に死ぬだろう。本能がそう知らせる。

 

マスターであろう少女も対応に襲われ、焦りが表情に出ている。

 

──パキリ

 

「誰だ!」

 

小枝が折れた時のような音と共に、槍兵から放たれる殺気が霧散した。

 

「生徒!?」

「おかげで命拾いしたな」

 

生徒が居た事に驚く少女と、そのおかげで生き残れたことに安堵する双剣使い。

 

「ランサーはどうしたの!?」

「さっきの人影を追ったよ。目撃者だからな」

 

少女の問いに対し、双剣使いは淡々と述べた。

 

それを聞いて、少女は校舎へと走り出した。

 

目撃者は消すのが魔術師のルールであり、それは気を付けるべき事である。

 

だが、少女は甘いと言うべきか、人間らしいと言うべきか。この行動は、一般人の身を案じたが故のものだった。

 

聖杯戦争はまだ、始まってすらいない。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

俺の事、ランサーも知ってるんだ。なんだか嬉しいなぁ。いやぁ、頑張ってモンスターハンターをした甲斐があった。アーチャーも俺の戦い方を真似してるっぽいし、いやぁ嬉しいなぁ。

 

やはりと言うか、俺よりも対人戦は上手いですけどね!!!

 

セイバーの召喚シーンも、遠目からしか見れなかったけど……はぁ、ファンとしては嬉しい光景だったなぁ。

いやぁ……でもなぁ。やはりと言うべきか、バーサーカーの戦い方は上手かった。流石は最強の英雄だ。アーチャーで呼べ良かったものを、アホなアインツベルン。バーサーカーの動きじゃあねぇよ、あんなの。

 

そういや、セイバー達が柳洞寺に来るのはいつだったかなぁ。あんまし詳しくは覚えてないんだよなぁ。

 

でも、割と直ぐだった気がするんだよなぁ、うーむ。

 

なんてことを考えながら、美綴さんをストーカーする。

たしか、美綴さんがワカメに襲われたんだったかで目が完璧にイッてたワケだから、美綴さんをストーカーすればライダーにはバレにくい筈である。

シンジを監視、ストーカーしたところで面白味なんてないしね。

 

美綴さんは職員室に鍵を返して……おっ? シンジからの呼び出し? いいのか? そんな簡単にホイホイついて行っちまって。

 

そのままついて行って……雑木林に? そっかぁ、ライダーはバレないように雑木林に隠すもんねぇ。でもさぁ、ここには俺が居るんだよねぇ。

 

「おうい、そこの生徒諸君。こんな雑木林の中で、なにをしようと言うのかね? 不純異性交遊とか、援助交際とかは許しませんからねー。あっ、俺は短期で仕事をしに来た教師です。どうもどうも」

 

どうよこのスーツ。似合ってるでしょ。見るからに先生って雰囲気してるでしょ。でしょでしょ?

 

「短期で来る先生だぁ? そんな話聞いてないから、信用出来ないねぇ」

 

流石はワカメ。このセリフだけで、小物感が凄い。

 

「ほら、君たち、さっさと帰りんさい。俺が先生って信用は無いけど……まぁ、あれだ。うん。なんかもう面倒臭いしこうするわ」

 

殴った方が速い。

 

「いいのですか? サーヴァント同士が、一般人の前で戦っても」

 

まぁ、ライダーに防がれるよね。割と本気で殴りに行ったんだけどなぁ……こうも簡単に防がれると、ちょっとショック。

お返しに、ライダーの質問にはこう返そう。

 

「安心しろや。後ろの嬢ちゃんは寝かせてある」

 

睡眠薬の一つや二つ、簡単に作れるんでね。ほら、あたくしモンスターハンターですし。道具作成やらなんやらの事前準備が勝負の鍵を握りますし。

 

「で、あんたら……この嬢ちゃんに何しようとしてたんだい?」

 

本当は知ってるけど……まぁ、一応聞くよね。

 

「答える義務が、ありますか?」

 

あぁ〜ライダー可愛いんじゃぁ〜。

耳が蕩けるんじゃあ〜。

 

「はん! そいつはね、僕のサーヴァントを強化するための餌なんだよ! サーヴァントなら知ってるだろ? 魂食いだよ。手っ取り早く強化するなら、この手に限るよね」

 

ワカメ、解説ありがとう。

 

「そうだな。手っ取り早く強化するならば、魂食いだろう。だが、それは悪手としか呼べんな」

 

「……なに?」

 

ライダーさんや。俺は話してるんですから、攻撃を止めてくれませんかね。鎖がヒュンヒュン音を立てるから、結構怖いんですよ。当たったら縛られちゃう〜。むしろ縛られたい。緊縛プレイかぁ…うんライダー相手ならされたいわぁ〜。

 

「魂食いは目立つ。直ぐに足を掴まれる。そんなことをするぐらいなら、霊脈を上手く活用するなり、睡眠をとるなり、メシを食うなり、他に色々あるだろう。お前も魔術師でないなら、一般人なりに足掻いてみろよ」

 

「んなぁっ!?」

 

「シンジ、相手が悪いです。撤退しましょう」

 

そりゃそうだ、俺はハンターだ。人外が相手なら強い。人間が相手ならとても弱い。ライダーは一応人外だから、俺は強い。

フッ。シンジには悪いが、ここで退場してもらおう。

 

「これをくらいな!」

 

本当なら閃光玉を使いたかったが、人間相手ならこれでも問題ない。

 

「おら!」

 

放たれた球状の物は、シンジ目掛けて高速で飛んでいく。だがそれは、当たり前のようにライダーによって防がれる。杭剣がそれに触れた瞬間──

 

──爆音が鳴り響いた。

 

「ぐうぅ!」

 

「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!???」

 

流石ワカメ。オーバーリアクションだ。足元が覚束ないライダーと違い、ゴロゴロとのたうち回っている。

やっぱりお前は芸人になるべきだ。

 

俺が投げたのは音爆弾。名前の通り、爆音を発する物だ。モンハン世界では一部のモンスターにしか効果がなかったが、それはそれ、これはこれ。耳元で爆音が鳴り響いたら、誰だってクラクラするもんだ。

 

全力で駆けて、シンジから偽臣の書を奪い取る。

 

「はい、これで俺がマスターね」

 

ミッション終了。お疲れ様でした。

狩人は徒手にて死せずって、やっぱり有能な宝具だわ。

 

「ぐうぅ……返、せぇ……」

 

音爆弾の影響がまだ抜けないようで、まだ立ち上がれないようだ。

 

「悪いが、お前には死んでもらう」

 

「ヒッ!? ら、ライダー! 俺を、守れぇ!」

 

あぁ、やっぱり見ていてとても滑稽だ。

 

「今、私のマスターはこのサーヴァントです。命令に従う必要性は、感じられません」

 

ひぇっ。背筋が凍るぐらいぞっとする声だ。

 

「まぁ、死んでもらうと言ったのは嘘だがな」

 

「……え?」

 

「お前、頑張れば魔術回路を創り出せるぜ?」

 

「……え? マジで?」

 

「マジで。俺についてくるんなら、魔術回路を創り出せるようにしてやってもいいぜ」

 

「……そうか」

 

あれ? 意外と渋る?

直ぐに食いつくと思ったんだけどなぁ。やっぱり、救えないレベルで捻くれちまったのかなぁ。

 

「……わかった。ついていくよ」

 

おしきた!

これで勝つる!

増えるワカメ祭りにはならねぇ!

 

 


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