夜間だけ壁に細工してるようじゃ間に合わないだろうし、レオニダスに宝具の武具や便利アイテムを沢山渡してきたので、ここ何日かは朝からウルクの城壁に細工をし続けている。
レオニダスならきっと、個人個人に合った武器や防具、便利アイテムを配布してくれているだろう。
にしても、だ。
「……はぁ」
図面と照らし合わせて、壁にひたすら彫み続けるの、精神的にかなり辛い。これはたしかに賢王とかやってらんねぇわ。遠出したくなる気持ちも分かるわ。事務作業とか辛すぎでしょ。
ガリゴリガリゴリひたすら彫む。無心である。他のことを考えたら余計に退屈で心が死ぬ。単純作業と思った方がまだマシである。でも辛い事に変わりはない。チクショウ。なんでメディアとかキャスニキとかを召喚しないんだよ。なんでカルデアはそんなに余裕がないんだよ。チクショウ、チクショウ。キャスター勢にこの作業は任せる予定だったのに、なんで俺がこんな、過酷な労働をせにゃあならんのだ。ウウッ……辛くて泣きそう。
よし、息抜きに魔獣狩りに行こう。体を動かさなきゃ、こんな苦行やってられんわ。保存食の確保という意味でも、狩ったほうがいいしね。うん。別にサボりじゃないし、問題ない。むしろ、二つの作業を同時進行してることになるんだから、ちょっとぐらい誰かが俺のことを褒めてくれてもいいんじゃ……? でも俺、友達いないんだった。ウソ、私の友達少な過ぎ……???
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時は、ハンターがモドリ玉を使用したところまで戻る。
「ちょ、待ちなさいよ!」
立香がハンターを転移させぬよう掴もうと手を伸ばすが、時すでに遅し。モドリ玉の煙が溢れ、視界が緑色で埋め尽くされる。
「マスター、こうなったらもうダメだ。ハンターはもう、遠くに行ったよ」
士郎の言うとおり、手を煙の中へ突っ込むが、何かにかすりすらしなかった。もう、居ないのだろう。
『うん。こっちでも確認したが、一瞬で反応が消えた。流石は
『道具袋とかアレ、ダ・ヴィンチちゃん的にはすっごい気になるんだけれども!』
「先輩。
「うーん。魔獣とかを狩ってるイメージが多いんだよね。あとは、無益な殺生はしないとか、そんな感じかなぁ。士郎はどう?」
「そうだなぁ。俺は紛争地帯とかで難民の人達に炊き出しを行なったり、民間人にまで手を出す奴を撃退したりしてたんだが、たしかに面白いものを使ってたな」
「例えば?」
「強走薬っていう飲み物。見た目は黄色」
「どんな効果なの?」
「飲んだら3分間走り続けても疲れないらしい。俺たち現代の人が飲んだら、薬の効果が強すぎて死ぬ」
「え、なにそれ怖い」
「難民の人達には何倍も薄めたのを飲ませてたんだが、それでも丸一日、徹夜で走り続けても疲れないぐらいに凄かった」
『ねぇ、ダ・ヴィンチちゃん。もしも強走薬の製造に成功したら、一生楽して生きられる程の富を手に入れられるんじゃないか!?』
『無理だと思うなー。人理修復が終わったらそう簡単にレイシフト出来なくなるだろうし、材料なんて集まらなくなるんじゃないかナ?』
『しまった、そうだった……』
「ちょっといいかな?」
「ん? どうしたのマーリン?」
「いや、なに。ハンターの奇行に関してだよ」
ハンターの奇行……???
思い当たる行為が多過ぎて分からない。
「彼は、ギルガメッシュと相性が良くないと言っていた。伝承では、会ったこともないのにね。何故だと思う?」
「なぜ? うーん……暴君って噂は聞いてたから?」
「その可能性は、無い訳では無い。だが、それは決定打に欠ける。もっと、可能性の高いことだ。士郎くん。君は聖杯戦争で彼に世話になったようだね。その時、彼はギルガメッシュに対して何か言っていたかい?」
「えーと、そうだなぁ……慢心王だから、懐に潜り込めば簡単に殺れるとか言ってたな」
「……ふむ」
「あとは……そう。ギルガメッシュ自身は大して強くないとか言ってたな」
「……まぁ、こんなところかな。彼の話をしよう。伝承では、彼はエビフ山に住んでいたがそこへ女神イシュタルがやって来た。徹底抗戦を続けたが最後には追い出されてしまった。彼は仕方なく山を降り、暫くウルクで住んだ、とある。彼はきっと、ウルクに暫く住んでいる間にギルガメッシュと対面か何かしたのだろう。それで彼がどんな存在かを確認した。相性が悪いことを確認したか、彼から逃げたかで街から出た。そして、フンババ討伐や
「つまり?」
「本当にギルガメッシュに会いたくなかっただけかもね!」
「結局なんでもなかったなんて、オチがつまらなーい!」
「ハッハッハ! そういうこともあるさ! さ、街へ急ごう!」
「あ、誤魔化すとかずるい!」
「ハッハッハ! 大人はズルい生き物なのさ」
「マスター。マーリンの相手をしても、得はないと思うぞ……」
忙しいので次回更新はきっと来月(半ギレ