インフィニット・セイント   作:ロナード

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 今回は一夏とブラックカプリコーンの戦いとなります。その後に驚きの展開が…


第3話 目覚めろ、セブンセンシズ!

 山羊座の暗黒聖闘士(ブラックセイント)であるブラックカプリコーンとの戦う事になった一夏は相手が例え、紛い物と言えど山羊座の聖闘士(セイント)を名乗る以上は様子見してる余裕は無いだろうと判断し、最初から己の全力を出す事にした一夏はブラックカプリコーンに向けて小宇宙(コスモ)を高めてペガサスの聖闘士の代名詞である技を放つ。

 

「一気に決めてやる!ペガサス流星拳!」

 

 一夏が放つペガサス流星拳がブラックカプリコーンに向けて放たれるが、ペガサス流星拳の一発一発をブラックカプリコーンは一夏を嘲笑うかの様に軽やかに避けると一夏の懐に潜り込み、一夏の両脇を己の両足で引っ掛けるとそのまま一夏を勢いよく空中へ打ち上げた。

 

「今のが流星拳か…確かにマッハ1で放つ拳の連撃は素人には拳から流星が放たれる様に見えるのだろう。だが、俺にはこの一発一発全てがスローモーションで動いている様にしか見えぬ!教えてやろう、ペガサスよ。決定的な攻撃とはこういうものを言うのだ!ブラックレッグスロー!」

「なっ!?」

 

 一夏はブラックカプリコーンが放った技であるブラックレッグスローによって、空中へ打ち上げられた事で洞窟の天井に背中を強打すると、そのまま地面へと落ちると腹部に落下の衝撃が伝わり、そのダメージによってか一夏は口から吐血し、少し苦しみながらも何とか立ち上がり、ブラックカプリコーンを睨み付ける。

 

「ほう。今のを受けて立ち上がるとは…根性だけは有る様だな」

「ああ。それが取り柄みてえなものでね…俺がここで諦めたら、他の皆に合わす顔が無いしな。それに今回の任務で必要な物は俺が持っている以上は何が何でもこんな洞窟から出ねえといけないんだよ!」

「ふん…お前は今、俺に何を言ったか解っているのか?お前は自ら重要な物を持っている事を俺に教えたのだぞ。それを知った以上、俺がここから無事にお前を出すとでも思っているのか?」

「思ってねえよ。ブラックカプリコーン、お前を倒さないとこの洞窟から出れないって事は承知の上さ。だから、俺はお前を倒してこの洞窟から脱出してやる!」

「忘れたのか?先程、お前の放った流星拳は全て俺に見切られたのだぞ。それに闇雲に突っ込んできても、ブラックレッグスローで再度投げ飛ばして天井にぶつけてやるだけだ。例え、お前が何を仕掛けようとも俺のブラックカリバーがお前の五体をバラバラに斬り刻んでやるまでだ!」

 

 ブラックカプリコーンは立ち上がった一夏に引導を渡す為に一夏が捉えきれないスピードで一気に一夏の後方へ回り込むと、右腕を一夏の首へ目掛けて振るった。

 

「いくらしぶとくても、首を切り落とされたら何も出来ずに死ぬ。これで終わりだ!せめてものの情けで苦しまずに死ねる様にこの右腕の一振りで終わらせてくれよう!ブラックカリバー!!」

「ふざけるなよ、まだ終わってやる訳にはいかないんだ!!」

 

 ブラックカプリコーンの放つブラックカリバーが一夏の首に振るわれ当たるかと思われた瞬間、一夏は紙一重でしゃがんでブラックカリバーを避けると今度は逆に自分がブラックカプリコーンの後方へ回り込んだ。

 

「何っ!?ブラックカリバーを避けた上に俺の背中を取るだと…」

「言っただろ。俺はお前を倒してこの洞窟から出てやるってな!」

 

 ブラックカプリコーンの背中を取った一夏はブラックカプリコーンを羽交い締めするとそのまま空中に回転しながら飛び上がり、回転をし続けた状態で落下し始めたところでブラックカプリコーンを離すとブラックカプリコーンを地面へと叩き付けた。

 

「これで終わらせてみせる!ペガサスローリングクラッシュ!!」

「ぐうぉぉぉっ!!?」

 

 一夏は先程、ブラックカプリコーンのブラックレッグスローを受けた時、かつてのペガサスの聖闘士だった者の記憶が突然流れ出してきてペガサスローリングクラッシュの存在を知り、この技を放つ為にブラックカプリコーンの背中を取り、この技を放ったのだ。

 一夏が放ったペガサスローリングクラッシュの威力は地面に大きなクレーターが出来る程、強力な威力だったので技を放った一夏自身が何より驚きを隠せない中、一夏はさすがに今のを喰らえばブラックカプリコーンは倒れた筈と思い、洞窟の出口へ向かおうとしたのだが…

 

「何処へ行く気だペガサス?俺は今のを喰らった程度でくたばる様な相手では無いぞ!!」

「なっ!?今の一撃をまともに受けて、ぴんぴんしてやがるのか…」

「残念ながら、お前より俺の小宇宙の方が遥かに上なのでな。お前の放った技は確かに強力だが、小宇宙が大した事無い以上は俺が高い小宇宙を使ってダメージを減らせば大した事は無い技だ!所詮はお前など、俺の敵では無かったという事だ!見せてやろう、小宇宙を上手く扱っての攻撃をな!ブラックカリバーは小宇宙を少しでも高めて放てば、離れたところの相手も真っ二つに出来る。この様にな!」

 

 ブラックカプリコーンは一夏が放ったペガサスローリングクラッシュを受けたのに大したダメージが入っていないのか、平然と立ち上がると一夏に向けてブラックによる衝撃波を放ち、一夏はその衝撃波を何とか回避したが…

 

「しまった!?出口が…瓦礫で塞がっちまった!?」

 

 洞窟の出口が衝撃波の余波で天井が崩れ、その瓦礫で塞がってしまったのだ。

 

「今のブラックカリバーを避けた事でこの洞窟の出口を塞いでしまった以上、お前は遂に逃げる事も出来なくなった。最早、お前は俺に倒されるか俺を倒すまで永遠とこの洞窟を出られぬ運命だ…最も俺を倒すのは確実に無理だと思うがな!」

「クッ…所詮は山羊座の聖闘士の紛い物に過ぎないと思っていた。けどブラックカプリコーンの強さは俺より数段…いや、桁違いの強さを持っている…最初から俺が勝てる相手じゃなかったっていうのか…」

「今更気付いたか。そうだ!所詮、青銅聖闘士(ブロンズセイント)であるお前では俺に勝てる見込みは無かったのだ!俺は先程、自分の事を黄金聖闘士(ゴールドセイント)に劣る実力だと言ったが…あれはお前を油断させる為の嘘だ。本当は俺のスピードは黄金聖闘士と同じく光速の速さなのだ!」

 

 ブラックカプリコーンは一夏に自分の言葉が嘘偽りではない事を伝えるかの様に洞窟を光速の速さで移動し、一夏から見るとブラックカプリコーンが光って移動してる様に見えるので光速で動けるのは信じざるを得なかった。

 

「それにだ、俺は小宇宙も黄金聖闘士に劣らない程だ!」

「だろうな…認めたくないけど、確かにお前の小宇宙は山羊座の黄金聖闘士だった俺の師と同じに思える程の小宇宙を持っている様だな…同じに思える程の小宇宙?小宇宙は潜在的なモノで全く同じ様な小宇宙は双子とかじゃない限りは無いと確か聞いた気が…」

「むっ…どうやら、ペガサス。お前は自分の知り合いと俺の小宇宙を見間違える程に弱ってきている様だな」

「いや、別に俺はそんなに弱ってはいないし…むしろ、まだまだやれるんだけど。まあ、確かにさっき思い切り身体を打ち付けられたんだし、俺の感覚が変になっただけかもな。ってか、暗黒聖闘士であるお前がラインハルトさんと同じ小宇宙を持っているなんてあり得ないしな。それにだ、今ので俺はまだ諦める訳にはいかないんだって再度認識した!俺はラインハルトさんの意志を継いで、この任務をやり遂げないといけないんだ!!」

 

 諦めかけていた一夏だったが、ラインハルトの意志を継いでこの任務をやり遂げると誓った事を思い出すと、一夏は再び小宇宙を高めるとブラックカプリコーンの腹部に思い切り小宇宙を込めた拳の一撃を与えると、ブラックカプリコーンはその衝撃で後ろに押し出されるが、ブラックカプリコーンにダメージは無いに等しく一夏は唇を噛み締めた。

 

「さっきと比べれば、小宇宙が高まった様だな。だが、俺に決定的なダメージを与えるにまでは相変わらず達していないがな!」

「ちっきしょー…これでもまだ小宇宙が足りないのかよ…ブラックカプリコーンに有って、俺に無いモノが有るっていうのかよ…」

「俺に有ってお前に無いモノか…確かに存在するな。それはペガサス、お前が小宇宙を司る第七感であるセブンセンシズに目覚めていないからだ!」

「第七感セブンセンシズだって…」

「セブンセンシズは今言った様に小宇宙を司る第七の感覚の事だ。黄金聖闘士は全員がこのセブンセンシズに目覚めているからこそ、高い小宇宙を扱い光速のスピードで戦える訳だ。俺もそのセブンセンシズに目覚めているからこそ、光速で動けるのだ!つまり、お前に無いモノとはセブンセンシズに目覚めていないという事なのだ!」

「セブンセンシズ…要するにだ、そのセブンセンシズに俺も目覚めればお前を倒せるって事だよな!」

「倒せるかもしれんな。最も、それはお前がセブンセンシズに目覚めた場合の話だがな!」

 

 一夏はセブンセンシズに目覚めさえすれば、ブラックカプリコーンに勝てるかもしれないと考えたが…それはブラックカプリコーンの言う通り、セブンセンシズに目覚めた場合の話なので、どうすればセブンセンシズに目覚めるのかも解らない上に、そもそもこんな土壇場でセブンセンシズに目覚める事が出来るのかさえも定かではないので、一夏はセブンセンシズに目覚めなくてもブラックカプリコーンを倒せる方法を考えるが思い付かず、闇雲に戦い続けるしかないのかと思った時、一夏は瓦礫で塞がった洞窟の出口付近に誰かが倒れていた事に気付き、その倒れていた者の顔を見た一夏はブラックカプリコーンに向けて鋭い威圧感を放つ眼差しで睨みながら尋ねた。

 

「おい、ブラックカプリコーン!!何であそこに龍音が倒れているんだ?アイツに何をしたんだ!!」

「あのドラゴンの聖闘士である女の事か…あの女はペガサス、お前が来る前に俺と戦い敗れた雑魚だ!あの女は俺と戦い、お前と同じ様に洞窟の外に出ようとしていたが俺に敗れ、あの様だ。まだ生きてはいるが、あの様子だともうすぐで死ぬかもな!」

「龍音が死ぬだと…」

「ああ!死んだ後は徐々に死体が腐敗しては腐肉を食らいに虫やら烏が寄ってくるかもしれぬな。腐肉を食い尽くされた後は骨だけが残るのだろうな。そうなったら、惨めなものよ。地上の愛と正義の為に戦う聖闘士の末路が畜生に生きる虫やら烏の餌よ。考えただけで哀れ過ぎて思わず笑ってしまうな!何が愛と正義の為に戦う聖闘士だ!所詮、自分の力は自分の為にだけに使うべきだったと思い知る筈だ、あの女と今から俺に殺されるお前がな!」

 

 一夏はブラックカプリコーンが龍音を追い詰めた上に、龍音と自分を含めた聖闘士の生き様をバカにした事が許せなかった。一夏は怒りが込み上がってくるが、その怒りは聖域で見せた師であるラインハルトの戦死の報せを聞いた時の様に我を失う様なモノでは無く、自分の力を自分の為にだけに使うブラックカプリコーンに対して哀れむ様な感じも含めた怒りだ。

 その怒りは一夏を逆に冷静にし、一夏の中に眠る何かを目覚めさせるモノであった。

 

「ブラックカプリコーン…真に惨めなのはお前だぜ」

「どういう事だ?」

「お前は俺と龍音を含めた聖闘士の生き様をバカにしたよな。確かにお前の言う通りかもしれねえけど、俺は真に惨めなバカは自分の力を自分の為にだけにしか使う事が出来ないお前の方だと思うぜ!」

「何だと!?俺が惨めだと…俺の力を俺の為にだけに使う事の何処が惨めだと言うのだ?」

「知らねえなら教えてやるよ。耳の穴をかっぽじてよく聞いとけよ、一回しか言わねえからな。自分の力を自分の為にだけに使う奴の力なんて真の意味の力じゃない!俺達聖闘士は地上の愛と正義の為に戦う為に自分達の力を使うんだ。同じ意志を持った仲間達と合わせる力、他者を守る為に戦う力こそが真の意味での力なんだ!それを知らないお前なんかに俺は負ける訳にはいかないんだよ!!」

 

 一夏は自分が信じる真の力というモノを語ると、一夏は自分の中で何かが目覚めると自分の小宇宙がどんどん高まっている事に気が付いた一夏はペガサスの星座の並びを思わせる動きをし、技を放つ為の構えを取る。

 

「俺の中で何かが目覚め、俺の小宇宙がどんどん膨れ上がっていくのが解るかブラックカプリコーン!お前なら、これが何なのか解るんじゃねえか?」

「これは間違いなくセブンセンシズ…ペガサス、お前が怒りを力に代え、お前が信じる答えにたどり着いた事でセブンセンシズが目覚めた様だな…」

「これがセブンセンシズなのか…これが目覚めたからなのか、俺の身体もさっきまでと比べて軽くなった気がするぜ!これでお前に引導を渡せるな、ブラックカプリコーン!!これで決めてみせる!ペガサス彗星拳!!」

 

 一夏はセブンセンシズに目覚め高まった小宇宙を全て込めて放った技、ペガサス彗星拳はバラバラの箇所に打たれていたペガサス流星拳を一ヶ所に集中させて放つ強力な一撃を持つ拳だ。その拳は名前の通りに彗星の如く小宇宙を込めた拳が大きな塊となり、ブラックカプリコーンに向かっていた。

 ブラックカプリコーンは一夏がセブンセンシズに目覚め、強力な一撃を放つ様になった事を嬉しく思う様に笑みを浮かべると、自分の右拳に小宇宙を集中させ始めた。

 

「見事だ一夏よ…よくぞ、ここまで短期間で強くなったな」

「えっ!?ま、まさか…あなたは本当に…」

「すまないな一夏…詳しい話は後でしてやる。お前がセブンセンシズに目覚め、放った全力の一撃に応え、俺も見せよう。本当のカプリコーンの力をな!シャイニングインパルス!!」

 

 一夏が放つペガサス彗星拳に向けて、ブラックカプリコーン(?)が放ったのは山羊座のラインハルトの使う技で最も強力な技であるシャイニングインパルスだった。シャイニングインパルスがペガサス彗星拳とぶつかり合うと威力が相殺し、洞窟内に砂煙が舞った。

 砂煙が消えると、一夏はブラックカプリコーン(?)に駆け寄ると彼の顔を確認しようとしたので、ブラックカプリコーン(?)はマスクを取ると素顔を見せた。彼の素顔を見た一夏は嬉しさの余りに震えが止まらなかった。何故なら、彼は間違いなく死んだと聞かされた山羊座の黄金聖闘士ラインハルトだったのだから。

 

「生きていたんですね、ラインハルトさん…」

「ああ。そうだ、俺は生きている。俺がそんな簡単に死ぬ様な奴だと思っていたか?」

「いいえ!俺はラインハルトさんが戦死したって報せを聞いてもいまいち信じられなくて…でも、遺体を確認したので信じざるを得なかったんですよ…それなのに何故?確かに遺体は聖域で見たんですけど…何か色々と複雑で解りませんけど、生きていたら何故、聖域に戻って来なかったんですか?」

「それについては今から説明しようと思う。その前に龍音、倒れた演技はもうしなくて構わんぞ」

 

 ラインハルトが倒れていた龍音にそう呼び掛けると、倒れていた筈の龍音が屈伸しながら立ち上がったので一夏は龍音が無事である事にホッとした。

 

「龍音、無事だったんだな!」

「まあね。一夏が来る前に私がラインハルトと合流したんだ。私も死んだと思っていたラインハルトが生きていると知った時は驚いたよ。驚いてる私にラインハルトがいきなり倒れた演技をする様に頼み込んできたの。それで理由が解らない状態で倒れた演技をし続けたってところかな。多分、今の戦いの中でセブンセンシズを目覚めさせる為にやらせたんだと思う」

「そういう事だったのか…ラインハルトさん、本当にどういう事か説明してくださいよ!」

「ああ、そのつもりだ。龍音も一緒に聞いてくれ」

 

 ラインハルトは一夏と龍音に何故、自分が戦死した事になって暗黒聖闘士の格好をして、セブンセンシズを目覚めさせる為とは言え一夏と戦う様な真似をしたのか、その理由となる話をし出した。

 

「事の始まりは1ヶ月前、お前がペガサスの聖闘士になった日に俺は教皇に命じられた任務を受けアテナの瞳を捜索しに向かい、1週間が経った時にシベリアの奥に有る秘境にてアテナの瞳を発見し、任務を終えた俺が帰還しようとした時だった。俺に襲い掛かってきた者が現れたのだ」

「その襲い掛かってきた奴って一体…」

「いきなり襲い掛かってきた者はハイドルアという神の戦士を語る幻闘士(ファンタジスタ)の一人、三つ星幻闘士スルトのドゥークと名乗っていた男だ」

 

 ラインハルトは任務を終えた時に幻闘士の一人であるドゥークという者と戦っていた事を語った。

 

「俺はドゥークを撃退する為にエクスカリバーによる衝撃波を飛ばしたのだが…ドゥークが放つ炎の壁によって防がれてしまい、ダメージを与える事は出来なかった上に俺はその炎の壁から放射された炎に当たってしまい、小宇宙を使って致命的なダメージは避けたが…脚が火傷してしまい、俺の動きが鈍ったのをドゥークは見逃す筈も無く、ドゥークが追撃として放った炎を受けてしまった。俺はその衝撃で吹っ飛ばされ海に落ちたのだが…俺はこれを利用し、海中に沈み姿を隠す事でドゥークに俺が海の藻屑になったのだと思わせる事に成功し、ドゥークはその場から姿を消した後、陸に上がった俺はドゥークとの戦いで聞いた情報により、幻闘士と協力関係を結んだと知った俺は暗黒聖闘士から情報を聞き出す為に、本物のブラックカプリコーンを倒して剥ぎ取った暗黒聖衣を纏って暗黒聖闘士の中に内部潜入して情報を得る為に動く事にした」

 

 ラインハルトはドゥークとの戦いの後、幻闘士の情報得るべく協力関係になったという暗黒聖闘士に成り済ました事を語ると、次は自分が戦死したという偽りの報告を流す事にした理由を語りだした。

 

「俺は暗黒聖闘士の中に紛れ込んで十日が経った時に暗黒聖闘士から幻闘士の情報を聞き出していると、ドゥークが俺が海に落ちた程度で死ぬのを不自然に思った様で俺が本当に死んだか確かめる為にドゥークは俺の遺体を探している事を知った。もし、俺が生きていて暗黒聖闘士の中に紛れ込んでいるのを感付かれたら、幻闘士の情報を得る唯一のチャンスを無にしてしまうと考え、俺は自分の死を偽造する事にした。その為にまず俺は俺そっくりに作り上げた人形に自分の血液を流し込み、血が固まらない様に特殊な加工も施した。その人間に俺は小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣(ゴールドクロス)を纏わせて、海に放り込んだ。小宇宙を溜め込んだ黄金聖衣を纏わせる事でよりリアルに俺の遺体と見間違える様にな。それに俺が念じさえすれば、黄金聖衣は直ぐに俺の前に戻ってくるから聖衣を無くす事はないから出来た策な訳だ。人形が海に浮かんだ様子をドゥークが目撃し、俺の思惑通りにドゥークは俺が死んだと思わせる事に成功した。後は勝手に人形が海の底に沈んでくれる事を祈っていたのだが…」

「白銀聖闘士《シルバーセイント》達がその人形が沈む前に見付けた事でラインハルトさんの遺体と思って回収してしまったってところですか…」

「ああ。味方にまで俺が死んだと思わせる必要は無かったからな…その人形を俺の遺体と思って回収した白銀聖闘士達には本当に悪い事をしてしまったな…それに聖域の中まで俺が死んだと思って混乱させてしまったに違いない…」

 

 ラインハルトはどうやら偽りの死を偽造したのはドゥークの目を欺く為にやったのだが、それが味方にまで伝わるとは思いもしなかった様でラインハルトは己の詰めが甘かったのを悔いていた。

 

「じゃあ…ラインハルトさんは聖域にまで自分の偽りの死を広める気は無かったんですね…意外に詰めが甘いんですねラインハルトさんは…」

「本当に何やってんの?黄金聖闘士の名が泣くよ…」

「正論だからグゥの音も出ないな…本当に味方であるお前達までをも混乱させる事になってしまったのは申し訳無い。特に一夏には悪かったと思っている。俺が死んだという報告を聞いて一番辛かったのはお前だろう…俺が死んだと聞いた時には頭の中が怒りでいっぱいだったと龍音から聞いたからな…」

「本当にそうですよ!!あなたが戦死したと聞いた時は本当に怒りで頭の中がいっぱいでしたよ!あなたが俺に詰めが甘いと言ってたクセにラインハルトさんも詰めが甘かったんですから、俺の事を言えないじゃないですか!」

「本当にすまなかった。俺は聖闘士として地上に新たな脅威が現れつつ合った事は前から感じていた。その正体を探るべく俺はどうしても敵に俺を死んだと思わせる必要が有ったのだ」

「だからと言って、いくら何でも無茶苦茶ですよ!少しは連絡ぐらいしてくれてもよかったんじゃないですか…」

「連絡は一応、教皇に伝書鳩で俺の作戦を伝えておいた。敢えて、聖域にまで俺が死んだと思っている状態をキープした状態でお前達にこの任務を受けさせる為に手紙と一緒にアテナの瞳も伝書鳩に運ばせてな」

 

 一夏と龍音はラインハルトが教皇に伝書鳩で作戦は伝えていた事を知ると、一夏と龍音は互いに目を合わせて話す。

 

「おい、もしかして教皇はラインハルトさんが生きていると知ってたって事か…」

「そういう事になるね…どうやら私達は最初から教皇とラインハルトの思惑通りに動かされたみたいだね…」

 

 一夏と龍音はこの任務自体がラインハルトの仕組んだものだと思うと、自分の失敗をも利用するとんだ切れ者だと認識せざるを得なかった。

 

「話を続けるぞ。俺は暗黒聖闘士に紛れ込み続けた結果、幻闘士を束ねる神ハイドルアの居場所を突き止める事に成功した」

「それは敵にとっても一番知られたくない情報の筈!?ハイドルアの居場所を突き止めるなんてさすがですよ、ラインハルトさん!」

「それでラインハルト。ハイドルアの居場所って?」

「ああ。ハイドルアの居る場所は魔の三角地帯と呼ばれた海域バミューダトライアングルの中に隠された異大陸ムー大陸の中に有る魔城アトランタの奥に有る王室だ」

「バミューダトライアングルって確か…ソコに入った飛行機や船が謎の現象でいきなり沈んだりしたって言う海域だったよな?」

「そのバミューダトライアングルの中に入るのさえ難しいと思うのに、その中に隠された異大陸ムー大陸を見付け出した上にムー大陸に有る魔城アトランタも見付けないといけないって難題続きね…」

「でも、さすがにそこまで行く方法も当然知っていますよね?」

「ああ…何とか行く方法だけは掴めた…」

 

 ラインハルトはハイドルアがいる場所を知る事が出来た上に行く方法も知る事が出来た様だが、その顔は何処か気苦しそうに見えたので一夏はラインハルトに尋ねた。

 

「もしかして、その行く方法が問題なんですか?」

「その通りだ。まずバミューダトライアングルが問題なのだ。バミューダトライアングルはその海域に入った飛行機や船が謎の現象の影響で沈む原因はバミューダトライアングルの中はハイドルアの力に満ちた危険地帯なのだ。ハイドルアが封印されて眠っていた間でも、その力は強く残っていた為に何も知らずに入り込んだ飛行機や船をハイドルアが自分の縄張りを荒らした存在と認識し沈めたのだろう…」

「つまり、俺達が迂闊にバミューダトライアングルに飛び込むとその二の舞となるかもって事ですか…」

「そうだ。言わばバミューダトライアングルの中はハイドルアに敵対する俺達聖闘士にとっては最悪の環境だ。分かりやすく言えば、常に俺達だけに有害な毒ガスが満ちた中で動くに等しいのだ。まずはバミューダトライアングルの中で少しでも動ける様になる為にも今回のお前達の任務の成功が必須だ」

「このアテナの瞳を使ってアテナの加護を受けられる範囲を地上全体にする事がですか?」

「アテナの加護を受けられる状態なら少しはまともに動けるかもしれないからな…本当ならアテナの血を受けた聖衣や宝具が有れば、完全な状態で動けるのだが…アテナがいない今の状態では、最早アテナの瞳で常に加護を受けられる状態にするのが精一杯だ…」

 

 今の話を聞いて、バミューダトライアングルの中で少しでも動ける様になる為にも今回の任務は絶対に成功させなければと一夏と龍音は強く決心した。

 

「続いて、ムー大陸に行く方法は一つ星幻闘士以上の幻闘士が持つミラージュピースと呼ばれる宝石を手に入れさえすればいい。ミラージュピースを一個でも持ってさえすれば、ムー大陸に続く道を知る事が出来る様だ。ただし、ミラージュピースは幻闘士が何処に隠し持っているか解らないから、手に入れる為にはミラージュピースを壊さない様に戦う必要が有る。それにだ、ムー大陸に有る魔城アトランタに入る条件はミラージュピースを十五個所有した状態でないと入口である門が開かないらしい。その為に幻闘士達も魔城アトランタに入れるのは幻闘士が集った時のみだ」

 

 ラインハルトはミラージュピースが無いとバミューダトライアングルに入ってもムー大陸は見付からない上、ムー大陸に着いてもハイドルアの居場所である魔城アトランタに入るには十五個もののミラージュピースが必要だというので、ハイドルアは一筋縄ではいかない相手だと一夏と龍音は認識した。

 

「つまり、ミラージュピースを手にしないとまずハイドルアの居場所にさえ行けないのか…しかもそれが十五個も必要なのか…」

「本当に一筋縄ではいかない相手ね…さすがは神ってところかな」

「確かにハイドルアは一筋縄ではいかない。だからこそ、俺は自分の死を偽造して敵の目を欺き、それが味方も混乱させてしまったのは俺の失敗では合ったが、その失敗を逆に利用してお前達をこのカノン島に呼び出した。幻闘士の一人であるアルベリッヒがお前を俺の前に飛ばす様にしたのは敵側の作戦だったが、俺はそれを逆に利用した。その上で俺は暗黒聖闘士の一人として一夏の前に立ちはだかり戦った。その甲斐有って、一夏は俺との戦いでセブンセンシズに目覚める事が出来た」

「その戦いで万が一、一夏が死んでたら…どうしていたのか聞きたいかな?」

「その時は…所詮はその程度の者だったと開き直って話を進めていたな…」

「笑えない冗談は止めてください…ラインハルトさん…」

「とにかく俺の期待以上に一夏は強くなった。セブンセンシズに目覚め放った一撃は俺の力の七割で放ったシャイニングインパルスを相殺させた程だったからな。これは嬉しい誤算だった」

 

 ラインハルトは敵側の作戦を逆に利用して一夏の前に現れ、暗黒聖闘士として振る舞い一夏と戦い、一夏をセブンセンシズに目覚めさせる事に成功した。ここまではラインハルトの思い通りの結果だが、まだやらねばならない事が有るのを一夏と龍音に告げる。

 

「俺はお前達を呼んだのはアテナの瞳を無事にカノン島の火山の火口に放り込める様にする為だけな訳ではない。アルベリッヒともう一人の幻闘士が持つミラージュピースを確実に奪い取る為にも俺はお前達を呼んだのだが、祐介とフィリスの二人もいるのだな?」

「ええ。おそらく祐介は今もアルベリッヒと戦っていて、フィリスは何処に飛ばされたか解らない…」

「まさかフィリスはそのもう一人の幻闘士と戦っているんじゃ…」

「多分、違うだろう。二人の幻闘士の他にも暗黒聖闘士が十人来ているからな…おそらくだが、フィリスは十人の暗黒聖闘士と戦っているな」

「じゃあ、フィリスを助けに行かないと…いくら白銀聖闘士と互角に渡り合えるからって十人ものの暗黒聖闘士が相手じゃさすがに部が悪い筈だから助けに向かわないと…」

「おそらく、大丈夫だろう」

「何でだよラインハルトさん!!龍音の言う通り、いくら何でも数が多かったら…」

「フィリスは白銀聖闘士と実力は互角…それは大きな誤解だ。フィリスは聖域の中では、聖闘士同士による模擬戦では本来の実力を敢えて出してないだけにすぎない…お前達は知らぬだろうが、フィリスはある人物が自分のDNAを元に作り出した存在…いわゆるクローンだな。その生まれ故か、あの『天災』と呼ばれた女の血を濃く受け継いだというよりは…ほぼそのままと言った方がいいのか…フィリスはその『天災』と呼ばれた女のクローンだからなのか、聖闘士としての能力の高さは圧倒的かつ最強故に本気を出せば、暗黒聖闘士では役不足だ…」

「『天災』!?ま、まさかね…あの人がフィリスの産みの親な訳無いよね…」

 

 

 

 

 一夏とはラインハルトからフィリスが『天災』と呼ばれた女が自分のDNAから作り出した存在だと聞いて驚いた。何故かというと、フィリスを作り出した『天災』と呼ばれた女に心当たりが有ったからだ。

 一夏と龍音がラインハルトから話を聞いていた頃、フィリスの目の前では十人の暗黒聖闘士の内、八人が息絶えて倒れていた。残った二人の暗黒聖闘士はフィリスの圧倒的強さに驚愕しながらも同時に攻撃を仕掛けた。

 

「噂に聞いた暗黒聖闘士…大した事無いね。所詮は力を己の為だけにしか使えない雑草の集まりだった訳か…」

「うるさい!まだ我ら二人が残っているのだぞ!喰らえ、ブラックユニコーンの一撃を!ブラックギャロップ!!」

「受けよ、ブラックベアーの剛力を!ブラックハンギング!!」

「失せなよ!君達程度じゃ僕には敵わないよ!仕方無いや、イッチーとお揃いの技で決めるのも悪くないけど…敢えて、見よう見まねの技で決めようかな」

 

 フィリスは二人の暗黒聖闘士の最後の抵抗となる技を避けると、小宇宙を高めて星々をも砕く最強の技を放つ。

 

「星々が砕ける様を見届けて散るといいよ!!ギャラクシアンエクスプロージョン!!」

「バカな…それは双子座ジェミニの聖闘士の最強技の筈…」

「なのに何故、たかが青銅のお前がこの技を使えるのだ!?しかも、他の黄金聖闘士の技すらも…」

「何故かって?それは僕が天才の中の『天災』だからさ!!」

「意味が全く解らぬぞ…グォォッーー!!?」

「この化け物がぁぁっ!!?」

 

 二人の暗黒聖闘士はフィリスの放った星をも砕く最強の技を受け、塵すら残さずに消滅した。フィリスは暗黒聖闘士を倒し終えるとその場を後にした。

 

「さてと、イッチーとルーちゃんの二人と合流しようっと!その後にお稲荷の元に向かってアル何とかを潰す事にしようっと!イッチーは大丈夫かなぁ?ルーちゃんも心配だしね…聖闘士の敵は僕の敵さ。僕を産み出しといては勝手にいなくなったあの女は憎くてぶっ殺してやりたいぐらいに大嫌いだけど、それは私怨だから聖闘士の信念を潰す様な行為だからやらないけどね…まあ、あの女には感謝してるところも有るけどね。僕の居場所になったイッチー達のいる聖域に来れたのはあの女に置いてきぼりにされたところを教皇に引き取られたからだしね!それでも、あの女は見たら殴ってやりたいぐらいに大嫌いだけどね…あの頃の楽しかった記憶の出来事も僕が作られたのも所詮はあの女の気まぐれなんだろうね…」

 

 そう言いながら、フィリスは一夏と龍音を探しに向かったのだった。その内面に自分を産み出した女と暮らした時の楽しかった記憶と突然、いなくなった女への怒りに板挟みされながら…




 ラインハルトは死んでおらず、死を偽造して敵の内部に潜り込んで情報を得ていました。まあ、味方にまで死んでしまったと思わせる気は無かったのでラインハルトは詰めが甘い部分が有ります。
 色々と新たな情報を出す話になったので、タイトル余り関係無い気がしました…他にいいタイトルが思いつかなかっただけですけどね…
 フィリスはIS原作でお馴染みの『天災』と呼ばれたあの女が自分のDNAから作ったクローンです。性別が違うのは敢えて、そうなる様にしたんでしょう。この女は何を考えているのか理解しづらいですしね…何せ『天災』ですからね…とある事情でフィリスを置いてきぼりにしてしまった事には、『天災』と呼ばれた女もその気では無かったとは言えど、置いてきぼりにして消えてしまった事については会った時に謝りたいと思っています。

 次回は祐介とアルベリッヒの戦闘を描きます。

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