一方、町では三葉が居なくなって大騒ぎ、捜索隊が出されます。
そして、いよいよ彗星が迫る中、デンライナーに乗って滝達も3年前の糸守に・・・・
東京から、三葉が糸守に戻った頃には、もう日が暮れていた。
駅からの帰り道、暗い夜道を、三葉はひとり歩いている。その前に、ひとつの人影が現れる。
「あ・・・あねさん!こ・・こんな時間に、どうしたんですかい?」
影月が、三葉に寄って来る。
「ん?・・・お前・・・影月か?」
三葉は、冷やかな目で、影月を見つめる。
「ど・・・どうかなさったんですか?こ・・声が、変ですぜ?」
完全に違う、男の声の三葉に、影月は戸惑う。
「何でもない・・・もう、お前に用は無い・・・・失せろ!」
三葉の目が、妖しく赤く光る!
「うわああああああああっ!」
見えない力で、影月は、思い切り跳ね飛ばされる。道の脇に生えていた木に叩きつけられ、影月は気を失ってしまう。
三葉は、それを見向きもせず、先を行ってしまう。
三葉は、家には帰らず、ひとり御神体を目指し山道を歩いている。そこに、今度は、黒尽くめの一団が現れる。胸には、骨を模った模様がついている。ショッカーの戦闘員達だ。
彼らは、囲むように三葉の行く手を遮る。そして前方の木の陰から、死神博士が姿を現す。
「丁度良いところに来たな、宮水三葉・・・・攫う手間が省けた・・・・捕らえろ!」
「イイーッ!」
死神博士の号令で、戦闘員達は、一気に三葉に襲い掛かる。
「無礼者がっ!」
再び、三葉の目が、妖しく赤く光る!先程よりも、遙かに強く!
「イイィィィィィィッ!」
戦闘員達は、跳ね飛ばされるどころか、蒸発するように消えてしまう。
「な・・・何だ?・・・何故、この娘にこのような力が?」
驚きの声を上げる、死神博士。
「狼狽えるな、死神博士!わしが分からんか?」
「な?・・・そ・・・その声は?・・・・まさか?」
「そうだ!わしだ!」
「しゅ・・・首領?・・・どうして?・・・まだ、装置を動かしていないのに?」
「これも、お前の作戦のお陰だ!・・・・まずは、わしを装置の所に連れて行け!詳しくは、そこで聞かせてやる。」
「は・・・ははっ!」
首領と認め、死神博士は、三葉の前に跪く。
一夜明け、宮水家では大騒ぎになっていた。昨夜、三葉が帰らなかったからだ。
一葉は、緊急事態のため絶縁中のとしきの所に行き、四葉は、勅使河原達と辺りを探し回っていた。
「え?じゃあ、三葉は昨日、東京に行ったんか?」
「うん・・・でも、夜には帰るって・・・・」
四葉は、涙ぐんでいる。
「もしかして、東京で何かあって、帰って来てへんのか?」
「克彦~っ!」
そこに、早耶香が駆け付けて来る。
「どうした?・・・早耶香?」
駆けて来たため、息があがっている。それを整えながら、早耶香が言う。
「・・・さ・・昨晩・・この近くで、三葉に、会ったもんがおるって・・・・」
「ほ・・・ほんまか?だ・・・だれや?」
「か・・・影月さん!」
「そ・・・そうか、じゃあ、糸守には帰って来たんやな?そんで、何処行ったって?」
「それが・・・分からんらしい・・・・でも、山の方に向かっていたって・・・・」
「山?」
「まさか?御神体?」
その後、四葉達はとしき達と合流して、御神体の山に捜索に行く事になった。
メンバーは、宮水としき、宮水四葉、勅使川原克彦、名取早耶香、影月信彦、あとは消防団員達と役場の男連中、勅使河原建設の面々も一緒だ。一葉も行きたがったが、流石にご老体に山道は厳しい為、町役場で連絡を待つ事となった。
御神体に居るという確証は無いので、道沿いに山の中も散策して進む。そのため、頂上に着く頃には、陽が暮れかけていた。
頂上から、窪地の中に降りる。すると、御神体の岩の下から、丁度人影が出て来た。
「お・・・お姉ちゃん?」
その人影は、三葉だった。
「お姉ちゃ~ん!」
四葉は、真っ先に三葉に向かって駆け出した。としきや、勅使河原達がこれに続く。
四葉が、御神体を囲む小川の直ぐ手前まで走り寄ると・・・・・
「イーッ!」
「きゃあっ!」
突然、目の前に黒い影が現れる・・・・ショッカーの戦闘員だ。
「な・・・なんや?!」
驚く、勅使河原達。だが・・・・・
「イーッ!」
彼らの周りにも、次々とショッカーの戦闘員が現れ、彼らは囲まれてしまう。
「な・・・何なんや?こいつら?」
「てめえら!あねさんに、何かしやがったのか!」
行く手を塞がれた影月が、切れて戦闘員に殴り掛かる。
「イイーッ!」
流石に喧嘩慣れして腕力もあるため、戦闘員にも後れを取らない。ひとり、ふたりと倒していく・・・・しかし・・・・
「ギイイイイイイイイッ!」
そこに、怪人が現れる。
「うわああああああっ!」
「きゃああああああっ!」
突然、異形な姿をした怪物が現れ、皆、悲鳴を上げる。しかし影月は、驚きながらも向かっていく。
「こ・・・この化け物!」
怪人の顔面を、思い切り殴る。しかし、怪人は微動だにしない。
「グワエエエエエエッ!」
怪人は、獣の腕で影月に襲い掛かる。
「ぎゃあああああっ!」
腹に傷を付けられ、影月は吹っ飛ばされっる。倒れる影月を、勅使河原が受け止める。
「か・・・影月、だ・・・大丈夫か?」
「う・・・ううう・・・」
さほど大きな傷では無いため、命には別状ないだろう。ただ、精神的なダメージは大きく、気を失ってしまう。
「ギイイイイイイイッ!」
怪人は、更に襲い掛かろうとする。
「待て!」
三葉が、それを制止する。だが、全く声が違うため、四葉や勅使河原達は、最初は三葉が喋っているとは気付かなかった。
「まだ殺すな!万一の時のために、そいつらは人質として生かしておけ!」
「え?」
「み・・・三葉?」
ここにきて、ようやく四葉達も、声の主が三葉である事に気付く。
「な・・・なんや、あの声・・・・」
「ま・・・まさか、本当に、狐憑きやの?」
三葉は、薄ら笑みを浮かべながら、怪人と戦闘員達に囲まれている四葉達を眺めている。
「お・・・お姉ちゃん!な・・・何で、こないな事するん?」
「三葉!何をやっている!ふざけるのも、いい加減にしろ!」
四葉ととしきが、三葉に声を掛ける。
「騒ぐな!わしはもう、三葉では無い!」
「?!」
何を言っているんだ、という顔で、全員が唖然とする。
「わしは、偉大なるショッカーの首領であるぞ!愚かな人間どもよ、お前達は今から、わしの完全復活という歴史的瞬間に立ち会う事ができるのだ!光栄に思うがよい!」
「あ・・・あかん、完全に憑りつかれとる・・・」
「そんな・・・お姉ちゃん・・・・」
四葉は、とうとう泣き出してしまう。
「しかし、首領、人質など必要なのですか?ライダー達は、私の策略に嵌ってアジトを攻めている頃です。ここには、来られません!」
そう言いながら、御神体の岩の下から、死神博士が現れる。
「ふふ・・・昨夜、言ったであろう。わし同様、未来から来る可能性が、ゼロでは無い!」
「はっ!了解しました。」
死神博士は、怪人達に指示を出し、四葉達を、窪地の隅の方に連れて行かせる。
しばらくして、完全に陽が落ちて、空にくっきりと彗星の姿が臨めるようになる。
「おお・・・来たぞ、もうすぐだ・・・もうすぐ、わしは完全復活できるのだ!」
その時、三葉(首領)の周りに、次元のトンネルが幾つも現れる。そしてその中から、怪人とはまた違う、異形の怪物達が次々と姿を現す。
「きゃああああっ!」
「うわああああっ!」
四葉達は、また悲鳴を上げる。
「な・・・何奴!」
警戒する死神博士に、三葉が叫ぶ。
「慌てるな!こいつらは、ショッカーイマジン達だ!未来の貴様が、わしのために集めた、新たなショッカーの兵士達だ!」
「おお・・・そうでしたか?」
「ここまで来れたのも、全て貴様のお陰だ!ご苦労であった、死神博士よ!」
「も・・・勿体無いお言葉・・・」
死神博士は、再び首領に跪き、頭を垂れる。
――――― と、イマジン達の出現に続き、何も無い空間にいきなり線路が現れる。その線路を、デンライナーが走って来る。デンライナーはそのまま通り過ぎ、通り過ぎた後に、2人の人影を残す。本郷猛と、立花滝だ。
『三葉っ!』
2人揃って叫ぶ。
「やはり現れたな・・・本郷猛!」
「な・・・何だ、これが・・・三葉の声?」
全く違う男の声に、滝は驚愕する。
「そ・・・その声は・・・ショッカー首領!」
「そうだ!久しぶりだな、本郷猛!」
「み・・・三葉を返せ!」
滝が叫ぶ。
「もう遅い!これからわしは、完全復活を果たすのだ!大人しく、そこで見ていろ!」
「そんな事はさせん!」
本郷は、変身しようとする。
「待て!本郷!あれを見ろ!」
死神博士は、そう言って窪地の隅を指差す。その先には、四葉達が座らされていて、周りを怪人達に囲まれている。
「あ・・・あれは・・・四葉!テッシー達も・・・・」
「おのれ・・・卑怯だぞ!死神!」
「何とでも言うが良い、首領の復活は、何よりも優先される・・・・少しでも動けば、あの者達の命は無い!」
「イーッ!」
本郷と滝のところに、戦闘員軍団が近づく。
「た・・・猛!」
「滝、今は、大人しく言うことを聞くしかない!」
「で・・でも、このままだと三葉が・・・・」
2人は、戦闘員達に抑え込まれてしまう。
「おおっ!」
空を見上げ、三葉が奇声を上げる。彗星が2つに割れ、徐々に本体と離れていく。
「もうすぐ・・・・もうすぐだぞ!」
四葉達を人質に取られ、手が出せない本郷と滝。
刻一刻と迫る、彗星の破片の落下。
このまま、首領は復活してしまうのか?
体も心も乗っ取られた、三葉の運命は?