キャンプのお話の6話目になります。
ようやく2日目に突入です。
「さあ!釣って釣って釣りまくるヨー!」
「いえーい!」
マリーちゃんと曜ちゃんが高々に釣竿を掲げる。
結構危ないので遠慮していただきたい。
「さて、釣りの時間は今から3時間程度。その間、各々自由に釣りを行う。それでいいですわね?」
「「「はーい!」」」
3時間。
釣り経験がほぼない自分としては、十分なのか短いのかはよく分からない。
みんなが、釣り道具一式を持って散っていく。
「よし。こっちも準備しますかねー」
「任せちゃっていいんですか?」
「オッケー。あの子達、頼むね」
美渡さんがバーベキューの準備を始める。
相変わらずのご飯係だ。
もちろん俺も手伝いを申し出たが、例のごとく断られた。
最低限の手伝いということで、荷物と食材を運ぶのを手伝う。
食材については、基本的にはシンプルなものばかりだ。
若干、明らかに日本製のものじゃないものがいくつか見られるが、誰が持ってきたかは大体見当つくので、そこはスルー。
美渡さんならうまく調理してくれるだろう。
「っと、これで全部ですね」
「お疲れさん。あとは私がやっとくよー」
「いや、セッティングまでは手伝いますよ」
「あら。じゃあそこまでは任せるよ。私、野菜切っとくから」
「了解です」
今日は天気が良さそうなので、フライシートは張らなくていいだろう。
美渡さんが使っているのとは別のキャンプ用机を組み立て並べていく。
さらに、コンロも3つ組み立ててセット完了。
火付けは…みんなが揃ってからの方がいいかな。
そんなわけで、準備自体は完了である。
「お、できたみたいだね。ありがとー」
「いえ。じゃあ、あとは頼みます」
「ほーい」
釣り道具を持って歩き出す。
とりあえずは、みんながどこにいるかを把握しておくために歩くことにした。
※
とりあえず川沿いを歩く。
早速3つの人影を見つける。
「成果はどうだい?」
「あ、ハルさん。まだ釣れないずら〜」
「私もです」
「同じくよ」
そこにいたのは、花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃんの1年生トリオである。
「そうかい。まあまだ大した時間も経ってないからね」
「ハルさんは何してるずら?」
「俺は見回りだよ。いい場所があれば釣りに参加するがね」
「そ、その、お疲れ様です?」
「ああ、ありがとう」
ルビィちゃんに気を使われてしまった。
「とりあえずは水分補給だけしっかりしておいてくれ」
「「はーい」」
「そっちも、体力ないんだから気をつけてよね」
「おや。心配してくれてありがとう」
「なっ。し、心配とかじゃないからっ」
「善子ちゃん。わざわざ隠す必要ないずら」
「あはは。そうだね」
「違うから!」
「じゃあまあ、気をつけておくれ」
「あ、こら!」
あの3人なら特に問題もないだろう。
そう考え、別の場所に向かう。
上流へ行くとさらに別の3人を発見。
「あれ?ハル?どうしたの?」
「いや、それはこっちのセリフだよ。何をしてるんだい」
「んー…マス掴み?」
「今は釣りをする時間じゃないのかい?」
「でもこっちの方が効率いいよ?」
「いや、そうかもしれないけどね…」
「キャーッチ!2匹目よー!」
「あ、ちょっと暴れないでください!」
見つけたのは3年生トリオ。
だが、3人とも腕まくりに縛った髪と手掴み体制である。
行きは釣竿を持って行ったはずなんだが。
「君たち、釣りとは何かご存知かい」
「当然ですわ!」
「今の君たちは魚釣りをしていないことは自覚してるかな?」
「フィッシュが獲れれば同じよ」
「…まあ、それで楽しいなら何も言わないよ」
「ハルもやる?釣糸垂らすよりはこっちの方が効率いいよ?」
「遠慮しておくよ。俺には真似できなさそうだしね」
「そっかー」
ちなみに、この魚獲りについてはちゃんと許可を得ているらしい。
「よっぽど大丈夫だとは思うが、怪我には気をつけるように」
「「はーい」」
「もちろんですわ!」
「それじゃ、がんばってくれ」
3人に手を振り、さらに上流へと進む。
やがて3人の人影を見つける。
「そーれー!」
「うわ、冷た〜い!曜ちゃんやったなー!」
「あははは!」
「2人とも、服濡れちゃうわよー」
釣りは…していないようだ。
「えーと…調子はどうかな?」
「あ、ハルさん。…見ての通りよ」
「まあ…こうなる気はなんとなくしていたよ」
とはいえ。
この子たちが多少魚を獲れなかったところで、3年生が結構捕まえているので問題はないだろう。
というか、別に1匹も釣れなかったところで何か不利益があるわけでもない。
楽しくやれるなら、ぶっちゃけた話、何をやっててくれてもいいのだ。
「梨子ちゃんは、混ざらなくていいのかい?」
「ええ!?だって…」
「釣りのことは気にしなくていいよ。もちろん、あれに混ざりたくないならそれで構わないしね」
「そういうわけじゃないけど…」
「それに、だよ。あんだけ暴れまわってしまったら、この辺の魚なんて簡単には釣れないだろう。同じ時間を過ごすなら、遊んだ方が得策だと思うよ」
「…そうね。うん。そうするわ」
靴を脱いで川の方へ駆けていく梨子ちゃん。
やがて、飛び交う水が3人分に変わるのだった。
「滑らないように気をつけるんだよー」
「「「はーい」」」
※
釣りが始まって2時間半。
つまりは釣り終了予定の30分ほど前。
Aqoursのメンバーは水遊びに興じていた。
「そーれー」
「えーい!」
「きゃー!冷た〜い!」
「くっくっく…この堕天使に水など…って誰よ!私にかけたの!」
「そんなとこで突っ立ってるからだよー」
「ピギャー!」
「ああ!ルビィちゃんがこけたずら!」
9人の美少女たちが、川の水と戯れる。
そんな光景を、俺は魚を捌きながら眺めるのだった。
もちろん、彼女たちが釣ってきた魚である。
…いや、大半は釣ったというより獲ってきたと言うべきかもしれないが。
「結局、釣りは飽きちゃったのかー」
「いえ、これ以上は食べられないからって、俺がストップをかけたんです」
「ああ、なるほどねー。で、時間を持て余して水遊びと」
「まあそうですね」
着替えはあるのだろう。
ほとんど全身水浸しなレベルで遊んでいる。
水も滴るなんとやら。
目に優しい光景である。
「どう、あれを見て」
「素晴らしい光景ですね」
「いやいや、そうじゃなくてね」
「ん?何が言いたいんですか?」
「あの子達が水に浸かってる姿なんて、そんなに珍しいものでもないでしょ?」
「まあ、すぐ近くに海がある環境ですからね」
「そうそう。でも、今は普段と決定的に違う点があるの」
「違う点ですか」
「水着だよ」
「………言いたいことは分かりました」
彼女たちは今、水着は着ていない。
さらに、水浸しのシャツはきっちりと肌に張り付いている。
要するに濡れ透け状態だ。
よくよく見ると、現段階で結構きわどい状態である。
シャツが張り付いて体のラインがはっきり浮き出ていたり。
下着のラインと思われるものが浮いている子もいらっしゃる。
…というか、濡れて透けてる子もいる有様だ。
「いやー、若いっていいねー」
「…俺、ここにいない方がいいのでは?」
「いやいや。せっかくあの子達が無警戒なんだよ?堪能しとかないと」
「とてつもなく眼福なのは確かですが…正直目線のやり場に困ります」
「プールとかではガン見してるんでしょ?今更何言ってるのさ」
「水着は本人公認の上だと思ってます。さすがに下着はあかんでしょ」
「変なところで紳士的だねえ、ハルくんは」
「常に紳士的でしょうが」
「そんな紳士に、試練を与えてあげよう」
「…何をするつもりですか」
「くっくっく…」
美渡さんが何やら嫌な笑みを浮かべている。
この表情の美渡さんは、大概ろくなことを考えていない。
何をするつもりか警戒態勢に入ったその時だった。
「おーい!みんなー!ハルくんも水遊びしたいってー!」
「………はい?」
「いいよー!」
「ハルもこっち来なよー!」
「カモーン!」
「だってさ」
「だってさじゃないです。いや、まずいですって」
この人、俺を単身であの場所に放り込む気らしい。
あの環境に男を放り込むって…
生肉畑にライオンを放つようなもんだぞ。
「大丈夫だって。本人達は気づいてないし」
「大丈夫なわけないでしょう。俺、男ですよ?わかってます?」
「だから気を利かせてあげたんでしょ?ほら、行った行った」
「…どうなっても知らないですよ」
渋々、彼女たちと水遊びを楽しんだ俺。
目線は、極力彼女たちの服にやらないように常に目を見続けた。
何があっても、彼女たちを見る時は目だけを見続けた。
なぜか照れているような気がしたが、多分気のせいだろう。
そして。
誰かが濡れ透け状態に気づいた。
当然、飛ぶ悲鳴。
誰かのパンチにより飛ぶ俺。
うん。
知ってたよ。
なんで教えてくれなかったのって打撃を食らう未来を、俺は知ってたよ。
でも、教えたら教えたでデリカシーがないって攻撃されるじゃないか。
だから。
「美渡さんが…伝えてくれれば…万事解決だったん…だ」
「こういうのをスマートに納められないと、紳士とは言えないねえ」
そんな悪魔の言葉が、耳に聞こえたのだった。
ご視聴ありがとうございました。
キャンプ自体は2日計画なので、この日で彼らは帰宅します。
それでは何かありましたらお願いします。