以前、3年生と布屋さんで話に挙がっていたキャンプの話になります。
とはいえ、その話は読んでいなくても問題はないと思います。
以前3年生のみんなから聞いていたキャンプの話。
それが明日に迫っていた。
予定では1泊2日。
屋外活動を楽しみつつ、バンガローに泊まるらしい。
キャンプ場までは片道1時間程度。
沼津にもキャンプ場はあるのだが、少しくらい外に出たいという意向でその場所になったらしい。
まあたまにはそういうのもいいだろう。
夏休みは練習をよく頑張っていたわけだしね。
明日のための荷物が一通り揃っている事を改めて確認する。
そんな時だった。
『ブルルルルルルルル』
携帯のバイブが鳴った。
電話のようだ。
画面に表示されている名前は…
『高海 美渡』
千歌ちゃんのお姉さんだ。
電話が来るのは少し珍しい。
「はい、もしもし」
『あ、ハルくん?今いい?』
「こんにちは、美渡さん。どうしました?」
『明日の事でちょっとねー』
「ああ、そういえば美渡さんも一緒に来るんですよね?」
『そうそう。さすがに大人がハルくん一人だと厳しいでしょ』
「そうですね。助かりますよ。ただ、仕事とか大丈夫だったんですか?」
『大丈夫大丈夫。あ、それでね』
「はい」
『ハルくん、お酒飲めたっけ?』
「酒?まあ一応飲めますけど」
『オッケー。じゃあ持ってくねー』
「え、それだけですか?」
『そうだよ?』
「別にメールとかでもよかったんじゃ…」
『私、そういうのめんどくさくて嫌なのよねー』
相変わらずである。
そんなどうでもいい電話をして、準備を再開する。
準備がきっちり整ったとき、時刻は夜の12時を回ろうかというタイミングであった。
思いの外、時間がかかっていた。
「準備にこれだけかかるとは…」
案外、俺も気合が入っているようだ。
※
「では!思いっきり楽しみますわよー!」
「「「「「おおー!!」」」」
「お、おー!」
「無理に合わせなくていいのよ」
「みんな気合入ってるずら〜」
「君たち1年生が1番落ち着いてるね」
翌朝。
浦の星女学院前に揃う11名。
Aqoursの9人と、俺、美渡さんの大人2名である。
ここからマイクロバスで移動するらしい。
手配したのは小原家だ。
最初はヘリコプターでも出そうかと言っていた。
俺が酔うので断ったが。
運転も小原家の用意した運転手さんがいるらしい。
その人に軽く会釈をしてバスに乗る。
間も無くして動き出すバス。
「今日行くのはどういうキャンプ場なんだい?」
横に座る千歌ちゃんに聞く。
「なんかね、いろいろ遊べるんだって!」
「ほうほう。例えば?」
「んー…釣りとか、バーベキューとか、あと、アスレチックとか!」
「アスレチック?」
「そう!んー…なんていうんだろ…ロープとかの遊具とかそういうの!」
「ああ、多分フィールドアスレチックかな」
アスレチックという単語だと、本来の意味は運動である。
しかし、キャンプ場にあるような遊具もアスレチックと呼ばれる事は多い。
これは本来フィールドアスレチックというのである。
自然の中で、一定のコースを目安に作られた遊具群とでも表現するべきだろうか。
「ちなみに、予定とかは決まっているのかい?」
「予定?」
「スケジュールみたいな」
「んー…テキトー?」
「まあそうだろうね」
キャンプでそんなに細かい日程は決めていないか。
「あ、でもね、いくつかやりたい事はみんなで決めてるんだよ!」
「ほう」
「えーとね…」
そこまで千歌ちゃんが言ったところで、後ろの席から曜ちゃんと梨子ちゃんが会話に入ってきた。
「まずはバーベキューだよ!キャンプの定番!」
「やるのは明日の昼だけどね」
「帰る前にやるんだね」
「バーベキューの前にフィッシングよ!」
「釣った魚も焼くのかい?」
「当然ですわ!」
「掴み取りでもいいよね?」
3年生も入ってきた。
…果南ちゃんは掴み取りにするらしい。
「夜に肝試しもするずら!」
「うゅ…こ、怖いです…」
「ふふふ…堕天使にかかれば幽霊などたわいもない」
「ああ、確かにそれも定番だね」
最後は1年生である。
みんなは怖いものは平気なんだろうか。
さっきの感じだと、アスレチックにも行くみたいだ。
体力配分をしっかりしとかないとな。
ちなみにこの間、美渡さんは寝ていた。
「とうちゃーく!」
「いえーい!だいしぜーん!」
「シャイニー!」
「緑生える山!」
「綺麗な川!」
「広大な自然!」
「「「「「「これぞキャンプ!!」」」」」」
順に、千歌ちゃん、曜ちゃん、マリーちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃん、花丸ちゃんである。
Aqoursのテンション高い組だ。
「みんなー、荷物下ろすの手伝ってー」
「うゅ…お、重いっ…ピギイ!」
「ルビィ、大丈夫?ほら、こっちは私が持つから」
「俺も持つから、君らは軽いものを持ってきてくれ」
「あ、じゃあこれも頼むわね」
「20歳以上の方は自分で持ってください」
「えー、私も女の子なんだけどー」
「あなたは女性です。女の子じゃないです。そもそも、俺より美渡さんの方が力あるじゃないですか」
「もー。あ、じゃあみんなの分くらいは持ってね。はい」
結構重たいダンボールを美渡さんから受け取る。
「なんですか、これ」
「ジュースだよ」
「ああ、なるほど。だったら持たないといけないですね…ってこれ酒じゃねーか」
「ジュースでしょ」
「どこがみんなの分なんですか」
とはいえ返すわけにもいかないので、そのままバンガローまで持っていく。
重いんだけど、どんだけ持ってきたんだ。
他の荷物を持ってくれている善子ちゃんと一緒に歩く。
と言っても、すぐ側だが。
バンガローは1つに5人は寝れそうなサイズだ。
それを4つ使う予定らしい。
3部屋が寝泊まりで、1つは荷物用とのこと。
1泊ごときのためにやる配分ではない。
ちなみに、借りたバンガローの数は、キャンプ場のもの全てである。
というか、このキャンプ場は貸切なんだそうだ。
小原家と黒澤家で手配したらしい。
聞いた時、驚きすぎて言葉を失った。
「案の定、荷物置きのバンガローはスッカスカだね」
「そうね」
ジュースを置く。
部屋の中は明らかに空きがある。
「ハル、この部屋で寝るんだっけ?」
「そのつもりだよ」
寝るスペースがあるか心配だったが、こうしてみるとその必要な無用だったみたいだ。
どう考えても、この荷物室で寝れる。
そもそも、個人の荷物は自分たちの場所に持ち込んでいるし、ここにあるのは共用の備品。
バーベキュー用品だったり、食料だったりだ。
11人分は確かに多いが、バンガロー1個まるまる使うほどではないのだ。
そんな時、ふと思った。
「個人備品以外で何を持ってきてるんだろうか」
「何って…普通にキャンプ用品じゃないの?」
「用意したのは誰なんだい?」
「全員ね。必要と思うものを体育倉庫に置いとけって言われてたの」
「なるほど。てことは、互いが持ってきた荷物は把握できていないものもあるわけだ」
「そうね」
興味本意で覗いてみることにした。
「まあ共用のとこにあるんだし、見ても問題はないわよね」
「見ちゃいけないものなら、個人で持って来るだろう」
とりあえずは近くにあった段ボール。
蓋をあけると…
「…これ、何?」
「μ'sの応援グッズだね」
「…なんで?」
「ファンだからだろうね」
「…あの姉妹よね、持ってきたの」
「まあ、μ'sの大ファンといえばあの2人だね」
「…何考えてんのかしら」
善子ちゃんが頭を抱えている。
段ボールの中にあったのは、うちわやペンライトだった。
μ'sの応援グッズであることはすぐわかる。
「…次、いきましょ」
「そうだね」
横の段ボールを開ける。
中にあったのは、スポーツグッズだ。
「物自体は普通ね」
「そうだね」
「…でも…何、この量」
「…そうだね」
野球ボール、グローブ、バスケットボール、サッカーボール、バドミントンラケット、シャトル…
「いや、このくらいはまだ分かるけど」
スケボー、折りたたみ自転車、トレッキングシューズ、ロープ…
「どこに行く気なのよ」
「ある意味、キャンプ用だね。というよりは登山か」
そして加えて。
テント。
「バンガローだって連絡あったじゃないのお!」
「か、彼女も楽しみにしてたのさ。張り切りすぎたんだろう」
さらにあたりを見渡す。
またしても段ボール。
「これは…」
「…パンね」
「…パンだね」
それなりに大きな段ボールいっぱいに詰められるパン。
色んな種類が入っている。
「持ってきたのは、多分あの子だろうね」
「…そんなにいらないって言っておいたのに…っ」
その後、幾つか見てみたが個人の趣味全開な物が多かった。
別に何か言うつもりもないが。
ちなみに善子ちゃんは儀式用の道具を持ってきていた。
ロウソクとかそういうの。
「し、仕方ないじゃない!個人の荷物に入らなかったんだし!」
そう言っていた。
キャンプ1日目、午前。
荷物を降ろして昼ご飯を食べただけだが。
先が思いやられた。
「…大丈夫か、これ」
ご視聴ありがとうございます。
話が全く進みませんでした。
でも文字数的に区切りがよかったんです、ごめんなさい。
次はもう少しテンポよく進める予定ですので、許してください。
それではなにかありましたらお願いします。