Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
デートの持ち物編第3話になります。



デートの持ち物と布屋さん3

「さて、俺の要件はすでに聞いているかな」

「イエース。みんなが話してくれましたー」

「デートの持ち物、だよね」

「あのアンケート、ハルさんが気にしているなんて意外でしたわね」

「気にしているってほどでもないんだけどね。なんとなく目にとまったんだよ」

 

昨日、一昨日と話題にしていたデートの持ち物のお話をすべく、本日は三年生三人組に来てもらった。

もうすでに一年生や二年生から話は聞いてるらしく、事情はあまり説明しなくても良さそうな様子だ。

 

「ちなみに、私たちの回答をハルさんはまだ見てないのですよね?」

「そうだよ。どうせなら初見の方が面白いだろうからね」

「ナイスジャッジでーす!」

 

親指を立ててそういうマリーちゃん。

 

「確かに、その方が面白いかもねー」

「ハルさんにしては気が利きますわね」

 

二人に関しても納得のご様子。

 

ふむ。

この反応を見ると…。

 

「三人とも、俺に回答を見られるのに抵抗はなさそうだね」

 

むしろ、ある程度自信を持っているようにも見える。

 

「当然ですわ。人に見せられないような回答など、公表するわけありませんから」

「ミートゥーでーす。誰に見られてもノープロブレム」

「私はそこまで言えないけどねー。でも、隠すほどのものではないかなー」

「なるほどね。君たちらしいよ」

 

せっかくそう言ってくれてることだし、早速みんなの回答を見て行くとしよう。

 

 

 

「ほらハル、もうちょっとそっち詰めてよ」

「いや、これ以上はほとんど限界だよ。できればそっちに詰めて欲しいんだけど」

「こちらもギリギリ画面が見れる状態ですわ」

「もー!あんまり暴れないでくださーい」

 

四人で横に並んでパソコンの画面を覗く。

左から順に、俺、果南ちゃん、ダイヤちゃん、マリーちゃんの状態だ。

 

20インチにも満たない画面を見るには、4人はちょっと多い。

一年生や二年生の時は、自分の回答とかに関しては直接画面を見ることはなかったので、こんなに詰め詰めで画面を眺めることはなかったのだが…。

 

この子たちは、自分たちの回答だろうとしっかり見たいらしい。

 

「自分たちが何を答えたかくらい、憶えてるだろう?そんなに強引に見る必要はないと思うけどね」

「なんとなく見ておきたいんだよ!」

「ガールズの複雑な事情なのでーす」

「一年生や二年生は、自分の回答は恥ずかしいから直接は見れないって言ってたよ」

「それもまた乙女の嗜みですわね」

「女心は複雑なんだね」

 

どうあってもこの子たちは退いてくれる気がしないので、このまま4人仲良く横に並んで見ることにする。

若干狭いけど、まあこれも致し方ない。

 

「最初はマリーちゃんかな」

「オッケーでーす!」

「なんで鞠莉から?」

「名簿順だね」

 

苗字、小原だし。

 

あれだけ人に見せることに抵抗を示さなかったのだ。

きっと、常識的かつちょっとしたスパイスの効いた回答をしてくれているだろう。

 

そんな期待を胸に、俺はマリーちゃんの回答を見るのだった。

 

「鞠莉さんの回答は…」

「あ、これだね。えっと…」

「「「キャッシュカード」」」

「イエース!」

「………そうくるかい」

 

完全に予想の斜め上。

いや、決して悪いわけではないんだけどさ。

 

でも先日、二年生組とデートに持っていくものを話した時は、キャッシュカードについてはなんとなく難色を示していた気がする。

歳をとると、考えにも違いが出てくるってことなんだろうか。

 

初めから男性にお金を出させる気がないというのは、プラスに考えられることだろう。

まあ、マリーちゃんのお家の経済力を考えれば、おそらく大概のものはそのカード一枚でなんとかなるんだろうけどね。

 

…男としては少々情けなくなりそうだ。

 

俺がそんなことを考えていた時だった。

 

「鞠莉さん…」

「鞠莉…」

 

ダイヤちゃんと果南ちゃんの声が耳に入る。

二人も、さすがにコメントに困って…。

 

「素晴らしいですわ!さすが鞠莉さんです」

「うんうん。ハル…じゃなかった、相手の男の子のお財布事情を考えてあげてるんだね!」

「イエース!二人はわかってくれると思ってましたー」

 

あれ?

思ってたのとだいぶ違う反応。

 

てっきりツッコミでも入るのかと。

まあうん、お金にしっかりとした意識をもっているからこそなんだろう。

 

そういうことにしておく。

 

「ハルとのデートだと、そんなにマネーは使わなさそうだけどねー」

「じゃあなんでキャッシュカードなんて書いたの?」

「お金のことは心配しなくてもいいアピールでーす」

「返ってハルさんのプライドに傷をつける気もしますが…まあ、お金のことであの人にプライドは見えませんね」

 

三人がヒソヒソ話をしている。

内容は聞こえないけど、失礼なことを言われている気がする。

 

 

 

 

「さて、次は私ですわね」

「そうだね。ダイヤちゃんの回答を見せてもらおうか」

「ダイヤはやっぱり手堅い回答なのかな?」

「そういうイメージはあるね」

「いやいや、案外裏をかいてくる可能性もありまーす」

「どこの裏だい?」

「ハルの思惑じゃない?」

「それなら普段からできてるよ」

 

常日頃、この子たちの行動読めたことほとんどないし。

 

「話が逸れてますわよ」

「そうだったね。えっと、ダイヤちゃんの回答は…」

 

『着替え』

 

「んー…普通だね」

「んー…ノーマルですねー」

「え、これ普通なの?」

「やはりそうですか…インパクトには欠けると思ってましたが」

「俺は結構びっくりしたんだけど」

 

着替え?

…使い道がイマイチ分からない。

 

ダイヤちゃんのことだ。

まさかいやらしい目的ではあるまい。

 

「なんで着替えなんだい」

「なんでって…着替えが必要になることは色々とあるでしょう?」

「そりゃあるかもしれないけどさ…その言い方だと、いやらしい意味で取られても文句は言えないと思うよ」

「おやおやハル〜、いやらしいことってなんですか〜?」

「あはは、ハルも男の子だもんね〜」

「は、破廉恥ですわよ!」

「…俺がおかしいのかい、これ」

 

マリーちゃんと果南ちゃんは中学生男子のようにニヤニヤしている。

いやらしいのはどっちなんだい、まったく。

 

「この辺りといえば、海の町でしょう?ですから、水場で遊ぶことも多いと思ったから着替えと書いたのです。決して破廉恥な意味ではありませんわ!」

「まあダイヤならそうだよねー」

「なるほどね」

 

ドラマとか映画とかで見る、キャッキャウフフとしながら水の掛け合いをするやつ。

あんな感じのデートを想像したと。

 

「でも、ハルが水辺で遊んだら足を取られて倒れちゃいそうでーす」

「そうだねー。運動神経、お世辞にもよくないからねえ」

「そのための着替えですわ」

「あ、それハルのための着替えだったんだね」

「さすがダイヤでーす」

 

またしてもひそひそ話をし始めた。

案の定、失礼なことを言われている気がする。

 

 

 

 

「さて、最後は果南さんですわね」

「そうだねー」

「果南がデートに持っていきたいもの…想像できないでーす」

「同感だね」

 

そう言っても、ここまででまともに予想ついたのなんて正直善子ちゃんくらいだけど。

 

「うーん…まあ、そんなに変わったものではないよー」

「そう言って普通の物を挙げてくれたのは、これまで千歌ちゃんと梨子ちゃんくらいだったんだよ」

「まるで私が普通じゃないみたいですわね」

「そうでーす。私だって至ってノーマルだったはずでーす」

「そう思うなら他のアイドルの回答をちゃんと見てくれたまえ」

 

着替えはともかくとして、キャッシュカードなんてそうそういないはず。

…いないよね?

 

「まあまあ、それはともかく。私の回答見るんでしょ?」

「そうだね。それじゃあ失礼して…」

 

画面に映し出される果南ちゃんの回答。

そこに表示された文字列。

 

『サバイバルキット』

 

「いや、これはどう考えても普通じゃないよね」

「さすが果南さんですわ!」

「果南、やるねー」

「その反応も普通じゃないね」

 

ちょっとちょっと。

 

「あれ?ハル的には何か引っかかる感じ?」

「何かっていうかほとんどまるまる引っかかってるんだけど」

「どうしたんですか、ハルさん?」

「今日のハルはいろんなとこに違和感感じてますねー」

「その俺が浮いてるような空気にするのはやめてほしいんだけど」

 

だんだん俺がおかしい気がしてきた。

もしかして俺がおかしいのかな?

 

デートにサバイバルキットを持っていくのだって、現代では何もおかしくない。

今時、有事に備えてこの手の物はみんな一つくらい…

 

…いや、やっぱおかしいって。

 

「うん、申し訳ないんだけど、やっぱり俺の知り合いにデートにサバイバルキット持っていく人はいないや」

「ここにいるじゃん」

「一人しかいないよ」

「今後は私も、こういうのを用意する必要があるのでしょうか?」

「ケースバイケースでありかもでーす」

「ごめん、三人に訂正だ」

 

まあそれはともかくとして。

 

「で、なんでサバイバルキットなんだい?」

「サバイバルするため?」

「デートでサバイバルが必要になることは恐らくないはずなんだけど」

「ほら、もしもの事があるでしょ?」

「そのもしもが起こらない場所に行く事を、俺は強くオススメするよ」

 

「今更ですけど、サバイバルキットが必要になりそうな場所に行って、ハルさんはもつんでしょうか?」

「んー…確かに、体力ないもんなあ」

「でも、生命力に関しては結構高そうだよー?」

「あのおばあちゃんに鍛えられてるもんねえ」

「逆に、それだけ鍛えられてなぜあんなに体力ないんでしょう?」

 

案の定聞こえない会話をする三人。

んー…なんなんだろうか。

 

 

 

 

「はあ?デートに持っていきたい物?」

「そうです。千歌ちゃんたちとそういう話をしたんですよ」

「わざわざ電話してきたかと思ったらそれって…」

「ちょっと自分の感性に自身が持てなくてですね」

「はあ?」

 

その日の夜。

俺は美渡さんと電話していた。

 

一年生、三年生の回答を見て、自分の感覚がずれているのではないかと不安になったためだ。

 

「…美渡さんなら何持っていきます?」

「何って…そりゃいっぱいあるでしょ」

「適当に一つ挙げてください」

「一つって難しいね。うーん…とりあえずハンカチかティッシュかなあ」

「…美渡さん」

「どうしたのさ」

「安心しました」

「…いや、本当に何があったのよ」

 

 





ご視聴ありがとうございました。

果南ちゃんのサバイバルキットに関しては、未だに何に使いたいのかわかりません。
この時代のスクールアイドルたちの間ではそんなに珍しくなかったりするんですかね?

それでは何かありましたらお願いします。

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