Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
今回は二年生三人組とのお話になります。



駄弁るAqoursと布屋さん9

「衣替えの季節がやってきたね」

「そうだねー」

「ねー」

「そうね」

 

6月の上旬も上旬。

つい先日6月になったばかりの今日。

 

服装を夏仕様に替えた千歌ちゃんと曜ちゃん。

まだ冬服のまま梨子ちゃんの三人が今日はうちへ来ている。

 

Aqoursの二年生三人組だ。

 

「普段の冬服も可愛いけど、夏服もよく似合ってるよ、二人とも」

「そ、そうかな?えへへ」

「私たちはこれで二度目だけど…ハルくん、毎年同じこと言ってない?」

「毎年思っているからね。嘘は一度も言ってないよ」

「ナチュラルに口説きにいくのは、二年前から変わらずってことなのね」

「恐らくもっと前からだよ、梨子ちゃん」

「なんの話かな?」

「ハルさんは変わってないって話だよ」

「褒め言葉かな?」

 

そう言ったらため息をつかれた。

なんなんだい。

 

「それはそうと、梨子ちゃんはまだ冬服のままなんだね」

「特に理由があるわけでもないけどね。まだ夏服にしようと思うほど暑さを感じることがないから」

「確か一週間くらい衣替え期間があるんだったかな?」

「そうだよー。6月の1日から一週間だね」

「千歌ちゃんと曜ちゃんは1日に夏服にしたのかな?」

「私はそうだよー。この方が動きやすいしね!」

「私も同じだよー。理由も同じで、動きやすいからだよ!」

「君たちらしい理由だね」

 

普段からアクティブな彼女たちらしい理由だと思う。

ちなみに梨子ちゃんはセーラー服の上に水色の薄いカーディガンを着用している。

 

色と厚さが違うけど、冬の花丸ちゃんと同じスタイルだ。

 

「ただ、だね」

「ん?」

「君たち、スカート丈が相当短いという自覚はあるかい?」

「え?そんなことないよ?」

「みんなこんなもんだよー」

「確かに、千歌ちゃんと曜ちゃんは短いわよね」

「まあ君も大概短いんだけどね」

 

ちなみに、梨子ちゃんのスカート丈は、千歌ちゃんたちと比べて一巻き分だけ長くなっている。

といっても、もともと短いスカートを基準にしているので、梨子ちゃんのスカート丈だって決して長いとは言えないんだけどね。

 

「で、それがどうしたの?」

「いや、そのスカート丈であんまり動くと中見えるからね。気をつけなさいよと」

「は、ハルくんのエッチ!」

「そう言われてもね」

「ハルくん、スカートが短いから女子高生が好きなの?」

 

ジト目でそう言う曜ちゃん。

 

「まさかそんなわけないだろうに。女子高生の魅力なんて、普通の男性なら5時間くらいは余裕で語れるものさ」

「長い長い!」

「それは普通の男性に対して失礼だと思うの」

「ハルくん…」

 

ジト目から引き気味の目に変わった。

 

「ま、まあそれはともかく、6月は案外まだ冷える事もあるから、私はまだ長袖のままかな」

「そうだね。梅雨の季節でもあるし、湿度はともかく気温は冷え気味の日はちょいちょいあるかもね」

「でも逆に暑い事も多くない?」

「それでも、まだ6月だし、限度があるから大丈夫よ」

「そっかー」

 

そんな話をしている最中、気づいたらお茶がなくなっている事に気づく。

ついでと思い、彼女たちにもお茶がいるか聞いたところ。

 

「私はあったかいお茶がいいなー」

「あ、じゃあ私も」

「私は冷たいのがいいなー」

 

服装だけでなく、お茶の好みも季節の間の影響を受けているようだ。

 

さすがに一人分のためにお茶を沸かすのは面倒なので、冷蔵庫のお茶をコップに移し、レンジでチン。

風味が落ちたりするかもしれないけど、まあそこまで気にしないでしょ。

 

お茶をコップに入れてお盆に並べる。

ついでにお茶受けのカステラを乗せて、再び店の方に戻る。

 

改めて考えると、営業時間にこうして普通に席を離れるというのは如何なものかと思う。

 

「あ、おかえりハルくん。…どうしたの、複雑そうな顔して」

「この店、営業は大丈夫かなって」

「あはは。営業がギリギリなのはいつもの事でしょー」

「あんまり笑える事じゃないんだけどね」

「で、でも、ちゃんと黒字ではあるんでしょ?」

「なんとかね」

 

みんなにお茶を配り自分も温かいお茶を飲む。

うん、レンジでチンしたやつでもいけるね。

 

「そういえばさっきの話だけどさ」

「さっきのって…デッドラインぎりぎりのうちのお店の事かい?」

「いや、そっちじゃなくてさ」

「衣替えの話じゃない?」

「そうそう」

「お店の話は、これ以上続けると悲しくなりそうだしねー」

「その発言で俺は悲しくなりそうだよ」

「あはは」

 

そんな会話の後、再び千歌ちゃんが会話を続ける。

 

「ハルくんは夏服と冬服、どっちが好きなのかなーって」

「どっち…かい」

「あ、確かに私も気になるなー」

「そ、そうね」

「そんな事気にしても仕方ないだろうに」

「い、いいじゃん!な、なんとなく気になるの!」

 

まくし立てられるように言われる。

言いたくないわけでもないし、聞かれるのは別にいいんだけどね。

 

「その話をするなら、まずはそれぞれの魅力について考えようじゃないか」

「あ、語るパターンだこれ」

「ハルくん、手短にね」

「そんなに話す事あるのかしら」

 

軽くあしらわれてる気もするけど、なんだかんだ聞いてくれるあたり優しい。

ありがたく語らせてもらおうじゃないか。

 

「まずは冬服についてだけどね」

「あ、冬服からなんだね」

「冬服の魅力は、まずはやっぱり萌え袖だね」

「萌え袖?」

「袖がちょっと長くて、手とかが隠れてるやつだね」

「半分隠れてたり、全部隠してたりするのもあるんだよー」

「曜ちゃん詳しいね」

「これでも衣装係ですから」

 

敬礼してそう言う曜ちゃん。

そう考えると、俺よりこの子の方が制服の魅力は語れるんじゃないかな。

 

「男の子から見た魅力と、女の子から見た魅力は別だからねー」

「なるほどね。どうやって俺の心を読んだかは、この際突っ込まないでおくよ」

「そんなわけで、男性から見た冬服の魅力をどうぞ」

「…曜ちゃん、なんかノリノリになってきてない?」

「…衣装の話になると、曜ちゃん結構周り見えなくなるから」

 

千歌ちゃんと梨子ちゃんがなんかひそひそ話している。

まあ気にしないで続けよう。

 

「次に、マフラーや耳当てといった小物の充実っぷりだね」

「夏にも小物はいろいろあるでしょ?」

「もちろん。そう言う意味では夏のものも魅力的なんだけど…冬は小物の存在感が割と大きいものが多くてね」

「んー…確かにそうかも」

「でも、その魅力だとこういう暖かくなってきたときは魅力が下がりそうね」

「いやいや、逆にこの時期だからこそ目立つ冬服の魅力もあるのさ」

「ほうほう!」

 

思ったより曜ちゃんがノリノリで聞いてくれる。

 

「それはね、上着を脱ぐ瞬間なんだ」

「ぬ、脱ぐ…」

「や、やっぱりエッチな目線で…」

「いやはや、そう決めつけるのはちょっと早いよ。俺は何もまとっている布が減るから魅力的になると言っているわけではないんだ」

「どういうこと?」

「普段羽織っている上着を脱ぎ、それまで見慣れなかったシャツになる…その動作自体が色気、もとい魅力として映るのさ」

「…難しいね」

「うーん…脱ぐ瞬間…」

「…あ」

 

何かを思いついたような梨子ちゃん。

どうしたんだろうと思ったときだ。

 

「きょ、今日はちょっと暑いわね」

 

そう言いながら、制服の上に来ていたカーディガンを脱ぎ始めた。

 

「まあ夏直前だしね。上着、脱ぐのかい?」

「え、ええ」

「あああ!」

「梨子ちゃんずるい!」

「な、何がかしら?」

 

よくわからないけど、なぜか揉めているようだ。

はて。

 

「ほ、ほらハルくん!夏服!夏服の良いとこも語ってよ!」

「ああ、それはいいけど、千歌ちゃんはこの話題、あんまり乗り気じゃなかったように見えたんだけど、気が変わったのかい?」

「い、いいでしょ!別に!」

「な、なんで怒ってるのさ」

 

まくし立てられつつ、リクエスト通りに夏服の魅力を語ることに。

 

「夏服の魅力はまず何と言っても、肌の露出だね」

「あ、もしもし警察ですか?」

「あはは、梨子ちゃん。もうちょっとくらい話を聞いてくれても良いんじゃないかな?」

「手短にお願いね」

「ハルくん、やっぱりエッチな目線で見てるんじゃん」

「いいかい三人とも」

 

仕切り直して改めて話を始める。

まずは梨子ちゃんが携帯から手を放すようにしたいところだ。

 

「肌の露出と言ってもね、別にそれは破廉恥な意味のみではないんだ」

「はあ」

「健康的で若さを感じるそれが見えること自体が、魅力的に映るのさ」

「…全然イヤらしさが取れてないような気がするんだけど」

「夏服であること自体が、こう、無防備に見えたりとか、他にも透けやすさがあったりとか、そういうのも魅力になるんだ」

「イヤらしさ増したよ!もうなんかハルくんが口を開く度に破廉恥さが増してくよ!」

「完全に墓穴を掘り進んでるわね」

 

あれ?

なぜか夏服の魅力が伝わらない。

 

「やっぱりいかがわしい理由で好きなんじゃん!」

「あ、あくまで芸術的な意味でだね」

「芸術に謝って」

「いやまあ、ぶっちゃけ冬服に比べて小柄もしくは身軽に見えて冬服では感じられなかった『可愛さ』を感じられるっていう魅力はあるんだけどね」

「それ最初に言おうよ!」

「それが一番清純な理由に聞こえるよ!」

 

そういうことらしい。

結局のところ。

 

「冬服は『綺麗さ』、夏服は『可愛さ』という魅力を、制服は持っているのさ」

「なんか強引にまとめに来たわね」

「これ以上話すと本当に通報されかねないからね」

 

だから良い加減携帯を下ろして欲しい。

 

「そんなわけで、夏服を見ると冬服が、冬服を見ると夏服が魅力に見えてしまうんだ。贅沢だけどね」

「そんなもんなんだねー」

「毎日交互だったら嬉しいかもね」

「そんな人いないでしょ」

「ぜったいめんどくさいしねー」

「そうね」

 

そりゃそうだ。

毎日衣替えしながら生活する人なんて聞いたことないし。

 

 

 

 

「あれ?今日は曜ちゃんと千歌ちゃんが冬服ずら?」

「逆に梨子ちゃんは夏服なんだね」

「と、特に理由はないのよ?な、なんとなく変えようかなって」

「でも、昨日の今日でいきなり変えるなんて…変なことするのね」

「そ、それはもういいんじゃないかな?ほ、ほら、練習しよ!」

「…なんか怪しいわね」

 

そんな会話が学校であった事は、もちろんハルの知るところではない。

 

 





ご視聴ありがとうございました。
私の学校にも衣替えの週はありましたが、正直ほとんど機能してませんでした。
その前後で服装変えちゃう人たくさんいましたし。

それでは何かありましたらお願いします。

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