Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
今回は梨子ちゃんと善子ちゃんのお話になります。




駄弁るAqoursと布屋さん2

 

「暇ね」

「そうかい」

「ねえ」

「なんだい?」

「暇なんだけど」

「さっき聞いたよ」

「暇なんだけどー」

「そう言われてもね」

 

さっきから暇暇とやかましくしている少女。

現代に再誕した堕天使ヨハネこと、津島善子ちゃん。

 

そしてその横で善子ちゃんとは正反対に、静かにしている梨子ちゃん。

俺、善子ちゃん、梨子ちゃんの三人は今お店の奥の和室にいる。

 

時刻はお昼時。

そんなわけで、お昼ご飯を食べるためにこちらにいるのだった。

 

「よっちゃん、そんなに暇って言っても、時間は進まないわよ」

「それはわかってるけどー。あとヨハネよ」

「しかも、待つ時間なんてせいぜい3分くらいじゃないか。我慢しなさいよ」

「くーっ。なんでカップ麺の待ち時間ってこんなに長く感じるのかしら!」

 

先ほどから善子ちゃんが暇だと嘆いている理由は今のとおり。

今日のお昼ご飯は、梨子ちゃんが食べてみたいというのでカップラーメンになった。

 

お湯を入れてからの数分間。

長くても5分程度のこの待ち時間。

 

善子ちゃんはこの待ち時間に文句を言っているのであった。

 

「そんなに待ちきれないならもう開けたらいいんじゃないかな?」

「麺が固いままじゃない」

「ラーメンには固麺っていうのもあってね」

「カップ麺でそれをやると、スープが絡みにくくなるのよ」

「それなら我慢しておくれ」

「はあー…」

「カップ麺って、どれもこれくらいの時間待つものなの?」

「そうだね。だいたい3分から5分くらいじゃないかな」

「へえー…そういうものなのね」

「梨子、本当にこういうの食べないのね」

「体によくないって、あまり食べさせてもらえなくて」

 

苦笑いでそんな風に言う梨子ちゃん。

なんというか、育ちの良さを感じさせる。

 

「逆に善子ちゃんは結構食べてるよね」

「そうね。ハルと一緒に食べることも多いしね」

「君がおうちから持ってきてくれることもそこそこ多いからねえ」

「知り合いが箱でくれたりするんだけど、そんなに食べれないってなるのよ」

「へえー。そういうのもあるのね」

「もらえるのは珍しいけど、箱で買う人は案外いると思うよ」

「どうして?飽きたりしないの?」

「んー…もちろん飽きるんだけど…なんでか、数日したらまた食べれるんだよね」

「あー、気持ちわかるわ」

「ほへー…」

 

素直に驚いている様子の梨子ちゃん。

そんな話をしているうちに、待ち時間の3分が経過。

 

ようやく食事にありつけるようになるのだった。

 

 

 

 

「そういえばこのカップ麺の件で思ったんだけどさ」

「うん」

「Aqoursって、育ちの良い子が多いわよね」

「また脈略もなく話が行くね」

「なんとなく思ったのよ」

 

善子ちゃんと二人、洗面台で洗い物をしている時。

特に前置きもなくそんな話題を出してきた彼女。

 

ちなみに梨子ちゃんは机を拭いていくれている。

そんな梨子ちゃんを横目に見つつ、善子ちゃんとのお話を続ける。

 

「育ちの良さっていうと、食事のことかい」

「食事だけじゃないわ。ぶっちゃけお金持ちかしら」

「例えば?」

「そうねー…まあ梨子はさっきみたいにカップ麺すら食べたことがないわけよ」

「そうだね」

 

よくよく考えると、梨子ちゃんは東京でピアノが弾ける家に住んでいたわけで。

それって普通のお家にはなかなか難しいことのはずだ。

 

少なくとも俺の今の経済力じゃまず無理だろう。

 

「で、鞠莉とか黒澤家は言うまでもないじゃない?」

「まあそうだね」

「なんの話をしているの?」

「おや梨子ちゃん。机を拭いてくれたのかな?」

「ええ。ふきん、持ってきたんだけど…なんの話をしていたの?」

「梨子たちはお金持ちよねって話してたのよ」

「なにそれ?」

 

ざっくり話の流れを梨子ちゃんに説明。

と言っても、そんな長く話していたわけではないけど。

 

「というわけで、Aqoursは金持ちが多いっていう話だったわけよ」

「もともともは、育ちの良い子が多いって話だったはずだけどね」

「そうだったっけ?」

「そうだよ」

「育ちの良さとお金持ちって、そこまで繋がらない気もするけど…確かに、お金持ちのお家の子は多いわよね」

 

場所をちょっとだけ変えて、先ほどまでご飯を食べていた机のところへやってきた。

三人で机を囲み、みんなでお茶を飲む。

 

食後のゆったりした空気を楽しみつつ、先ほどの話を続けるのだった。

 

「千歌ちゃんも自分を普通だなんだと言っているけど、あれでこのへんじゃ有名な旅館の娘だし」

「曜のとこだって結構立派なお家よね」

「花丸ちゃんのところはお寺だし…」

「庶民は善子ちゃんだけ…ああいや、堕天使だから庶民ではなかったね」

「今それを言われると完全に嫌味ね」

「いやはやまさか。君は立派に堕天使なんだからね」

「はっ倒すわよ」

 

普段はヨハネって呼ばないと怒るのに。

 

「ちなみに、育ちの良さに関してはみんな良いと思うよ」

「そうなの?」

「俺が偉そうに判定できることではないけどね」

「年上なんだし、それはいいんじゃない?」

「というか、育ちの良さって何を基準に判断するの?」

「んー…自然に出る態度…とか?」

「言動とか、食事の振る舞いとか、そういうところに出るとは言うわね」

「まあうん、なんとなく君らからは育ちの良さを感じるんだよ」

「曖昧ね」

「はっきりした定義がないからこそ、感じさせるという表現になったんだろうさ」

「難しい話ね」

「どうだろうね。あ、そういえば饅頭があるんだけど、食べるかい?」

「そっちも唐突ね」

「ふと思い出してね」

「もらっていいの?」

「もちろんだよ」

「私もいただくわ」

「ちょっと待っててね」

 

奥へ行き、饅頭をお皿に乗せる。

それとともにお茶を持って部屋へ戻る。

 

部屋へ戻ると、さっきまでと変わらず梨子ちゃんと善子ちゃんの姿がある。

 

和室だからだろうか。

二人とも正座で座っており、背筋も自然な形で伸びている。

 

「おかえり、ハル」

「おかえりなさい…って、どうしたの、ニヤニヤして」

「いやいや。なんでもないよ。ただ育ちの良さを感じていただけさ」

「なんのこと?」

「なんでもないよ。それより、饅頭をいただこうじゃないか」

 

梨子ちゃんと善子ちゃんの前にお茶請けのお菓子、饅頭を置く。

スーパーで買ったやつだが、果たして評判はどうだろうか。

 

「これは…よもぎ饅頭?」

「そうだよ。善子ちゃんでもこれはわかるんだね」

「バカにしてんの?」

「以前よもぎ餅を見せた時は、抹茶の餅とか言ってたからね」

「へ?抹茶?」

「や、やかましいわ!」

 

三人でお話をしつつよもぎ饅頭をいただく。

お値段のわりには餡も多くて美味しい。

十分お得な買い物と言って良さそうだ。

 

食べ始めて10分くらい経ってからだろうか。

梨子ちゃんが、再び先ほどのお話を持ち出してきた。

 

「さっきのお話なんだけどね」

「育ちのやつ?」

「そうそう」

「どうしたのよ」

「うん。ハルさんも、結構育ちの良さってあるんじゃないのかなって」

「残念だけど、お金は本当に全然ないよ」

「いや、育ちの良さとお金持ちはイコールにならないって話したでしょ」

「そうだけど、俺がそんなことを言われてのは生まれて初めてだからね」

「そうなの?」

「でも、私もハルの育ちは結構良い方だと思うわよ」

「おやおや。善子ちゃんまで嬉しいことを言ってくれるじゃないか」

「というか、あのおばあさんの影響でしょ」

「十中八九そうだろうね」

「前にも、厳しいおばあさんだったって言ってたよね」

「まさに鬼婆って感じだったわよ」

「そうだね。仮に少しでも俺に育ちの良さを感じるところがあれば、まああの婆さんの教育の賜物だろうね」

 

そしてこの会話を見て、きっと天国からほくそ笑んでいるだろう。

 

「でも、なんでハルさん、これまでそういうこと言われなかったのかしら」

「そういうことって?」

「育ちがいいとか…かな?」

「そりゃああれでしょ。言動」

「言動?」

「そんなにおかしな事を言っている自覚はないんだがね」

「嘘でしょあんた。日頃の変態発言に自覚ないわけ?」

「あー…なるほど」

「ちょっと梨子ちゃん、何に納得しているんだい」

「確かにあの発言があると、品の良さが薄れるわね」

「薄れるどころか完全に上書きでしょ」

「はっはっは。ひどいじゃないか」

 

さっきまで珍しく褒められていたはずだったのに、なぜか今度は悪いところを指摘される流れになっている。

一応、発言する相手には気を使っているんだがね。

 

「まあ、とどのつまりあれね」

「あれってなんだい」

「どんな環境で育てられても、頭の中までは矯正できないってことね」

「そうね」

「…否定はできないね」

 

て事は結局。

育ちの良さとか品の良さをちゃんと見せられるかどうかは。

 

その人自身によるところが大きい、と。

 

言い方を変えてみれば。

Aqoursの子達はみんないい子達って事でいいのかな。

 

いやここは。

いいって事にしておこう。

 

残り一口のサイズとなったよもぎ饅頭を口に放り込みつつ。

俺はそんな事を思ったのだった。

 

 

 





ご視聴ありがとうございました。
今回も駄弁るだけのお話でしたね。

最近、誰と誰の組み合わせにしようか悩む事が多いです。
組んでほしい組み合わせとかがあれば、感想でもメッセージでも送ってくれるととても嬉しいです。

長くなりましたが、何かありましたらお願いします。

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