Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。

今回のメンバーは花丸ちゃん、千歌ちゃん、ダイヤちゃんです。


普通の1日と布屋さん5

 

「はい?トランプ?」

「その通りですわ」

「やろうよ、ハルくん!」

「急にどうしたんだい」

 

本日俺は、千歌ちゃんのおうちにいる。

仕事のお話で来ていたのだが、ちょうど帰り際に千歌ちゃん達と出くわし、こうして一緒にいるのだった。

 

一緒にいるのは千歌ちゃんに加え、ダイヤちゃんと花丸ちゃんだ。

これまた珍しいメンツだと感じる。

 

「今日ね、Aqoursのみんなでトランプやったんだよ!」

「9人で?」

「ええ、9人で、ですわ」

「大富豪とかババ抜きとかだと…一人あたり6枚…少なすぎないかい?」

「2箱使ったずら」

「だったら2グループに分けてやればよかった気もするがね」

「そんなことはどうでもいいの!それより!」

「ハルさん!私達と勝負ですわ!」

「丸達の特訓に付き合って欲しいずら!」

「特訓?」

 

さすがに事情が読めないので、どんな経緯で今に至ったのかを聞くことにした。

曰く、みんなでトランプをやった後は各学年ごとで適当に遊んだそうだ。

そして、その時に各々引っかかることを言われたらしい。

 

3年生の大富豪の際、ダイヤちゃんはこんな会話をしたんだそうだ。

 

『ダイヤ、表情に出過ぎだよ。それじゃあここから勝負かけますって言ってるようなもんじゃん』

『あはは。ダイヤよわーい。これならよっぽど負けないわねー』

『ぐぬぬぬぬ…』

 

2年生の7並べの際は千歌ちゃんが…。

 

『千歌ちゃん、スペードの10出したいんでしょ』

『うええっ!?そ、そんなことないよっ』

『ふふふ。千歌ちゃん、ずっとそこ見てるからね。丸分かりよ』

『ええ〜…そ、そんなあ…』

 

1年生のババ抜きの際は花丸ちゃんが…。

 

『ずら丸、今ババ引いたでしょ』

『な、なんでわかったずら!』

『花丸ちゃん、目に見えて残念そうにするからね』

『ルビィもある程度分かりやすいけど、あんたは分かりやすすぎよ』

『ず、ずらあ〜…』

 

 

「…要するに、3人とも弱すぎて相手にならないと」

「はっきり言われたずら!」

「それで、俺と勝負してちょっとは改善を図ろうってことかい?」

「それもありますが…」

「ハルくん、私たちより弱いでしょ?」

「…俺をボコボコにして自信をつけようっていうのかな?」

「そういうこと!」

「おっと、そろそろ仕事の時間だ。じゃ、お疲れ様だよ」

 

そう言って席を立とうとした。

が、両手をダイヤちゃんと花丸ちゃんに掴まれその行為は失敗に終わる。

 

「本日の営業は終了しているはずですわ」

「は、ハルさん、お願いずら…」

 

花丸ちゃんからはわりと素直な気持ちが見える。

おそらく、普通にいい勝負ができるようになりたいのだろう。

 

それはいい。

それはいいんだ。

 

問題は千歌ちゃんとダイヤちゃんだ。

表情から伺える様子。

 

『こいつなら嘘もつけないし勝てそう』

 

そんな考えが伝わってくる。

なめられている。確実に。

 

「…あのね、俺とトランプ勝負したところで、君らの弱点が改善されるってことはないと思うよ」

「それでもいいの!とりあえず勝負しよう!」

 

そう言って食いついてくる千歌ちゃん。

 

「俺ならサンドバッグにできると思ってないかい?」

「「ギクッ」」

 

分かりやすい。

 

「…はあ…。まあいいか。この後やることもないしね。でも、あんまりサンドバッグとしては期待しないでくれよ」

 

どうやらこの子たちは何か勘違いしている。

 

確かに、俺は嘘をつくのが非常に苦手だ。

だから、嘘をつかないといけない勝負はとてつもなく弱い。それは事実。

 

しかし。

しかし、だ。

 

そうでない勝負については、少し事情が違うんだよね。

 

 

 

 

「おかしい…おかしいですわー!」

「なんでー!なんで勝てないのー!」

「ハルさん…むちゃくちゃ強いずら」

「強いわけじゃないよ。運がいいんだ」

 

そういうことである。

トランプゲームになると、昔から妙に運がいいのだ。

 

とてつもなく良いというわけではない。

どちらか言うと、『悪い手になりにくい』といった感じ。

 

大富豪ならジョーカーはないけど効果持ちカードや2,1といった強いカードを複数持ちやすい。

7並べなら7はないけど3以下、10以上もほぼない。

ババ抜きならスタート時点でカードが2,3枚になる。

 

こんな感じである。

ちなみに、ババ抜きはババを所持したら負けだ。

表情で確実にばれるからね。

 

「トランプゲームは、確かに嘘がつけないのが痛手だけどね。運があればある程度は勝てるんだよ」

「「ぐぬぬぬぬ〜…」」

 

まあそれを抜きにしても彼女達は弱すぎるが。

 

「ハルくんなら勝てるって思ったのにー…」

 

項垂れる千歌ちゃん。

すっかり自信を失いつつあるようだ。

 

俺が彼女達とトランプをやることに難色を示したのはこれが理由。

彼女達の自信を回復させてやるほど負けてあげられないのだ。

 

え?わざと手抜けばいいじゃんって?

それは無理。

嘘はばれちゃうから。

 

「だから言ってあっただろう。サンドバッグとしては期待できないよって」

「それにしても意外すぎますわ…。こうも勝てないなんて…」

「いや、君らが弱すぎるのも…いや、なんでもない」

 

ちなみに果南ちゃんやマリーちゃんとはトランプをやったことがある。

その時の勝率は5割程度。

つまりは、運がよくても本来はそこまでぶっちぎって強くはないってことだ。

 

「ううー…どうしたら勝てるようになるかなあ」

「何か…何か手を…」

「たかだかトランプでそこまでこだわる必要はないと思うがね」

「でも、一回くらいルビィちゃんと善子ちゃんに勝ちたいずら!」

「そんなもんかねえ」

 

あくまで勝利にこだわっているらしい。

 

まあ俺に勝ったところで、Aqoursの子達に勝てるというわけではないだろうが…。

そこまで言うなら俺にくらいは勝っていただきたいところだ。

 

しかしどうしたものか。

いっそ俺が不利なゲームにするというのはどうか。

例えば…

 

「ダウトでもやるかい?」

「それは却下ですわ」

「というか、実はもう私たち3人でやったんだよねー」

「そうだったのか。どうだった?」

「お互いにバレバレすぎて決着がつかなかったずら」

「そこにハルさんまで入ってきたら、本当に永遠にやり続けることになりますわ」

「…なるほど」

 

嘘をつき合うゲームで、嘘のつけない4人で勝負…

確かにエンドレスになりそうだ。

 

そうなると、いよいよ手が思いつかないな。

いっそ、彼女達が劇的に強くなるような魔法でもないものか…

 

そんなしょうもないことを考えてた時だった。

 

「千歌ー、お菓子持ってきたから扉開けてー」

「あ、はーい」

 

扉の向こうから声が聞こえてきた。

扉を開けると、そこにいたのは千歌ちゃんのお姉さんである美渡さん。

 

両手でお盆を持ち、その上にはお菓子が乗っている。

 

「はい、これ、みんなで分けて食べてねー」

「ありがとうございます」

「ありがとうございますずら」

「どうもです美渡さん」

「ほいほーい…ん?トランプ?」

 

机の上に置いてあるトランプを見て、美渡さんが言う。

 

「みんなでトランプやってたんだよー。でも、全然勝てないの…」

「あはは。千歌弱いもんねー。逆にハルくんは意外に強いでしょ?」

「ええ…本当に意外でしたわ…」

「まったく勝てないずら」

「まったく勝てないくらい強かったっけ?」

「俺はそんな自覚ありませんがね」

「ていうか、なんでまたトランプなんてやってるのさ」

「ああ、それなんですけどね…」

 

美渡さんに事情を話す。

 

ここにいる3人は、各学年で一番弱いこと。

 

俺になら勝てるかもしれない、勝てば自信になるかもしれないと勝負を挑んできたこと。

 

そして、予想外の結果に打ちひしがれていること。

 

「なるほどねー。んー…ハルくん、ハルくん」

「どうしたんですか美渡さん」

「ちょっと廊下でお話しよう」

「はい?…いやまあ構いませんけど」

「ん。じゃあちょっとハルくん借りるねー」

 

そう言って廊下に出る美渡さん。

当然、俺はそれについていく。

 

「さてハルくん。君は彼女達にどうしてほしい?」

「どうって…あれだけへこんでいるのを見るのは、正直忍びないので勝たせてあげたいですね」

「だろうねー。でも、手を抜くのは無理と」

「バレバレになりますし」

「不便だねえ」

 

笑いながら言われる。

 

「そんなことを言うために呼んだんですか?」

「いやいや。ハルくんが上手に負ける方法を教えてあげようと思ってね」

「ほう。そんな妙案が」

「ハルくんが手を抜けないなら、千歌たちに強くなってもらおう」

 

人差し指をたててそんなことを言う美渡さん。

いやいや。

 

「そんなすぐに上手くなれば苦労しないですって」

「大丈夫大丈夫。私には必殺技があるんだよ」

「必殺技って…」

「まあまあ、見てなさいよ」

 

言って、部屋に戻っていく美渡さん。

何をするつもりなんだろうか。

 

「ねえねえ3人とも」

「ん?お姉ちゃんどうしたの?」

「何かありまして?」

「いやいや、大したことじゃないんだけどね。さっきハルくんと話しててさー」

「うん」

 

そこで一拍空け、美渡さんは続けた。

 

「今からやる大富豪、7並べ、ババ抜きでハルくんより上の順位だった子は、ハルくんが買い物デートをしてくれるって」

『ガタガタガタ!』

「え?」

 

なんだそれ。

いや、別にデートどうこうじゃなくて。

彼女達のトランプ上達はどこに行ったんだ。

 

そんなことを考えていたが。

 

「か、勝てば…」

「ハルさんと…」

「…デートっ!」

 

なんか知らないが、彼女達から闘志が燃えているのを感じられる。

 

え?

デートしたいの?

…あ、買い物の方か。

 

でも俺金欠だから、あまり高い買い物はできないよ?

お金は出さなくてもいいって言われそうだけど、さすがにそれは年上の男性としてのプライドがあるしね。

 

まあそれ以前に、彼女達に負けなければいいか。

 

悪いが、俺の財布事情を考えても出費は抑えたいんだ。

勝たせてはやれないよ。

 

「よし、じゃあ勝負といこうか」

 

『3種のゲームをやり、それぞれで1位だった子と買い物デートをする』

 

そんな約束のもと、俺たちはトランプを再開した。

 

結果。

 

「あがりですわ!」

「え?」

 

「はい!9出して終わり!」

「お?」

 

「スタート時点でカード1枚!ハルさんが引いて終わりずら!」

「ちょっ」

 

完敗。

こちらの抵抗する間も一切ないままに勝負を持って行かれた。

 

さっきまで全くできていなかったはずの、戦局を読むという行為がなぜかマスターされており、こちらの手をことごとく潰され。

 

常に真剣そのものの表情をすることで、表情から読まれるという弱点を無くし。

 

俺の唯一の強みであった運が、なぜか全く機能しなくなった。

 

勝負中、花丸ちゃんが念仏みたいなのを唱えていた気がするが、それは関係ないと思いたい。

あれで運を吸われていた気がしたが、あくまで気のせいということにしておこう。

 

まあ何はともあれ、俺は3人に完全敗北を喫したのだった。

 

「ハルくん!私たちの勝ちだよね!」

「そうだね」

「約束、覚えていますわよね!」

「もちろんだよ」

「ハルさんとお買い物ずらー!」

「…お手柔らかに頼むよ」

 

なんかもうトランプ勝負のことがないがしろになっている気もするが。

 

…まあ、彼女達は笑っているし、これはこれでいいか。

俺が負けるっていう本来の目的も果たせているしね。

 

というか、美渡さんはこの結果を予想していたのか。

…すごいな。

 

お金は…うん。

ご飯、抜けるところを抜こう。

 

その後1週間。

毎日朝食のみで生活したことは秘密である。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。

さも当然のように書いてましたが、大富豪、7並べ、ババ抜きってトランプでは定番のゲームというのは正しい認識だったんでしょうか。
もしルール知らない人がいたら申し訳ないです。

GW中になんとしても沼津に行きたいです。
もう、本当に、とても行きたい筆者です。

それでは何かありましたらお願いします。

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