Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。

今回も普通の1日をお届けします。
メンバーは善子ちゃん、梨子ちゃん、果南ちゃんです。


普通の1日と布屋さん3

「属性?」

「うん。属性だって」

「…もう少し分かりやすく話してくれるかな」

「ハルはどんな属性の女の子が好きなのかなーって話になったのよ」

「どんなって…女子高生?」

「いや、そういうことじゃなくてね」

「ほら、ツンデレ?とかそういうの。私もよく知らないんだけどね」

「ああ、なるほど」

 

本日店にやってきたのは、善子ちゃん、梨子ちゃん、果南ちゃんの3人だ。

組み合わせとしては珍しい。

なんでも、じゃんけんで決まったらしい。

 

話題を持ってきたのは善子ちゃん。

梨子ちゃんが言ってくれたように、話題は女の子の属性について。

ツンデレとかヤンデレとかそう言った類のもののようだ。

 

…女子高生と話す内容ではない気がする。

 

「ハル、普段から女の子好きって言ってるじゃん?」

「そうだね」

「バカの一つ覚えみたいに言ってるわね」

「否定はできないね」

「見境ないわよね」

「そこまで言う?」

 

なんか悲しくなるから話を進めてほしい。

 

「まあそれでね、鞠莉が、女の子のどの属性がハルは好きなんだろうって言い始めてね」

「なんでそう繋がるのかはいまいち分からないんだけど」

「アイドルの雑誌に書いてあったのよ。ほら、これ」

 

そう言って梨子ちゃんがスクールアイドルの雑誌を見せてくれた。

そこには、カジュアルなスタイルの服に身を包んだ女の子が映っていた。

 

おそらく、これも女子高生なんだろう。

容姿も、まだ大人というにはいささか幼さが見える姿をしている。

 

表情や服装から、幼さを残しつつ背伸びをした大人っぽさというのを表現しているように取れるその写真。

見出しには、『クーデレ女子の魅力!』と大きく書かれている。

 

この写真から『クール』を連想するのは分かるが、『クーデレ』を連想させるのは無理があると思うんだけど。

まあ、突っ込んでも仕方ないか。

 

「なるほど。これを見て、そんな話題を思いついたわけだね」

「そうよ。まあ、Aqoursにはあんまりそういう属性に当てはまるような子はいないんだけどね」

「ねえ、そういう属性?っていうのはそもそもどういうのがあるの?」

「私も知らないんだよね。ハルはよく知ってそうだし、まずそこから教えてよ」

 

そう言ってきたのは梨子ちゃんと果南ちゃん。

確かに、この二人はそういうのはあまり詳しくなさそうだ。

 

「もちろん説明するのはいいけど…部室で話題にしてたんじゃないのかい?」

「知ってる人は盛り上がってたけど、私みたいに知らない人はついていけてなかったよ」

「ついていけなかったのに、よく俺の好きな属性を聞く気になったね」

「みんなに聞いて来るように言われちゃったからね」

「そういうことよ」

 

果南ちゃんと梨子ちゃんは苦笑い。

善子ちゃんは呆れ気味である。

 

「まあじゃあ、まずはその属性とやらについて話すとしようじゃないか」

 

どこから話すべきか。

そうだな…まずは、『デレ』というものについて説明しよう。

 

「ツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、他にもマイナーなものだとクズデレだったり鬱デレだったりと実は結構な種類があるんだ」

「私も聞いたことがないのがあるわね」

「一般にあまり定着していないのもあるからね。それはともかく、いずれも『デレ』という言葉がついてるんだ」

「そうだね」

「これは、いわゆる好きな人に対してデレデレしている状態を指すんだよ」

「デレデレ?」

「梨子、あんたがハルに向ける態度のことよ」

「よ、よっちゃん!///」

「ヨハネよ」

 

梨子ちゃんが善子ちゃんに何か言っているが、とりあえずスルー。

話を続ける。

 

「この『デレ』という言葉の前に何かつけることで、そのデレ方の属性が決まるんだ」

「デレ方の属性?」

「そう。例えばこの、『クーデレ』というのは、『デレ』の前に『クール』という言葉がついてるんだよ」

「なるほど…」

「意味としては人によって若干捉え方が異なるが…一般的には、『普段クールな子が、ある特定の人の前でだけ見せるデレ姿』を指しているものとされるね」

「もしくは、クールにデレるって意味で使う人もいるかもね」

「む、難しいね」

「想像がしにくいわね」

 

真剣な表情を見せてくれる果南ちゃんと梨子ちゃん。

そこまで難しく考えることでもないんだけどね。

 

「…ハルが普段の状態で、ちょっとだけ顔を赤らめて『君のことが心配でたまらないんだ』って言ってるのが、私の言うクーデレよ」

「…な、なるほど///」

「…クーデレ、いいかも///」

「いやいやいやいや」

 

なにそのおぞましい例え。

想像するだけで気分が悪くなりそうだよ。

 

「Aqoursのメンバーでこれに当てはまりそうなのは…梨子ちゃんとダイヤちゃん…かなあ」

「私?」

 

そもそも二人のデレ姿自体が見覚えないわけだが。

あくまでイメージである。

 

梨子ちゃん、大人っぽいしクーデレに入る気がする。

 

「…梨子、普段は確かにそれなりに大人っぽいけど、ハルが絡むとポンコツになるし、クーデレではないと思うの」

「ちょ、よ、よっちゃん!」

「ヨハネよ」

「ダイヤも、クールって言われると違和感ある気がするなあ」

「ふむ…そうかい」

 

どうやら彼女達から見ると、梨子ちゃんもダイヤちゃんもクーデレにはあまり当てはまらないようだ。

 

「ほ、ほら、他の種類もあるんでしょ?それについて教えてよっ」

「ん?ああ、そうだね」

 

梨子ちゃんに急かされたので、他の『デレ』についてもお話しすることにする。

 

「とりあえずは有名なのは『ツンデレ』というやつだね」

「あ、ツンデレは知ってるよ。よっちゃんのことでしょ?」

「違うわよ!」

「そう、善子ちゃんみたいなタイプのことだね」

「違うって言ってるでしょ!!」

 

机をバンバンして訴える善子ちゃん。

 

「ツンデレという言葉自体は、最近は男女間だけでなく友情的な意味でも用いられることが多くなってきたね」

「普段ツンツンしてて、時と場合によってはデレるって意味であってるの?」

「そうだね。最近はそういう意味合いで使われるのが一般的だろう」

「最近?」

「そう。昔は少しだけ違う意味で使われてたんだよ」

「そうなの?」

「昔は、出会った頃はツンツンしていて、時間が経つにつれてデレていくことをツンデレと言っていたんだよ」

「へえー。そうだったんだ」

 

とはいえ、最近のような使われ方についても特に違和感は感じないんだけどね。

 

「でもそう考えると、ダイヤはこのツンデレになるような…」

「ああ、確かにそうとも言えるね」

「ダイヤさん、普段は割とツンツンしてるもんね」

「デレるシーンなんて、私ほとんど見たことないんだけど」

「3年生のみんなには結構デレてる気がするがね」

「いや、ハルにもデレてるんだけど」

「この唐変木が気づくわけないでしょ」

 

善子ちゃんが呆れる。

理由が読み取れないが、もしかして馬鹿にされているのかな?

 

「さっき言ってたやんでれ?って言うのはなんなの?」

「『ヤンデレ』だね。一時アニメ業界では流行った属性だよ」

「病んでいる状態でデレるのがヤンデレよ」

「病んでいるって…病気?」

「よっちゃんみたいな人?」

「梨子、さっきから喧嘩売ってんの?」

「そう、善子ちゃんみたいな人のことさ」

「あんたは喧嘩売ってるわよね!」

「中二病も立派なびょう…ぐえ」

「ヤンデレとは関係ないでしょうが!」

「ハル、大丈夫?」

 

善子ちゃんからパンチをいただいた。

さすが堕天使。

重たい一撃である。

 

「ま、まあ冗談は置いておくとして、ヤンデレで言う所の『病み』というのはね、ある人のことが好きすぎてどうにかなっちゃった状態のことを指しているんだよ」

「好きすぎて…?」

「ほら、ストーカーとかそういうのよ」

「ああ…なるほど?」

「他にも、強すぎる独占欲だったりとかかな」

「独占?」

「束縛ってやつよ。手錠とかつけて、家から出れないようにしたりとかね」

「うええ?」

「て、手錠?」

「さすがに極端な例だとは思うけどね」

「そういう属性が好きな人っているの?」

「需要自体はあるといえばあるわね」

「大人気だった時代もあったわけだしねえ」

「「へえ〜…」」

 

素直に驚いているようだ。

そんなに真面目に聞く必要もないと思うんだがね。

 

 

 

 

 

結局、話をしていたらそれなりに時間が経ってしまっていた。

話す自分もどうかとは思うが、ちゃんと聞こうとする梨子ちゃんと果南ちゃんも、よくまあ付き合えるものだと思う。

 

彼女達をバス停まで送る。

と言っても、大した距離ではないが。

 

「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」

「ええ、わざわざお見送りありがとうね」

「君たちに何かあったらこまるからね」

「何かあっても、ハルよりは私たちの方が大丈夫だと思うよ」

 

笑いながら果南ちゃんにそんなことを言われる。

否定はできない。

 

「あ、ねえハル」

「ん?どうしたんだい?」

 

不意に、善子ちゃんが何か思い出したように声を出した。

 

「最初にも聞いてたけど、結局ハルが好きな属性ってなんだったのよ」

「「…あ」」

「ああ、それなら…」

 

そこまで言ったところでバスが来た。

話している時間はなさそうだ。

 

「…まあ、続きはまた今度だね」

「仕方ないねえ」

「ちゃんと話してよね」

「絶対よ!」

「はいよ。それじゃあね」

 

手を振ってバスの発車を見送る。

やがてバスが見えなくなった頃に、俺はポツリと呟くのだった。

 

「…デレに属性とかなくても、俺に分かるようにデレてくれればいいんだよね」

 

自覚はないが、鈍感だとか朴念仁だとかボロクソに言われているのだ。

仮に俺にデレてくれる子がいるなら、俺に分かるようにしてくれればそれでいい。

 

「もっとも、そんな相手に会えるかすら怪しいかなあ」

 

意味のない独り言。

 

自虐的に発したその言葉に、なんとも言えない虚しさを感じるのだった。

 

 

 

 

「…って、絶対あの馬鹿は考えてるわよ」

「ば、馬鹿って」

「でも、確かに考えてそう」

「正面からデレたって、あいつはぜええったいに気づかないわ」

「あ、うん、それは…否定できない」

「というか、Aqoursのメンバーは割と積極的だと思うんだけどねえ」

「あれで気付けないのに、正面からデレたって気づくわけないでしょ」

「ハルさんの事だから、『こんなに慕われるなんて、嬉しいね』とか言いそうね」

「あはは。言いそう言いそう」

「笑い事じゃないでしょ、まったく…どうにかなんないかしら」

「よっちゃん、そんなに気づいて欲しいんだね」

「ハルのこと大好きだもんねー」

「なあっ!ち、ちがうわよ!ず、ずら丸とルビィが気づいてもらえないって言ってたから…」

「そうだねー」

「そうよねー」

「ぐぬぬぬ…そんな…そんな優しい目で、堕天使を見るんじゃなあああああい!」

 

 




ご視聴ありがとうございました。

今回の3人ですが、完全にランダムで決まりました。
くじ引きです。
学年がちょうどバラけたのはプチ奇跡です。

内容については…
まあ例のごとく中身はありませんね、はい。

それでは何かありましたらお願いします。

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